ひかり‐つうしん【光通信】
光通信
【英】Optical communications
光通信とは、情報やデータを光信号に変換して通信を行う方法のことである。多くの場合、光ファイバーケーブルを用いて信号を伝える方法が採用されている。
光通信は、銅線を用いる通常の電気信号通信と比べても、損失が低く、高速で広帯域であり、軽量で強度にも優れ、加えて電磁波の影響をうけない、といった優位性がある。
【光通信】(ひかりつうしん)
光を媒体とした通信手段のことを言う。
現代では、主に有線光通信(光ファイバー伝送)のことを言うが、狼煙や手旗信号、赤外線を用いた無線通信(リモコン等)もこの範疇である。
光は周波数の極めて高い電磁波であるため、指向性が高く、多くの情報を持たせることが出来る。逆に、その指向性の高さ故に、伝搬経路上の障害物を迂回することができず、大気中で使う場合、大気に吸収散乱される。
無線光通信
・狼煙
狼煙は最古の光通信と呼ばれる。煙(狼の糞etcなどを焼く)を上げて合図をする。漢(中国)では都と辺境を結ぶ伝送網があり、匈奴との戦で用いられた。現在でも万里の長城には、狼煙台が存在する。
・灯火(烽火)
火そのものによる合図。狼煙と同様に古くから使われた。
・腕木式通信機(セマフォア)
高い塔の上に置いた人の上半身に見立てたH型のアンテナのようなものを回転させ、文字を送るものである。いわゆる超大型の手旗通信である。10Km程の間隔で設置されており、塔を中継して伝送を行う。そのため、遠距離通信を維持するための手間はかなりかかるが、当時の通信手段としては画期的であり、ヨーロッパ中に張り巡らされた。勿論、かのナポレオンも有効活用した。初期の頃は軍事用通信であったが、後に民間にも開放された。telegraph:通信 という造語を作ったのも開発者(シャップ(仏))である。
(Link:シャップの腕木式通信システム http://www.ne.jp/asahi/okuyama/techis/1001/chappe.html)
・赤外線通信
電気無線通信に比べ、周波数が高いため、指向性や減衰率が高いので以下の特徴を持つ
・秘匿性が高く干渉が少ない
・データ伝送量が多くすることができる
・天気などにより減衰しやすい
・受光部と光経路の掃除が必要
・機器同士を向かい合わせる必要がある
屋内では現在、IrDAなどといったLEDを用いた近距離での安価な通信手段として用いられる。屋外では、ビル間など固定した場所で無線伝送として用いられる。
さらに、衛星間・衛星-高地の地球局間伝送手段としても考えられている。大気が無い宇宙では光の減衰率の高さを無視することが出来、逆に指向性が高いため装置を小型化することが出来ることが理由である。
有線光通信
専ら光ファイバーケーブル通信の事を指す。
材質は大きく分けて、レーザー光源を用いるガラス系GOF(シングルモードSMF・マルチモードMMF)とLED光源を用いるプラスチック系POF(MMFのみ)があり
値段:GOF(SMF) > GOF(MMF) > POF (高い順)
性能:GOF(SMF) > GOF(MMF) > POF (高い順)
と値段と性能は比例する。
ガラス系は長距離高速伝送に適するため、基幹伝送網に使用され、プラスチック系は安く曲げや衝撃に強いため近距離通信(高品質無線LAN etc)や照明などに用いられる。
研究室レベルでは、1Tbps(≒125Gbyte/s)という伝送速度も得られている。
有線電気通信と比較して
利点
・電磁波によるノイズに影響されず、ノイズを出さない(光に影響を及ぼす電磁波は光であるが、光は遮蔽が簡単)
・ケーブル一本あたりのデータ伝送量が大きく、長距離伝送が可能(光ファイバーはメタルケーブルよりも遥かに周波数が高い領域で使用され、遥かに低損失である。さらにWDMにより、1本のケーブルでパラレル伝送が可能である。メタルケーブルを高周波数で使用すると損失が大きくなる。)
・小さく軽い
欠点
・曲げに弱い(ガラスタイプは特に折れやすく、それでなくても急角度に曲げると減衰が大きくなりデータ伝送が上手くいかなくなる)
・光通信同士の接続が難しい(銅線のように巻くだけではなく、特別な機械・器具を必要とする)
・電子回路との接続(電子回路->(変換)->光ケーブル->(変換)->電子回路)
・材質自体の問題や、上記のことから一本単位では銅線よりも高くなる。
これらのことより、スケールメリットが出る大規模用途(基幹通信網)やノイズが気になる用途、伝送速度が欲しい用途で用いられる。
軍事用途としては、近年、対戦車ミサイルや魚雷の伝送ケーブルとして光ファイバーが用いられる。光ファイバーという軽いケーブルによって有線誘導が可能になった。
