米中首脳会談以降
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2017年4月7日のマー・ア・ラゴの米中首脳会談で、アメリカのトランプ大統領と中国の習近平総書記は経済と外交安全保障と法執行サイバーセキュリティと社会文化の4つの分野に及ぶ「米中包括対話」に米中戦略経済対話を発展的解消することで合意し、米中貿易の不均衡を是正する「100日計画」の策定で一致した。米中は北朝鮮問題で連携することで一致し、習総書記は米中首脳会談と同時に行われたシリアのアサド政権への武力行使について理解を示したとされ、国連安保理でのシリア非難決議の採決で中国が棄権した際はトランプ大統領は「素晴らしい」と称賛した。会談後、トランプ大統領は選挙中に訴えていた中国を「為替操作のグランドチャンピオン」 と批判して就任初日で為替操作国に即時指定するとした公約を撤回し、北朝鮮問題で協力が得られれば貿易交渉で中国に譲歩して中国が有利になるよう取り計らうとも述べた。トランプ大統領は米中首脳会談で交わした会話の内容を『ウォール・ストリート・ジャーナル』のインタビューで話し、習近平が「朝鮮半島は中国の一部だった」と発言したことを明らかにし、「習近平主席が中国と朝鮮半島の歴史について話した。数千年の歴史と数多くの戦争について。朝鮮は実は中国の一部だった」「朝鮮は実際に中国の一部だった(Korea actually used to be a part of China)」「習主席から中国と韓国の歴史について聞いた。北朝鮮ではなく韓半島全体の話だった。(中国と韓国には) 数千年の歳月の間、多くの戦争があった」「(習主席の歴史講義を)10分間聞いて(北朝鮮問題が)容易ではないことを悟った」と語った。これに対してファン・ギョンムン(南カリフォルニア大学)は、「韓国が中国の属国だったという認識は中国本土ではいくらか信頼を得ている」と述べている。 中国に対する厳しい貿易政策を推し進めるとされた国家通商会議も廃止されて改組されてからは貿易摩擦激化の懸念は後退したという見方がされた。大統領就任前に中国を刺激した台湾の蔡英文総統との電話協議も習近平総書記との良好な個人的な関係から再会談には応じないとする意向を示し、台湾への武器売却も遅らせてることについて批判する声も出ており、トランプ政権初の台湾への武器売却には大型兵器は含まれず、習近平総書記を「中華民国総統」とホワイトハウスが間違えて紹介したことからトランプ政権の中台問題への理解を一部では不安視された。4月12日の記者会見ではロシアとの関係を史上最低と評する一方で中国と関係改善が進んでることを述べた。5月10日には2016年のトランプ大統領当選後から「航行の自由作戦」が途絶してることに米議会から懸念の声が上がり、アメリカ軍からオバマ政権で続けられてきた同作戦の南シナ海での実施が要請された際にもアメリカ国防総省はこれを3度拒否している。同年5月24日になってトランプ政権は初めて同作戦を実施したと報じられた際にも米国防総省はオバマ政権と違って公表しなかった。習総書記とトランプ大統領は災害時の捜索救難活動の米中合同演習の強化も合意し、2017年11月に実施された。 2017年5月11日、トランプ政権はウィルバー・ロス商務長官とスティーヴン・マヌーチン財務長官、中国の汪洋国務院副総理を共同議長とした米中包括的経済対話で合意した「100日計画」の第一弾として10項目を発表し、そのうちの1つである習近平総書記が国策に掲げる一帯一路国際協力サミットフォーラム(英語版)への代表団の派遣も決定し、出席した米国代表団は中国の掲げる経済圏構想である一帯一路への協力を表明した。