アリ アリの概要

アリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 03:23 UTC 版)

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アリ科
生息年代: 130–0 Ma
白亜紀 - 現世
ヒアリ(ファイアーアント)
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: ハチ目 Hymenoptera
亜目 : ハチ亜目 Apocrita
下目 : 有剣下目 Aculeata
上科 : アリ上科 Formicoidea
: アリ科 Formicidae
学名
Formicidae
Latreille1809
英名
Ant

分布

熱帯から冷帯まで、砂漠草原森林など陸上の様々な地域に分布する。人為的に分布を広げている種もある。

特徴

Pachycondyla verenaeの働きアリの形態と各部の名称

基本的にはハチと共通の特徴を持つ。体はおおむね円筒形で細長く、頭部、胸部、腹部のそれぞれの間がくびれ、大きく動かすことができる。腹部の前方の節が細くくびれて柄のようになった「腹柄節」は昆虫でもアリだけにある器官であり、狭い穴の中での生活に適応すべく役割を果たしている。体色は黒いものが多いが、黄色、褐色、赤色などの種類もいる。

頭部には大顎が発達し、餌をくわえたり外敵に噛みついたりできる。複眼はあるが、単眼は退化するものが多い。複眼まで退化する場合もある。1対の触角が発達しており、その基部の節が特に長く、「柄節」と呼ばれる。そのため触角全体としてはこの節の先で折れ曲がり、くの字型をなす例が多い。

胸部は体の中央にまとまっているが、これは実際には四つの節からなり、前中後3節の胸部に、腹部第1節が癒合したものである。歩脚3対はよく発達する。

腹部前端には柄のように狭まった部分があり、これを腹柄部という。腹柄部は一節ないし二節からなる。後端にはハチと同じように毒腺を持ち、で刺すことのできる種も少なくない。

社会性昆虫であり、同種であっても、カーストによって形態が異なる。繁殖をする雌雄(雄と女王)、それに働き蟻(雌)は形態的に区別できる。働き蟻の中に、さらに複数の形態差が見られる場合もある。繁殖行動を行う雄アリと雌アリにはがある。女王は、後に翅を切り離して無翅になる。それに対して、働き蟻は当初から翅を持たない。数の上では、これが圧倒的に多いので、一般的にはアリは無翅の昆虫との印象がある。

針と毒腺

日本で人家の周囲に見られるアリの多くは針を持たず、持っていても針が脆弱であまり刺さない種類が多い。しかし、特殊化の進んだヤマアリ亜科やカタアリ亜科のアリを除けば、系統的には針を持つものが多数派である。熱帯には、積極的に針で攻撃する種が多い。かなり高等な分類群でも、フタフシアリ亜科は針を持つ。

針を持たないか、刺すほど強靭な針を持たないアリは多くの場合、毒液を敵や獲物の体表に付着させたり飛ばしたりして相手を攻撃する[要出典]。針を持つ種類はハチと同様に針を使って毒液を注入する。毒液の主成分は蟻酸とされていることが多い[要出典]が、これはヤマアリ亜科に限られる。これと同様に針を持たないカタアリ亜科や、針を持つフタフシアリ亜科の中でも、刺すだけではなく噴き出した毒液を直接相手にかける使い方もする。シリアゲアリ属のアリは、別の種類の刺激性物質が主成分である。針で刺して攻撃するアリの毒は、多くのハチと同様、タンパク質ペプチドその他の生理活性物質の混合物である。

熱帯性の大型種のは、刺した時にスズメバチと同程度の激しい症状を引き起こす。日本でも、暖地にある人家周辺に多いハリアリ亜科のオオハリアリ、寒冷地では草木の上でよく活動しているフタフシアリ亜科のクシケアリ類がかなり強力な毒針を持つ。また人家内に生息するフタフシアリ亜科のイエヒメアリも、微細ながら積極的に針で人体を刺すため、ちくちくした不快感をあたえる被害がある。

