アリ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 03:23 UTC 版)
日本にいる主な種類
日本では10亜科280種以上が知られている[10]。日本のアリ相は熱帯性と冷寒帯性の境目のようなものだが、これは1万年前、最終氷期後に成立した。
- ヤマアリ亜科
- クロオオアリ - 全国に生息。国産アリ最大種。大型働きアリ(メジャーワーカー)の体長は13 mmに達する。開けた場所の地中に営巣。新女王、新王は秋期に巣内で羽化して越冬、翌年の5-6月に結婚飛行を行う。
- ムネアカオオアリ - クロオオアリに似ているが、胸部と腹柄節にかけて赤褐色をしている。朽ちた木や生きた樹木の枯死部等に営巣し、5-6月に結婚飛行を行う。
- ミカドオオアリ - 体長8-11 mm。朽ちた竹に営巣する。コロニー規模が大きくなってくると、周辺の別の枯竹にいくつものサテライトコロニーが設けられる。
- トゲアリ - 体長は8 mmほど。働きアリは胸部がよく目立つ艶消しの赤褐色で、背面に計6本の長く湾曲したトゲを持つ。女王アリも同じ数と配置の棘を持つが、それぞれの棘は短く、全身が艶のある黒色で、これはクロオオアリへの擬態だといわれている。営巣の第一段階ではクロオオアリ、ミカドオオアリ、ムネアカオオアリなどの大型種の巣に一次的寄生を行う。この寄生の際、トゲアリの女王は単独で相手のコロニー内に進入し、その女王を組み敷いて殺すのだが、トゲアリの女王はその時相手の体から体液を吸っていることが認められている。
- アカヤマアリ - 体長6-8 mm。奴隷狩りという行動を取ることで知られる。クロヤマアリなどの幼虫などを攫って来て混生する。
- クロヤマアリ - 草原など日当たりの良い土の露出したところに、深さ1 mほどになる巣を作る。主にアリマキの出す甘露や花の蜜、昆虫の死骸などを食べるが、花びらや土筆の穂を食べる姿も見られている。5種の隠蔽種群と認められ、一つの巣に一匹の女王が居る場合と、複数の女王が同じ巣で暮らしている場合がある。
- サムライアリ - クロヤマアリの巣を襲って幼虫や蛹をさらい、奴隷として働かせる習性がある。これを奴隷狩りという。
- トビイロケアリ
- フタフシアリ亜科
- クロナガアリ - 草原に生息。地下4 mにも達する細長い巣を作る。秋に地上に現れ、イネ科植物の実を採集して主食にする。
- アシナガアリ - 全国に生息。主に東日本では平地、西日本では平地から山地までの林縁、林内の土中や石下に営巣する。腹曲げ行動を行わない。日本全国に15種類ほどが知られる。
- イエヒメアリ - 体長2-3 mm。体色は頭部と胸部が淡黄褐色から褐色。屋内に巣を作り大量発生することがあり、防除が難しい害虫として問題になる。(実際に屋内で甘いものをこぼすとイエヒメアリが集ることもある)
- オオズアリ - 働きアリは体長2.5 mmほどだが、一部は体長5 mmほどの兵隊アリとなる。兵隊アリは頭が大きいのでこの和名がある。日本では西日本に多く、東日本には近縁のアズマオオズアリが多い。日の当たらない場所の朽木や石の下に営巣。
- キイロシリアゲアリ - 腹部が上向きに吊り上るのでこの和名がある。小型で琥珀色をしている。羽アリは秋に結婚飛行をおこない、脱翅した多数の新女王たちが灯火付近の物陰に集まり団子状になっている様子が観察される。
- ハリブトシリアゲアリ - 獲物や外敵を攻撃する際に腹部を頭上までそりかえらせて毒針の先端から刺激臭のある毒液(蟻酸ではない)を出す。テラニシシリアゲアリに対して褐色がかっていて、一回り大きい。後胸部の前伸腹節刺が太く短い。
- テラニシシリアゲアリ - 獲物や外敵を攻撃する際に腹部を頭上までそりかえらせて毒針の先端から刺激臭のある毒液(蟻酸ではない)を出す。黒く、ハリブトシリアゲアリよりも一回り小さい。後胸部の前伸腹節刺が細く鋭い。
- クシケアリ