弾の進行に応じてリールによって引き出されていく光ファイバーケーブルであるため、欠点も存在する。
・弾も射手も動作が制約される(急激な機動を行うとケーブルが切断される)
・高いスピードが出せないこと(リールの速度や光ファーバーケーブルの強度)
・射程制限(光ファイバーケーブルの重量)
また、他には、航空機では、機内配線をフライバイワイヤーに変わり、フライバイライトが用いられることがある。このインターネット自体も軍事技術と呼べるのならば、基幹通信網、特に海底伝送系は光ファイバーである。
光通信
光通信
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/23 05:47 UTC 版)
「東北大学電気通信研究所」の記事における「光通信」の解説
光通信の三要素である発光素子(半導体レーザー)、光伝送路(グレーディッドインデックス(GI)型光ファイバー)、受光素子(アバランシェフォトダイオード)は本研究所で発明された成果である。 その後も光信号デバイス、光信号処理方式の研究は続き、2012年に光ナイキストパルスが開発され、2020年に1波で15.4Tbps、150㎞の信号伝送に成功している。
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光通信
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/13 15:06 UTC 版)
「シリコンフォトニクス」の記事における「光通信」の解説
典型的な光リンクでは、データを電気信号からまず光信号へと変換する際、電気光学変調器もしくは直接変調レーザを用いる。電気光学変調器は光キャリアの強度や位相を変化させるための機器であるが、シリコンフォトニクスにおいては、自由電荷キャリアの密度を変化させることにより光を変調する形式のものが一般的である。Sorefと Bennettの経験則にあるように、電子密度およびホール密度を変化させることでシリコンの複素屈折率を制御することができ、ここに光を通すことにより光変調が可能である。具体的には順バイアスPINダイオードおよび逆バイアスPN接合ダイオードを用いて光変調器を構成することができる。また、ゲルマニウム検出器と一体化されたマイクロリング変調器を備えたプロトタイプの光学的相互接続が実証されている。通信・データ通信分野で通常用いられるマッハ・ツェンダー干渉計などの非共振変調器は典型的にミリメートル程度の寸法で製造されるが、リング共振器のような共振デバイスは数十マイクロメートル程度の小ささで製造することができ、占有面積を節約できる。2013年、標準的なSOI CMOS製造プロセスを用いて製造可能な共振欠乏変調器が実証されている。SOIではなく、バルクCMOSでも同様のデバイスが実証されている。 受信機側では、光信号は典型的には半導体光検出器を用いて電気領域に戻される。キャリア生成に使用される半導体は、通常、光子エネルギーよりも小さいバンドギャップを有し、最も一般的には純ゲルマニウムが選ばれる。ほとんどの検出器はキャリア抽出にPN接合を使用するが、金属半導体接合(半導体としてゲルマニウムを使用)に基づく検出器もシリコン導波路に組み込まれている。より最近では、40 Gbit/sで動作可能なシリコン・ゲルマニウムアバランシェフォトダイオードが製造されている。完全なトランシーバは、アクティブな光ケーブルの形で商業化されている。 光通信はリンク長によって便宜的に分類される。シリコンフォトニック通信の大部分はいままでのところ、通信距離が数キロメートルの通信用途、もしくは数メートルの通信データ通信用途に限られていた。 しかし、シリコンフォトニクスは光リンクがセンチメートルからメートルの範囲で到達するコンピュータ内通信[訳語疑問点]においても重要な役割を果たすことが期待されている。実際、コンピュータ技術の進歩(およびムーアの法則の維持)はマイクロチップ間および内のより高速なデータ転送にますます依存してきている。光インターコネクト(英語版)は、技術進歩の方向性の1候補であり、シリコンフォトニクスは標準的なシリコンチップ上に集積することができれば、非常に有用となりうる。2006年、インテルの前上席副社長のPat Gelsingerは「今日、オプティクスはニッチ技術にすぎない。将来、オプティクスは我々が製造するすべてのチップの主流となる」と述べている。 光入出力(I/O)を備えた最初のマイクロプロセッサは、「ゼロ変化」CMOSフォトニクスと呼ばれる手法を用いて2015年12月に実証された。この最初の実証は45 nm SOIノードに基づいており、2×2.5 Gbit/sの速度で双方向チップ間リンクを動作させた。リンクの総エネルギー消費量は16 pJ/bと計算され、このほとんどがオフチップレーザの寄与であった。 オンチップレーザ光源が必要と考えている研究者もいれば、熱の問題(量子効率は温度が上がるにつれて下がるが、コンピュータチップは通常熱い)およびCMOS互換性の問題のために、オフチップにとどまるだろうと考えている研究者もいる。このようなデバイスの1つは、リン化インジウムなどのシリコンとは別の半導体をレーザ媒質として用い、これをシリコンとつなぐハイブリッドシリコンレーザである。他にも、シリコンをレーザ媒質として用いるオールシリコンラマンレーザー(英語版)にも可能性がある。 2012年、IBMは標準技術を用いて製造でき、従来のチップに組み込むことのできる90ナノメートル大の光学部品を達成したと発表した。2013年9月、インテルはデータセンター内のサーバ間接続向けに、直径約5mmのケーブルを用いて毎秒100ギガビットの速度でデータを送信する技術を発表した。これに対して、従来のPCI-Eデータケーブルのデータを伝送速度は最大8ギガビット、ネットワーキングケーブルでは40 Gbit/sである。また、USB3.1規格の最大転送速度は10Gbit/s以上である。ただし、この技術は電気信号および光信号を相互変換するために別の回路基板を必要とするという点で、既存のケーブルを直接置き換えるというものではない。この速度向上により、ラック上のブレードを接続するケーブルの数を減らしたり、プロセッサ、ストレージ、メモリを別々のブレードに分離することも可能となり、より効率的な冷却と動的構成を実現できる。 グラフェン光検出器は、現在はまだ電流発生容量においてオーダー1つ程度劣るものの、いくつかの重要な側面においてゲルマニウムのデバイスを上回る可能性を持っている。グラフェンのデバイスは非常に高い周波数で動作することができ、原理的にはより高い帯域幅に達する可能性がある。グラフェンはゲルマニウムより広い波長範囲を吸収することができる。この特性は、同じ光ビーム内でより多くのデータ流を同時に送信するために利用することができる。ゲルマニウム検出器とは異なり、グラフェン光検出器は印加電圧を必要とせず、これによりエネルギー需要を低減することができる。最終的に、グラフェン検出器は原則、より単純で安価なオンチップ集積化を可能にする。しかし、グラフェンは光を強く吸収しない。グラフェンシートとシリコン導波路を組み合わせると、光の経路が良くなり、相互作用を最大化する。そのようなデバイスは最初2011年に実証された。従来の製造技術を使用したデバイスの製造は実証されていない。
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光通信
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 14:54 UTC 版)
「日本の発明・発見の一覧」の記事における「光通信」の解説
インターネット技術の基礎となるハードウェア要素、光通信の三つの必須要素は、東北大学の西澤潤一によって発明された。それは、光源である半導体レーザー(1957年)、伝送線路であるグレーデッドインデックス光ファイバー(英語版)(1964年)、光受信器であるPINフォトダイオード(1950年)である。光通信は1963年に西澤によって提案された。1970年の林厳雄の連続波半導体レーザーの発明は、光通信の光源に直結し、日本の企業家によって商品化され、光通信の分野を切り開き、将来の通信ネットワーク(英語版)において重要な役割を果たした。彼らの業績は、情報化時代の基礎を築いた。
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光通信
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/22 02:42 UTC 版)
2012年に、南カリフォルニア大学のグループから、8つの異なる光渦信号を多重化することで、およそ1メートルの距離にわたって最大2.5 Tbit/sの自由空間伝送が報告されている。 長距離光ファイバシステムにおいて光渦多重通信を導入する際には、光渦状態をサポートしないシングルモードファイバの代わりに、マルチコアファイバか光渦ファイバを使用することが求められる。2012年に、ボストン大学のグループによって、20メートルの距離にわたって光渦モードが安定して伝搬することが示されており、以後さらなる改良が進められている。
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