時間 ギリシャ神話

時間

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/24 06:19 UTC 版)

ギリシャ神話

ギリシャ神話には時にまつわるが二柱ある。カイロス (Καιρός, Kairos)[注 3] は一瞬を表す神であり、もう一柱のクロノス (Χρόνος, Khronos) は連続した時を表す神である。

古代ギリシア

ある哲学者らは、時間をのように回り続けるイメージで捉えた。時間を円と考えると時間に始まりや終わりがあるかないかという面倒な問題が避けられる利点がある。似た考えは、マヤや古代インド文明などにも存在した[12]

古代ローマ

カルペ・ディエム」の句が上部に掲げられた日時計

古代ローマのホラティウス(紀元前65年 - 紀元前8年)が詩に残したCarpe diemカルペ・ディエムという句は、直訳では「その日を摘め」、つまり「今日という一日を大切にしなさい」「今という時をよく味わいなさい」という意味である。人々がつい忘れがちなことを思い出させてくれる深みのある句として、現在に至るまで繰り返し引用されている。

ユダヤ教・キリスト教

ユダヤ教には円環的な時間観も見られ、その影響がキリスト教にも見られはするが、キリスト教にはそれを超えた反復不可能の一回的な時間観がある[11]

キリスト教の時間観にとって決定的なことは、神の子の受肉としてのイエス・キリストこの世への到来、その復活という、歴史のただなかへの一度かぎりなされたとされる神の啓示である[11]。これは反復されない、一回的で決定的な出来事とされ、それを唯一の根源としてキリスト教の救済史観が成り立っている。

キリスト教では、神の創造もただ一度で完了した過去の業にすぎないものではなく、それと同時に伝統的に「不断の創造」として現在の事実とされ、R.K.ブルトマンやC.H.ドッドなどは終末についても現在性があると指摘している[11]

キリストの出来事が歴史の中心とされ、それを通して創造や堕罪、終末再臨が理解される時、これらのことは不可逆的な直線的時間の上に配置され、また現在の事実として主体的に反復される[11]

アウグスティヌス

時間をめぐる考察が厄介である事を示すためにしばしば引用されるアウグスティヌスの有名な言葉に、「私はそれについて尋ねられない時、時間が何かを知っている。尋ねられる時、知らない[13]」というものがある。

アウグスティヌス(354年 - 430年)は時間を内面化して考えた。時間はと無関係に外部で流れているようなものではない。過去、現在、未来と時間を3つに分けて考えるのが世の常だが、過去とは《すでにないもの》であり、未来とは《いまだないもの》である。ならば在ると言えるのは現在だけなのか。過去や未来が在るとすれば、それは《過去についての現在》と《未来についての現在》が在る。過去についての現在とは《記憶》であり、未来についての現在とは《期待》、そして現在についての現在は《直観》だとアウグスティヌスは述べる。時間とは、このような心の働きである。「世界創造以前には何をしていたのか?」と問う人がいるが、アウグスティヌスによれば、こうした問いは無意味である。なぜなら、時間そのものが神によって造られたものだから、創造以前には時間はなかった。神は永遠であり、過ぎ去るものは何もなく、全体が現在にある。


注釈

  1. ^ 認識の基礎形式であり、もともと人間の認識の根底部分に、思考や認識と不可分の状態で横たわっており、逆に言うと、時間を人間の認識から分離して、客観的な対象として認識することがきわめて困難なため。
  2. ^ 時を川にたとえて川が流れていても本当は時間が流れているわけではなく、また時計の針が回っていても、回っているのはあくまで針なのであって、本当は時間がぐるぐる回っているわけではない、とも金田一秀穂は指摘した。
  3. ^ ラテン語形: Caerus
  4. ^ ただし湯川秀樹は、ニュートンは自然の空間や時間が本当は均一ではない、と睨んでいたからこそ、あえて自らの体系の中で仮想されている空間や時間を「絶対空間」や「絶対時間」と呼んだのだ、といったことを指摘している[15]
  5. ^ ヘルマン・ミンコフスキーにより示された通り、ローレンツ変換はこの4次元空間の座標軸の回転と見なせる。
  6. ^ タイムトラベルを扱うSFや疑似科学ではタイムパラドックスの解消のために分岐時間を使う、などという設定、発想が多く見られる。