生態

食性

アリの食性の基本は肉食だが、種類によって草食、菌食、雑食が分化している。生きた動物を襲う種類から自ら栽培した菌類を主食にする種類まで、多種多様な食性が知られているが、エネルギー源として植物の蜜やアブラムシの甘露、タンパク質源として肉食をする種が多い。肉食の種では、特に土壌性の小型種で、トビムシムカデササラダニなど、ほぼ特定の生物のみを襲って獲物にしている種が多く知られている。

巣の外で餌を見つけると、その場で摂食して素嚢に納めて巣に持ち帰る場合もあるが、丸ごと、あるいは刻んで運ぶ行動がよく知られている。中には、砂粒に蜜をまぶして持ち帰るような、道具を使うアリもいる。その際、アリ達が列をなして行き来するのが見られるが、これは同じ家族の働き蟻によって通り道に残された足跡フェロモンをたどって行くことによるもの。古くはアリは道を覚えて歩くと考えられており、ファーブルの存命時にはこれが解明されていなかった。ちなみにアリ達がなんらかの原因で円を描くように列をなすと、足跡フェロモンをたどる習性が仇となり、延々と渦を巻くように力尽きるまで回り続けることがある[2]

社会

アリは - 幼虫 - - 成虫という完全変態を行う。卵から蛹までを保護しながら家族単位で生活することがよく知られている。蛹では繭を作る種類と作らない種類がある。いわゆる社会性昆虫の代表格であり、真社会性を持つが、実際にはかなりの多様性を含んでいる。

成虫は性別や役割に応じて「女王アリ」「働きアリ」「兵隊アリ」「雄アリ」「新女王アリ」と分化していることが一般的によく知られている。一般的には、雄アリと女王が交尾し、その後、女王が単独で営巣、産卵する。孵化した子が成長すると働きアリとなり、その後は女王が働きアリを産み続けることで、群れは大きくなる。女王が複数存在する例も少なくない。しかし中にはアミメアリのように「働きアリ」だけで卵を産んで増えるものや、クロオオアリのように大型の「働きアリ」は居ても「兵隊アリ」として区別できないものなど、様々な種類が存在する。アフリカ大陸サブサハラに生息するマタベレアリでは、シロアリの巣を襲う兵隊アリのうち、負傷した仲間を救護する「衛生兵アリ」が確認されている[注 1]。また、ボルネオ島には、腹部を「自爆」させて毒液を外敵に浴びせて撃退する兵隊アリを擁する種がおり(オーストリアウィーン工科大学などの研究)、群れとしての存続を優先する行動が見られる[3]

社会寄生

他種の働きアリの労働に依存して生活するものを、社会寄生という。これを行うアリは少なくない。これにはいくつかの形がある。

サムライアリ奴隷狩りをするのでよく知られる。このアリは、クロヤマアリなど、他種のアリの巣に集団で侵入し、を持ち帰る。そこから生まれた成虫は、サムライアリの巣の中で、働きアリとして働く。往々にして、巣内の八割が奴隷であるという。似た方法をとるものに、アカヤマアリなどもある。

これに対して、トゲアリの場合、新女王はクロオオアリなどの巣に侵入し、女王を殺して、その後に居座る。そこで産卵をして、その巣のアリに世話をさせる。やがて自分の子が増えて、元の巣のアリが死亡してゆくことで、単独の巣になる。それ以降は他種の世話にはならない。このようなものを、一時的社会寄生という。

巣とコロニー

家族単位のコロニーを作って生活する。多くは地中にを作るが、枯れ木や竹等に出来る空間に巣を作るものや、幼虫共々移動しながら生活する種類もいる。アリ植物は植物体の上に巣となる空洞部を提供する。ツムギアリは生きた木の葉を幼虫の出す糸で綴り合わせて巣とする。

一つのコロニーに複数の巣を作り、構成員を分散させる例も多い。また巣の入り口に盛り上がった塚を作る例もある。ただし、より巨大な蟻塚を作るものはなく、いわゆる蟻塚を作るのは普通はシロアリである。典型的なアリの巣については該当項を参照のこと。

