国家安全保障問題担当大統領補佐官とは? わかりやすく解説

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国家安全保障問題担当大統領補佐官

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/27 02:21 UTC 版)

国家安全保障問題担当大統領補佐官
現職者
マイケル・ウォルツ

就任日 2025年1月20日
創設1953年
初代ロバート・カトラー英語版
ウェブサイト公式ウェブサイト

国家安全保障問題担当大統領補佐官(こっかあんぜんほしょうもんだいたんとうだいとうりょうほさかん、: Assistant to the President for National Security Affairs)は、アメリカ合衆国大統領に対して国防や外交全般にわたって幅広い助言や政策立案を行う補佐官の正式名称。通常は英語では「National Security Advisor」、日本語では国家安全保障担当補佐官と略して呼ぶことが多い。

概要

国家安全保障問題担当大統領補佐官の職務は1953年に当時の大統領のドワイト・D・アイゼンハワーが創始したもので、アイゼンハワーは米国の外交政策あるいは特定地域における政策の立案を必要としたためであったといわれている[1]

補佐官という肩書きではあるが、政権内の国家安全保障担当職としては閣僚である国務長官国防長官と並ぶ、合衆国政府の最重要ポストの1つである。国務長官は外交を統括する筆頭閣僚[2]であり、国防長官は膨大な予算・武装兵力・強力な情報機関(アメリカ国防情報局アメリカ国家安全保障局アメリカ国家偵察局)をにぎる重要閣僚である。補佐官は大統領と毎日接し、政策を提言するなど政策決定に大きな役割を占めている[3]

このため、補佐官時代は国務長官をないがしろにし、後に国務長官に任命された者(キッシンジャー(最初は補佐官兼務)、パウエルライス)や国防長官に任命された者(カールッチ)、国務長官と政策上の対立を起こしたもの(ブレジンスキー)など[4]、その顔ぶれには大物が名を連ねており、補佐官と権益上の結びつきを持つ者の意向を受けて大統領府を監視することも[要出典]、また、その執政に影響を与える事も可能な状況になっている。カーター政権において、国家安全保障問題担当大統領補佐官のブレジンスキーはカーター大統領の隣の部屋で執務していたが、国務長官はホワイトハウスから1マイル離れた国務省に執務室があることが影響していたといわれている[4]

補佐官の地位を高めたのは(ケネディ暗殺事件後の)マクジョージ・バンディだと言われる[要出典]。(事件の結果。リンドン・ジョンソン大統領が補佐官への依存を深めた状況を利用し)それまでの従属的地位からアメリカの政策決定の中心になるようにした。しかし、それによってその補佐官と個人的なつながりのある利益団体や政治組織が補佐官を通じて議会の制約を受けることなく合衆国の政治に影響を与える事が容易な状況となっている[要出典]。ところがデストラー博士によれば、バンディは権力をきわめて穏当な方法で使用しており、影響力の源泉は人々とのつながりにあると説明している[1]

職務

  • 国防外交問題の大統領最高顧問
  • 国家安全保障会議事務局を担当する大統領直属スタッフ (事務局長は別にいる)
  • 最高政策文書「国家安全保障決定覚書」 (NSDM) の発行責任者
  • 情報工作命令「国家安全保障情報指令」 (NSCIDs ノンスキッズ) の発行責任者

