時間の遅れ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/31 04:48 UTC 版)

時間の遅れ(じかんのおくれ、英語: time dilation)は、相対性理論が予言する現象である。2人の観測者がいるとき、互いの相対的な速度差により、または重力場に対して異なる状態にあることによって、2人が測定した経過時間に差が出る(時間の進み方が異なる)。
時空の性質の結果として[2]、観測者に対して相対的に動いている時計は、観測者自身の基準系内で静止している時計よりも進み方が遅く、または早く観測される。また、観測者よりも強い(または弱い)重力場の影響を受けている時計も、観測者自身の時計より遅く、または早く観測される。いずれも静止している観測者や重力源から無限遠方の観測者を基準として、時計の進み方が「遅い」と表現される。このような時間の遅れは、片方だけを宇宙飛行に送った1組の原子時計の時間のわずかなずれや、スペースシャトルに搭載された時計が地球上の基準時計よりもわずかに遅いこと、GPS衛星やガリレオ衛星の時計が早く動くようになっていること[1][3][4]、東京スカイツリーの展望台に置かれた光格子時計が地上のそれよりわずかに進んでいる事[5][6][7][8]で実証されている。時間の遅れは、SF作品において未来への時間旅行の手段を提供するために使われることがある[9]。
速度における時間の遅れ

特殊相対性理論では、基準となる慣性系内の観測者から見ると、観測者に相対して動いている時計は、観測者の基準系内で静止している時計よりも時間の進みが遅くなって観測されることを示している。相対速度が速ければ速いほど時間の遅れは大きくなり、光速 (299,792,458 m/s) に近づくにつれて時間の進み方がゼロに近くなる。これにより、光速度で移動する質量のない粒子が時間の経過の影響を受けないということになる。
静止している観測者の時間の刻み幅を
時間の遅れ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 06:56 UTC 版)
「時間の遅れ」も参照 相対性理論では、相対的に移動する時計は静止している観測者からは遅く動いて見える。移動する時計の時刻は、静止している時計の時刻を用いて、ローレンツ変換の式から変形することで次のように表される。 t ′ = t 1 − ( v c ) 2 {\displaystyle t'=t{\sqrt {1-\left({\frac {v}{c}}\right)^{2}}}} 静止している系と運動している系の両方の観測者は、相手の系が自身に対して相対的に動いているために相手の時計が遅れていると見ることができる。その様子は時空図でFig.4-1のように図示できる。 Fig.4-2で詳しく述べる。黒色の座標軸の観測者から見ると、事象Aと同時に起こるすべての事象は、黒色の空間軸と平行な直線状に位置する。この直線はAとBを通過しているので、黒色の座標軸の観測者は事象Aと事象Bは同時に発生すると観測する。しかし、この黒色の座標軸の観測者と相対的に移動している青色の座標軸の時計は、青色の時間軸に従って時刻を刻んでいる。ゆえに、黒色の座標軸の観測者は自分の時計がOからAまでの距離で表される時刻を読み取っている一方で、青色の座標軸の時計の時刻はOからBまでの距離で表される時刻を表示していると観測され、OA>OBより、青色の座標軸の時計が遅く進んでいると見ることができる。 一方、青色の座標軸の観測者から見ると、事象Bと同時に起こるすべての事象は、青色の空間軸と平行な直線状に位置する。この直線はBとCを通過しているので、青色の座標軸の観測者は事象Bと事象Cは同時に発生すると観測する。しかし、青色の座標軸の観測者がBに到達した際、黒色の座標軸の時計はまだCにしか到達しておらず、OB>OCより、黒色の座標軸の時計が遅く進んでいると見ることができる。 以上より、時空図上のどの2つの事象を同時であると認識するかは観測者によって異なる。ゆえに「どちらの時計が本当に遅れているのか」といった問いは意味をなさず、時間は相対的なものであることが分かる(同時の相対性)。
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