スペシャル301条
英語:Special 301
米国通商法(いわゆる1974年通商法)第301条に基づき、特に知的財産権の扱いに関する対外制裁について規定した条項。知的財産権の保護が十分でない国を監視し、協議が図られ、場合によっては制裁措置が講じられる。
米国通商代表部は、1974年通商法に基づく報告書「NTEレポート」と、そのスペシャル301条版と言える報告書を作成している。報告書の中では問題の程度に応じて「優先国」「優先監視国」「監視国」などに分類される。
スペシャル301条で「優先国」と見なされた国は、米国による調査と協議の対象となる。協議不調の場合には対抗措置が取られる。
関連サイト:
外国貿易障壁報告書(NTEレポート)について - 経済産業省
スペシャル‐さんびゃくいちじょう〔‐サンビヤクイチデウ〕【スペシャル三〇一条】
スペシャル301条
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/07/22 12:54 UTC 版)
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スペシャル301条(英語: Special 301)とは、アメリカ合衆国の1974年通商法における知的財産権に対する対外制裁に関する条項。1988年包括通商競争力法[1] (Omnibus Foreign Trade and Competitiveness Act) 第1303条⒝ により1974年通商法第182条として追加された。
概要
1974年通商法301条(貿易相手国の不公正な慣行に対して当該国との協議や制裁について定めた条項)の知的財産権についての特別版であるところから、スペシャル301条と呼ばれる。
1974年通商法は、アメリカ合衆国通商代表部 (USTR) に、大統領や連邦議会に対して外国の貿易障壁に関する報告を行うことを義務づけており、USTRは毎年3月末頃に「外国貿易障壁報告書」 (National Trade Estimate Report on Foreign Trade Barriers、通称:「NTEレポート」) を提出している。
スペシャル301条はさらに、NTEレポートの提出後30日以内に、知的財産権保護について問題ある国や慣行に関する報告書(「スペシャル301条報告書」)を公表することを定めている。このレポートでは、知的財産権保護について問題のある国を、問題の大きな順から「優先国」 (priority foreign country) 、「優先監視国」 (priority watch list) 、「監視国」 (watch list) の3段階に指定する。また、別枠で最も厳しい「306条監視国」を指定することもある。「優先国」に特定されると、調査及び当該国との協議が開始され、協議が不調の場合は制裁手続が進められる。優先国の撤回はいつでも可能であるが、議会への説明が必要とされている。
スペシャル301条が、その創設以来、知的財産保護水準の向上に大きな役割を果たしてきたことは事実であるが、一方では、WTO協定等の国際ルールに基づかない、自国のみの判断による一方的措置の代表として、日本を含む多くの国から強い批判を受けている。
スペシャル301条報告書における優先国等
2006年のスペシャル301条報告書における指定の状況は以下の通り。
- 優先国:なし
- 優先監視国:13か国(中華人民共和国、ロシア、アルゼンチン、ベリーズ、ブラジル、エジプト、インド、インドネシア、イスラエル、レバノン、トルコ、ウクライナ、ベネズエラ)
- 監視国:34か国(EU、韓国、マレーシア、フィリピン、台湾、タイ、ベトナム等)
- 306条監視国:1か国(パラグアイ)
2007年のスペシャル301条報告書における指定の状況は以下の通り。
- 優先国:なし
- 優先監視国:12か国(中華人民共和国、ロシア、アルゼンチン、チリ、エジプト、インド、イスラエル、レバノン、タイ、トルコ、ウクライナ、ベネズエラ)
- 監視国:24か国(ベラルーシ、ベリーズ、ボリビア、ブラジル、カナダ、エクアドル、ハンガリー、インドネシア、イタリア、ジャマイカ、クウェート、リトアニア、マレーシア、メキシコ、パキスタン、フィリピン、ポーランド、ルーマニア、サウジアラビア、台湾、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、ベトナム)
- 306条監視国:1か国(パラグアイ)
日本は1994年から1996年に優先監視国とされ、その後も1999年まで監視国とされていたが、近年は指定から外れている。
脚注
- ^ Omnibus Trade and Competitiveness Act of 1988 , Pub.L. 100–418, AUG. 23, 1988, 102 Stat. 1107
関連項目
外部リンク
スペシャル301条(1974年通商法第182条)
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「1974年通商法」の記事における「スペシャル301条(1974年通商法第182条)」の解説
米国人及び米国企業が所有する知的財産権の保護に関しては、1930年関税法第337条の規定によりITCに提訴して輸入差止めを求めることができるが、これは米国に輸入される製品を対象として問題提起できるに過ぎず、外国において知的財産権が侵害されてもその市場が米国外の場合は対抗策がなかった。このため、1988年包括通商競争力法により、米国所有の知的財産権を侵害する諸外国の慣行を特定し、自動的に通商法301条手続きに移行していく条項(1974年通商法182条、スペシャル301条と通称される)を新設した。第182条の規定の概略は次のとおりである。 ① USTRは、毎年、3月末のNTEレポート提出後30日以内には、知的財産権の適正かつ有効な保護又は市場アクセスを拒否する国の特定を行い、更にこのうちから優先交渉対象国を指定する。 ② この特定がされた国については第302条⒝⑵(A)の規定により、30日以内に第301条の調査が開始される。通商法301条手続きにおいては、二国間協議の期間は通常の場合1年以内とされているが、スペシャル301条に基づいて開始される協議の場合のみ、6ヵ月となっている。スペシャル301条の適用状況は、対日事案をとってみると次にとおりである。 ① 89年から95年まで、日本は一度も優先国には特定されていない。 ② 89年から93年まで、日本は、一層の知的財産権保護政策を必要とするとして、監視国に指定されてきた。 ③ 94年には、日本の特許制度、特に、特許取得に長時間を要すること、付与前異議申立制度、狭いクレーム及び特許解釈等に懸念を有するとして、優先国には特定しないものの、「優先監視国」リストに記載された。 ④ 日米包括協議における「知的財産権WG」において、これらの問題を協議した結果、94年8月16日、両国間で特許制度に関する合意が成立し、米国の懸念の多くが払拭された。しかしながら、95年の特定においては、依然として、特許範囲の解釈が狭いこと等を理由に、「優先監視国」リストに記載されている。 また他の国に対しては、89及び90年においては、監視国及び優先監視国に指定される国はあったものの、優先国に特定される国はなかった。しかしながら、91年以降は、91年にインド、タイ及び中国、92年に台湾、93年にブラジル、94年に中国とそれぞれ特定されているが、いずれも合意が得られ、制裁発動には至っていない。
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