繁殖

年に一度(一定の期間)、成熟した巣から羽を持つ新女王アリと雄アリが多数飛び立ち、結婚飛行を行い、空中で交尾をする。結婚飛行の時期は種類や地域によって大きく異なり、春から秋にかけて行われる。空中で交尾した雄アリは力尽きて死ぬが、新女王アリは貯精嚢に交尾した雄アリから得た一生分の精子を貯蔵し、地上に降り立った後に自ら羽を落とし、巣穴を掘るか木の皮の隙間などに潜むなどして女王アリとしての最初の産卵行動に入る。

アリはハチと同様に受精卵からは2倍体の雌が、未受精卵からは半数体の雄が生まれる。ただし、アミメアリのように女王アリが存在しない種類では、働き蟻が産卵する卵であっても2倍体の働きアリが生まれる。女王アリは産卵時に有精卵と無精卵を生み分けることができるといわれ、通常、初期のコロニーでは雄アリが生じることは少ない。有精卵はすべて雌性となり、与えられる餌やフェロモンなどによって働きアリになるか新女王アリになるかが左右される。働きアリは通常、女王アリからのフェロモンによって、不妊の状態に制御されているが、女王アリが欠けた場合には卵巣が発達して産卵を開始することがある。この場合、残ったアリは働くことをやめるなどして不活性化していき、やがてその家族は滅んでしまう。

働きアリは女王の世話、卵と幼虫の世話、餌の運搬などの仕事を分担する。外で餌を探しているアリは大抵老齢のアリである。多くの働きアリは巣の中にとどまり、その中に食料を蓄えるなどの役目を果たす。


注釈

出典

  1. ^ 日本産有剣膜翅類目録(2016 年版)”. 2020 6 19閲覧。
  2. ^ 誰も止められない死のスパイラル…死ぬまで回り続ける蟻の大群(動画)
  3. ^ 【なっとく科学】多様な進化を遂げるアリ/攻撃、救護 役割分担/コロニー存続を優先」『読売新聞』夕刊2018年11月22日(7面)。
  4. ^ Brothers DJ (1999). “Phylogeny and evolution of wasps, ants and bees (Hymenoptera, Chrysisoidea, Vespoidea, and Apoidea)”. Zoologica Scripta 28: 233–249. doi:10.1046/j.1463-6409.1999.00003.x. 
  5. ^ アリ類データベースグループ著 『日本産アリ類全種図鑑』 学習研究社2003年ISBN 978-4-05-401792-4
  6. ^ バート・ヘルドブラー,エドワード・O.ウィルソン著 『蟻の自然誌』 辻和希松本忠夫訳、朝日新聞社1997年ISBN 978-4-02-257158-8
  7. ^ Corrie S. MOREAU (2009). “Inferring ant evolution in the age of molecular data (Hymenoptera: Formicidae)”. Myrmecological News 12: 201-210. http://www.moreaulab.org/Publications_files/Moreau_2009_MN.pdf. 
  8. ^ Philip S. Ward. “Taxonomy, Phylogenetics, and Evolution”. 2012年12月16日閲覧。
  9. ^ AntWeb Formicidae”. 2012年12月16日閲覧。
  10. ^ 寺山・久保田(2009)p.4
  11. ^ アリの卵をなぜ食べる おなかに潜むタイの意外な「病」:朝日新聞デジタル” (日本語). 朝日新聞デジタル. 2021年8月18日閲覧。
  12. ^ アリは有能な外科医。アリを使って傷口を縫い合わせる施術” (日本語). カラパイア. 2020年9月5日閲覧。
  13. ^ “簡単にアリ退治する6つの方法。重曹や酢、クエン酸は?室内にも効く?” (日本語). タスクル | 暮らしのお悩み解決サイト. https://taskle.jp/media/articles/249 2018年10月3日閲覧。 





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