でんじ‐は【電磁波】
電磁波
【英】electromagnetic wave, radio wave
電磁波とは、電場と磁場が相互に組み合わさりながら、空間を伝達するエネルギーの波のことである。
電場とは、電気エネルギーが及ぶ範囲のことであり、磁場とは磁気エネルギーの及ぶ範囲のことである。その両者が互いに絡み合って電磁波が形成される。電気が流れたり、電波が通っている空間では必ず電磁波が発生している。電磁波が真空中を伝達する速度は光速と同じ、約30万キロメートル毎秒である。
電磁波は、1秒間に生じる電磁波の波の数である「周波数」で表され、周波数が高いほどエネルギーが高いとされている。周波数の高い順に、放射線(X線、ガンマ線)、紫外線、可視光線、赤外線、電波などの種類がある。
電磁波には、X線やガンマ線などの一般に放射線と呼ばれる「電離放射線」と、可視光とそれより周波数の低い「非電離放射線」の2種類に大別できる。電離放射線は、細胞などに直接的な影響を与えるため、国際的な安全基準が設けられている。非電離放射線は細胞などに直接的影響を与えないものの、人体への影響が懸念されており、電磁波による影響を抑えるための研究が行われている。
【電磁波】(でんじは)
電気と磁気の両方の特徴を持った、空間を伝わる波のエネルギーの事。
周波数により速度は変わるが、基本的には光の速さ(約30万km/s)で空間を伝わる。
周波数の高いものから
γ線 > X線 > 紫外線 > 可視光線 > 赤外線 > 電波
となる。
また電波の中では、波長の短い順に
EHF(ミリメートル波) < SHF(センチメートル波) < UHF(極超短波) < VHF(メートル波/超短波) < HF(短波) < MF(中波) < LF(長波/キロメートル波) < VLF(超長波) < ELF(極超長波)
となる。EHF~UHFは「マイクロ波」と呼ばれることもある。
略語は(E:Extra S:Super U:Ultra V:Very H:High M:Middle L:Low F:Frequency)
一般に電磁波は周波数が高い(波長が短い)ほど直進性が強く、解像度が高い(=情報伝送量が大きい)。
また、周波数が低い(波長が長い)ほど回折しやすく、空気中の水分で吸収されにくくなる。そのため長距離に届き、悪天候でも山向こうまで届かせることが出来る。
電磁波
電磁波
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/26 07:59 UTC 版)

電磁波(でんじは、英: electromagnetic wave)または電磁放射(英: electromagnetic radiation)とは、電場と磁場の変化を伝搬する波動のことである。
電磁波は波と粒子の性質を併せ持ち、散乱や屈折、反射、また回折や干渉など、波長によって様々な波としての性質を示す一方で、微視的には粒子として個数を数えることができる。
日常生活で知られる光や電波などは電磁波の一種である(詳細は「種類」の項目を参照のこと)。
理論
電磁波を説明する理論は、歴史的経緯や議論の側面によって光学、電磁気学、量子力学において統合的かつ整合的に扱われる。
電磁波は、その一種である光、特に可視光線について古くから研究されてきた。光の性質を研究する学問は、光学と呼ばれている。
光学とは別に、静電気(摩擦電気)や、磁石の磁力などの研究において、電場(電界)と磁場(磁界)という二つの場によって物理現象を記述することが試みられた。この学問を電磁気学といい、伝搬する電磁場の振動として電磁波の存在が知られるようになった。
量子力学は、古典的な電磁気学に反する現象が知られるようになり、電磁気学を修正する試みの中で構築された。これに伴い、電磁波の理論も量子力学、特に場の量子論(単に場の理論とも)によって記述されることになった。たとえば、自然放出や誘導放出などの電磁波の放出現象などは、量子力学的な粒子と場の相互作用によって説明される。
光学
波を伝える媒体(媒質)が存在しない真空中でも電磁波は伝わる。電場と磁場の振動方向は互いに垂直に交わり、電磁波の進行方向もまた電磁場の振動方向に直交する。つまり、電磁波は横波である。基本的に電磁波は空間中を直進するが、物質が存在する空間では、吸収、屈折、散乱、回折、干渉、反射などの現象が起こる。また、重力場などの空間の歪みによって進行方向が曲がる(歪んだ空間に沿って直進する)。
