アクチュエータ
アクチュエータとは、入力されたエネルギーを物理的な運動へと変換する機構のことである。コンピュータの関連では特にハードディスクの磁気ヘッド部分を動作させる機構を指すことが多い。
アクチュエータは元来「動作させるもの」という意味の英語であり、モーターやシリンダーなどで広く採用されている。一般的にアクチュエータといえば、電気エネルギーを運動に変換する装置を指すが、油圧や空気圧、磁力などを運動量へ変換するアクチュエータなども多く存在する。光エネルギーを運動へと変換する光アクチュエータなども開発が進められている。アクチュエータは家電や航空機産業、人工筋肉の研究などに広く用いられている。
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アクチュエータ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/22 06:14 UTC 版)
アクチュエータ(英: actuator)は、入力されたエネルギーもしくはコンピュータが出力した電気信号を、物理的運動に変換する、機械・電気回路を構成する機械要素である。能動的に作動または駆動するもの。
概要
アクチュエータは電動機やエンジンのようにものを動かす駆動装置と、その動作により制御を行う機械、油・空圧・熱・電磁など物理的な装置を指す。利用する作動原理(入力・出力するエネルギー)によりさまざまなものがある。伸縮・屈伸・旋回といった単純な運動をするものに限る場合と、電動機(モーター)やエンジンのような動力を持続的に発生させるものも含む場合がある。 アクチュエータは基本的にエネルギーを与えることで運動を発生させる。何らかの装置に組み込む場合は電気的な信号によって制御できるようにするなどして制御機構に組み込む。制御方式は利用するエネルギーの種類やアクチュエータ自身の用途にも拠り様々である。単純な開閉器(スイッチ)やバルブによるものがある。ハンドルやレバーといった操作部分に連結しているものもある。大きな力を発生させるアクチュエータを動作させるために動力伝達装置の開閉器に取り付けられた小型のアクチュエータなど、様々な利用のされ方がある。
歴史
産業革命以後、船舶が大型化され、人力での操舵が困難になり、油圧式の制御装置が導入され建設機械の普及にも油圧式アクチュエータが重要な役割を果たした。空気圧式アクチュエータは19世紀末より鉄道車両のブレーキやドア開閉装置などに利用される[1]。射出成形機や産業用ロボットは当初は油圧式が主流だったが、1990年代以降パワーエレクトロニクスの発達により、電動式のパワー密度と信頼性が向上すると制御性、エネルギー効率の優れた電動式が市場占有率を高めたが、2010年代にボストン・ダイナミクスが多脚ロボットに精密油圧制御を導入したことにより、潮流が変わり、長所が再び注目され、ロボットへの油圧アクチュエータの導入が増えつつある[2][3][4][5][6][7]。
種類
電磁石で得られる動力を利用するものをソレノイドアクチュエータと呼ぶ。航空機や産業用ロボットなどに見られる油圧により駆動されるものもある。また筋肉も化学エネルギーを利用したアクチュエータの一種と見たてることがある。形状記憶合金を使い、電流を入力することで発生するジュール熱による変形を利用したアクチュエータも実用に供されている。
- 電気系
- 圧力装置
- 変換機
- リニア・アクチュエーター(リニアモーターによる往復駆動装置)
- ラバー・アクチュエーター(ゴムチューブへの加減圧による変形を利用した往復駆動装置)
電気式アクチュエータ
エネルギー効率が高く、精密制御が可能。パワーエレクトロニクスの発達により、電気式のパワー密度と信頼性が向上したことで主流になった。
油圧式アクチュエータ
出力重量比が高く、堅牢で耐衝撃性に優れる。2010年代には精密制御が可能になり電気式の牙城を侵食しつつある。
空気圧式アクチュエータ
単純でトルクがあるので単純な動作に使用される。以前は位置決め精度が電動式と比較して劣っていたが精密制御が可能になりつつある[1]。
化学式アクチュエータ
化学エネルギーを力学エネルギーに変換する[8][9]。まだ実験段階で複数の方式が模索される。
磁性流体アクチュエータ
電気粘性流体アクチュエータ
電気粘性流体を用いたアクチュエータ。粘性を制御可能で減衰係数を変える事により建築物の制振機構や車両のセミアクティブサスペンション等の用途に適用できる。
応用
ロボットの関節を動作させるなどの利用が見られる。この中にはエネルギーを与えたときだけ縮み、エネルギーを絶つと外部の力に対して受動的になるアクチュエータも多く、関節を動作させる場合には、関節を曲げるアクチュエータと、伸ばすアクチュエータがセットになっていたり、或いは片側をばねの弾力で肩代わりさせるなどの設計様式も見られる。複雑な所では力の合成を利用して複数アクチュエータから得られる力を利用して、軸を支点として複雑な運動を行う場合もある。
こういった複雑な動作を要求されるアクチュエータは制御のために状態を検出するセンサと同時に組み込まれ、状態を監視する(センシング)。これによってアクチュエータに入力されるエネルギーを調節され、望みどおりの運動を行うが、建設機械のような単純なものでは操作者が各々の関節の状態を目視で確認・調節することからこういった状態把握のためのセンサ類は利用されない。
