航空宇宙産業とは? わかりやすく解説

航空宇宙産業

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/20 21:22 UTC 版)

ハンブルク・フィンケンヴェルダー空港英語版エアバス工場の最終組立ライン3にあるエアバスA321
NASAAIM (人工衛星)衛星クリーンルームで組み立てられる

航空宇宙産業(こうくううちゅうさんぎょう、Aerospace Industry)とは、航空機や航空機の部品、ミサイルロケット宇宙船を製造する産業である。この産業には、設計、製造、テスト、販売、整備などの工程がある。その規模が大きければ部分的に関わる企業組織が存在する。本項では、エアロスペース・マニュファクチャー英語: Aerospace manufacturer)についても述べる。

世界における航空宇宙産業

ヨーロッパでは、EADSBAE システムズタレスダッソーサーブレオナルドといった大手の航空宇宙企業がシェアを占める中、その最大のカスタマーは欧州宇宙機関で、多数の国が参加している組織である。ロシアではオブロンプロムと統一航空機製造会社が最大の組織、アメリカ合衆国では国防総省NASAが代表的なカスタマーであり、ボーイングユナイテッド・テクノロジーズロッキード・マーティンなどが主要な企業である。このほかにもブルーオリジンスペースXなど商業有人宇宙飛行を目指すベンチャー企業が設立されている。

それら民間企業の拠点は、アメリカのシアトルセントルイスイギリスランカシャーブリストルカナダモントリオールドイツハンブルクフランストゥールーズブラジルサン・ジョゼ・ドス・カンポスなどがある。

世界市場

大手の航空宇宙企業

2018年には、新しい商用航空機の価値は2,704億ドル、ビジネス航空機は180億ドル、民間ヘリコプターは40億ドルになると予測されている[1]

大手の航空宇宙企業 (10億ドル)
会社 収益 営業利益
2019[2] 2018[3] 2017[4] 2016[5] 2015[6] 2014[7] 2019[2] 2018[3] 2017[4] 2016[5] 2015[6] 2014[7]
エアバス[8] 78.9 75.1 72.3 70.8 68.8 80.6 1.5 5.95 3.70 2.40 4.34 4.50 欧州連合
ボーイング[8] 76.6 101.0 93.4 94.6 96.1 90.8 -1.98 12.00 10.30 4.90 5.18 7.47  アメリカ合衆国
ロッキード・マーティン 59.8 53.8 51.0 47.2 40.5 45.6 8.55 7.33 5.90 5.55 4.71 5.59  アメリカ合衆国
ユナイテッドテクノロジーズ[10] 46.9 36.0 30.9 29.0 33.1 36.2 5.77 3.57 3.83 3.84 3.00 4.57  アメリカ合衆国
ノースロップ・グラマン 33.8 30.1 25.8 24.5 23.5 24.0 3.97 3.78 3.30 3.19 3.08 3.20  アメリカ合衆国
GE・アビエーション 30.6 27.4 26.3 24.7 24.0 6.47 6.64 6.12 5.51 5.00  アメリカ合衆国
レイセオン[10] 27.1 25.3 24.1 23.2 22.8 4.54 3.32 3.24 3.01 3.18  アメリカ合衆国
サフラン 25.2 17.9 16.8 16.6 18.3 3.43 2.58 2.54 1.71 2.74  フランス
ロールス・ロイス・ホールディングス 15.0 12.7 12.0 13.2 14.7 0.44 1.11 0.98 1.77 2.15  イギリス
レオナルド (Finmeccanica) 14.4 12.5 12.8 13.9 17.2 0.59 0.90 1.05 0.94 0.72  イタリア
BAEシステムズ 12.8 13.4 13.4 13.9 13.7 - - - - - -  イギリス

日本における航空宇宙産業

日本における航空宇宙産業は主に国内の総合重機械産業を中心に呼称される場合が多い。特に、三菱重工業川崎重工業SUBARUIHIの4重工、および日本電気三菱電機は自社内に航空宇宙輸送機の開発・製造を行う事業部を保有している。

近年では航空機の機体一部製造にとどまらず、川崎重工業では自衛隊の完成ジェット航空機であるP-1哨戒機C-2輸送機を開発完了・製造されており、三菱重工業ではMitsubishi SpaceJetといった民間航空機を開発完了・製造開始目前という段階になっていることから、鉱山、鉄鋼、造船、自動車、電機、ITと変遷してきた主軸産業で次世代の主軸産業となることは確実視されている。日本国政府も国家の経済力・防衛力に大きく寄与することから専門の法整備や補助金などを配賦するなど育成に強く乗り出している。