媒質中を伝播する電磁波の速度は、真空中の光速度を物質の屈折率で割った速度になる。例えば、屈折率が 2.417 のダイヤモンドの中を伝播する可視光の速度は、真空中の光速度の約 41 % に低下する。ところで、電磁波が異なる屈折率の物質が接している境界を伝播するとき、その伝播速度が変化することによって屈折が起こる。これを利用したものにレンズがあり、メガネやカメラ、天体望遠鏡などに使われ、電子回路の複写などにも利用されている。 なお屈折率は電磁波の波長によって異なるため、屈折する角度も波長に依存する。これを分散と呼ぶ。虹が七色に見えるのは、太陽光が霧などの微小な水滴を通るとき、分散があるために、波長が長い赤色光と波長の短い紫色光が異なる角度に屈折するためである。
電磁波は、特にその波長によって物体との相互作用が異なる。そこで、波長帯ごとに電磁波は違う呼び方をされることがある。すなわち、波長の長い方から、電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線(あるいはガンマ線)などと呼ばれる。我々の目で見えるのは可視光線のみだが、その範囲(波長 0.4–0.7 μm)は電磁波の中でも極めて狭い。可視光線の中では単色光の場合、赤、黄、緑、青、紫の順に波長が短くなる。そのため、ある基準よりも波長の長い電磁波を「赤い」、波長の短い電磁波を「青い」と表現することがある。
前述の通り、真空中では電磁波の速さは一定であるため、波長の長い電磁波は振動数が小さく、波長の短い電磁波は振動数が大きい。
電磁波には重ね合わせの原理が成り立ち、電磁波は線型性を持つことが知られる。線型性によって、電磁波を平面波、すなわち特定の振動方向と進行方向を持つ波の重ね合わせとして表現することができる。平面波はまた、同じ方向へ進む正弦波を用いて分解することができる。各々の正弦波は、波長、振幅、伝播方向、偏光、位相によって特徴付けられる。
ある電磁波を多くの正弦波の重ね合わせとみなしたとき、波長ごと、あるいは振動数ごとの成分の大きさの分布をスペクトルという。 例えば、理想的な白色光はすべての波長成分が一様に含まれている。逆に単色光は一つの波長成分だけを持つ。
電磁気学
1864年にジェームズ・クラーク・マクスウェルは、それまでに明らかにされていた、
- ファラデーの電磁誘導の法則
- アンペール=マクスウェルの法則
- 電場に関するガウスの法則
- 磁場に関するガウスの法則
という電磁場に関する四つの法則を統合することによって、マクスウェルの方程式を完成させた。これは電磁気学の基本原理である。電磁波は振動する電磁場であるため、マクスウェルの方程式によって電磁波も記述することができる。
マクスウェルの方程式は、電荷も電流もない空間では電場に対する波動方程式と磁場に対する波動方程式に帰着する。電磁場が波動方程式によって記述されるということは、電荷の運動に起因する電磁場の振動が波として空間を伝わるということである。マクスウェルの理論によって予想されたこの電磁波の存在は、1888年にハインリヒ・ヘルツによる実験で確認された。
また波動方程式から得られる真空中を伝播する電磁波の速さは一定である。そのため、相対性原理を仮定するならば、どのような慣性系についても、すなわち観測者がどのような方向と速度で動いていたとしても、観測される電磁波の速さは不変である。これを光速度不変の原理という。 その速さは真空中の光速に等しく 299792458 m/s(約 30万 km/s)である。光速度が不変であることは、有名なマイケルソン・モーリーの実験をはじめとして様々な実験により確かめられている。この真空中の光速は最も重要な物理定数の一つである。光速度不変の原理から、光速を用いて長さと時間の単位を定義することができる(メートル、秒の定義を参照)。
波動方程式の解として、電磁場が時間の関数と空間の関数の積で表されるような変数分離形のものを仮定すると、電磁場は調和振動子として記述されることが分かる。波動方程式の線型性から、このような変数分離形の解の線形結合もまた波動方程式を満たす解となるため、一般に電磁場は独立な調和振動子の集まりであると見なせる。
電場および磁場の波動方程式の導出