出典

  1. ^ a b 「日本国語大辞典-第六版」小学館 2001年6月
  2. ^ a b 「広辞苑-第五版」岩波書店 1998年11月
  3. ^ a b c 「国語辞典-第六版」岩波書店 2000年11月
  4. ^ a b 「大辞林-第三版」三省堂 2006年10月
  5. ^ a b 「日本語大辞典」講談社 1989年11月
  6. ^ a b 『大辞泉』
  7. ^ a b c d e 『NHK高校講座 あらためまして ベーシック国語「比喩表現」』金田一秀穂解説担当。
  8. ^ アウグスティヌス『告白』第11巻第14節
  9. ^ a b 曜日の話”. 2011年4月12日閲覧。
  10. ^  国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 p.99、産業技術総合研究所、計量標準総合センター
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 阿部正雄「時間」『宗教学辞典』東京大学出版会、1973年。
  12. ^ a b 『Newton』別冊「時間とは何か」改訂版 2013年5月13日
  13. ^ アウグスティヌス『告白』第11巻第14節
  14. ^ a b c d e f g h i j k l 安部謹也『世界大百科事典』、1988年。
  15. ^ 出典:『湯川秀樹著作集』岩波書店。
  16. ^ 『アインシュタイン自伝ノート』東京図書、1978年9月。ISBN 448901127X p.77-80
  17. ^ 吉田伸夫 『明解量子重力理論入門』 講談社、2011年、61頁。ISBN 978-4-06-153275-5 
  18. ^ a b ロバート・L・フォワード 『SFはどこまで実現するか 重力波通信からブラック・ホール工学まで』 久志本克己訳 講談社〈ブルーバックス〉、1989年、247頁
  19. ^ 培風館『物理学辞典』
  20. ^ Bizarre quantum experiment suggests time can run backwards”. Daily Mail Online (2015年2月10日). 2017年12月15日閲覧。
  21. ^ 寺田寅彦「映画の世界像」寺田寅彦全集第八巻岩波書店 1997年 所収 p150
  22. ^ ピーター・コヴニー;ロジャー・ハイフィールド「時間の矢、生命の矢」草思社 1995年3月 p28
  23. ^ 田崎秀一「カオスから見た時間の矢―時間を逆にたどる自然現象はなぜ見られないか」(ブルーバックス)講談社 2000年4月 p18
  24. ^ Arthur Stanley Eddington "The nature of the physical world (The Gifford lectures)" MacMillan (1943) ASIN B0006DFTN4
  25. ^ ウィキペディア英語版 "時間の矢"
  26. ^ 戸田盛和「物理読本(1) マクスウェルの魔―古典物理の世界-」岩波書店 1997年10月 p108
  27. ^ 藤原邦男;兵頭俊夫「熱学入門―マクロからミクロへ」東京大学出版会 1995年6月 3章
  28. ^ a b c 長倉三郎、他(編)「岩波理化学辞典 - 第5版」岩波書店 1998年2月 "可逆性"、"時間反転"
  29. ^ 渡辺 慧 「時間の歴史―物理学を貫くもの」東京図書 1987年5月
  30. ^ a b 吉永 良正(編)「時間とは何か?(別冊日経サイエンス 180)」日経サイエンス 2011/08
  31. ^ a b マジョリー・F・ヴァーガス、石丸正訳 『非言語コミュニケーション』 新潮社〈新潮選書〉、1987年、173頁。 
  32. ^ 本川達雄『ゾウの時間、ネズミの時間』中央公論社、1992年、ISBN 4121010876
  33. ^ 鋼屋ジン 古橋秀之 「斬魔大聖デモンベイン 軍神強襲」 角川スニーカー文庫 2006/8
  34. ^ ロバート・L・フォワード 『SFはどこまで実現するか 重力波通信からブラック・ホール工学まで』 久志本克己訳 講談社〈ブルーバックス〉、1989年、259頁
  35. ^ 山本弘「トンデモ本?違う、SFだ!」 洋泉社 2004年7月






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