木材 用途

木材

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 21:07 UTC 版)

用途

木材はその入手の容易さから、旧石器時代から住居道具の材料および燃料として利用されてきた。また、製紙原料としても古くから用いられている。文明の滅亡には、これら木材資源の枯渇が一因となったものもある[43]

燃料
薪としての木材利用
人類は古くから木材木炭などとしたエネルギー資源として利用し、50万年前の北京原人居住跡からも消し炭が見つかっている[44]青銅など金属精錬、暖房調理でも広く用いられた木材は、しかし12世紀頃のヨーロッパで始まった人口増加を支えるには不足し石炭へ、そして近世以後さらに石油への転換が本格化した[45]。戦時中のモノ不足時には木炭バスなど移動用エネルギーにも用いられたが、石化資源や電力などへの転換は止まず、木材の燃料需要は減少の一途を辿っている[44]。近年、地球環境問題の観点から木材のエネルギー利用が再評価されている[2]。木材を加工した際に出た削りカスなどを固めて、木質ペレットのような燃料にすることもある。ガス化は炉内で分子を分解し、水素ガス、一酸化炭素ガス、メタンガス炭化水素を得る[3]。液化は酸素が無い状態で熱分解を施し、1トンの木材から5500キロカロリー相当のが得られる[3]
家屋家具
木材の性質である吸湿性、吸音性、断熱性、加工の容易さから使われる。メソポタミアエジプトなど木材資源が少ないところでは日干し煉瓦石材建築物が主流だったが、家具用途では木材が使われた[46]。日本でも材がよく箪笥などに用いられた。これもやはり桐が燃えにくく、吸湿性に優れているという性質を持っているからである[47]。桐箪笥の外側のみ焼け、中側は無事だった例すらある[47][48]
店舗や住宅の内部を見渡した時に、木材やそれに類似した部分が全体に占める割合を木視率と呼ぶ。建築・飲食などの業界では「木視率が4割を超えると、人は安らぎや落ち着きを感じる」という経験則がある[49]。これを意識して、天井家具に木材あるいは木目調をあしらった他の内装材・壁紙を使うことも多い。
道具
武器として弓矢の柄、棍棒など。手触り、肌触りがよく、暖かみがある点から、積み木独楽こけしなどの玩具では幼児向けのものに多い。日常の道具ではその他種々の道具に使われ、日本では堅いが好んで使われた。そのほかにブラシペンなどの等がある。
楽器
ヴァイオリンへの木材使用
木目方向において木材の比ヤング率は高く内部摩擦は低く、の早い立ち上がりと安定した振動を得ることができる[50]。また木材は、適度な粘性を持っており、かつ表面反発係数は金属よりも低いため、瞬間的な外力による加振、及び継続的な外力による励振のいずれによって振動させた場合にも、発生した音はいわゆる金属音とは異なる高周波成分の少ない“柔らかな”になる。加えて木材は力学的な異方性を有する。また、樹種・生育環境等により力学的特性にばらつきがある。そのため、同一の形状であっても、木取り(板取り)の仕方や材の選定によって固有振動数及び音の減衰率が様々に変えることができ、多様な音色の楽器を作ることができる。このように他の材料に類を見ないこれらの特徴を持つため、現在も広く楽器用材として利用されている。
彫刻素材
木彫りやチェーンソーアートを施す素材など。
船舶
古代エジプトピラミッドから木造船が発見されるなど、船舶材料としての歴史は古い。黒船は鉄甲木造艦。日清戦争でも木造艦は多かった。この用途では、吸水して膨張する性質が水漏れを防ぐ木材の特性が重視され、チーク他が使われた。マストキールは長大であるため、良材を選ぶ必要がある。
航空機
デ・ハビランド モスキート試作機
木製の高性能軍用機としては第二次世界大戦で活躍したデハビランド・モスキートが有名である。また、現在でも世界最大の飛行艇として知られるスプルース・グースも主構造に木材が使用されている[53]。軍用機以外にもグライダーにも木材は使用されており、木製モノコック構造のKa6シリーズが有名である。鋼管羽布張りの機体でも主翼の構造部は木材である。最近ではFRPモノコックの機体が主流になったが、機体の主翼桁は木材が使用されている。
飼料
などの家畜は、木材に含まれるリグニンを消化する酵素を持たない。そこでチップ状木材を高温の水蒸気で蒸し、リグニンを放出させることで繊維化を促し、飼料として利用できるように加工する研究が進んでいる[3]
染料
木材の色素を抽出して染料として用いることは昔から行われている。赤系統のスオウブラジルウッドなど、黄色のジオウ・ハリグワなど、黒染め用ログウッドなどが知られる[20]
紙・化学工業
紙の原料としての木材利用は、1719年にフランスルネ・レオミュールスズメバチの巣づくりからヒントを得て、木材を原料とする製紙の概念を発案したことに始まる。1844年にドイツで砕木機が開発され、木材からパルプが製造される技術が広がった[54]。木材の工業利用は、セルロースを中心に木材化学分野にて進められている。
武器
1960年代から1970年代に盛んになった学生運動では武器として、または周囲を威圧するための道具として使用された[55]