トランプ自らも一帯一路への協力で米国はオープンであると述べてる。トランプ大統領の上級顧問で元中央情報局(CIA)長官のジェームズ・ウールジー(英語版)はAIIBへの米国の不参加を前任のバラク・オバマ政権の「戦略的失敗」と批判してトランプ政権は中国の一帯一路に「ずっと温かくなる」との見通しを述べていた。トランプ政権になってから北京のアメリカ大使館などで米国企業と中国国有企業を集めた一帯一路での米中協力をテーマとした会合が行われるようになった。 2017年6月1日、「中国、ロシア、インドは何も貢献しないのに米国は何十億ドルも払う不公平な協定だ」 としてアメリカはオバマ政権時代の米中協力の象徴だったパリ協定から離脱すると表明した。これはアメリカ国内でも反発を呼び、ワシントン州・ニューヨーク州・カリフォルニア州はトランプ政権から独立してパリ協定目標に取り組む米国気候同盟を結成し、さらにマサチューセッツ州など他の7州も加盟し、その立ち上げを主導したカリフォルニア州知事ジェリー・ブラウンは直後に訪問した中国で中国政府がアメリカに代わって気候変動対策のリーダーシップを握ったとして中国と協力する として中国とクリーンエネルギー技術のパートナーシップを結び、一帯一路構想へのカリフォルニア州の参加も表明した。また、6日の北京での第8回クリーンエネルギー部長級会議(英語版)に出席 するためトランプ大統領のパリ協定離脱表明直後に中国に出発したアメリカ合衆国エネルギー長官リック・ペリーは、中国が気候変動対策でリーダーシップをとることを歓迎 するとしつつアメリカはクリーンエネルギー技術分野などでリードしてると述べ、中国の張高麗国務院副総理との会談でクリーンエネルギーでの米中協力で一致 するも一地方自治体に対するものでは異例の厚遇であった中国の習近平国家主席(総書記)との会見を行ったブラウン州知事との対応の違いが米メディアで注目された。 2017年6月2日、国際連合安全保障理事会はトランプ政権では初となる対北朝鮮制裁強化決議を全会一致で可決した。決議はトランプ政権下で初めて米中が協力したものとされ、ロシアの賛成も得た。トランプは度重なる北朝鮮のミサイル発射を「中国に無礼だ」と批判し、北朝鮮は「米中が裏部屋で勝手にでっち上げた」と決議に反発した。同年8月5日にも米中は石炭や鉄鉱石などを全面禁輸する制裁強化決議を協議し、ロシアの賛成も得て安保理で全会一致で可決された。ニッキー・ヘイリー国連大使は「中国の重要な貢献に感謝したい」と演説し、「中国は口先だけで何もしない」と苦言を呈していたトランプ大統領も「中国とロシアも我々と一緒に投票した。北朝鮮に対して過去最大の制裁だ」と述べ、中露に謝意も表明した。 2017年6月21日、アメリカのティラーソン国務長官とジェームズ・マティス国防長官、中国の楊潔篪国務委員と房峰輝中国人民解放軍総参謀長を共同議長とした初の米中外交安全保障対話が行われ、北朝鮮問題、南シナ海問題などが話し合われて平行線を辿ったものの、新たな軍事協力の模索で一致し、テロ対策ではISILと戦うイラクへの中国政府の支援が評価された。 2017年7月4日、北朝鮮のICBMを発射したと称する実験に対して「この男(金正恩)は他にやることないのか」「日韓は忍耐できなくなり、中国はこの無意味なことを終結させるだろう」と批判し、6日には中国の取り組みの不十分を指摘しつつ「協力を決して諦めない」と述べ、7月8日の米中首脳会談では習近平総書記の対北朝鮮制裁措置に感謝して「私とあなたが望むより長期化するかもしれないが、最終的には解決する」と述べた。