電場の波動方程式は、電磁誘導則の式について両辺の回転を取り:
電磁波は波長によって様々な分類がされており、波長の長い方から電波・光・X線・ガンマ線などと呼ばれる。
- 電波
- 波長が 100 μm 以上(周波数が 3 THz 以下)の電磁波すべてを指し、さらに波長域によって低周波・超長波・長波・中波・短波・超短波・マイクロ波と細分化される。
- 光
- 波長が 1 mm から 2 nm 程度のものを指し、波長域によって赤外線・可視光線・紫外線に分けられている。
- X線、ガンマ線
- 元々はX線は電子励起(及び制動放射等の電子由来の機構)から発生する電磁波、ガンマ線は核内励起から発生する電磁波というように発生機構によって区分けされているものであるが、大雑把に波長が 10 nm 以下のものをX線、さらに短い 10 pm 以下のものをガンマ線と呼ぶことも多い。はるかに短くなると、波長ではなく光子エネルギーで表すことが多く、人間が生成できる最大が1 GeVオーダー、観測上最大がガンマ線バーストによる1兆eVと言われる。
-
波長による電磁波の分類[注 1] 分類 波長/nm 周波数(振動数)/THz 光子のエネルギー/eV[注 2] ガンマ線 < 0.01 > 3 × 107 > 1 × 105 X線 0.01 – 10 3 × 107 – 3 × 104 1 × 105 – 100 紫外線 10 – 380 3 × 104 – 800 100 – 3 可視光線 380 – 760 800 – 400 3 – 1.6 赤外線 760 – 1 × 106 400 – 0.3 1.6 – 1 × 10−3 電波 > 1 × 105 < 3 < 0.01 マイクロ波 1 × 105 – 1 × 109 3 – 3 × 10−4 0.01 – 1 × 10−6 超短波 1 × 109 – 1 × 1010 3 × 10−4 – 3 × 10−5 1 × 10−6 – 1 × 10−7 短波 1 × 1010 – 1 × 1011 3 × 10−5 – 3 × 10−6 1 × 10−7 – 1 × 10−8 中波 1 × 1011 – 1 × 1012 3 × 10−6 – 3 × 10−7 1 × 10−8 – 1 × 10−9 長波 1 × 1012 – 1 × 1013 3 × 10−7 – 3 × 10−8 1 × 10−9 – 1 × 10−10 超長波 1 × 1013 – 1 × 1014 3 × 10−8 – 3 × 10−9 1 × 10−10 – 1 × 10−11 極超長波 1 × 1014 – 1 × 1017 3 × 10−9 – 3 × 10−12 1 × 10−11 – 1 × 10−14
なお、これらの境界は統一的に定められたものではない。学問分野・国ごとの法律・規格等によって多少の違いがある。
特徴
電磁波は波長によって様々な特徴を持つ。
最も波長の長い電波は、進行方向に多少の障害物があっても進行することができる。このため、通信や放送などの長距離の情報送信に使用されることが多い。テレビやラジオ、携帯電話などが代表的である。
電波よりも波長の短い光は、物質に吸収されて化学反応や発熱などの相互作用を生じることがある。この現象は眼が見える理由でもあるが、他に植物の光合成やリソグラフィーなどが該当する。
さらに波長が短いX線になると、光子の持つエネルギーが大きいため、分子に吸収されて熱振動に変わることはなく、物質を構成する電子などに直接作用する(分子の熱振動に比べて原子を構成する電子の励起エネルギーは大きい)。そのため比重の小さい物質ほどよく透過するようになる。この現象を利用することで、レントゲン写真やX線CTを撮影することができる。工業や自然科学の研究の場では、X線回折やX線光電子分光など物質の構造や元素の分析に用いられている。
X線やそれより短波長の領域は放射線の一種として扱われ、ガンマ線という呼ばれ方も使われる。X線とガンマ線の境は明確に定められてはいない。
X線よりさらに波長が短い領域になると、比重の重い物質で減衰は可能でも反射は困難となる。波長が1.2pm(10E-12m)程度より小さい領域では対生成を起こすようになる。
影響
本項では「悪影響」に関して記述している。
動物(ヒトを含む)への影響