注釈

  1. ^ 岡野 p.14では11-17%
  2. ^ 文献『木材のおはなし』では比重と記されている。筆者の岡部は、木材の体積を示す単位が立米(立方メートル)、(ぎょく)、BM(ボードメジャー)、cf(立方フィート)などまちまちであるため、あえて比重と表示し単位 (kg/m3) を併記して本書を執筆した。しかし1994年の「JIS Z2101 木材の試験法」[39]改訂にて、表示がすべて「比重」から「密度」に書き改められたことを機に、同書にて「読者諸氏には“比重”を“密度” (g/cm3) に読み替えていただきたい」(p.170) と注釈を加えている。本項表記もそれに倣う。

出典

  1. ^ a b 「【木材】」『広辞苑』岩波書店、1999年、第五版第一刷、2639頁。4-00-080113-9。
  2. ^ a b 木のすべてを愛そう -木材の有効利用- (PDF)” (日本語). 北見工業大学地域共同研究センター. 2010年4月3日閲覧。
  3. ^ a b c d 岡野 p.147-169 6.エピローグ-その将来を展望する-
  4. ^ 「【材木】」『広辞苑』岩波書店、1999年、第五版第一刷、1044頁。4-00-080113-9。
  5. ^ メヒティル・メルツ『日本の木と伝統木工芸』海青社、2016年、67頁。
  6. ^ a b c d e f g h 岡野 p.73-102 3.構造の秘密
  7. ^ 木林学ことはじめ (34) 木を語る情報源” (日本語). 京都新聞. 2010年4月3日閲覧。
  8. ^ 授業科目名:木材物理学、担当教官:澤辺攻(応用生物学科)” (日本語). 岩手大学農学部. 2010年4月3日閲覧。
  9. ^ 木のはてな? Q:木材の特徴を教えてください” (日本語). 財団法人日本木材加工技術協会関西支部. 2010年4月3日閲覧。
  10. ^ 第14回公開講演「魅力あるキノコの世界」生命環境学部:森永力 (PDF)” (日本語). 県立広島大学. 2010年4月3日閲覧。
  11. ^ 森林化学 前期 教授:志水一允 (PDF)” (日本語). 日本大学生物資源科学部. 2010年4月3日閲覧。
  12. ^ 農学部第7類:生物材料住科学専修・生物材料開発化学専修 生物材料科学専攻長 空閑重則” (日本語). 東京大学教養学部 進学情報センター. 2010年4月3日閲覧。
  13. ^ 木のはてな? Q:セルロース、リグニン、ヘミセルロースってなんですか?” (日本語). 財団法人日本木材加工技術協会関西支部. 2010年4月3日閲覧。
  14. ^ チロース” (日本語). 建築情報.net. 2010年4月3日閲覧。
  15. ^ 木のはてな? Q:ヒノキなどの木材は、伐採後200-300年後も強度を増が増す…といわれています。どんな要因が働いてそうなるのですか?” (日本語). 財団法人日本木材加工技術協会関西支部. 2010年4月3日閲覧。
  16. ^ a b 岡野 p.1-10 1.プロローグ
  17. ^ 慣習的には夏目という呼び方のほうが一般的。なお春目や秋目などとは言わない。
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  20. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 岡野 p.11-72 2.性質を探る
  21. ^ a b c d e f g 岡野 p.103-126 4.加工する
  22. ^ 木のはてな? Q:最近新しい乾燥法が開発されていると聞きますが、どんな方法なのでしょうか?” (日本語). 財団法人日本木材加工技術協会関西支部. 2010年4月3日閲覧。