21日には北朝鮮でのオットー・ワームビアらアメリカ人の拘束を受け、アメリカ国民の北朝鮮への観光の禁止とアメリカ国務省による渡航の審査を発表し、アメリカ人の北朝鮮ツアーを行ってきた中国の旅行会社に渡航禁止措置を通知した。 2017年7月13日、中国政府の対応で国際的な問題となっていた劉暁波の死去直後にはトランプ大統領はこれを無視して習近平を絶賛する発言を行った。7月19日、第1回米中包括経済対話が行われ、貿易不均衡是正の具体策まで合意できず記者会見を中止するも、期限を迎えた100日計画に代わる「1年計画」の策定で一致した。 2017年9月3日の北朝鮮の水爆実験を受けて行われた6日の米中電話会談についてはトランプ大統領は「習氏は100%私に賛成してくれた」と述べ、12日には国連安保理で原油輸出の数量制限や天然ガスと繊維の輸出入と北朝鮮労働者の新規就労許可・更新などを禁止する制裁強化決議が全会一致で可決され、アメリカのヘイリー国連大使は「今回の決議はトランプ大統領と習近平総書記の間で築かれた強い関係なしにはありえなかった」と中国に謝意を表明した。同時期に香港での中国国営企業中信証券(中国語版)の子会社CLSAグループのフォーラムに出席したトランプの助言者の一人で元アメリカ合衆国首席戦略官・大統領上級顧問のスティーブン・バノンは「トランプ大統領は習総書記よりも尊敬してるリーダーは世界にいない」「北朝鮮の問題は米中の二国間で解決策を見出すのを望む」 と発言し、習近平の腹心である王岐山と中南海で90分間の秘密会談も行った。18日の米中電話協議ではトランプ大統領と習総書記は北朝鮮への圧力の最大化で一致し、19日の国連総会ではウクライナ東部や南シナ海の問題にも触れつつ制裁に賛成した中露に謝意を述べてさらに北朝鮮を孤立化させる必要性を演説した。また、トランプ大統領は北朝鮮と取引のある企業・個人に資産凍結などの制裁を課し、北朝鮮と取引する海外の金融機関をアメリカから排除する大統領令を発動した際には「海外の銀行は米国を選ぶか、北朝鮮のならず者政権を選ぶかを迫られる」と表明して中国人民銀行が自国の銀行に北朝鮮との取引を即時停止を指示してることを称賛した。 2017年9月28日、アメリカのティラーソン国務長官と劉延東国務院副総理を共同議長とした初の米中社会文化対話が行われ、新型インフルエンザ対策や米国の中国人留学生受け入れの拡大などの協力で一致した。同年9月30日に2017年北朝鮮危機の中、ティラーソン国務長官は訪問先の中国で「対話の意思があるか打診してる。意思疎通できるチャンネルはある」とトランプ政権では初めて米朝の水面下での接触を認めたことで注目されたが、直後にトランプ大統領は「対話、交渉は時間の無駄である。長官はエネルギーを浪費してはならない」と否定しており、対話による解決を求めてきた中国に配慮したとする見方もある。同時期、当初計画されたイヴァンカ・トランプ補佐官と夫のクシュナー大統領上級顧問の中国訪問が中止され、首都ワシントンDCで行われた国慶節の記念式典に夫婦揃って出席して訪米してる中国の劉延東副総理と会見した。イヴァンカらの訪中取りやめは、中国との非公式な関係が政権の逆風となることを懸念したハーバート・マクマスター国家安全保障問題担当大統領補佐官とジョン・フランシス・ケリー大統領首席補佐官が同年11月に予定するトランプ大統領の公式中国訪問を優先したことによるとされている。 2017年10月2日、2016年4月に南シナ海問題を巡る対立で香港への寄港を拒否されていた原子力空母ロナルド・レーガンが3年ぶりに香港寄港を認められ、北朝鮮を牽制した。寄港中には第七艦隊司令官のマーク・ドルトンと中国人民解放軍幹部の会談も調整された。