スーパー‐さんびゃくいちじょう〔‐サンビヤクイチデウ〕【スーパー三〇一条】
スーパー301条(すーぱーひゃくいちじょう)
不公正な貿易慣行を続ける国に対する制裁手続きを定める。2年間の時限立法として、米国通商法301条を強化して1988年に施行されたのが最初である。
その後失効したが1994年になって、クリントン政権はスーパー301条を復活させた。また、同条項が1997年に失効した後、1999年からさらに再復活させた。
スーパー301条はその手順として、(1)輸入障壁のある国を特定して「優先交渉国」とし、その改善を要求する、(2)3年以内に改善されない場合は報復のため関税引き上げを実施、などを決めている。
「市場が閉鎖的で米企業の市場参入の機会を不当にはばんでいる」とUSTR(米国通商代表部)が判断した場合など、米政府は「関税引き上げ」という脅しをちらつかせながら、改善を要求できる。
このように、スーパー301条は強い力を持った条項である。ただし「スーパー301条はガット(GATT)違反ではないか」という疑いが持たれており、国際社会での評判が悪い。
(2000.05.04更新)
スーパー301条
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 06:21 UTC 版)
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スーパー301条(英語: Section 301 of the Trade Act of 1974)とは、1988年包括通商競争力法[1] (Omnibus Foreign Trade and Competitiveness Act) 第1302(a),により、1974年通商法に第310条として追加された、対外制裁に関する条項の一つである。1974年通商法第301条(貿易相手国の不公正な取引慣行に対して当該国と協議することを義務づけ、問題が解決しない場合の制裁について定めた条項)の強化版であった。2015年貿易円滑化及び貿易執行法第601条(a)[2]により全面改正され、貿易執行の優先事項の特定は毎年行うことになったが調査開始の義務付けはなくなった。
概要
規定の内容は、アメリカ合衆国通商代表部(USTR)に対し、1974年通商法第181条に基づき提出される「外国の貿易障壁に関する年次報告書(NTEレポート)」に基づき、優先的に取り上げる外国(priority foreign countries)及び当該国の慣行(priority practices)を特定し、4月末までに議会に報告するとともに特定された慣行について、通商法301条調査を開始することを義務付けた。これは、USTRによる301条の運用が、必ずしも十分でないとのアメリカ合衆国議会の不満を反映したものであった。
この規定は、1988年及び1989年の2年のNTEレポートを対象とする規定であったが、このときの適用状況は、1989年[3]、USTRは、日本の衛星、スーパーコンピュータ及び林産物、ブラジルの輸入数量制限、インドの保険及び対内投資を特定し、1990年は[4]、インド(保険、対内投資)のみを引き続き特定したが、いずれも制裁まで至らずに合意がされた。
2017年8月1日、ドナルド・トランプ政権は、中華人民共和国に対して1974年通商法第301条に基づく調査を開始。翌年にかけて米中貿易戦争 (2018年)が激化するきっかけの一つとなった[5]が、これは301条自体の手続によるものでスーパー301条によるものではない。
スーパー301条の復活
このスーパー301条は、前述のとおり1989、1990年限りのものであったが、1994年3月3日、アメリカ合衆国大統領ビル・クリントンは、このスーパー301条手続きとほぼ同等の内容の行政命令を発出した。これは、通常スーパー301条を復活させる行政命令と呼ばれているが、厳密には法律の規定を行政命令で変更はできず(特にこの旨が授権されている場合はともかく)、この行政命令は、議会が法律によりUSTRに義務付けたものと同様の内容を、アメリカ合衆国大統領が、行政の最高責任者の権限でUSTRに命令しているものである。
この行政命令の内容は、次のようになっている。
- 94、95年の2年間の時限措置(その後の改正で96、97年まで延長)
- 優先慣行の特定は、3月末のNTEレポートの議会提出から6ヵ月以内
- USTRは、議会報告から21日以内に、通商法301条調査及び協議を開始する。
