幼児・児童・高齢者・障害者などに対し、その保護、世話、養育、介護などを怠り、放任する行為のことをいいます。身体的・精神的・性的虐待とならぶ虐待のひとつであり、日本では特に子どもへのネグレクト、「育児放棄」を指すことが多いようです。近年では高齢者に対して世話・介護を怠るネグレクトも増加しており、それぞれ「児童虐待防止法」(平成12年施行)「高齢者虐待防止法」(平成18施行)にも明確に定義されています。
ネグレクトはその状況により、物理的には問題がないのに保護を放棄する積極的ネグレクトと、知識・経済力の不足や疾患のために保護ができない消極的ネグレクトに分けられますが、基本的には、保護者の意識が対象に向かっていない状態といえます。子どもの場合、成長に必要不可欠な食物を与えない、予防接種や病気の治療を受けさせない、情緒的ケアをしない、1人で長期間放置する、学校へ行かせないなどがあり、幼少時期にこういったネグレクトにさらされた場合、適切な親子関係が築かれないために、将来の人格形成などに重大な影響を及ぼすと言われています。
なお、ネグレクトや虐待を受けている可能性がある子どもを発見した場合、医師と看護師の場合はただちに地域の児童保護局に届けることが義務づけられており、また、された側が負傷・死亡した場合には、ネグレクトをした者が刑法により処罰の対象となります。
ネグレクト
neglect
「neglect」とは、無視する・怠る・おろそかにする・忘れるといったことを意味する英語表現である。
「neglect」とは・「neglect」の意味
「neglect」が動詞として使われるとき、無視する・(勤務や仕事を)怠るといった意味をもつ。名詞として使われるとき、怠慢・無視・軽視といった意味をもつ不可算名詞である。「neglect」の形容詞形は「neglectful」であり、怠慢な・不注意なといった意味をもつ。
「neglect」の発音・読み方
アメリカ英語では、「neglect」の発音記号は、「nɪglékt」である。カタカナで表記すると、「ネグレクト」となる。実際に発音する際は、「ニィグレェクトゥ」のようになる。「n」は、舌先を前歯の裏の歯茎につけて鼻に息を通すようにナ行の音を発音する。「ɪ」は、日本語の「エ」と「イ」を同時に言うように発音する。「g」は、舌の後部を上げ、上あごの奥につけた後に息を破裂させるように「グッ」と音を出す。「l」は、舌先を前歯の裏の歯茎につけ、「ウ」と「ル」を同時に出すように発音し、素早く口を左右に広げて日本語の「エ」と同じように「e」を発音する。「k」は、舌の後部を上げ、上あごの奥につけた後に息を破裂させて「クッ」と音を出す。「t」は、舌先を前歯の裏の歯茎につけ、強めの息で破裂させるように「トゥ」と発音する。
イギリス英語では、「neglect」の発音記号は、「nʌˈglekt」である。おおむねアメリカ英語と発音は同じであるが、「ʌ」は唇を自然に開いた状態で舌の付け根を持ち上げるよう意識し、舌と上あごの間の空間を保ちながら発音する。
「neglect」の活用変化一覧
「neglect」が動詞として用いられるとき、neglecting(現在分詞)、neglected(過去形)、neglected(過去分詞)、neglects(三人称単数現在)というように活用する。「neglect」の語源・由来
「neglect」の原義は、「欲しいと思わないこと」である。ラテン語で否定の意味を表す「nec」と「欲する」「選ぶ」といった意味をもつ「legere」が語源である。これらを組み合わせて「無関心である」という意味のラテン語「neglegere」に変化し、「neglect」となった。「neglect」の覚え方
「neglect」を覚える際は、「a neglected child(放置された子ども)」「neglect of duty(義務怠慢/職務怠慢)」のように他の単語と組み合わせて熟語のようにして覚えたり、意味のつながりから「careless」「ignore」などの単語と結びつけて覚えたりするとよい。また、日本語の「セルフネグレクト」という言葉の意味を意識する覚え方もある。「neglect」と「ignore」の違い
「neglect」と「ignore」はともに「無視する」と訳されるが、ニュアンスが異なる。「neglect」には、仕事や業務、本来注意を払わなければならない物事を故意にまたは不注意で無視するというニュアンスがある。怠るという意味合いが強い。
「ignore」は、人の助言や規則、他人、言動などを認知しているもののわざと無視するという意味である。意図的に無視するというニュアンスが強い。
「neglect」の類語
「neglect」と同様に「無視する」という意味をもつ言葉として、「ignore」「disregard」などがある。また、「inattention(注意を払わない。注意が足りない)」も「neglect」に似た意味をもつ。「neglect」の使い方・例文