その後、空母レーガンはアメリカ軍が戦略兵器を集結させている朝鮮半島に向かい、11日にトランプ大統領は北朝鮮への対応について「中国はとても協力的だと思う」と述べた。 2017年10月4日、ジェフ・セッションズ司法長官、エレイン・デューク国土安全保障長官代行と郭声琨中国公安部部長を議長とした第1回米中法執行サイバーセキュリティ対話が行われ、不法移民と汚職容疑者の送還やサイバー犯罪の取り締まりなどが話し合われた。 2017年10月22日、FOXのインタビューでトランプ大統領は「習主席は中国のため、私は米国のために動く。中国は我々に非常に協力的で特別な関係にある。党大会で彼は歴代の指導者になかったものを与えられる。正直に言ってそれまでは静かに見守りたい。彼がそれを手にすることを私も望むし、値するとも思う。彼は良い男だ」と述べて習政権への権力集中化を歓迎した。25日に中国共産党第十九回全国代表大会と1中全会が閉幕した後はトランプは電話会談で習近平総書記を祝福して北朝鮮や貿易問題を協議し、ツイッターでも「並々ならぬ栄達をお祝いした」と述べた。その直後に再びFOXで行われたインタビューでもトランプは習主席を「彼は非常に良い男だ。強大な力を手にした彼を『中国の王』と呼ぶ人たちもいるだろう」と称え、「ロシアは我々の邪魔をしているが、中国は我々を助けてくれてる」と述べた。11月6日のアジア歴訪中の日米首脳共同記者会見では「習主席は素晴らしい関係を築いてる友人」と述べ、ツイッターでは「韓国国会での演説を終えて中国に行き、偉大な政治的勝利をおさめた習主席と会うのを楽しみにしてる」と呟いた。2017年11月8日には、韓国の国会での演説で「我々をなめるな、試すな。愚かにも米国の決意を試して滅びた政権は歴史上いくつもある」「北朝鮮は人が住むに値しない地獄だ、あなた(金正恩)の祖父が描いた地上の楽園ではない」 として北朝鮮を孤立化させるよう中国とロシアに名指しで求めた。同日、トランプ大統領の公式中国訪問にあわせてボーイング・GE・ハネウェル・ゴールドマンサックスなど大企業のCEOら財界人で構成された使節団が訪中し、使節団を率いたロス米商務長官と中国の汪洋国務院副総理の同席のもと90億ドル規模の契約が人民大会堂で調印された。当初使節団への参加希望者は100社を超えるも最終的には29社が選ばれたとされる。一方でクアルコムを除いて使節団に加わらなかった傾向 があるIT企業ではAppleのティム・クックやマイクロソフトのビル・ゲイツなどの経営者も同時期にアメリカ政府の動きとは別に相次いで訪中して注目された。9日には「対中貿易赤字で中国に責任はない。貿易不均衡の拡大を防げなかった過去の政権のせいだ」 として米中両国首脳の立ち合いのもと超大型商談が調印されたことをトランプは表明し、習主席と一帯一路への協力で一致し、成立した約2500億ドル規模の商談の中にはシルクロード基金とGEの共同投資プラットフォーム など一帯一路関連のものもあった。北朝鮮への圧力強化で一致 しつつ「米中関係は最も重要だ。両国の問題だけでなく、世界的な問題の解決でも協力したい」と述べた。訪中した際は孫娘のアラベラが漢詩を暗唱してる動画を習主席と彭夫人に披露し、晩餐会ではスクリーンに大写しされた。人権問題には「個人の権利と法治主義の改革を提唱し続ける」とだけ触れ、中国の国営紙環球時報はこれを歓迎し、中国の人権活動家胡佳は「完全に中国のやり方に乗せられており、非常に残念だ」と述べた。11日には訪問先のベトナムで「貿易赤字は習主席のせいではない。我々のかつての代表の責任だ」「習主席は非常に強く賢明な人だ、私は彼が大好きだ。