さらに、ウルグアイラウンド協定法第314条⒡は、1974年通商法第310条を改正して、1995年NTEレポートについてスーパー301条を復活させた。このときは、1994年、1995年とも、いかなる国の慣行も特定されなかったが、日本の林産物及び紙の分野が、将来特定される可能性のある慣行として、監視リストに記載された。しかし、日本の自動車部品問題についてUSTRが職権で(通常の)301条調査を開始したように、スーパー301条でない一方的措置がなくなっているわけではない。
行政命令によるスーパー301条の復活は[注釈 1]、1998年は行われなかった。しかし、1999年には、スーパー301条と1979年通商協定法の政府調達条項を、合わせて行政命令で復活させる方針が年初めに発表され、3月31日付けで、行政命令第13116号で正式に復活された。(連邦官報1999年4月5日付け第64巻16333ページ)
内容的には、次のとおりで前回の行政命令によるものより、元々のスーパー301条に近い内容になっている。
- 優先慣行の特定は、3月末のNTEレポートの議会提出から90日以内
- USTRは、議会報告から90日以内に、通商法301条調査を開始する。
- USTRは、通商法301条調査の前に関係国と解決のための協議を行う。
2018年4月には「対中貿易赤字はどの国も経験してない史上最大の貿易赤字だ」[6]と表明したアメリカ合衆国大統領のドナルド・トランプの命令を受けてUSTRはパーソナルコンピュータとスマートフォンや衣料品などといった輸入額の大きい消費財を除外しつつ産業用ロボット、医薬品や医療機器、電気自動車、半導体などの中国製品1300品目の特定を発表した[7][8]。
貿易円滑化及び貿易執行法による改正
2015年貿易円滑化及び貿易執行法第601条(a)[2]は、1974年通商法第310条を全面的に改正した。
改正後の内容は、USTRに貿易執行の優先事項の特定を義務付け、定期的な報告協議を規定するが第301条に基づく調査開始自体は義務付けをしないものになっている。
脚注
注釈
- ^ 正確には前述のとおり同様の内容の行政命令で法律の復活ではない。
出典
- ^ Omnibus Trade and Competitiveness Act of 1988 , Pub.L. 100–418, AUG. 23, 1988, 102 Stat. 1107
- ^ a b Pub. L. 114–125, title VI, §601(a), Feb. 24, 2016, 130 Stat. 180
- ^ 1988年のNTEレポートに基づくもの
- ^ 1989年のNTEレポートに基づくもの
- ^ “米、中国に通商法301条検討 不公正貿易なら制裁も”. 日本経済新聞 (2017年8月1日). 2018年7月14日閲覧。
- ^ “トランプ米大統領、対中関税措置に署名 5.3兆円規模”. CNN. (2018年3月23日) 2018年4月4日閲覧。
- ^ “米の対中知財制裁、産業ロボなど1300品目 原案公表”. 日本経済新聞. (2018年4月4日) 2018年4月4日閲覧。
- ^ “米国、500億ドルの中国輸入品への関税適用提案-ハイテク製品中心”. ブルームバーグ. (2018年4月4日) 2018年4月4日閲覧。
関連項目
- 保護貿易
- スペシャル301条
- 貿易摩擦
- アメリカ合衆国における反日感情
- ジャパンバッシング
- BTRON#通商問題
- TRONプロジェクト
外部リンク
スーパー301条
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/16 14:48 UTC 版)
「ジャパンバッシング」の記事における「スーパー301条」の解説
詳細は「スーパー301条」を参照 米国議会はこのようなジャパンバッシングの流行の中で、輸入関税の大幅引き上げを武器としたスーパー301条を可決して日本に市場開放を迫った。日本側は牛肉や柑橘類の関税縮小を余儀なくされた(牛肉・オレンジ自由化)。 もっとも、同時にオーストラリアやカナダ、中国なども対日輸出を拡大したため、米国の食糧生産者が期待した程には対日貿易は増大せず、米国以外と日本の食糧市場を分配する結果に終わっている。また日本に輸入される自動車への厳しい規制も緩和されたが、結果的にはむしろ日本にヨーロッパ車の輸入拡大をもたらす結果となった。 その後、当時の日本の内閣総理大臣中曽根康弘と、米国大統領ロナルド・レーガンの、「ロンヤス・コンビ」と呼ばれたリーダー間の折衝が進み、次第に日米政府の間では信頼関係が回復していったが、両国の国民の間には、現在でも以上のような貿易摩擦や、偏見が存在している。 1989年以後、日米構造協議が実施され、続いて1994年以後年次改革要望書が出されるようになった。
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