「neglect」を「無視する」「怠る」という意味の動詞として用いた表現には、「It is not good to neglect your duty.(義務を怠ることはよくないことである)」「Her son neglected his schoolwork.(彼女の息子は学業をおろそかにした)」「The company has neglected his genius for 5 years.(会社は、5年の間彼の才能を無視してきた)」などがある。前後の文脈から、育児放棄について述べていると読み取ることができる場合には、「neglect」で「育児放棄する」という意味を表す場合もある。用例は、「I was neglected as a child.(子どものころ、私は育児放棄された)」などである。「neglect to do~」「neglect doing~」などの表現で、「怠って~しない」「~するのを忘れる」といった意味を表すことがある。用例は、「I often neglect to return something borrowed.(私はしばしば借りたものを返し忘れる)」「Please don't neglect paying attention to take medicine after your lunch.(昼ごはんの後に薬を飲むよう注意するのを忘れないでください)」などである。
ネグレクト
「ネグレクト」とは・「ネグレクト」の意味
「ネグレクト」とは、社会的弱者(乳児、幼児などの子供・高齢者・障害者など)に対し、その保護・養育・介護の義務を果たさず放置することである。「ネグレクト」には、義務を果たすことが可能な状態であるにもかかわらず義務を果たさず放置する「積極的ネグレクト」と、義務を果たすことができない状況のために放置する「消極的ネグレクト」の2種類がある。日本では、母親が子どもの保護・養育をしないネグレクトが問題視されていたが、近年では、さらに、高齢となった親の世話・介護をしないネグレクトも増加し、問題となっている。
子どもが受けるネグレクトには、食事を与えなかったり、一人で長期間放置したりする「身体的ネグレクト」、病気の治療や予防接種を受けさせない「医療的ネグレクト」、学校へ通わせない「教育的ネグレクト」、情緒面で必要な接し方をしない「情緒的ネグレクト」などがある。
なかでも「情緒的ネグレクト」は、心理的影響は大きく、子どもの人格形成に大きな影響を持つネグレクトである。また、子どもに対するネグレクトは「育児放棄」ともいわれている。
「ネグレクト」の特徴は、「情緒的ネグレクト」を除いて、幼児が夜中に一人で出歩いている、不潔な身なりをしている、ゴミ屋敷になっているなど、周囲の人たちが気付きやすい点である。
そのため、国も「児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)」や「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)」を制定して、ネグレクト防止に取り組んでいる。
「ネグレクト」の熟語・言い回し
セルフネグレクトとは
「セルフネグレクト」とは、自分自身に必要な食事・衛生面・身なりなど日常生活に必要な行為を行う気力や能力を失い、それらを行わないことである。セルフネグレクトの状態に陥ると、自分の健康を損なうばかりではなく、生活環境も悪化する。よくテレビで紹介される「ゴミ屋敷・汚部屋」がセルフネグレクトの分かりやすい例といえる。セルフネグレクトは、「身体機能低下」(加齢や病気によるものなど)・「判断力低下」(認知症・精神疾患など)・「経済的困窮」(失業など)・「社会的孤立」(配偶者の死去、引越しなど)が原因として起こる。また、セルフネグレクトになる要素は誰もが一つは持っているといわれている。
隠れネグレクトとは
「隠れネグレクト」とは、表面的には見えていない状態ではあるが、存在するネグレクトのことである。例えば、健康で衣食住に不自由ない生活を送る子供でも、親が子どもに健全な人格形成に必要な心理的サポートを怠っているケースである。この場合は、親自身も無自覚であることが多く、外部からも気づかれないため、発見しにくいネグレクトである。また、ネグレクトを受けた本人も気付かない場合が多い。
「ネグレクト」の使い方・例文
・子どもに対するネグレクトは絶対に許される行為ではない。・セルフネグレクトのチェックリストを作成しよう。
・近所のおじいさんの体調が悪いのに連れて行っている気配がない。娘さんがネグレクトしているに違いない。
・学校の課題が「ネグレクト問題」を考えるであった。
・自分では気づかなかったが、ネグレクトを受けていたかもしれない可能性に愕然とした。
・隣の家の犬が見るたびに痩せていく。かわいそうにネグレクトされているようだ。
・この公民館の出入口やトイレなどは、障害者には非常に使いづらい。障害者をネグレクトした設計だ。
・ネグレクトを受けた子どもたちのケアを専門的に行う施設が必要とされている。