- アミメアリ - 体長2.5 mm。頭部、胸部に網目状の模様がある。雌アリを持たず、働きアリが産卵してコロニーを維持する。雄アリは稀。巣穴は作らず、石の隙間や倒木に集団を形成し、頻繁に移住する。大きなコロニーでは数十万匹にも達する。殺虫剤に抵抗性を持つコロニーがある。
- ムネボソアリ
- トビイロシワアリ - 体長2.5 mm。頭部、胸部に縦にしわ状の模様がある。平地の石下などに営巣する。ほぼ日本全国に分布する。西日本で最も普通に見られるアリ。
- アメイロアリ - 腹部が水飴のような透明な褐色をしている。蟻の中では小型。
- コツノアリ
- カタアリ亜科
- ハリアリ亜科
- アギトアリ- 本邦ハリアリ亜科最大種。女王と働きアリはほぼ同寸で、約180度開くクワガタムシのような巨大な大顎と鋭敏な感覚毛で獲物を捕獲する。日当たりの良くない石と土の境目、樹木の根元等で営巣。国内では本来九州特産で、他は近縁種オキナワアギトアリが沖縄に産するのみであったが、人為的に分布が拡散し、関西、関東でも局所的に定着している。
- オオハリアリ - 湿気のある場所に多く、とりわけ倒木の樹皮下で主な捕食対象であるシロアリと同居している場合が多い。1つのコロニーに複数の女王が見られ、また何らかの理由で女王が喪失すると、働きアリの高順位個体が女王に昇格する。最も普通に見られるハリアリであって、腹部先端に発達した毒針を持ち、刺される事故がよく発生する。
- トゲズネハリアリ
- ニセハリアリ- 同性同士の闘争に適応した大型の無翅オス、歩行での巣分かれに特化した無翅メスを有することで知られる。
注釈
出典
- ^ “日本産有剣膜翅類目録(2016 年版)”. 2020 6 19閲覧。
- ^ 誰も止められない死のスパイラル…死ぬまで回り続ける蟻の大群(動画)
- ^ 【なっとく科学】多様な進化を遂げるアリ/攻撃、救護 役割分担/コロニー存続を優先」『読売新聞』夕刊2018年11月22日(7面)。
- ^ Brothers DJ (1999). “Phylogeny and evolution of wasps, ants and bees (Hymenoptera, Chrysisoidea, Vespoidea, and Apoidea)”. Zoologica Scripta 28: 233–249. doi:10.1046/j.1463-6409.1999.00003.x.
- ^ アリ類データベースグループ著 『日本産アリ類全種図鑑』 学習研究社、2003年、ISBN 978-4-05-401792-4。
- ^ バート・ヘルドブラー,エドワード・O.ウィルソン著 『蟻の自然誌』 辻和希・松本忠夫訳、朝日新聞社、1997年、ISBN 978-4-02-257158-8
- ^ Corrie S. MOREAU (2009). “Inferring ant evolution in the age of molecular data (Hymenoptera: Formicidae)”. Myrmecological News 12: 201-210 .
- ^ Philip S. Ward. “Taxonomy, Phylogenetics, and Evolution”. 2012年12月16日閲覧。
- ^ “AntWeb Formicidae”. 2012年12月16日閲覧。
- ^ 寺山・久保田(2009)p.4
- ^ “アリの卵をなぜ食べる おなかに潜むタイの意外な「病」:朝日新聞デジタル” (日本語). 朝日新聞デジタル. 2021年8月18日閲覧。
- ^ “アリは有能な外科医。アリを使って傷口を縫い合わせる施術” (日本語). カラパイア. 2020年9月5日閲覧。
- ^ “簡単にアリ退治する6つの方法。重曹や酢、クエン酸は?室内にも効く?” (日本語). タスクル | 暮らしのお悩み解決サイト 2018年10月3日閲覧。
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