  23. ^ 木林学ことはじめ (11) 雨が必要な木” (日本語). 京都新聞. 2010年4月3日閲覧。
  24. ^ 木質材料の種類と特徴 建材試験情報 2016年6月号”. 一般財団法人建材試験センター( http://www.jtccm.or.jp/ ). 2016年11月8日閲覧。
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  29. ^ 板目板” (日本語). 宇都宮大学. 2010年4月3日閲覧。
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  32. ^ 樹種別分類” (日本語). 日本合板工業組合連合会. 2010年4月3日閲覧。
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  39. ^ JIS Z 2101日本産業標準調査会経済産業省
  40. ^ a b c d e f g h i 岡野 p.127-145 5.保存する
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  42. ^ News Letter No.15” (日本語). 多摩六都科学館. 2010年4月3日閲覧。
  43. ^ 古代文明と環境” (日本語). 佐賀大学地域貢献事業 新教材作成プロジェクト. 2010年4月3日閲覧。
  44. ^ a b 菊池浩貴. “akio/2008/樹芸/木炭について” (日本語). 東京大学ECCS. 2010年4月3日閲覧。
  45. ^ 門脇重道. “歴史から学ぶ地球環境問題” (日本語). 徳山大学. 2010年4月3日閲覧。
  46. ^ 西洋建築史第1回 中島智章 (PDF)” (日本語). 工学院大学. 2010年4月3日閲覧。
  47. ^ a b Part15:桐の箪笥と桐の下駄 日本木造住宅産業協会 2011年10月7日閲覧
  48. ^ 桐箪笥はなぜ良いか 加茂箪笥協同組合 2011年10月7日閲覧
  49. ^ 高井尚之『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(プレジデント社)、臼井興胤コメダ社長インタビュー『APPLE TOWN』2017年7月号、p.58
  50. ^ a b c 小野晃明. “楽器用木材の音響と物性の秘密の関係 (PDF)” (日本語). 岐阜大学工学部. 2010年4月3日閲覧。
  51. ^ ファゴットのできるまで YAMAHA楽器解体全書 2011年10月7日閲覧
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  53. ^ 米国オレゴン州教育旅行ガイド p-9 2011年10月27日閲覧
  54. ^ 原啓志『紙のおはなし』日本規格協会、1996年(初版1992年)、第一版第三刷、31-32頁。4-542-90105-X。
  55. ^ 満員ホームでデモ 妊婦も群衆に踏まれる『朝日新聞』1969年(昭和44年)11月17日朝刊 12版 15面
  56. ^ ウッドショック収まらず…「住宅高騰×工期遅れ」のWパンチは“これから”が本番かもしれない” (2021年11月2日). 2021年11月29日閲覧。

脚注2

  1. ^ 矢沢亀吉1950、蕪木自輔1956/岡野 p.15
  2. ^ 理科年表など/岡野 p.38
  3. ^ F.Kollmann, 1951 /岡野 p.41






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