日本における航空宇宙産業の主な拠点

以下は、主な企業の航空宇宙事業を行っている拠点。なお、各製作所・事業部下に複数工場がある場合は割愛する。

都道府県 企業名 事業所
東北地方
福島県 IHI 相馬第一工場
相馬第二工場
関東地方
栃木県 SUBARU 宇都宮製作所
東京都 IHI 瑞穂工場
NEC 府中事業場
神奈川県 三菱電機 鎌倉製作所
中部地方
愛知県 三菱重工業 名古屋航空宇宙システム製作所
名古屋誘導推進システム製作所
SUBARU 半田工場
半田西工場
川崎重工業 航空宇宙ディビジョン 名古屋第一工場
航空宇宙ディビジョン 名古屋第二工場
岐阜県 航空宇宙ディビジョン 岐阜工場
近畿地方
兵庫県 川崎重工業 航空エンジンディビジョン 西神工場
航空エンジンディビジョン 明石工場
新明和工業 航空機事業部
中国地方
広島県 三菱重工業 広島製作所
IHI 呉第二工場

関連産業

製造の他、研究や設計のみを行う会社、航空会社などの運航会社、整備や改造を行う会社、航空会社へのサービスを提供する会社など航空機に関わる周辺産業も形成されている。

関連項目

脚注

  1. ^ Lee Ann Shay (2018年1月2日). “Commercial Spending Will Lead MRO Field In 2018”. Aviation Week & Space Technology: Comparing civil, helicopter, business aviation and military MRO forecasts for 2018. http://aviationweek.com/commercial-aviation/commercial-spending-will-lead-mro-field-2018 
  2. ^ a b c Murdo Morrison (2020年9月15日). “Airbus displaces Boeing as aerospace's biggest company”. FlightGlobal. https://www.flightglobal.com/aerospace/airbus-displaces-boeing-as-aerospaces-biggest-company/140026.article 
  3. ^ a b “Top 100 aerospace companies by revenue 2018”. Flight International. (2019年9月3日). https://www.flightglobal.com/globalassets/reports/Top-100-aerospace-companies-by-revenue-2018.pdf 
  4. ^ a b “Top 100 aerospace companies by revenue 2017”. Flight International. (2018年9月3日). https://www.flightglobal.com/asset/24628 
  5. ^ a b “Top 100 aerospace companies grow more profitable”. Flight International. (2017年9月1日). https://www.flightglobal.com/news/articles/analysis-top-100-aerospace-companies-grow-more-prof-440409/ 
  6. ^ a b “Top 100 Special Report”. Flight International. (2016年9月13日). https://www.flightglobal.com/file/?contentId=13060 
  7. ^ a b “Top 100 Aerospace Companies”. Flight International. (15–21 September 2015). https://d3fod5fkpt74ph.cloudfront.net/bef643f18cd3410788f767ce75e3e615/f99aa5ad15a843bb899aa1f24f215e1e.pdf 
  8. ^ a b In 2019, Airbus displaced Boeing as the largest aerospace company by revenue due to the Boeing 737 MAX groundings, with $2 billion operating losses down from $12 billion profits the previous year.[2]
  9. ^ "United Technologies and Raytheon Complete Merger of Equals Transaction". www.rtx.com (Press release) (英語). Raytheon Technologies. 3 April 2020. 2020年4月3日閲覧
  10. ^ a b United Technologies merged with the Raytheon Company in April 2020 to form Raytheon Technologies.[9]

文献

  • ジョン ニューハウス著 航空機産業研究グループ訳 『スポーティーゲーム―国際ビジネス戦争の内幕』學生社 (1988/12) ISBN 978-4311600142
  • John,Newhouse. The Sporty Game: The High-Risk Competitive Business of Making and Selling Commercial Airliners 1982. ISBN 978-0394514475

外部リンク


航空宇宙産業

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/03/11 06:57 UTC 版)

アンテロープ・バレー」の記事における「航空宇宙産業」の解説

パームデール北東部にあるアメリカ空軍プラント42は、ロッキード・マーティンボーイングノースロップ・グラマンおよびBAEシステムズ各社拠点構えている。ここで計画され組立が行われたものとして、スペースシャトルB-2スピリット爆撃機F-117ナイトホーク戦闘機、F-35統合打撃戦闘機および旅客機ロッキード L-1011 トライスターがある。 新しく作られモハーヴェ航空宇宙港もこの地にある。この宇宙港は、スペースシップワン設計しXプライズ受賞した会社スケールド・コンポジッツ運営する基地として有名である。 この施設行われる仕事大半エドワーズ空軍基地NASAヒュー・L・ドライデン飛行研究センターとの協同行われており、X航空機の製作と実機試験から、スペースシャトル運航新し軍用航空機器の製造統合試験までが行われている。

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