毛沢東以来最も強力な中国の指導者だ、いくつかの人は毛沢東以上と評してる」「中国は北朝鮮に圧力を強めるだろう」 と記者に述べた。11月15日、アジア歴訪から帰国したトランプは、中国の習主席と北朝鮮が脅威であることと問題解決の時間が限られてることを確認して協力を引き出し、貿易問題でも米中企業の巨額商談成立を米国に雇用をもたらすと歓迎して「アメリカが食い物にされる時代は終焉した」と述べ、各国とも北朝鮮への圧力最大化で一致し、米軍や韓国軍の幹部と軍事的選択肢も協議 したと成果を強調する声明を発表した。また、万引きで中国で逮捕されたカリフォルニア大学ロサンゼルス校のバスケットボール選手も帰国し、選手達の釈放を要請していたトランプ大統領は習主席に感謝を述べるも、選手の父親がトランプ大統領に感謝しなかったことから「とても恩知らずだ。選手らを監獄に残しておくべきだった」と唾棄した。11月20日にトランプ大統領はアメリカ人大学生オットー・ワームビアの事件を例に挙げて「北朝鮮は世界を核で脅してるだけでなく、引き続き国際テロを支援している」「もっと何年も前に再指定されるべきだった」として北朝鮮を9年ぶりにテロ支援国家に再指定することと追加制裁の意向を表明した。本来アジア歴訪からの帰国直後に発表されるはずが遅れたのは特使を派遣した中国の面子を立てたためとされる。 2017年12月12日、ティラーソン国務長官は朝鮮半島有事を想定した核の確保と難民対策や38度線を越えた米軍の撤退など具体的対応を中国と協議してることを初めて表明した。 2017年12月18日に発表されたトランプ政権初の国家安全保障戦略では「原則ある現実主義」「力による平和」を掲げ、中国をロシアと並ぶ米国や国際秩序に挑戦する「修正主義国家」「競争相手」と呼ぶ一方で「米国の国益を守る前提で両国と協力を目指す」と述べ、イランや北朝鮮のような「ならず者国家」と区別した。 2017年12月22日、米中の協議 により石油精製品輸出の9割削減や24ヶ月以内の北朝鮮労働者の本国送還を盛り込んだ対北朝鮮制裁強化決議が議長国日本やロシアの賛成も得て国連安保理で全会一致で可決され、制裁違反の可能性がある船舶に対する臨検及び拿捕の義務化や新たな核実験やミサイル発射があればさらに北朝鮮への石油供給を制限するとの表現が初めて記載された。 2018年1月16日、カナダのバンクーバーでティラーソン国務長官の呼びかけ により国連軍派遣国を中心に日本や韓国なども参加した外相会合が開かれ、平昌五輪に向けた南北対話が非核化対話に進展することを期待しつつ「完全で検証可能かつ不可逆な非核化」まで北朝鮮に圧力を継続する方針を盛り込んだ議長声明が発表され、ロシアと中国を名指しで「重要な役割と特別な責任を持つ」として制裁履行を求めて北朝鮮に対する海上阻止行動の強化や国連安保理の枠を超えた独自制裁の検討でも一致した。この会合に対しては中露だけでなく、北朝鮮も「新たな戦争の火種」と反発した。また、この会合に先立つ夕食会でマティス国防長官は情勢次第で外相会合から国防相会合に発展するとして「アメリカには北朝鮮との戦争計画がある」と言明 して国連軍の参加国・関係国と軍事面の連携で一致した。19日、マティス国防長官は「アメリカの国家安全保障の優先課題はテロリズムではなく、大国間の競争」として中国とロシアを競争相手を位置づける新たな国家防衛戦略を発表した。31日にトランプ大統領は初の一般教書演説で北朝鮮を異例の5分超 にわたって非難するも、中国とロシアは「我々に挑戦する競争相手」と一言だけ触れた。同年3月3日には中国で波紋を呼んでいた習主席の任期撤廃案について「中国は偉大で、習主席は偉大な紳士だ。素晴らしい。