レクチンとは? わかりやすく解説

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レクチン【lectin】

読み方:れくちん

細胞膜糖鎖結合して細胞凝集反応などを起こす物質


レクチン

【仮名】れくちん
原文lectin

蛋白と糖の両方をもつ複合分子。レクチンは細胞外側結合して細胞内の生化学的変化引き起こすことができる。レクチンは動物植物のいずれでも作られる

レクチン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/06 08:49 UTC 版)

レクチン: lectin)は、単糖糖鎖と可逆的に結合するタンパク質の総称である。このうち、糖鎖に結合する抗体、糖鎖を触媒する酵素は除く[1]生物およびウイルスから、膨大な種類のレクチンが発見されている[2]

歴史

1888年、エストニア、ドルバト大学(現タルトゥ大学)の 医師Peter Hermann Stillmarkは、博士論文研究[3]として、トウゴマ(Ricinus communis)の種子から毒素タンパク質「リシン」(ricin)と赤血球凝集素「ヘマグルチニン」(HA)を発見した。これがレクチン研究の出発点となる。

後に多種多様な凝集素が植物から探索され、細胞の糖タンパク質や糖脂質の糖鎖と結合することが判明する。白血球が白血病化すると、細胞表面の糖鎖の形が変化し、その糖鎖に結合するコムギ胚芽凝集素英語版の反応が高まり[4]、1950-70年代は沢山の医学者が植物レクチンを研究し、がんと糖鎖の関係が解明された。

アメリカの免疫学者 William C. Boyd とElizabeth Shapleighは、リママメの凝集素がA型の赤血球を凝集する現象を観察した。そして、特定の血液型を「選ぶ (ラテン語: legere )」タンパク質(in)の意味から、一連の凝集素を「レクチン」と命名した[5](1954年)。これにより、ラントシュタイナーが発見したABO式血液型における、型物質の実体が糖鎖であったことも明らかとなった。1960年代、アメリカのがん学者 Peter Nowellは、インゲンマメレクチンPHAを末梢血リンパ球に与えると有糸分裂促進が起き、細胞が増殖する現象を解明した。この発見はヒト染色体の核型観察を容易にした。1980年代は動物レクチンによる細胞死活性が研究され[6]、糖鎖-タンパク質間作用による細胞増殖調節機能が理解された。

機構など

レクチンの代表的な一次構造ファミリーには、細菌や古細菌含む生物界に広く存在するリシンB鎖関連の『R型レクチン』、真核生物に存在し糖タンパク質のフォールディングに関与する「カルネキシンカルレティキュリン」、多細胞動物に広く存在し「セレクチン」や「コレクチン」などを含むカルシウム要求性の『C型レクチン』、動物と真菌に存在しβ-ガラクトシドに結合する『ガレクチン』、レクチンのファミリー中最大で、マメ科植物種子や動物細胞に含まれる『L型レクチン』、リソソーム酵素の細胞内輸送に関わるマンノース-6-リン酸結合性の『P型レクチン』、グリコサミノグリカンなどの酸性糖鎖と結合する「アネキシン」、免疫グロブリン骨格を持つ「シグレック」を含む『I型レクチン』などが挙げられる。

動物レクチンは、動物進化系統樹の全般に発見されている。植物菌類原生生物レクチンの知見も年々増えている。

ウナギの血中に含まれるレクチンはヒトのO型赤血球を凝集する。1935年に日本のウナギがヒトのO型赤血球を凝集する事が報告された。

脚注

  1. ^ Varki ら 編『エッセンシャルズ オブ グライコバイオロジー 第4版』用語集 Lectin”. Essentials of Glycobiology 4th edition. 2023年5月5日閲覧。
  2. ^ LectomeXplore”. https://unilectin.unige.ch/.+2023年10月28日閲覧。
  3. ^ Uber Ricin, Hermann Stillmark, 1888, Dissertation of University of Tartu”. 2023年10月28日閲覧。
  4. ^ Reactions of normal and leukemic cell surfaces to a wheat germ agglutinin”. PNAS. 2023年5月5日閲覧。
  5. ^ 『Specific precipitating activity of plant agglutinins (Lectins)』AAAS、1954年3月26日、3091頁。 
  6. ^ Immunology (1985年) vol 56 p351-358. E Duvall, A H Wyllie, R G Morris "Macrophage recognition of cells undergoing programmed cell death (apoptosis)"”. 2023年12月28日閲覧閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。

関連項目

  • 赤血球凝集素

外部リンク


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