紫外線などのエネルギーの大きな電磁波は、遺伝子に損傷を与えるため発癌性を持つ。X線・ガンマ線などの電離放射線については、年間許容被曝量が法律によって決められている。
低周波
低周波は、非電離放射線であるから遺伝子に直接には影響を与えないと考えられている[5]。
国際がん研究機関 (IARC) が2001年に行った発癌性評価では、送電線などから発生する低周波磁場には「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」 (Possibly carcinogenic to humans: Group 2B) と分類した[6]。静的電磁界と超低周波電界については「ヒトに対して発がん性を分類できない」 (cannot be classified as to carcinogenicity in humans) と分類された。
また、国立環境研究所 (NIES) が平成 9–11 年度に「超低周波電磁界による健康リスクの評価に関する研究」[7]を行った。
マイクロ波
高強度のマイクロ波には、電子レンジと同様に熱を生じるため生体に影響を与える可能性がある。このため、携帯電話などの無線機器などでは、人体の電力比吸収率 (SAR: Specific Absorption Rate 単位は[Watt/kg])を用いた規定値が欧州の国際非電離放射線防護委員会やアメリカ合衆国の連邦通信委員会などでは決められている[8]ほか、日本では国際非電離放射線防護委員会 (ICNIRP) の電波防護ガイドラインに基づき、周波数 300 GHz (波長 1 mm)までの電波について、人体への影響を評価している[9]。学会などでも比吸収率の計算(FDTD法)や人体を模した人体ファントムの組成の決定などが行われている。
調査
電磁波の健康への影響は調査自体が非常に難しい。一例を挙げると、アメリカ合衆国で公的機関国立環境健康科学研究所(英語: National Institute of Environmental Health Sciences)で Research and Public Information Dissemination(RAPID: 調査および公共への情報頒布)計画という国家単位での電磁波の健康に対する影響の研究が行われた。国立環境健康科学研究所 (NIEHS) が作成したパンフレットでは、臨床研究、細胞を用いた実験室での研究、動物を使用した研究、疫学研究の各分野を組み合わせ検証した結果でないと全体像が見えないと解説されている。 1995年、電磁波問題に関する調査報告書をアメリカ物理学会が発表。「癌と送電線の電磁波に関係があるという憶測には、何ら科学的実証が見られない」と声明。
1996年、全米科学アカデミーは
- 「細胞、組織そして生物(ヒトを含む)への商用周波電磁界の影響に関して公表されている研究の総合評価に基づき、現在の主要な証拠は、これらの電磁界への曝露が人の健康への障害となることを示していないと結論する。」
- 「特に、居住環境での電磁界の曝露が、ガン、神経や行動への有害な影響、あるいは生殖・成長への影響を生じさせることを示す決定的で一貫した証拠は何もない。」
1997年、アメリカ合衆国の国立癌研究所 (NCI) は 7 年間の疫学調査の結果から「小児急性リンパ芽球性白血病と磁場との関係は検知するにも懸念するにも微弱」であると発表。この調査の過程で、白血病患者の家庭と送電線の近隣での居住、双方に全く関係が見られなかった事が判明。これにより「関係がある」とされてきた統計学的分析結果は全てエラーデータとなり、1979年に疫学者ナンシー・ワートハイマー[注 3]とエド・リーパー[注 4]が作成した論文「小児白血病と送電線の磁場には関係がある (Electrical Wiring Configurations and Childhood Cancer)」[12]の主張が完全な間違いであることが証明される。NCI の調査結果は医学専門誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に掲載[13]。
アメリカ合衆国科学技術政策局は、それまでの送電線騒動の研究に費やされた予算を、送電線の移転、不動産価値の下落を含め 250 億ドル超と概算した。