我々もいつか終身大統領を試してみようか」と冗談交じりに称賛し、ホワイトハウス報道官のサラ・ハッカビー・サンダースも「中国が決めること」と論評を避けた。 2018年3月6日、北朝鮮が非核化に向けアメリカと対話に意欲を示したことを受けてトランプ大統領は「制裁で中国が大いに助けてくれたからだ」と述べた。9日には訪朝した韓国の特使鄭義溶との面会後に「金正恩は単なる凍結でなく、非核化を韓国の代表に言った。北朝鮮はミサイル実験をこの期間自制する。大きな前進だ。合意するまで制裁は続ける。会談を計画中だ!」と表明し、日本の安倍首相や中国の習主席と相次いで電話協議して完全かつ検証可能で不可逆的な非核化まで圧力と制裁を維持することを確認して「中国は引き続き助けてくれる」と述べ、サンダース報道官も米朝首脳会談は「非核化の具体的な行動が前提」と述べ、25日に最高指導者就任後の初外遊で中国を訪れた金正恩委員長と会談した習総書記からメッセージを受け取り、トランプ大統領は「金正恩が北朝鮮の国民と人類のために正しい選択を行うのは今がいい機会だ。我々の会談が楽しみだ。中朝首脳会談を大成功させた習主席から金正恩が私と会うことを楽しみにしてると伝えられた。同時に残念ながらそれまで最大限の制裁と圧力は何があっても保ち続ける!」と述べた。また、習近平はトランプにアメリカ・中国・北朝鮮・韓国の4カ国による平和協定を含む「新たな安全保障の枠組み」をアメリカに提案したとされ、2018年南北首脳会談で米中が署名した朝鮮戦争休戦協定を平和協定にすることで韓国と北朝鮮で合意された際は「朝鮮戦争が終わる。アメリカは誇るべきだ。私の親友である中国の習主席の多大な助力を忘れない。彼がいなければ、解決は遠のいた」と述べるも、隠然と影響力を行使して北朝鮮を駆け引きに利用してることに対しては「習主席は世界一流のポーカーのプレイヤー」と評した。 2018年3月22日、トランプは「習主席を尊敬し、中国は友人と思う」 と前置きしつつ「対中貿易赤字はどの国も経験してない史上最大の貿易赤字だ」 と表明して7か月間の中国の知的財産権問題をめぐる調査も基にスーパー301条による中国製品への関税賦課をアメリカ合衆国通商代表部(USTR)に指示する覚書に署名し、4月3日にUSTRはパーソナルコンピュータとスマートフォンや衣料品などといった輸入額の大きい消費財を除外しつつ産業用ロボット、小銃や爆弾、医療機器、電気自動車、半導体などの中国製品1300品目(500億ドル相当)の特定を発表し、翌4日に中国は大豆・自動車・一部の航空機・牛肉などアメリカ製品160品目に同じ25%の関税を課す計画で報復したことに対してトランプは「米中貿易戦争は起きてない。愚かで無能な歴代の米国政府が戦い、既に負けている」と述べ、ロス商務長官やマヌーチン財務長官、ピーター・ナヴァロ通商製造業政策局局長、ラリー・クドロー国家経済会議委員長 なども貿易戦争の可能性を否定したことで下落した株式市場は一時持ち直した。しかし、5日に株価への影響も容認 して中国の報復に対してスーパー301条による1000億ドルの報復関税の是非を検討するようUSTRに指示して貿易摩擦の懸念が再燃 するも、8日にトランプは中国とは相互税で貿易障壁は撤廃されて知財問題でも合意に達するという見通しを述べて「中国の習主席と私は貿易摩擦で何が起きても常に友人だ」と表明し、10日にはトランプは習主席がボアオ・アジア・フォーラムで自動車関税の引き下げや輸入促進などを述べたことを称賛した。また、同時に中国による鉄鋼の過剰生産を問題視し、「日本の安倍首相や他の偉大な友人たちは『アメリカをうまく出し抜いてきた』とほくそ笑んでいる。