自動車競技
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コースによる分類
自動車レース(競技)は、コースの種類で分類する場合、大きく分けて3つに分類できる。(なお例外はある)
クローズド・コース
レース専用のサーキット(レース場)や、公道の一部を閉鎖して臨時に仕立て上げたレースコースなどで行うもの。
舗装されたクローズドコースにて同時に複数台がスタートし順位を競う。日本では四輪競技は単に「レース」と呼ぶことが多い。(二輪競技はロードレースを呼ぶことが多い)。レースのスタート方式は1周のフォーメーションラップ後に一旦停車を行った状態からシグナルやレース旗によって一斉にスタートを行う「スタンディングスタート方式」と、フォーメーションラップからそのまま車両が加速した状態でスタートを行う「ローリングスタート方式」がある[22]。
その他にも過去にはル・マン24時間レースで採用されていた「ル・マン方式」というスタート方法もある。ル・マン方式とは車両までドライバーが歩く(駆け寄り)そして速く車両を動かした順にレースをスタートする方式であるが、ジャッキー・イクスがその危険性について苦言を呈し続けた結果、現在のル・マンでは廃止されている。このル・マン方式のスタート方法を踏襲しているのが二輪ロードレースのスタート方式である。スタートの方法は現在ではクラッチスタート方式を採用し、車両まで向かったライダーがセルスターターおよび、キックによるスタートを行って発進する。以前は車両のエンジンがかかっていない状態から各ライダーが押しながらエンジンを起動させる押しがけスタート方式であったが、押しがけの危険性を憂慮して1987年からクラッチスタート方式に切り替わった[23][24]。
ラリー / ラリーレイド
ラリーとラリーレイドは似て非なる競技であり、「本来はタイムを競う競技ではない」ということが念頭に置かれるためにレースとも厳密には違う。スタート方式に関してはラリーもラリーレイドも同じであり、予め主催者側によって公示されたもの及び、大会ランキングなどによってスタート順が決められる。SSのスタート順は直前のタイムコントロール(TCと呼ぶ)を通過順に1分間隔で行われる[25]。
ラリーレイドでは先述のSSとほぼ同じ役割を担う区間であるコンペティションセクション(CSと呼ぶ)が設けられている。
4輪競技におけるラリー・ラリーレイドにおける最大の特徴は車両運転手であるドライバーと、進路案内や走行速度指示などの補佐を行う「コ・ドライバー」という2名が車両に搭乗して行う点である。ラリードライバーに求められる運転技術はレーシングドライバーに求められる技術と異なる点が多く、競技の特性上、悪路に対する走破技術はもとよりレースにおける「フリー走行」のような練習走行が基本的に存在しないためにドライバー自身の運転感覚、視界からの情報、あるいはコ・ドライバーからのナビゲートによる聴覚からの情報、そして出走順によっては先行車両により非舗装路面が刻々と変化してゆく点もあり、これらの総合的な瞬時の判断から高い臨機応変力が求められる。ドライバーとコ・ドライバーの信頼関係も非常に重要といわれ、1つの車両で行うチームプレイとも言える。
二輪競技などで行われるラリーレイドは1人で砂漠を走破する技術や度胸、独自の感性や機械的トラブルや人的トラブルに巻き込まれない幸運も求められる。したがって、二輪ラリーレイドは最も危険な自動車競技の1つとして語られることも多く、その根底にはほぼ毎年のように死者を出していることが挙げられる[26]。
トライアル競技(タイムトライアル)
決められた(短い)区間をいかに速く正確にゴールするかを競う。本来はトライアルとは「タイムトライアル」(英: Time Trial) つまりは時間への挑戦を意味し古来はダービー、ボート、自転車競技におけるレースを指したことから、これが派生して欧米では二輪自動車における競技もタイムトライアルと呼称した。その後、「トライアル = Trial」だけで試練・試みという意味を持つことから二輪自動車による複雑な地形(人工的に作られる場合もある)を、いかに足をつかずに走破するかを競う競技をトライアルと呼ぶ。日本では「トライアル競技」と呼ばれる。代表的な競技ではスラローム競技であるジムカーナや、加速競争であるドラッグレースなどがこれにあたる。ダートトライアルという呼称は和製英語であり、欧米ではダートトラックと呼ぶ。したがってその略称である「ダートラ」のほうが本来は呼称として正確である。
その他
以上の分類に属しないものとして、ドリフト走行による車両姿勢の美しさを競うドリフト競技、一定の速さを保った上で燃費の優劣を競う燃費競争(エコラン)などがある。学生フォーミュラ(フォーミュラSAE、全日本学生フォーミュラ大会など)では、車の速さ以外に設計そのものやプレゼンテーションも評価対象とされ、それらの総合点で順位を決定する。またそもそも動力を持たないカートで争われるソープボックスレースでは、車の見た目の派手さが競技の重要な要素の一つとなっている。
注釈
出典
- ^ “モータースポーツ”. スポーツ辞典 S-word. (2009年11月5日) 2010年9月24日閲覧。
- ^ 折口 1970, p. 20.