1999年、カナダの五つの州において調査された結果が発表され上述の NCI の結果と酷似した結論が出される。
疫学調査の正確性に対し疑問が投げかけられることもたびたびある。日本では、2003年に衆議院議員の長妻昭によって、国立環境研究所が行った「生活環境中電磁界による小児の健康リスク評価に関する研究」[7]が国会で取り上げられた[14]。長妻はこの研究報告の電気毛布等の小児白血病・脳腫瘍発症への影響に関するデータについて触れ、15 歳以下の小児の電気毛布等の使用に関する健康リスク評価および電磁波の影響に対する評価の正当性に疑問を呈した。この研究について政府は「交絡要因除去のための調査データであり電気毛布使用に対する健康リスク評価は直接行っていない」とし、調査そのものの正当性に関する指摘に対しては「優れた研究ではなかった、との評価がなされたところである」と回答している。電磁波そのものの影響については「子供部屋の平均磁界強度が 0.4 μT 以上の場合のみ健康リスクが上昇すること等が示唆されているが、本研究の結果が一般化できるとは判断できない」と回答している。
- 世界保健機関 (WHO) による2007年時点での公式見解
- 2007年6月に公表された、世界保健機関の公式見解を示すファクトシート322 (PDF) では、短期的影響に関しては「高レベル(100 μT よりも遙かに高い)での急性曝露による生物学的影響は確立されており、これは認知されている生物物理学的なメカニズムによって説明されています。」と評価された。一方、潜在的な長期的影響に関しては「小児白血病」と「小児白血病以外のその他の健康への悪影響」に分けて評価されており、小児白血病に関しては「全体として、小児白血病に関する証拠は因果関係と見なせるほど強いものではありません」と評価され、その他の影響に関しては超低周波磁界(Extremely Low Frequency Magnetic Field, ELF 磁界)曝露とこれら全ての健康影響との関連性を支持する科学的証拠は、小児白血病についての証拠よりもさらに弱いと結論付けている。いくつかの実例(すなわち心臓血管系疾患や乳がん)については、「ELF 磁界はこれらの疾病を誘発しないということが、証拠によって示唆されています」と評価された。
- 世界保健機関による2011年時点での公式見解
- 2011年5月31日、WHO(世界保健機関)のIARC(国際がん研究機関)は、携帯電話の電磁波と発がん性の関連について、限定的ながら「可能性がある」とする分析結果を発表した[15]。携帯電話を耳にあてて長時間通話を続けると「脳などの癌を発症する危険性が上がる可能性がある (Group 2B)」とし、癌を発症する危険性を上げないための予防策としては、マイク付イヤホンを使用することを挙げた[15]。
- 作業部会のジョナサン・サメット (Jonathan Samet) 委員長は「神経膠腫(しんけいこうしゅ=グリオーマ = 脳のがんの一種)や、耳の聴神経腫瘍になる危険性を高めることを示す限定的な証拠がある」とした。なお、IARC 幹部は、文字のメールを打つ形での携帯電話の使用[注 5]は、発がん性との関連はないと説明した[15]。
- なお、IARC は論文を多数検討した上で「根拠はまだ限定的である。さらなる研究が必要」とも述べた[15]。asahi.com の大岩ゆり記者は「それでも IARC がこのような決定をしたのは、少しでも健康に害を及ぼす可能性があるものは早めに注意喚起する、という WHO の予防原則からだ」と解説した[15]。
機械への影響
現在のエレクトロニクス機器(電子機器)は、低電圧の信号を高インピーダンスで扱うことが普通であるため、環境中に強い電磁波が存在すると誤動作を生じやすい。その機器が誤動作を生じやすいか生じ難いかを測る指標としてイミュニティ (Immunity) がある。特に携帯電話からは比較的強い電磁波が発せられるため、航空機や医療機器などへの影響が多数報告されている。
日本における航空機への影響と対策
航空機に関しては、携帯電話、携帯型ゲーム機などの電磁波の影響による運行計器の誤作動が多数報告され、その中には大惨事になりかねない事態を引き起こした例もあったため、まず各航空会社で規制が行われるようになった。2004年には改正航空法によって禁止される機器が定められた。2007年3月に同法は改正され、携帯電話、パソコン、携帯情報端末など電波を発する状態にあるものは常時使用禁止、電波を発しない状態のものでも離着陸時使用禁止とし、携帯音楽プレーヤー、デジタルカメラ、テレビ、ラジオなども離着陸時使用禁止と定められた。
