モジュール式脱出装置とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > モジュール式脱出装置の意味・解説 

モジュール式脱出装置

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/11 15:25 UTC 版)

地上展示状態のF-111の脱出モジュール(同形状のコックピットシミュレーター)

モジュール式脱出装置(モジュールしきだっしゅつそうち)とは、航空機の非常用脱出装置の一種であり、コックピット部分を機体から分離して搭乗員を脱出させる形式のものを指す。

概要

XB-70から脱出したカプセル(事故時の映像)

航空機の緊急脱出装置としては、戦闘機等の小型軍用機が備える射出座席が有名である。この形式は、パイロットが殆ど剥き出しのまま座席のみを射出するため、条件[1]によっては安全性に問題があった。特に、高高度を超音速で飛行する機体からの脱出[2]は困難であった。

これらの問題点を解決する為に開発されたものがモジュール式脱出装置である。この装置には、超音速飛行時や高高度飛行時の安全な脱出の他に、着水による低体温症の回避や非常用物資の充実などの利点があった。

しかし、システムが射出座席よりも大型化する為に落下速度が速く、パラシュートの大型化が不可欠の上、着地時の衝撃を緩和するエアバッグ等の軟着陸対策に掛かる重量問題や、装備変更の度に掛かる改修やメンテナンスのコストが高いなどの問題点もあった。更に、レーダーの発達により敵地への進入は低空の飛行が主流となったことや、安全性の目安にされる「ゼロ・ゼロ射出[3]」が難しいことが、モジュール式の衰退に拍車をかける要因となった。

こうした背景もあり、現在でモジュール式を採用した軍用機は、オーストラリアで2010年末に退役済みのF-111が最後となっている。

XF-103XF-108にもその用途故に採用が予定されたが、開発難度の高さと予算高騰が予想された事から、実験機すら作られる事無く共にキャンセルとなっている。

主な採用機

B-58の脱出カプセル。シールドが稼働する構造が見える。
全ての形式・派生型においてモジュール式脱出装置が搭載された。
モジュール式脱出装置が搭載された。2号機がゼネラル・エレクトリック社(XB-70のエンジンメーカー)の宣伝撮影のため編隊飛行を行った際、F-104Nが接触したため墜落した。その際にモジュール式脱出装置が使用された。パイロットが脱出カプセルに腕を挟まれ射出が遅れた他、着地時にエアバッグが作動しなかった。
プロトタイプ・B-1A4機のうちの1~3号機の3機のみに搭載されている。量産型のB-1Bでは運用方法の変化等[4]によりモジュール式脱出装置は廃止されている。
当初は通常の射出座席だったが、超音速飛行中の脱出で死亡事故が起きたため、上からブラインドが降りてカプセルを密閉し与圧後、機体外に射出されるモジュール式に変更された。また衝撃吸収用のエアバッグや着水時に作動するフローティングシステムを搭載し、カプセル内には水や食料を備えシェルターの役目も果たすなど意欲的な設計であった。

モジュール式脱出装置が登場するサブカルチャー作品

登場する人型機動兵器「ナイトメアフレーム(KMF)」は、全高5メートルというハンデにもかかわらず、この装置を採用している[5]
登場する地球製の人型兵器「ラウンドバーニアン(RV)」には胴中央部にコクピット兼用の脱出用小型宇宙艇(トゥランファム)、もしくはポッド(バイファム、ネオファム等)を備えている。
細長い円柱状のエントリープラグを脊髄相当部に差し込むかたちのものが登場する。
全天周囲モニターの副産物ともいえる球型のイジェクションポッドを採用している。後日談ともいえる『逆襲のシャア』にもこのシステムが登場する[6]。知名度では同等の機能を持つ『機動戦士ガンダム』のコア・ブロック・システム[7]に劣る。また、『機動武闘伝Gガンダム』のコアランダーも同様のモジュール式システムを有しているが作中では緊急時の脱出に使用されることは無かった[8]
三悪が搭乗するシャレコウベ型コアメカとして登場する。やられる度にシャレコウベ型のキノコ雲からコアメカが飛び出すシーンは、シリーズ通してのお約束シーンとなっている[9][10]

