ダイズ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 07:51 UTC 版)
タイプ
- 用途別
- 蛋白大豆=食用
- 油大豆=油用
- 枝豆用
主な品種・ブランド
- 黒豆
- 赤豆
- 大鉄砲大豆
- くろさき茶豆
- だだちゃ豆
- 青入道(青大豆)
- 雁食豆
- ミヤギシロメ
- 大白(おおじろ)
- 音更大袖
- フクユタカ - 日本のシェア第1位の大豆品種。主に豆腐用。
- エンレイ - 日本のシェア第2位の大豆品種。主に豆腐用。
- 納豆小粒・一関在来・遠野在来・地塚・小娘・生娘 - 納豆専用の小粒品種[53]。
- 小糸在来
- 津久井在来大豆
さまざまな大豆加工食品
現在日本でよく知られている大豆加工食品には以下のようなものがある。
- 大豆の原形をとどめるもの
- 乾燥大豆 - 大豆を保存する際の基本形であり、数時間以上水にもどしてから調理に用いる。また節分時のようにそのまま「炒り豆」にすることも。
- 煮豆 - 味をつけずに煮た「水煮」は調理に用いられる。保存のきく缶詰やレトルトパックに個装されて市販もされている。枝豆も参照。
- 甘納豆
- 大豆を粉砕したり搾ったりしたもの
- 大豆油
- きな粉
- ずんだ - 未成熟の青い大豆を茹でてから粉砕し、砂糖または塩を加え餡仕立てにしたもの
- 打豆(かち豆)- 大豆を粗く粉砕して乾燥させたもの。さまざまな調理に用いる。
- 呉 - 水煮した大豆を摩砕した状態のもの(豆乳とおからに分離する前段階のもの)
- 大豆ミート - 大豆を食肉(ミート)のような食感に加工した食材。ハンバーグや唐揚げなどに使われる[54]。
- ソイペーパー - 加熱後に潰して海苔のように薄く加工した食材
- 大豆を発酵させた加工食品
(ダイズの若芽)モヤシ | ||||
(未成熟のもの)枝豆 | ||||
(乾燥)乾燥大豆 | ||||
(粉砕せず加熱) | (炒る)炒り豆 | (製粉)きな粉 | ||
(煮る)煮豆 | ||||
(甘煮)甘納豆 | ||||
(粉砕・乾燥) | 打ち豆 | |||
(圧搾・抽出) | 大豆油 | |||
脱脂加工大豆 | (発酵)醤油、味噌 | |||
(水とともに摩砕)呉 | (圧搾した液体)豆乳 | (加熱で生じた皮膜)湯葉 | ||
(にがりで凝固)豆腐 | (揚げる) | 油揚げ | ||
生揚げ、厚揚げ | ||||
がんもどき | ||||
揚げ出し豆腐 | ||||
(凍結・乾燥)高野豆腐 | ||||
(発酵)豆腐餻、腐乳、臭豆腐 | ||||
(脱水)豆腐干 | ||||
(葛粉で凝固)ごどうふ | ||||
(発酵)豆汁 | ||||
(圧搾した残り)おから | ||||
(発酵) | 醤油 | |||
もろみ | ||||
ケチャップマニス | ||||
味噌 | ||||
納豆 | ||||
テンペ |
健康への影響
ダイズは大豆オリゴ糖を含み整腸作用がある。大豆オリゴ糖を関与成分とした特定保健用食品が許可されている[55]。
大豆をよく食べる女性グループで脳梗塞・心筋梗塞のリスクが低下した[56]。疫学調査では、大豆の摂取は肥満および閉経後女性で糖尿病発症のリスクが低下するものの、全体としては糖尿病発症との関連なしとされた[57]。
かつて、デザイナーフーズ計画のピラミッドの1群に属し、ショウガと共に、癌予防効果のある食材の第3位として位置づけられていた[58]。2006年3月27日、アメリカ合衆国の健康専門月刊誌『ヘルス』による世界の5大健康食品が発表され、スペインのオリーブ油、日本の大豆、ギリシャのヨーグルト、インドのダール(豆料理)、大韓民国のキムチの5品目が選出された。
順天堂大学の研究によれば、納豆の摂食頻度と月経状態・月経随伴症状は有意の関係がみられ、摂食頻度の増加は症状を軽減させている可能性があるとしている[59]。
雄の2型糖尿病マウスに大豆サポニンAグループと大豆サポニンBグループを別々に投与したところ大豆サポニンBグループに血糖値上昇抑制作用は認められたが大豆サポニンAグループにはその作用は認められなかった[60]。
発酵性大豆食品の摂取量が多いほど総死亡リスクが低いとの指摘がある[61]。
アレルギー
大豆はアレルゲンの1つであり、日本のアレルギー原因食物の全年齢を対象とした調査分析では、大豆の割合は2008年には全体の1.5%で11位[62]、2017年の1.6%で10位となっている[63][64][注 2]。特定原材料に準ずるアレルゲンとされ、原材料表示に可能な限り表示するよう努めることとなっている[65]。アナフィラキシーショックを起こす可能性があるため、アトピーや喘息などアレルギー素因のある者は注意が必要である[66][67]。