ゲーム機に関しては、「ニンテンドーDS」や「PlayStation Portable (PSP)」といった無線LAN内蔵の製品が存在しており機内での使用も増えているにもかかわらず、それらが2004年の改正航空法および航空法施行規則では「離着陸時のみ作動させてはならない電子機器」として指定されてしまっていて仮に無線LANの電波を発射させていても法律上取り締まれないという危険な状態であったが、各航空会社が規制を行い、その後2007年の改正で解消された。
2007年3月「航空機内における安全阻害行為等に関する有識者懇談会」の報告書では次のような症状が報告されている。
- 無線にノイズが発生
- 衝突防止装置が誤作動し、回避指示が出た
- 自動操縦で上昇している時に突然横方向に25度傾いた
- 自動操縦装置で水平飛行中、高度が設定値から 400 ft (122 m) ずれた
- 着陸時に自動操縦装置の表示が大きくズレて元に戻らなくなった
原因と推測されているのは携帯電話が 6 割強と最も多い。次いでパソコンが 1 割強。「障害が発生したケースの約 9 割において、電子機器を使用する者の存在が確認されている」とされ、「障害発生時に電子機器の使用を控えるようアナウンスしたところ、約 5 割で障害が復旧した」と報告されている。
2014年、規制緩和と常時接続できる設備が整ったため飛行中でも携帯電話での通話、インターネット接続、他、電子機器の利用が順次解禁となった[16]。
日本における医療機器への影響と対策
植込み型心臓ペースメーカーへ携帯電話から電磁波による影響があるのは、2018年の総務省調査では最大でも 1 センチメートル (cm) の距離までであった[17]。この影響も、患者自身が携帯電話を離すことが可能で、影響から回復できるという調査結果になっている。ただし指針では15 cm以上離れることを推奨している[18]。なお、2002年の総務省調査では影響があるのは11 cmであり、指針は22 cm以上であった[19]。距離が異なっているのは、現在使用されていない第2世代移動通信方式での調査であることに一因がある。
その他
日本の公正取引委員会は、電磁波によるネズミ撃退器について、効果が認められないとして排除命令を出したことがある[20]。
アメリカ軍は、電磁波を利用した非致死性兵器の研究を行っている(詳細はアクティブ・ディナイアル・システムを参照)。
脚注
注釈
- ^ 数値 A の前に付く不等号 "< A" は「A より小さい」、"> A" は「A より大きい」領域を表す。 また "A–B" とダッシュの両辺に数値 A, B がある場合、「A から B の間」の領域を表す。 10n は 10 の n 乗を表す。たとえば 103 は 10 × 10 × 10 = 1000 と同じ数であり、10−3 は 1/10 × 1/10 × 1/10 = 1/1000 = 0.001 と同じ数である。
- ^ 1 eV はおおよそ 1.6 × 10−19 J に相当する。したがってプランク定数を eV/THz 単位で表せばおよそ h = 4.1 × 10−3 eV/THz である。たとえば振動数 3000 THz(波長約 100 nm)の光子のエネルギーは 3000 × 4.1 × 10−3 eV = 12.3 eV となる。これは水素原子の第一イオン化エネルギー 13.6 eV と同程度の大きさである。
- ^ Nancy Wertheimer. 標準的なドイツ語ではヴェアトハイマー、ヴェルトハイマーなどに近い。
- ^ Ed Leeper
- ^ 耳から離し、頭蓋骨から離した状態で、手で操作して使用すること。
出典
- ^ Max Planck, Zur Theorie des Gesetzes der Energieverteilung im Normalspektrum, Deutschen Physikalischen Gesellschaft Verhandlungen 2, 1900, pp. 237–245. pdf.