そういった時代は終わりだ」と述べ、安全保障を理由とした輸入制限としては1982年のリビア産原油以来である鉄鋼・アルミニウムの輸入制限をアメリカ通商拡大法231条に基づいて中国をはじめとする欧州連合、メキシコ、カナダ、ロシア、インド、日本 など世界各国への鉄鋼輸入制限を発動した。 2018年5月3日、訪中したマヌーチン財務長官、ライトハイザー通商代表、ロス商務長官、クドロー国家経済会議委員長、ナヴァロ通商製造業政策局局長ら米国代表団と中国の劉鶴国務院副総理は北京で米中貿易摩擦回避の通商協議を行った。作業部会の設立など一定の合意はあったものの、一部の問題で対立したとされる。17日からワシントンDCで第2回の通商協議が行われて中国の対米貿易黒字削減で合意したとする米中共同声明が発表され、劉副首相は「貿易戦争回避で一致した」と述べてマヌ―チン財務長官も「貿易戦争を留保する」と表明し、トランプ大統領は「中国との公平な貿易だ、初めて障壁や関税は下がる」と述べた。また、トランプ大統領は習主席への個人的な好意 を理由としてZTEの制裁緩和を合意したと表明した。 2018年6月1日、訪米した金英哲との会談後、トランプ大統領は中止を撤回して米朝首脳会談を予定通りに行うと述べ、「中国の習主席はこの件に関して様々な支援を行ってたくさんの成果があった」と謝意を述べ、非核化後に北朝鮮を経済支援するのは「韓国がすべきであり、日本もだ。正直、中国が助けると思う」としてアメリカによる資金拠出は否定した。6月12日、トランプは史上初の米朝首脳会談後の記者会見で中国と習主席に謝意を表明して「私の友人であり、素晴らしい人物、偉大な指導者」と称え、米朝の非核化合意は中国に有益と述べ、中国も米韓合同軍事演習中止の決定を中国のロードマップに沿うとして支持した。また、アメリカのトランプ大統領は朝鮮戦争休戦協定を平和条約にする際は「中国と、法的には問題があっても韓国も加われば素晴らしい」と呼びかけた。 2018年6月16日、トランプ大統領は「「習主席との友情や対中関係は非常に重要でも、アメリカとの長年の公平ではない貿易は放置できない」として当初の1300品目からテレビなどを除いて1102品目に減らしつつ中国製品820品目に関税を7月6日から課すと表明し、中国も4月のリストから航空機を外しつつ約500億ドル規模の米国製品659品目に報復すると述べた。 2018年6月20日、ロス商務長官は中国製・日本製・ドイツ製・ベルギー製・スウェーデン製の一部品目を対象に鉄鋼の輸入制限では初の除外を発表した。 2018年7月6日、アメリカは中国から輸入される818品目に対して340億ドル規模の追加関税措置を発動。同日、中国も同規模の追加関税措置を発表して報復合戦となった。また、7月10日には、中国に対する2,000億ドル規模の追加措置の検討に入ったことを発表した。詳細は、米中貿易戦争の項を参照のこと。 2018年10月17日、アメリカは中国への優遇を理由に万国郵便連合からの脱退を表明し、中国はこれに反発した。 2019年4月29日、米中の貿易摩擦の激化を受け、アメリカの中長期的な外交戦略を担う国務省政策企画本部のキロン・スキナー(英語版)政策企画本部長は「米ソ冷戦時代、我々の戦いは謂わば西側の家族間の争いのようなものだった。しかし、今後アメリカは史上初めて白人(コーカサス人種、Caucasian)文明ではない中国文明との偉大なる対決に備えていく」として米中の対立を文明の衝突に位置付けることを表明した。 2020年1月15日、米中経済貿易協定が米中両国で署名され、米中貿易戦争は休戦状態となった。
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