時間 時間の有限・無限

時間

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/24 06:19 UTC 版)

時間の有限・無限

時間の長さ、ということは、世界観とも深くかかわっている。世界というのを、肉眼で感じないものも含めて意識するか、その世界と現世の関係をどうとらえるか、あるいは自分が肉眼で感じているものだけに世界を限定してしまうか、ということで時間という概念が根本的に変わってくるからである。

時間の長さ

古代宗教の節、ユダヤ教の節、古ゲルマンの節で解説したように、時間は円環して無限に続いている考え方が古来ある。一方で(#ユダヤ教・キリスト教で解説したように)キリスト教では直線的で有限だということになっている。

始まり

世界各地の神話では、世界宇宙)には始まりがあったとされている。中国の神話には「天地開闢」の話があり、日本神話にも(日本なりの)天地開闢の話がある。『旧約聖書』の「創世記」にも神が世界を創造したと記されている(天地創造)。

物理学においては、1927年にベルギーのジョルジュ・ルメートルが「宇宙は primeval atom(原始的原子)の“爆発”から始まった」とする説(ビッグバン仮説)を発表した。

時間の構造

直線的な時間

ニュートン力学における時間は、無限の過去から無限の未来へ続く直線であり、これは数直線同型である。また相対性理論においても一人の観測者が感じる時間、すなわちひとつの質点に固定された時計が計る時間(固有時)は、同様に数直線と同型である。これは、時間の原点が意味を持たないためである。

線分的な時間

時間が無限の過去から無限の未来へ続くのではなく、始まりと終わりのある有限なものという考えもある。たとえば、前述のアウグスティウス的な時間観においては、時間は神によって創造されたものであり、始まりを持つ。これは世界宇宙の始まりと終わりを考えることと同じことになる。世界各地の神話における世界の始まりについては「天地創造」や「天地開闢 (日本神話)」「天地開闢 (中国神話)」に詳しい。また世界の終わりについては「終末論」に詳しい。「宇宙論」も参照のこと。

虚数時間

スティーヴン・ホーキングとジェームズ・ハートルは1983年に発表した無境界仮説において、複素数にまで拡張した時間を計算に使用した。ここから、宇宙の始まりでビッグバン以前の時間が虚数であれば時間的特異点が解消されるとも主張した。なお、相対性理論では時間軸として虚数表現 icti は虚数単位、c光速t は時刻)を使うことがありこれを虚時間とも言うが、これは無境界仮説での虚数時間とは別のものである。

時間の最小単位

古典物理学(量子論以前の物理学)における時間は連続体であり、実数で表せる。つまり時間はいくらでも細かく分割可能なものである。だが物質の最小単位として原子や素粒子があるように、時間にも最小単位があるのではないかとも考えられる。例えば映画フィルムのように一コマ以下の時間は存在しないという考えである。物理学(量子力学)ではこの最小時間間隔をプランク時間と呼ぶ。

分岐時間

時間が木のように枝分かれするという時間観。分岐後は複数の異なる歴史の世界が同時進行しているのだが、これらの同時進行する世界同士を互いに並行宇宙または並行世界パラレルワールド)であると言う。

量子力学の観測問題の解決のためのひとつの仮説である多世界解釈も分岐時間の考えを使っている[注 6]

物語・SFなどでの時間

時間進行の操作

時間の進行を速くする、遅くする、停止するというアイディアは昔から見られる。例えば浦島太郎リップ・ヴァン・ウィンクルのように特定の場所や状況で時間の進行が異なるという昔話がある。現在の科学の用語と絡めて語られる設定としては、"相対性理論を応用して亜光速の宇宙船に乗る"、"ブラックホール等の重力ポテンシャルの異なる場所を通る"などといったものがある。

時間そのものの進行を変える、とするものではないが、関連するテーマとして、主観的な時間が止まったり生理的な反応を遅くするという発想もある。現実の医療現場における全身麻酔状態の患者や昔話の眠れる森の美女などをそれと見なすことも可能である。SFの分野などでは、「人工冬眠」「コールドスリープ」「冷凍保存」といった設定が見受けられる。

時間進行の逆転

SFなどで、ある物体や場所など宇宙の一部分のみの時間を逆転することで、壊れた物を元に戻したり、死人をよみがえらせたり、無くしたものを取り戻したりできる、という設定が用いられることがある[33]

タイムトラベル

時間の中を移動して、過去や未来へ行くというアイデア。こういったストーリーの初期のものとしてはH・G・ウェルズの小説『タイムマシン』(1895年)が有名である。

未来の予知

SFには、超能力者が未来のことをESP(超感覚的知覚)を用いてあらかじめ知る、すなわち予知する、という物語が数多く存在する。タイムトラベルとは異なり過去や未来に直接関与するのではないが、いわば情報のみをタイムトラベルさせるとも言える。情報のタイムトラベルにおいても、それを知った者の行動が変わることで未来を変える可能性があるため、タイムパラドックスを生むと考えられている[34]

ループ

SF作品の中には、通常の時間の流れから切り離された部分的な円環時間の中に閉じこめられる、というアイディア(「ループもの」)が登場するものがある。

バラバラな時間

一部のSF等に登場する、時間に因果律や連続性は存在せずバラバラな「瞬間」が並んでいるだけ、という考え[35]

