ライトフライヤー号とは? わかりやすく解説

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ライトフライヤー号

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/25 16:48 UTC 版)

ライトフライヤー
ライトフライヤー(1903年の初飛行時)
概要
用途 実験機
乗員 パイロット1名
初飛行 1903年12月17日
製造者 ライト兄弟(ウィルバー、オーヴィル)
寸法
全長 6.4 m(21 ft 1 in
全幅 12.3 m(40 ft 4 in)
全高 2.7 m(9 ft 0 in)
翼面積 47.4m2(510 ft2
重量
空虚 274 kg(605 lb
運用 kg(lb)
最大離陸 338 kg(745 lb)
動力
エンジン 水冷直列4気筒(4,000 cc)× 1
出力 12 HP(9 kW
性能(目安)
最大速度 48 km/h
巡航速度 km/h
最大高度 9.15 m(30 ft)
航続距離 0.26km
第4回飛行
翼面荷重 7.1 kg/m2(1.4 lb/ft2

ライトフライヤー号(Wright Flyer)は、アメリカライト兄弟が開発した飛行機。またの名をフライヤーI、又は1903フライヤーと呼ばれる。

一般に「世界で初めて飛行に成功した航空機」とされることが多いが、これより以前にも気球グライダーなどの意図的な有人飛行、1852年アンリ・ジファールによる飛行船などの動力飛行の前例は存在する。スミソニアン協会は、展示しているライトフライヤー号を「最初の動力付きで、パイロットが搭乗して継続的に飛行し、機体を操縦することに成功した、空気より重い空飛ぶ機械」と説明している[1]。また国際航空連盟は、初飛行から100周年となった2003年に「最初の継続的に操縦を行った、空気より重い機体での動力飛行」と述べている。

概要

主翼は複葉で、ライト兄弟自製のガソリンエンジン1基(気化器も燃料噴射装置もない原始的な構造)を動力に、直径2.6mの二翅プロペラ2つを推進式に配置し、ローラーチェーンによって駆動した。プロペラのトルクを打ち消すために、2つのプロペラは相互逆回転で駆動された。低出力[2]を補うため離陸には加速を補助するカタパルトカウンターウエイトを用いる)の設置と滑走用のレールを敷く必要があり、完全な自力での発進は出来ない。着陸にはそりを用いる。

ライトフライヤー号は単純に浮揚するだけでなく、製作当時から、操縦系を既に備えていたことでも画期的な飛行機だった。機体前方に昇降舵、機体後部に方向舵を備え、ワイヤーにより、動翼を制御できた。エルロンとして主翼をたわませている(たわみ翼)。パイロットは機体へ腹ばいに搭乗し、主翼のたわみは腰を左右に動かすことで操作する。操縦応答性を最優先に設計したため、安定性が犠牲になっており、コンピューターシミュレーションでは姿勢が安定しないという欠点があるが、ライト兄弟はグライダーにより操縦訓練を重ねたため技量により安定させることが可能となった。

ライト兄弟は当時の飛行に関する多数の文献を読んでいたと思われ、自転車よりも操縦が困難であることは認識していた。1000回以上飛行したオットー・リリエンタールの総飛行時間はおよそ5時間であると認識しており、ウィルバーはわずか5時間の飛行では操縦を習得できないと認識した[3][4]。それまではリリエンタールの滑空機のように重心の移動で操縦しようとしていたが、1899年夏にウィルバーは、小さな厚紙の箱で遊んでいる間にロール制御のための実用的な方法として、たわみ翼のアイデアを考案した。ウィルバーは1899年の8月に複葉のでたわみ翼の実験を実施した[4]。1901年11月末から12月初頭までの期間に38種類の翼型を揚力の発生しない迎え角0°から45°まで43の条件で風洞実験を実施して飛行に適した翼型を開発した[4]。これらの試験データが主翼とプロペラの設計の基礎になった。1902年10月に新しい翼型を備えた滑空機での実験結果に手応えを掴んだ兄弟達は動力飛行へ向けて1902年12月に10社に出力8から9馬力で重量が180lb(約80kg)未満のエンジンの製作を打診したが兄弟の出した条件を満たす会社は無かったので1903年2月に自分たちでエンジンを製作した[4]