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- ^ a b c d e 携帯電話の電磁波「発がんの可能性も」 WHOが分析 ウェブ魚拓
- ^ 機内でも病院でも スマホ利用、進む規制緩和日本経済新聞 2014年9月
- ^ 総務省「電波の植込み型医療機器及び在宅医療機器等への影響に関する調査等」報告書 平成30年3月
- ^ 各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器等へ及ぼす影響を防止するための指針 平成30年7月 [7]
- ^ 総務省報道資料, "電波の医用機器等への影響に関する調査結果", 平成14年7月2日 [8]
- ^ “(無題)”. 平成11年度 公正取引委員会年次報告. 公正取引委員会 (2010年3月31日). 2011年10月15日閲覧。
関連項目
外部リンク
電磁波
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 08:28 UTC 版)
電磁波(電磁放射)を対象とするものは、震源域からの放出を捉えるものと、伝播の異常を捉えるものに大別される。極超長波(ULF)から短波(HF)まで広い帯域の電磁波が観測対象となっている。なお、報告の多くは地震との時間的な関係のみが明らかでメカニズムの相関を明示したものは少ないとされている。 1980年近畿地方の深さ380kmで起きたM7.0の深発地震において、震央距離にして250km離れた長野県菅平で81kHzの空電(雷による電磁波パルス)の雑音強度が30分前から上昇し地震発生とともに元に戻ったことが報告されている(Gokhberg et al.,1982)。以降、グループによる研究が多く報告されている。電気通信大学のグループは関東地方周辺に観測網を展開した(茅野,1993)。防災科学技術研究所のグループは関東地方に設けた深さ300-800mのボアホール地中VLFアンテナで観測を行い、1994年北海道東方沖地震に先行して2日前からパルス数が増加し20分前にピークを迎えた後元に戻るという変化を観測した(防災科研,通信総合研究所,1995)。京都大学のグループは京都府宇治に設置したボールアンテナでLFとVLFの異常パルスの観測を行い、1993年北海道南西沖地震や、1995年兵庫県南部地震において1週間前から著しい増加があったという記録と共に地震発生の6時間半前に録画されたテレビ番組に色ずれ等のノイズが確認されるなど、前兆現象を捉えていたという報告もある。1989年ロマ・プリータ地震や1988年スピタク地震(M6.9)でも異常な電磁放射を観測したという報告がある(Fraser-Smith et al.,1990; Molchanov et al.,1992)。力武(1997)は電磁波に関する60の報告例から、以上から地震までの期間は平均0.26日間であり、この種の異常は本質的に短期的なものであると報告している。 Gufeld et al.,(1994)は1988年スピタク地震における観測から、VLF帯の電波の振幅と位相は、送信曲と受信局を結ぶ大円の範囲の電離層が地震の影響を受けていると変化する場合があると報告している。日本では早川ら(1996)、Molchanov et al.,(1998)が1995年兵庫県南部地震でこれに該当する観測例を報告しているほか、他のM6以上の地震10個でも同じような効果がみられることを報告している(Molchanov,早川,1998)。この報告では、VLF電波強度の日変化グラフ上に現れる日出没に伴う変化の時刻(ターミネータ・タイム)が地震の数日前から日の出は早く・日没は遅くなる変化があり、その原因は下部電離層のVLF反射高度が数km下がることで説明されるとしているが、その変化の根本原因は分かっていない。