因果律や連続性があるように感じるのは人間の錯覚ということになる。因果律が存在しない以上、たとえ「過去」を改変したとしても、以降の歴史には影響がでない。従ってタイムパラドックスも生じない。


注釈

  1. ^ 認識の基礎形式であり、もともと人間の認識の根底部分に、思考や認識と不可分の状態で横たわっており、逆に言うと、時間を人間の認識から分離して、客観的な対象として認識することがきわめて困難なため。
  2. ^ 時を川にたとえて川が流れていても本当は時間が流れているわけではなく、また時計の針が回っていても、回っているのはあくまで針なのであって、本当は時間がぐるぐる回っているわけではない、とも金田一秀穂は指摘した。
  3. ^ ラテン語形: Caerus
  4. ^ ただし湯川秀樹は、ニュートンは自然の空間や時間が本当は均一ではない、と睨んでいたからこそ、あえて自らの体系の中で仮想されている空間や時間を「絶対空間」や「絶対時間」と呼んだのだ、といったことを指摘している[15]
  5. ^ ヘルマン・ミンコフスキーにより示された通り、ローレンツ変換はこの4次元空間の座標軸の回転と見なせる。
  6. ^ タイムトラベルを扱うSFや疑似科学ではタイムパラドックスの解消のために分岐時間を使う、などという設定、発想が多く見られる。

出典

  1. ^ a b 「日本国語大辞典-第六版」小学館 2001年6月
  2. ^ a b 「広辞苑-第五版」岩波書店 1998年11月
  3. ^ a b c 「国語辞典-第六版」岩波書店 2000年11月
  4. ^ a b 「大辞林-第三版」三省堂 2006年10月
  5. ^ a b 「日本語大辞典」講談社 1989年11月
  6. ^ a b 『大辞泉』
  7. ^ a b c d e 『NHK高校講座 あらためまして ベーシック国語「比喩表現」』金田一秀穂解説担当。
  8. ^ アウグスティヌス『告白』第11巻第14節
  9. ^ a b 曜日の話”. 2011年4月12日閲覧。
  10. ^  国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 p.99、産業技術総合研究所、計量標準総合センター
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 阿部正雄「時間」『宗教学辞典』東京大学出版会、1973年。
  12. ^ a b 『Newton』別冊「時間とは何か」改訂版 2013年5月13日
  13. ^ アウグスティヌス『告白』第11巻第14節
  14. ^ a b c d e f g h i j k l 安部謹也『世界大百科事典』、1988年。
  15. ^ 出典:『湯川秀樹著作集』岩波書店。
  16. ^ 『アインシュタイン自伝ノート』東京図書、1978年9月。ISBN 448901127X p.77-80
  17. ^ 吉田伸夫 『明解量子重力理論入門』 講談社、2011年、61頁。ISBN 978-4-06-153275-5 
  18. ^ a b ロバート・L・フォワード 『SFはどこまで実現するか 重力波通信からブラック・ホール工学まで』 久志本克己訳 講談社〈ブルーバックス〉、1989年、247頁
  19. ^ 培風館『物理学辞典』
  20. ^ Bizarre quantum experiment suggests time can run backwards”. Daily Mail Online (2015年2月10日). 2017年12月15日閲覧。
  21. ^ 寺田寅彦「映画の世界像」寺田寅彦全集第八巻岩波書店 1997年 所収 p150
  22. ^ ピーター・コヴニー;ロジャー・ハイフィールド「時間の矢、生命の矢」草思社 1995年3月 p28
  23. ^ 田崎秀一「カオスから見た時間の矢―時間を逆にたどる自然現象はなぜ見られないか」(ブルーバックス)講談社 2000年4月 p18
  24. ^ Arthur Stanley Eddington "The nature of the physical world (The Gifford lectures)" MacMillan (1943) ASIN B0006DFTN4
  25. ^ ウィキペディア英語版 "時間の矢"
  26. ^ 戸田盛和「物理読本(1) マクスウェルの魔―古典物理の世界-」岩波書店 1997年10月 p108
  27. ^ 藤原邦男;兵頭俊夫「熱学入門―マクロからミクロへ」東京大学出版会 1995年6月 3章
  28. ^ a b c 長倉三郎、他(編)「岩波理化学辞典 - 第5版」岩波書店 1998年2月 "可逆性"、"時間反転"
  29. ^ 渡辺 慧 「時間の歴史―物理学を貫くもの」東京図書 1987年5月
  30. ^ a b 吉永 良正(編)「時間とは何か?(別冊日経サイエンス 180)」日経サイエンス 2011/08
  31. ^ a b マジョリー・F・ヴァーガス、石丸正訳 『非言語コミュニケーション』 新潮社〈新潮選書〉、1987年、173頁。 
  32. ^ 本川達雄『ゾウの時間、ネズミの時間』中央公論社、1992年、ISBN 4121010876
  33. ^ 鋼屋ジン 古橋秀之 「斬魔大聖デモンベイン 軍神強襲」 角川スニーカー文庫 2006/8
  34. ^ ロバート・L・フォワード 『SFはどこまで実現するか 重力波通信からブラック・ホール工学まで』 久志本克己訳 講談社〈ブルーバックス〉、1989年、259頁
  35. ^ 山本弘「トンデモ本?違う、SFだ!」 洋泉社 2004年7月






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