イソフラボン
大豆イソフラボンとは、大豆に含まれるゲニステイン、ダイゼイン、グリシテインなどのイソフラボンの総称で、弱い女性ホルモン作用を示すことから骨粗鬆症や更年期障害の軽減が期待できる[68][69][70]。
イソフラボンはヒトに対する悪影響も懸念されており(詳しくはイソフラボンを参照)、内閣府食品安全委員会は、食品とサプリメントを合わせた一日摂取許容量を、一日あたり70 - 75mgに設定している[71]。なお日本人の食品由来の大豆イソフラボン摂取量は15 - 22mg、多い人でも40 - 45mg程度である。
乳がんの抑制として大豆麹が注目されている。乳がんの原因としてエストロゲン過多がある。女性ホルモンのエストロゲンは多すぎるとDNAを損傷させ癌化の原因となる変異原性となるが、それを抑制する抗変異原性が麹や大豆、特に大豆麹の発酵食品にあることがわかった。乳がん発生率は西洋諸国よりも東洋諸国のほうが低い、これは大豆の摂取量が関係している。東洋人や菜食主義者など大豆を多く食べる人々は尿中のエストロゲンの排出量が多い。大豆イソフラボノイド化合物がエストロゲンと似た構造を有するために同様の生理作用をもたらすためだと考えられる。しかし、大豆製品の中でも作用に違いがあり、非発酵大豆や、発酵大豆でも納豆や醤油は抗変異原性が低く、味噌やテンペの抗変異原性が高い。これは麹が生産するβ-グルコシターゼの活性により、イソフラボンの配糖体がアグリコンに変化することが関係していると考えられる。その効果が大豆麹の味噌では効果が強く、中でもベータグルコシターゼの活性が強い麹菌は「アグリコン」として流通している。一方で発酵大豆でも納豆ではβ-グルコシターゼの作用が弱く、醤油では変化したアグリコンがさらに変化してしまい抗変異原性が低くなると考えられる[72]。
イソフラボン摂取が多い対象者では、認知機能障害のリスクが高かった。一方で、大豆製品の摂取量、豆腐、みそ、納豆、発酵大豆食品の摂取量は、認知機能障害との統計学的有意な関連は認められなかった[73]。さらに、大豆の腸内細菌の代謝物であるエクオールに認知症リスクを低下させる可能性が報告されている[74]。
微量タンパク質
生の大豆には微量含まれるタンパク質がいくつか存在する。その1つにトリプシン・インヒビターがあり、生の大豆で活性がある。生の大豆を飼料としてラットに大量摂取させると成長阻害や膵臓肥大が起こることが報告されている[75]。この膵臓肥大は、腸内で阻害されるトリプシンを補うための膵臓の機能亢進の結果として生じると考えられる[76]。生の大豆粉はラットの膵臓癌と相関するという報告があるが[77]、加熱調理済みの大豆粉の発ガン性は認められていない[78][79]。ラットに与えられている大豆の量は、人間が通常摂食する量に比べてはるかに大きく[80]、また人間は生で大豆を食べず、調理することで微量なタンパク質の活性は極めて小さくなる。別の研究において大豆トリプシンインヒビターをラットとマウスに与えると、短期間(28日間)の実験において膵臓肥大を起こしたが、長期間(95週間)での実験では、マウスでは病変は観察されず、ラットでは膵臓病理が観察され、短期間の実験での膵臓肥大から長期間の病変形成は予測できないことが報告されている[81]。豚に大豆トリプシン・インヒビターを含む餌を与えた研究では、6週齢と39週齢のどちらも膵臓細胞に影響がなく、血漿中のコレシストキニン、血清アミラーゼ活性などにも影響がなかった[82]。またサルについてトリプシン・インヒビターによる膵臓肥大は観察されず、ラット、豚、サルにおいて加熱した大豆粉や分離大豆タンパクによる悪影響がなかったことが報告されている。2020年に公表された多目的コホート研究で、ヒトの非発酵性大豆食品摂取量と膵がん罹患リスクが関連していることが指摘されたが、発酵性大豆食品摂取量とは関連していないことが指摘されている[83]。トリプシン・インヒビターには、マウスにおいてがんの肺転移や肝転移を抑制したり、がん抑制遺伝子の発現を高めたり、がんの増殖を抑制することが報告されており、がんの発生予防や治療にその効果が期待されている[84]。
注釈
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