このほか、串田(1996)はFM放送の電波の流星反射を用いた観測法を報告しているが、気象庁が調べた2001年から2003年のM6以上の地震では、52件中3件の的中でしかなく防災情報としては役に立たないとしている。 Molchanov et al.(1993)は大地震の震源付近上空の人工衛星が異常な信号を捉えると報告しているが、後にいくつかの衛星観測プロジェクトが行われている。地震前兆としての電磁気観測を主要ミッションとする初の衛星は、2001年12月にロシアが打ち上げたCOMPASS-1である。COMPASS-1は打ち上げ後に故障し失敗に終わったが、2003年にはアメリカの民間企業がQuakeSatを打ち上げ、約11か月の間に数個の地震で先行する電磁放射を観測したと報告されている。2004年に打ち上げられたフランスのDEMETERの観測では、2年半の間に発生したM4.8以上の浅発地震9,000回において地震発生の0 - 4時間前にVLF帯の電波の明らかな減少が見られたと報告されているほか、2009年のサモア沖地震の7日前と2010年ハイチ地震の3日前にもそれぞれ電離層の擾乱を観測したという。 考えられるメカニズムとしては、地殻内の応力変化が石英などの帯電しやすい鉱物内での電気分極や微小破壊による電荷対形成を起こし電磁波の発生に繋がるという説がある。この節は破壊実験でも確かめられているが、実験室レベルでは試料が小さいためか高周波が主体になるという特徴がある。地殻は導電性を持つため電磁波が地中から地上に到達するまでに減衰するが、ULF(300-3kHz)より高い周波数では1km以深になると電磁波が地上に到達しないくらい減衰してしまう。このことから、電磁波は地表に近い地殻の浅いところから放出されているとする説もある。また、大気中では電離層と地表の間が導波管の役割をするため長距離伝播が可能だが、震源域上空で何らかの要因により電離層の密度や高度の乱れが起こることで伝播異常が起こるという説がある。
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「電磁波」の例文・使い方・用例・文例
- 電磁波
- 電磁波の測定によって地震の前兆を捉える事が出来る。
- 一日中コンピューターに向かってるから、結構電磁波。
- 電磁波.
- (電磁波)の周波数、振幅、位相、または他の特性を変える
- 敵の電子機器またはシステムの使用を混乱させる目的で電磁波を故意に放出したり反射させること
- パルスを生産する装置の短い爆発、振動、の要因の形で生産するあるいは調節する(電磁波として)
- 電磁波の伝播時間に基づいた遅延線
- 電磁波の誘導放射によるマイクロ波の増幅
- 電磁波を食物へ通すことでそれを調理する調理器具
- 電磁波を放送の基盤においた通信システム
- 空洞の大きさが電磁波や音波の共振をさせる
- ある種の放出(熱、光、音または電磁波)に向かって引き付けられる装置を装備しているミサイル
- 画像と音に相当する電磁波を送信、あるいは受信する電子装置
- 可聴周波数と赤外線周波数の間にある電磁波周波数
- かつて、すべての空間を充填し、電磁波の伝播を支持すると考えられた媒体
- 電磁波照射パターンで輪によって示される特定の方向へのアンテナの高められた応答
- あるポイントにおける瞬時の振幅の比率から、時間的に異ならない別のポイントにおける比率の波(伝送路のチャンバーまたは電磁波の音波として)
- 初めて人工的に電磁波を作り出したドイツの物理学者(1857年−1894年)
- 電気回路で振動によって生みだされた電磁波
電磁波と同じ種類の言葉
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