歴代国家安全保障問題担当補佐官

注:ロストウまでは特別補佐官、キッシンジャーから補佐官となる。

写真 補佐官 就任日 退任日 前職 大統領
1 ロバート・カトラー英語版 1953年3月23日 1955年4月2日 オールド・コロニー信託会長 ドワイト・D・アイゼンハワー
2 ディロン・アンダーソン英語版 1955年4月2日 1956年9月1日 国家安全保障会議スタッフ
3 ウィリアム・ジャクソン英語版 1956年9月1日 1957年1月7日 心理戦担当大統領特別補佐官
4 ロバート・カトラー(再任) 1957年1月7日 1958年6月24日 オールド・コロニー信託会長
5 ゴードン・グレイ英語版 1958年6月24日 1961年1月13日 国防動員局(ODM)長官
6 マクジョージ・バンディ 1961年1月20日 1963年11月22日 ハーバード大学教授、文理学部長 ジョン・F・ケネディ
1963年11月22日 1966年2月28日 リンドン・ジョンソン
7 ウォルト・ロストウ 1966年4月1日 1969年1月20日 国務省政策企画本部長
8 ヘンリー・キッシンジャー 1969年1月20日 1975年11月3日 ハーバード大学教授 (73年から75年にかけて国務長官を兼務)   リチャード・ニクソン
9 ブレント・スコウクロフト 1975年11月3日 1977年1月20日 国家安全保障担当大統領次席補佐官 (空軍中将) ジェラルド・R・フォード
10 ズビグネフ・ブレジンスキー 1977年1月20日 1981年1月21日 コロンビア大学教授 ジミー・カーター
11 リチャード・V・アレン英語版 1981年1月21日 1982年1月4日 ロナルド・レーガン首席外交顧問 ロナルド・レーガン
12 ウィリアム・クラーク 1982年1月4日 1983年10月17日 国務副長官
13 ロバート・マクファーレン英語版 1983年10月17日 1985年12月4日 国家安全保障担当大統領次席補佐官(海兵隊中佐)
14 ジョン・ポインデクスター英語版 1985年12月4日 1986年11月25日 国家安全保障担当大統領次席補佐官(中将)
15 フランク・カールッチ 1986年12月2日 1987年11月23日 シアーズ・ワールド・トレード会長兼CEO
16 コリン・パウエル 1987年11月23日 1989年1月20日 陸軍第5軍団司令官(陸軍大将、当時は中将)
17 ブレント・スコウクロフト(再任) 1989年1月20日 1993年1月20日 キッシンジャー・アソシエイツ副代表(退役空軍中将) ジョージ・H・W・ブッシュ
18 アンソニー・レイク 1993年1月20日 1997年3月14日 マウント・ホリオーク大学教授 ビル・クリントン
19 サンディ・バーガー英語版 1997年3月14日 2001年1月20日 国家安全保障担当大統領次席補佐官
20 コンドリーザ・ライス 2001年1月22日 2005年1月25日 スタンフォード大学教授 ジョージ・W・ブッシュ
21 スティーヴン・ハドリー英語版 2005年1月25日 2009年1月20日 国家安全保障担当大統領次席補佐官
22 ジェームズ・L・ジョーンズ英語版 2009年1月20日 2010年10月8日 21世紀エネルギー協会会長(退役海兵隊大将、元海兵隊総司令官 バラク・オバマ
23 トーマス・ドニロン英語版 2010年10月8日 2013年7月1日 国家安全保障担当大統領次席補佐官
24 スーザン・ライス 2013年7月1日 2017年1月20日 アメリカ合衆国国連大使
25 マイケル・フリン 2017年1月20日 2017年2月13日 退役陸軍中将、元アメリカ国防情報局長官 ドナルド・トランプ
- キース・ケロッグ(代行) 2017年2月13日 2017年2月20日 国家安全保障会議事務局長(退役陸軍中将)
26 ハーバート・マクマスター 2017年2月20日 2018年4月9日 陸軍能力統合センター長(陸軍中将)
27 ジョン・ボルトン 2018年4月9日 2019年9月10日 アメリカ合衆国国連大使
- チャールズ・カッパーマン英語版 (代行) 2019年9月10日 2019年9月18日 国家安全保障問題担当大統領副補佐官
28 ロバート・オブライエン 2019年9月18日 2021年1月20日 人質問題担当特使
29 ジェイク・サリバン 2021年1月20日 2025年1月20日 元国家安全保障問題担当副大統領補佐官 ジョー・バイデン
30 マイケル・ウォルツ 2025年1月20日 下院議員 ドナルド・トランプ

脚注

出典

  1. ^ a b Dr. I. M. Destler (2009年5月16日). “The Role of the National Security Advisor”. 米国国務省. 2017年5月18日閲覧。
  2. ^ ニクソン大統領、アグニュー副大統領の辞表提出先は国務長官であった。また国務長官の大統領継承順位は閣僚の中で1位である。
  3. ^ John P. Burke (2017年). “THE NATIONAL SECURITY ADVISOR AND STAFF” (PDF). Whitehouse Transition Project. 2017年5月18日閲覧。
  4. ^ a b Cyrus Vance”. The Economist (2002年1月12日). 2017年5月18日閲覧。

関連項目

外部リンク


国家安全保障問題担当大統領補佐官

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/12 15:29 UTC 版)

ハーバート・マクマスター」の記事における「国家安全保障問題担当大統領補佐官」の解説

ドナルド・トランプ大統領によって、2017年2月20日、国家安全保障問題担当大統領補佐官に指名された。大統領補佐官就任には議会承認不要だが、米軍の星3つの将官指名であるため、星3つ保持したままでの就任には上院承認が必要となる。2017年2月22日日本谷内正太郎国家安全保障局長と電話協議した際、「各国カウンターパートの中で最初に谷内氏に)連絡した」「日本重要な同盟国であり、谷内氏と今後緊密に意見交換連携をしていきたい」と述べた報道された。2017年2月NSCスタッフ全員参加会議マクマスターは、テロリストイスラムではないから「イスラム過激派テロ」というラベル張り役に立たない、と述べた報道された。これは反イスラム的な態度知られ前任者フリン影響排除しようとする発言受け止められている。 2017年4月5日トランプ大統領新たな大統領令(NSPM-4)によってスティーブン・バノン首席戦略官・上級顧問NSCから外す決定をした。その背景には安全保障分野マクマスター補佐官影響力強まりつつあり、アメリカ国家安全保障会議についても、マクマスター補佐官コントロール下に置き、スティーブン・バノン今後マクマスター同席することはないだろう報道されている。マクマスターバノン一部ホワイトハウス高官と「決死戦い」を繰り広げていると報道されている。マクマスター匿名協力者は、これは大したことだ、と述べたという。2017年5月15日マクマスター補佐官CNNに、集中できる間隔短く注意力散漫になりやすいので、大統領説得することは非常に難しいことだと述べた。また大統領機密情報取り扱い無頓着なことから、国家安全保障懸念からさらに複雑になっていると付け加えた。しかしマクマスター補佐官は、私は大統領アドバイスするためにここにいる、バノン補佐官打ち勝つためではないと述べている。 2018年3月22日トランプ大統領は、ツイッターマクマスター辞任同意したこと、後任2018年4月9日付けジョン・ボルトン国連大使充てることと発表した

※この「国家安全保障問題担当大統領補佐官」の解説は、「ハーバート・マクマスター」の解説の一部です。
「国家安全保障問題担当大統領補佐官」を含む「ハーバート・マクマスター」の記事については、「ハーバート・マクマスター」の概要を参照ください。

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