- ^ a b c 折口 1970, p. 22.
- ^ アメデー・ボレーと息子のアメデー2世およびレオンは、1873年以来長らく蒸気自動車を開発し続けていた。このレースでラ・ヌーヴェルは鈍足ながら十分な信頼性を示し、途中リタイアしたドライバーたちを拾ってルーアンまで完走している。
- ^ 宇宙物理学者のジョルジュ・ルメートルではない。
- ^ “I Paris-Rouen Trial”. Racing-Database.com 2010年9月24日閲覧。
- ^ 折口 1970, p. 23.
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- ^ a b . History.com. http://www.history.com/this-day-in-history/frank-duryea-wins-first-us-horseless-carriage-race+2011年10月22日閲覧。
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- ^ “自動車黎明期の日本の道路事情(1)「日本を縦断した冒険野郎 東海道~北陸道」(上)”. トヨタ博物館. (2002年6月) 2012年11月13日閲覧。
- ^ “The Greatest Race – 1908 New York to Paris (Page #3)”. sportscardigest.com. (2011年9月28日) 2012年11月13日閲覧。
- ^ 折口 1970, p. 49.
- ^ “Renault De Louis Renault a la estatización”. Test del ayer 2010年9月24日閲覧。
- ^ “Marcel Renault”. Find a Grave 2010年9月24日閲覧。
- ^ たとえば電気回路の「回路」もサーキットであるが、電気の場合、電源から出て電源に戻るように接続されたものが「回路」である。
- ^ “PROVIDENCE HORSELESS CARRIAGE RACE”. Machine-History.Com 2013年3月2日閲覧。
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- ^ 追突防止用の赤色リアランプ(リアフォグランプ、バックフォグランプ)は装備しており、ウェットレースでは点灯が義務付けられる。
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- ^ “競技の紹介 - ダートトライアル”. 東洋大学自動車部 2011年12月28日閲覧。
- ^ 1990年代ル・マン24時間レースのオープントップや、ダカール・ラリーの2WD規定など。近年はグループGT3もこれに近い
- ^ 「ジェントルマンドライバー=道楽」ではない。CARGUY木村武史が“楽しくない”レースに全力注ぐ理由 - motorsport.com 2021年10月27日
- ^ The gentleman drivers of sportscar racing, and why gradings matter - AUTOSPORT(UK)・2021年8月21日
- ^ 条文の中でワークスとプライベーターを明確に定義し、排除するのが困難なためである
- ^ それ以前は、マシンの横側に車番が書かれているだけのシンプルなものであった。
- ^ 中にはテストドライバーとしてチームに籍を置くだけなのにスポンサー資金を要求する場合もある。
- ^ a b “特集:ペイドライバーの復活”. ESPN F1. (2011年1月28日) 2011年12月28日閲覧。
- ^ a b “ヤルノ・トゥルーリ、ペイドライバーを非難”. ESPN F1. (2011年12月28日) 2011年12月28日閲覧。
- ^ “ルーベンス・バリチェロ 「金がすべてを支配している」”. F1 Gate.com. (2012年2月18日) 2012年2月18日閲覧。
- ^ 当時はスポンサーを行う事は合法であり、車体のロゴ、ヘルメット、レーシングスーツ、サーキット看板でロゴや銘柄を連想させるような図柄は随所に存在した。
- ^ “フェラーリ、バーコードにサブリミナル広告の疑い”. F1 Gate.com. (2010年4月29日) 2010年9月25日閲覧。
- ^ “安売り・飲み放題など、アルコール規制指針を採択 WHO”. AFP. (2010年5月21日) 2010年9月25日閲覧。
- ^ ここでは「切り札」の意味
- ^ ただし現代ではデータロガーの精度・情報量やデータ解析の技術が格段に向上しているため、簡単にはごまかせない
- ^ a b 国や地域による
- ^ 2009年を除く。また2020・2021年はカレンダー入りしているが、2020年9月時点で未開催
- ^ 現在はパリを使用しないルートであるが現在でも「パリダカ」と呼ばれることがある。
- ^ 自動車競技の楽しみ. 論創社. (2002-2). ISBN 978-4846002213
- ^ “Chamiers Histoire et histoires”. Mairie de Coulounieix-Chamiers. (1988年) 2011年2月7日閲覧。
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