2000年代では制御用コンピュータの高性能化・小型化が進み、ロボットがより現実的な装置として開発されているが、その陰でアクチュエータもより効率よく動作するものが求められており、センシング技術も並行する形でセンサの小型化・高精度化や一定の情報処理機能を備える知能化が進んでおり、これらがロボット工学の全体的な発展を促している。
メーカー
- IAI
- LINAK
- TiMOTION
- YAMAHA
- 日本精工
- スマートロボティクス
- THK
- 黒田精工
- ケーエスエス
- 日本トムソン
- TAIYO
- MISUMI
- アイセル
- 日本ギア工業[12](バルブアクチュエータ)
脚注
- ^ a b 則次俊郎「空気圧アクチュエータ」『日本ロボット学会誌』第15巻第3号、日本ロボット学会、1997年4月、355-359頁、doi:10.7210/jrsj.15.355、ISSN 02891824、NAID 10007548325。
- ^ “油圧復活、耐衝撃性でモーターに逆襲 川崎重工・ブリヂストンがロボットに”. 日経クロステック (2020年6月1日). 2020年9月8日閲覧。
- ^ 玄相昊, 「油圧による柔軟で機動性の高い多脚ロボットの実現」『日本ロボット学会誌』 2019年 37巻 2号 p.150-155, doi:10.7210/jrsj.37.150
- ^ 鈴森康一, 「タフロボット用油圧アクチュエータ」『日本ロボット学会誌』 2019年 37巻 9号 p.829-834, , doi:10.7210/jrsj.37.829
- ^ 李湧権, 「電動モータと油圧システムの競演から協演へ」『電気学会誌』 2016年 136巻 6号 p.368-371, 電気学会, doi:10.1541/ieejjournal.136.368
- ^ 鈴森康一, 「次世代アクチュエータが切り拓く新しいロボティクス」『日本ロボット学会誌』 2015年 33巻 9号 p.656-659, , doi:10.7210/jrsj.33.656
- ^ ロボット向け電油アクチュエータの開発 - 川崎重工
- ^ 若林慶彦, 岡本敏明, 斉藤浩一, 工藤寛之, 三林浩二「液性駆動・制御が可能な生化学式アクチュエータ」『自動制御連合講演会講演論文集』第50回自動制御連合講演会セッションID: 121、自動制御連合講演会、2007年、21-21頁、doi:10.11511/jacc.50.0.21.0、NAID 130004600312。
- ^ Yuta SATO, Takahiro OKOSHI, Daishi TAKAHASHI, Takahiro ARAKAWA, Hiroyuki KUDO, Kohji MITSUBAYASHI (2010). “生化学反応を利用した化学エネルギー駆動型圧力制御システム”. Journal of Advanced Science (Society of Advanced Science) 22 (1): 7-8. doi:10.2978/jsas.22.7. ISSN 0915-5651. NAID 130004837646 .
- ^ 神山新一「磁性流体アクチュエータ」『日本ロボット学会誌』第2巻第4号、日本ロボット学会、1984年、325-329頁、doi:10.7210/jrsj.2.325、ISSN 0289-1824、NAID 130000844254。
- ^ 加嶋俊大, 「磁性流体および磁性エラストマーを用いたソフトアクチュエータの研究」 大阪大学 博士論文, 14401甲第16389号, 2013年, NAID 500000573880
- ^ “日本ギア工業バルブアクチュエータ”. 日本ギア工業株式会社. 2024年1月22日閲覧。
参考文献
- アクチュエータ入門 (図解メカトロニクス入門シリーズ) 改訂2版,松井信行, 雨宮好文, オーム社,2000, ISBN 978-4274086908
- メカトロニクス概論〈1〉入門編 (基礎シリーズ), 船橋宏明, 実教出版, ISBN 978-4407031829
関連項目
外部リンク
アクチュエータ
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二足歩行ロボットのアクチュエータにはサーボモーターが用いられる。油圧、空圧、人工筋肉などが用いられることもあるが例は少ない。サーボモーターは高速回転するものなので、減速機で回転数を落としトルクを上げる必要がある。減速機には歯車が使われるが、二足歩行ロボットには遊星歯車かハーモニックドライブが使われる。ハーモニックドライブは楕円と真円の差動を利用した減速機で、小型軽量高効率で多くの歩行ロボットに使われている。ただし大変高価である。 サーボモータを駆動するにはサーボアンプが必要になる。産業用ロボットも含めてロボットのサーボアンプには、普通、ロバスト性を高めるためにPWMドライバが使われる。PWMとはモーターの最大電流を+と-のパルスで供給し、モーターを常に最大負荷で使う方法である。サーボアンプはパワーデバイスであり、熱容量の関係から、汎用品は大きく重い。ロボットに搭載するには特注品を依頼するか自作する必要がある。
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