1903年12月17日にノースカロライナ州キティホーク南約6.4kmのキルデビルヒルズ付近にて初飛行に成功した。計4回の飛行を行い4回目の飛行では59秒間で260mの飛行をしたが、その際着陸に失敗し前方の昇降舵が壊れ、その後停止中の機体が強風で転倒して大きく損傷した[5]

スミソニアン協会によって提供された資料を基にアメリカ航空宇宙学会のロサンゼルス支部のボランティア達によってライトフライヤー号の複製機が製作された。1999年3月に実物大の複製機がNASAエイムズ研究センター風洞で歴史的な飛行のデータを収集する目的で実験された。2週間の間に技術者達は複製機の安定性、飛行特性を調査した[6]。複製機は寸分違わぬものだったが、風洞内に設置するために実機よりも幾分強化された[7]

脚注・参考文献

  1. ^ スミソニアン協会の博物館は一般に「殿堂」と扱われているが、飛行機の初飛行に関してはライトフライヤーはエアロドロームとのライバル関係にあったという遺恨がある。
  2. ^ 僅か9馬力しか出なかった。ライバルとされるエアロドロームの発動機は、約52馬力と圧倒的な出力差があった。
  3. ^ "From Lilienthal to the Wrights." Otto Lilienthal Museum. Retrieved: 8 January 2012.
  4. ^ a b c d Evolution of Wright Flyer Propellers between 1903 and 1912
  5. ^ Telegram from Orville Wright in Kitty Hawk, North Carolina, to His Father Announcing Four Successful Flights, 1903 December 17”. World Digital Library (1903年12月17日). 2013年7月21日閲覧。
  6. ^ THE AIAA WRIGHT FLYER PROJECT 1978-2012
  7. ^ NASA BEGINS TESTING REPLICA OF HISTORIC 1903 WRIGHT FLYER

関連項目


ライトフライヤー号

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 23:27 UTC 版)

飛翔」の記事における「ライトフライヤー号」の解説

ライト兄弟は、ライトフライヤー号に12馬力推定されるエンジン搭載し2つプロペラ駆動し推進力作り出し固定され2枚ののたわみ翼揚力作りだし飛行した補助翼主翼前にあり、現在の一般的な飛行機補助翼主翼後ろにあるのと比べ前後反対である。操縦者はふせる姿勢レバー握り飛行姿勢制御した地表から数十cmの高さを水平に飛行させ、4回の飛行繰り返し記録伸ばし4回目59秒間で260mの飛行行った。 「ライトフライヤー号」も参照 ライトフライヤー号では、ほぼ直線的な飛行しかできなかったが、やがて旋回ができる機体開発されることになった第一次世界大戦初期飛行機による敵地偵察開始された。最初武器搭載せずパイロット同士のどかに手を振り合うなどしていたが、やがて飛行中空中で物を投げつけたり互いに拳銃撃ち合ったりするようになった第一世界大戦中には機関銃搭載した戦闘機による空中戦戦術として定着した飛行技術高度化様々な方向行われ一つには空中自在に動くことを目指した。機体改良操縦テクニック発達により宙返りローリング背面飛行などが可能となった空中戦で、敵機に対して有利な位置をとるために用いられた。 別の目標としては高速化があった。1947年には米国ベル社のX-1で水平飛行での音速超える水平飛行超音速飛行)を実現した。 なお現在のジェット旅客機は、巡航時に10,000m(30,000フィート)ほどの高度を飛行するが、その巡航速度は、一般論として言えば対空速度言えば860km/m前後で、音速のおよそ0.83倍に相当する。なお高高度では空気極端に薄くなるため、揚力極端に下がり、低高度で見せるような中・低速では飛ぶことができない。また旅客機一般に音速飛べるようには設計されておらず速度上限もある。つまり実は、ジェット旅客機高高度安全に飛べ速度の幅はかなり狭い。(ただし、近年飛行機では、高高度飛行する時にはオートパイロット適切な速度保ち操縦者適切な速度設定するように訓練を受け習慣づけられているため基本的に問題起きない。ただし緊急時高高度何らかの事情速度を落とすような操作誤って行うと、突然深刻な問題直面することになる。) 「飛行機」も参照

※この「ライトフライヤー号」の解説は、「飛翔」の解説の一部です。
「ライトフライヤー号」を含む「飛翔」の記事については、「飛翔」の概要を参照ください。

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