技術
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 04:09 UTC 版)
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テクニック(技術)やテクノロジー(技術学)の語源は古代ギリシア語「テクネー」であり[3][4]、この言葉は学術・芸術・知識(エピステーメー)[3][5]や制作的な知識(ロゴス)・能力等も指す[4]。古代~中世にわたって原始的な科学の試行錯誤を行った技術・哲学・宗教思想・実利追求などの固まりは、錬金術と呼ばれる[6]。16世紀以降、主に「科学革命」によって神秘性や思弁性が消えつつあった錬金術は、近代的な科学および科学技術へと変化していった[6][注 1]。
概要
以下は『日本大百科全書(ニッポニカ)』の解説を出典とする[3]。「技術」という言葉は非常に広く使われており、「手法」や「手段」という言葉に交換可能な場合もある[3]。一方で「技術」は「科学技術」とも言うように、「科学」と並列されることが多くなっている[3]。現代では両者は接近し、計画的に結合可能となっており、「一体化」されている[3]。技術史学者・山崎俊雄は「今後さらに「科学技術」の用語は普及するであろう」と記述している[3]。
歴史的には「技術史観」(theory of technological development)という歴史観があり、この観点では《歴史は究極的には技術の進歩により発展する》と考えられている[8]。技術史観にとって思想・文化・社会制度は普遍的でなく栄枯盛衰を繰り返すが、技術は普遍的であり進歩・発展し続けている[8]。人間の生活様式・社会関係・社会構造・文化・思想の飛躍的変化は、新技術(の発明と普及)によって起きるとされる[8]。「農業革命→産業革命→エレクトロニクス革命」という段階的用語は、その例である[8]。
由来・歴史
技術の歴史は人類誕生から続いており、科学よりも古い[3]。(厳密には、1870年代まで《技術》は「芸術」や「技芸」と呼ばれ、《科学》は「自然哲学」と呼ばれていた[3]。) 技術の語源はギリシア語のテクネー(technē)やラテン語のアルス(ars)で、「わざ、業、技、芸」を意味する[3]。技術と近代科学が接近したのは、1870年代以降の先進国内だった[3]。そこでは物理学者や化学者が、大企業によって雇用されるようになっていた[3]。政府も、軍備や産業振興のために研究所を設置した[3]。
古代の技術 ― 技術哲学
古代ギリシアでは、人間の「制作活動一般に伴う知識や能力」が尊重されて《技術 テクネー》と総称されていた[4]。また、技術は学問(古代科学)でもあった[5][9]。プラトンの『ゴルギアス』によると、技術とは《本質についての理論的知識(ロゴス)を持つ働き》である[4]。
アリストテレス哲学では、技術は《知識 エピステーメー》と同義であり、《ある事柄を原因から認識する一般的知識》だとされる[5][9]。(技術と似たものに「経験 エンペイリアー」があるが、これは事柄についての単なる習熟だとされる[5][9]。) 特にアリストテレスの『ニコマコス倫理学』によると、技術は《創造的方法について考究する働き》であり、《真の知識(ロゴス)を伴う制作能力》である[4]。すなわち技術は単なる知的能力ではなく、《学問的かつ経験的で普遍的かつ個別的な真理認識の能力》だとされる[4]。ハイデッガーの著名な解釈によると、ここでの「技術」とは《制作による一定の真理解明》(エントベルゲン Entbergen)だと言う[4]。
なおアリストテレスの言う《知識》は、理論知と実践知とに区別されることもある[5][9]。後者は近現代的な意味での「技術」へと繋がっていった[5][9]。
近代の技術 ― 科学技術
《技術学》または《テクノロジー》は、啓蒙主義・機械論(機械論的自然観)・民主主義等の影響下で発生した[3]。かつて18世紀ドイツのゲッティンゲン大学では、技術的学問として「技芸史」が存在していた[3]。(ドイツ語ではクンストゲシヒテ(Kunst Geschichte)、英語ではアートヒストリー(art history)[3]。) そこへ影響したのが、啓蒙主義や機械論だった[3] ―― すなわちフランシス・ベーコンやディドロやダランベール等による、自然哲学的・自然史的な技術研究が影響した[3]。これにより、技芸史は1772年に《技術学 テヒノロギー(Technologie)》へと革新された[3]。技術学は英語圏の「テクノロジー(technology)」に相当し、そしてアメリカのジャクソン流民主主義時代から普及していった[3]。
