自動車競技
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レース参加者の大分類
自動車レース(競技)への参加者は、参加形態という観点からは、大まかに言うと、ワークス/プライベーター/セミワークスの3つに分類される。またスポンサーも、広い意味での自動車レース参加者である(後述)。
ワークス・チーム
トヨタや日産などの、市販自動車メーカー(マニュファクチャラー)が自社の資金・人材・技術を使用して組織した直系チーム。タイヤなどの部品メーカーの場合も含まれることがある。「ファクトリー・チーム」ともいう。
長所としては豊富な資金力と自動車製造企業というあらゆる設備が整った母体を背景に自動車競技に参入できるため、一般的に強豪チームとして成果を上げやすい。その反面、景気や企業の業績、世界情勢などコース外での変化の影響を受けやすい。株主や社内の反対派の反発を受け、ワークスが撤退を余儀なくされるのは珍しい話ではない。
ワークスの参戦は多くの自動車ファン・一般人の耳目を集めやすいため、運営はワークスの参入を促すような規則を設定する傾向にある。
プライベーター
ワークスではないレーシングチームや、個人参戦者全般を指す。
長所としては、個人やチームの運営能力やノウハウだけで競技を行うことができること、純粋にレースへの情熱で参戦を継続できるなど、さまざまな制約から解き放たれている点である。一方で自動車製造のノウハウや資金が少ない場合も多く、トップカテゴリで勝利するまでにはワークス以上の投資が必要となる。レース運営側はプライベーター向けに低コストに参戦できる規定を導入する場合があるが、そちらの規則が戦闘力や販促の都合上有利と見たワークスチームが潤沢な資金力で利用してしまい、議論を呼ぶ場合もある[38]。
特に大規模なカテゴリになればなるほどプライベーターはワークスよりも高いノウハウと資金力が必要とされ、潤沢な資金力を作り出すことができるなんらかの「母体」となる事業や企業が必要とされる。母体となる企業はチューニングショップや自動車販売店に始まり、工業製品メーカー、アミューズメント、飲料メーカー、衣服メーカー、雑誌出版社…など様々で、経営者が自らもレーサーとして参戦するほどの自動車好きの場合もあれば、全くレースに興味は無いが自社の宣伝のためだけに利用しようとする場合もある。
長年レースを経験している老舗のプライベーターは強大な力を持っているため、ワークスをもってしても打ち破るのは困難である。そうしたプライベーターは、自動車メーカーからの依頼でマシン開発・チーム運営の協力やOEM供給、さらにはワークスの看板を背負ってのレース活動を行う場合もある(後述)。
最初はプライベーターであったが、後に車両開発ノウハウを活かして市販車メーカーとなり、ワークスへ変貌を遂げたチームもある。フェラーリやマクラーレンなどがその代表的な例である。またフォードやホンダのように、創業者が個人参戦者としての経歴を持っている市販車ブランドも珍しくない。
ジェントルマンドライバー
個人参加者の中でも、自ら車両を所有しオーナードライバーとして参戦するアマチュア、特に別途本業(多くは実業家)を持ち比較的高年齢(概ね30代後半より上)のドライバーを、日本では「ジェントルマンドライバー」と呼ぶ[39]。なお「ジェントルマンドライバー」は和製英語である(後述)。
2010年代以降、レース参加者(エントラント)確保のため、ジェントルマンドライバーに対する優遇措置や特別な表彰を用意しているシリーズ(全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権、スーパー耐久、Formula Beatなど)や、そもそもジェントルマンドライバーを主な対象とするシリーズ(インタープロトシリーズ、スーパーカーレースシリーズ、GTワールドチャレンジ・アジアなど)も増えている。また、谷口行規/木村武史/久保田克昭/小泉洋史など、ジェントルマンドライバー出身ながらプロも参戦する世界選手権シリーズへステップアップする例も複数現れている。
欧米でも、FIA 世界耐久選手権(WEC)の下位カテゴリ(LMGTE Am、LMP2など)や、グループGT3規定が導入されているレースの多く(GTワールドチャレンジ・ヨーロッパなど)で、同様のアマチュアドライバーが参戦する例が多く見られる。しかし特定の呼称は無く、国際自動車連盟(FIA)等によるドライバーのカテゴリー分けに従って「ブロンズドライバー」等と呼ばれることが多い[40]。
セミワークス
市販車メーカーが支援するプライベーターのこと。市販車メーカーがマシンや所属ドライバー、技術スタッフ、資金などをプライベーターに送りこんで支援する。
市販車メーカー側は純粋なワークス体制と比べて初期投資・継続参戦コストが大幅に軽減でき、プライベーター側も自動車製造会社からのさまざまな恩恵によって運営資金を軽減しつつ高い戦闘力を得ることが可能となる。また運営が「ワークスチームの参戦禁止」を謳うカテゴリでも、「プライベーターを支援」という体裁を主張してかいくぐることが多くの場合可能である[41]。
総じてコストパフォーマンスに優れているため、純粋なワークス体制よりも多く見られる参戦形態である。
短所としては、両者の運営方針の違いや温度差で制限が発生する点である。それぞれにノウハウや主義などの要素が交錯するために、効果も副作用もワークスとプライベーターの中間的な位置付けになってしまう傾向がある。市販車メーカーが本腰を入れる場合はそのデメリットを回避するため、多額の資金と引き換えに完全にプライベーター側を支配する形で「ワークス化」することもある。
注釈
出典
- ^ “モータースポーツ”. スポーツ辞典 S-word. (2009年11月5日) 2010年9月24日閲覧。
- ^ 折口 1970, p. 20.