マジンガーZ』のホバーパイルダー、およびジェットパイルダーの様に、航空機もしくは自動車が同等の役回りを果たす例の方が多いが、『機動戦士ガンダム』最終回「脱出」[11]や『マジンカイザー』OVA第1話[12]の様に緊急脱出装置として活用する例は稀である。

脚注

  1. ^ 海上もしくは湖の上での射出は着水による低体温症の危険が伴う上、射出時の姿勢が悪いと強烈なGの為に背骨等が折れて死亡する場合があった。
  2. ^ 公式に音速以上での射出に対応しているものは、Su-27MiG-31等に装備されているズベズダ設計局製のK-36だけである。
  3. ^ 高度0・速度0の状態からでもパラシュートが充分に開く高度までパイロットを打ち上げられること。
  4. ^ 超低空飛行に超音速飛行能力は重要でない事から、ステルス性能向上と予算削減も兼ね、吸気口固定化への設計変更が行われている。
  5. ^ 予算の関係から、オミットされた試作機のランスロットなどのように採用されていない機種もある。
  6. ^ アムロが操縦するν(ニュー)ガンダムが、サザビーから射出されたシャアが乗っている球型脱出カプセルを掴んだままアクシズを押し返すシーンは有名である。
  7. ^ コア・ファイターが変形することでコクピット部になる方式である。飛行形態に変形することで地球上・宇宙に関わらず自力移動可能である。
  8. ^ 新宿レインシャイニングガンダムデスアーミーとの死闘を繰り広げドモンが救出に来た際に「コアランダーで脱出しろ!」とドモンが忠告するもレインに拒絶されるシーンがある。
  9. ^ ヤッターマンではコアメカは登場せず、お仕置き三輪車がその任についている。
  10. ^ 初代コアメカであるタイムガイコッツをデザインしたのは、大河原邦男タツノコプロ時代の上司である中村光毅である事から、これがガンダムシリーズのモジュール式脱出装置やコア・ブロック・システムの原点という説がある(『タイムボカン王道復古』ドラマCDによる)。
  11. ^ シャアとの一騎討ちの後にアムロが、大破し頭と左腕を失ったガンダムからまず(実在の航空機のレスキュー機構の様に外部からの手動操作で)Aパーツ(上半身)を排除、続いて露出したコアファイターをBパーツ(下半身)から切り離し、陥落したア・バオア・クーから脱出している。このシーンのインパクトはいまだに強く、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では元々はシートのみ分離する仕様であったが、物語途中からコアブロック仕様に変更となっている。
  12. ^ マジンガーZをあしゅら男爵らに捕獲された後、兜甲児が乗るホバーパイルダーはオートパイロットでマジンカイザーが秘匿されている格納庫に向かっている。

関連項目



モジュール式脱出装置

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 03:25 UTC 版)

F-111 (航空機)」の記事における「モジュール式脱出装置」の解説

コクピットそのまま飛ばすモジュール式脱出装置は射出時に乗員外気さらされないため超音速時でも安全に脱出することができ、着水した場合直接触れないため低体温症から乗員を守ることができた。またサバイバルキット食料通常より多く搭載することもできたりと利点多かった。 しかし座席のみを飛ばす場合比べ全体質量大きいため落下速度通常の射出座席同レベルにするには通常より大型パラシュートを使うなどする必要があった。またパイロット装備改められる等の規程変更の度に改修要したり、定期点検の度に分解整備義務付けられ労力コスト要するなどのデメリット多かった。 一応、軽くて強いケブラー素材パラシュートエアバッグ装備し着地衝撃をなるべく和らげるようにされていたが、それでも通常より着地衝撃大きく乗員背骨圧迫骨折起こす事態などが発生している。

※この「モジュール式脱出装置」の解説は、「F-111 (航空機)」の解説の一部です。
「モジュール式脱出装置」を含む「F-111 (航空機)」の記事については、「F-111 (航空機)」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「モジュール式脱出装置」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「モジュール式脱出装置」の関連用語

モジュール式脱出装置のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



モジュール式脱出装置のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのモジュール式脱出装置 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、WikipediaのF-111 (航空機) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS