接続部 (リンカー)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/14 20:38 UTC 版)
「抗体薬物複合体」の記事における「接続部 (リンカー)」の解説
ADCでは、抗体と細胞障害性薬剤(抗がん剤)を安定的に結合させる事が重要である。安定したADCリンカーは、腫瘍細胞に到達する前に細胞障害性ペイロードの脱落が少なく、安全性を向上させ、投与量を低減する事が出来る。 リンカーには、ジスルフィド、ヒドラゾン、ペプチド(開裂型)、チオエーテル(非開裂型)などの化学構造が採用されている。前臨床試験および臨床試験において、開裂型リンカーおよび非開裂型リンカーの安全性が証明されている。ブレンツキシマブ ベドチンは酵素感受性の切断可能リンカーを持ち、合成抗悪性腫瘍剤であるモノメチルアウリスタチンE(MMAE)をヒト特異性CD30陽性悪性腫瘍細胞に送達する事が出来る。MMAEは、微小管の重合を阻害する事で細胞分裂を抑制する。MMAEは毒性が強い為、単剤での化学療法には使用出来ない。しかし、抗CD30モノクローナル抗体(cAC10、腫瘍壊死因子(TNF)受容体の細胞膜タンパク質)と結合したMMAEは、細胞外液中で安定である。カテプシン(英語版)によって切断可能であり、安全に治療に応用出来る。トラスツズマブ エムタンシンは、微小管形成阻害剤メルタンシン(DM-1)と抗体トラスツズマブの組み合わせで、安定した非可逆的リンカーを採用した薬剤である。 より優れた安定したリンカーが利用出来る様になった事で、化学結合の機能が変化している。リンカーが切断可能か切断不可能かという性質は、細胞毒性薬に特定の特性を齎す。例えば、非開裂型のリンカーは薬剤を細胞内に留めておく。その結果、抗体、リンカー、細胞障害性(抗がん性)薬剤の全体が標的となるがん細胞に入り、そこで抗体はアミノ酸へと分解され、細胞障害性薬剤が細胞内に放出される。一方、開裂型のリンカーは、がん細胞内の酵素によって切り離される。このとき、細胞毒を持つ薬剤は標的細胞から脱出し、傍細胞効果と呼ばれるプロセスで、近隣の細胞を攻撃する事が出来る。 現在開発中の開裂型リンカーは、細胞毒と切断部位の間にもう1分子を追加するものである。これにより、開裂速度論を変える事なく、より柔軟性のあるADCを作成出来る。現在、ペプチド中のアミノ酸を配列決定する方法であるエドマン分解に基づく、新しいペプチド切断法が開発されている。また、部位特異的複合体化(TDC)や、安定性と治療指数をさらに向上させる新規複合体化技術、α線放出型免疫複合体、抗体複合体ナノ粒子、抗体オリゴヌクレオチド複合体の開発も行われている。
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