- ^ a b c 折口 1970, p. 22.
- ^ アメデー・ボレーと息子のアメデー2世およびレオンは、1873年以来長らく蒸気自動車を開発し続けていた。このレースでラ・ヌーヴェルは鈍足ながら十分な信頼性を示し、途中リタイアしたドライバーたちを拾ってルーアンまで完走している。
- ^ 宇宙物理学者のジョルジュ・ルメートルではない。
- ^ “I Paris-Rouen Trial”. Racing-Database.com 2010年9月24日閲覧。
- ^ 折口 1970, p. 23.
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- ^ a b . History.com. http://www.history.com/this-day-in-history/frank-duryea-wins-first-us-horseless-carriage-race+2011年10月22日閲覧。
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- ^ “自動車黎明期の日本の道路事情(1)「日本を縦断した冒険野郎 東海道~北陸道」(上)”. トヨタ博物館. (2002年6月) 2012年11月13日閲覧。
- ^ “The Greatest Race – 1908 New York to Paris (Page #3)”. sportscardigest.com. (2011年9月28日) 2012年11月13日閲覧。
- ^ 折口 1970, p. 49.
- ^ “Renault De Louis Renault a la estatización”. Test del ayer 2010年9月24日閲覧。
- ^ “Marcel Renault”. Find a Grave 2010年9月24日閲覧。
- ^ たとえば電気回路の「回路」もサーキットであるが、電気の場合、電源から出て電源に戻るように接続されたものが「回路」である。
- ^ “PROVIDENCE HORSELESS CARRIAGE RACE”. Machine-History.Com 2013年3月2日閲覧。
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- ^ 追突防止用の赤色リアランプ(リアフォグランプ、バックフォグランプ)は装備しており、ウェットレースでは点灯が義務付けられる。
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- ^ “競技の紹介 - ダートトライアル”. 東洋大学自動車部 2011年12月28日閲覧。
- ^ 1990年代ル・マン24時間レースのオープントップや、ダカール・ラリーの2WD規定など。近年はグループGT3もこれに近い
- ^ 「ジェントルマンドライバー=道楽」ではない。CARGUY木村武史が“楽しくない”レースに全力注ぐ理由 - motorsport.com 2021年10月27日
- ^ The gentleman drivers of sportscar racing, and why gradings matter - AUTOSPORT(UK)・2021年8月21日
- ^ 条文の中でワークスとプライベーターを明確に定義し、排除するのが困難なためである
- ^ それ以前は、マシンの横側に車番が書かれているだけのシンプルなものであった。
- ^ 中にはテストドライバーとしてチームに籍を置くだけなのにスポンサー資金を要求する場合もある。
- ^ a b “特集:ペイドライバーの復活”. ESPN F1. (2011年1月28日) 2011年12月28日閲覧。
- ^ a b “ヤルノ・トゥルーリ、ペイドライバーを非難”. ESPN F1. (2011年12月28日) 2011年12月28日閲覧。
- ^ “ルーベンス・バリチェロ 「金がすべてを支配している」”. F1 Gate.com. (2012年2月18日) 2012年2月18日閲覧。
- ^ 当時はスポンサーを行う事は合法であり、車体のロゴ、ヘルメット、レーシングスーツ、サーキット看板でロゴや銘柄を連想させるような図柄は随所に存在した。
- ^ “フェラーリ、バーコードにサブリミナル広告の疑い”. F1 Gate.com. (2010年4月29日) 2010年9月25日閲覧。
- ^ “安売り・飲み放題など、アルコール規制指針を採択 WHO”. AFP. (2010年5月21日) 2010年9月25日閲覧。
- ^ ここでは「切り札」の意味
- ^ ただし現代ではデータロガーの精度・情報量やデータ解析の技術が格段に向上しているため、簡単にはごまかせない
- ^ a b 国や地域による
- ^ 2009年を除く。また2020・2021年はカレンダー入りしているが、2020年9月時点で未開催
- ^ 現在はパリを使用しないルートであるが現在でも「パリダカ」と呼ばれることがある。
- ^ 自動車競技の楽しみ. 論創社. (2002-2). ISBN 978-4846002213
- ^ “Chamiers Histoire et histoires”. Mairie de Coulounieix-Chamiers. (1988年) 2011年2月7日閲覧。
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