なお原義から辿れば、技術学(テクノロジー)と工学(エンジニアリング)は異なる[3]。工学の語源はラテン語のインゲニウム(ingenium)で、《発明》・《天才の所産》を意味する[3]。そうした成立経緯があるため、現代の大学や学会で「工学」は《特殊な職業人的な教育と研究》を意味する[3]。一方で「技術学」の由来は、職業教育を求めないゲッティンゲン大学の《一般的教育》であり、この大学は《自由な教授と学習》を誇っていた[3]。そうした特徴は現代の技術学にも及んでいる[3]。
同時に、各言語で「技術」と「技術学」が混同されている[3]。それでいて通常、英語では「テクノロジー」(technology)が、日本語では「技術」が使われることが多い[3]。山崎は
と記述している[3]。
注釈
- ^ 『デジタル大辞泉』からの引用
『日本大百科全書(ニッポニカ)』からの引用錬金術 … もともと錬金術の本質は、思弁的、神秘的、宗教的な色彩と、実際的、技術的な色彩とが混ざり合って、広くヨーロッパに普及した(なお、東洋では古くから中国で長命薬の発見を意図した錬丹(れんたん)術が行われていた)。 …
初期の錬金術思想には、プラトン、アリストテレス、新ピタゴラス派、グノーシス派、ストア哲学、宗教、占星術、俗信などが入り混じっており、また象徴主義とか寓意(ぐうい)的表現による難解さもあった。しかしその一方で、錬金術の技術面では … 実験用のさまざまな蒸留器や昇華器、温浸器などが発明された。 … 12世紀までに化学薬品としては、新しく、ろ砂、アンモニア、鉱酸、ホウ砂などを発見した … 。 …
中世の人たちは、錬金術に潜む一種の神秘性や、卑金属を貴金属(金)にしたいという卑俗な物欲とも絡み合って、その魅力にひかれた … 。 … 17世紀のニュートンでさえ、錬金術に対して強い関心をもって真剣に考えていた … 。 …
16世紀のいわゆる科学革命の時代になると、それまで根強く支持され続けてきた錬金術は、最盛期を過ぎて、思弁的・神秘的な色彩は消え始め、それにかわって新しい思想が注入され、化学という科学の新分野が芽生えてきた。 … 錬金術から化学へ移行する過渡期を象徴する最初の人物としては、オランダのファン・ヘルモントをあげることができる。
錬金術は「にせ」科学であった。そしてこの「にせ」科学は、初めから相反する二つの触手をもっていた。一つは科学的真理に近づこうとする触手であり、もう一つは無意識にしろ詐欺(さぎ)と握手しようとする触手である。しかし人々は長い間、この2本の触手を区別することができなかった。錬金術の誕生と死滅は、人間の無知と欲望、またその克服の反映であった[6]。
出典
- ^ a b デジタル大辞泉 [1]
- ^ a b 新村 2018, p. 706.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad 山崎 2021, p. 技術.
- ^ a b c d e f g 樋笠 2021, p. テクネー.
- ^ a b c d e f 加藤 2021, p. ギリシア哲学/用語.
- ^ a b c 平田 2021, p. 錬金術.
- ^ 松村 2021, p. 錬金術.
- ^ a b c d 石川晃弘. “日本大百科全書(ニッポニカ) - 技術史観”. Kotobank. 小学館・朝日新聞・VOYAGE GROUP. 2018年11月20日閲覧。
- ^ a b c d e 加藤 1994, p. 106.
- ^ 佐々木力『科学論入門』岩波書店、1996年、20頁。
- ^ 平野千博「「科学技術」の語源と語感 (PDF) 」 『情報管理』第42巻、科学技術振興機構、1999年8月、 doi:10.1241/johokanri.42.371。
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