・毎日同じ服装で登校する児童がいる。ネグレクトの可能性が高い。
・ネグレクトを受けて育った子どもは大人になると、同じように自分の子どもをネグレクトするケースが多い。
ネグレクト
ネグレクト(neglect)とは、幼児・高齢者・障害者などの社会的弱者に対する保護・養育義務を果たさずに放棄、放任することである。とりわけ日本では「ネグレクト」は児童虐待の一種(養育放棄、育児怠慢、監護放棄)を指す意味で用いられることが多い。高齢者の介護放棄などもネグレクトに該当する。「高齢者虐待防止法」では「養護者・養介護施設従事者等からの虐待」が高齢者虐待に該当すると定義されている。
英語の neglect は、ラテン語を語源とし、もともとは怠慢・粗略、無視・軽視を意味する。
「児童虐待の防止等に関する法律」(通称「児童虐待防止法」)では、児童虐待を「身体的虐待」「性的虐待」「保護の怠慢・拒否」「心理的虐待」の4種類に分けて定義している。このうち「保護の怠慢・拒否」がネグレクトに該当する定義と解釈されている。
「児童虐待防止法」第2条第3号の規定は以下のとおりである。
児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
児童に対するネグレクトは、児童の健康、衛生、健全な発育を損なう。適切な親子関係や対人関係が構築できないまま成長することで、人格形成に重大な悪影響が及ぶことも懸念される。ネグレクトと同時に暴力的な虐待が行われている可能性も危惧される。
ネグレクトは、経済的困難や疾患といった物理的要因によって保護が困難になるパターン(=消極的ネグレクト)と、そういった物理的問題・理由はないが保護を放棄するパターン(=積極的ネグレクト)の2種類に大別される。
さらに、ネグレクトの内容により、「身体的ネグレクト」「情緒的ネグレクト」「医療的ネグレクト」「教育的ネグレクト」といった区分が設けられることもある。
身体的ネグレクトは、家に閉じ込めたり、長時間ひとりきりにしたり、必要な食事を与えなかったりすること。
情緒的ネグレクトは、愛情を遮断するなどして、子どもが必要とする情緒的欲求に応えないこと。
医療的ネグレクトは、病気にかかっても病院に連れて行かなかったり、予防接種を受けさせなかったりすること。
教育的ネグレクトは、子供の意思に反して学校に行かせない(通学させない、または入学させない)こと。
自動車の中に子供を放置してパチンコに興じたり愛人としけこんだりするような行為は「身体的ネグレクト」に該当する。
ネグレクト(を含む児童虐待)の行為主体について、改正前の「児童虐待防止法」は保護者をのみ対象としていたが、2004年(平成16年)の改定により、保護者の同居人がネグレクトを黙認している状況もネグレクトに該当すると規定された。
保護者による児童のネグレクトが発覚し、子供の死傷が確認された場合、保護者は刑法に基づき処罰の対象となる。
第三者がネグレクトを発見した者は、児童福祉法第25条の規定に基づき、福祉事務所もしくは児童相談所に通告する義務がある。
医療関係者などは児童虐待防止の第5条に基づきネグレクト(児童虐待)の早期発見に努めるよう義務づけられている。
どこからをネグレクトと判断するかは、児童虐待防止法の定義に基づき子どもの状況、保護者の状況、生活環境等から総合的に判断するべきとされる。
厚生労働省は「親の意図の有無に関わらず子供が有害と思うことを虐待とする」考え方を支持しているため、仮に親自身は躾の一環と捉えていたとしても、子供にとって有害であればネグレクトと判断されることは十分にあり得る。
2020年4月に施行された通称「体罰防止ガイドライン」では、「宿題をしなかったので晩飯抜き」「いたずらの罰に長時間正座させる」「存在を否定するようなことを言う」といった行いは、体罰に該当するとしている。必ずしも虐待・ネグレクトとなる。
ネグレクトの問題が世間的に大きく取り上げられたきっかけの事件として、2010年の大阪2児餓死事件があげられる。母親は当時3歳の娘と1歳の息子を閉じ込めるように50日間放棄し、餓死させた。逮捕の前日、勤務先の上司から「異臭がする」との連絡を受け子供の死亡を確認しているが、そのまま交際相手と遊びに行き、ホテルに宿泊していた。この事件を元にした映画や書籍は幾多にも及ぶ。
2004年の岸和田中学生虐待事件は暴行による身体的虐待も含まれているが、虐待の発覚を恐れて中学三年生の長男を軟禁した事例である。長男は食事を取れないほど衰弱し、自力で歩行できず、ブルーシートの上に排泄物を垂れ流すような状態だった。長男は餓死寸前で発見され救出されたが、知能の著しい低下や身体障害などの後遺症が残った。
1988年の巣鴨子供置き去り事件は、母親が4人の子供を自宅に置いて別の男性と同居していた事件だが、母親は月に数万の金銭的な援助を行っていた。当時14歳の長男が7歳と3歳の妹と赤子の次男の面倒を見ていたが、発見当初には次男が白骨死体で死亡していた。子供は全員出生届が出されておらず、学校にも通っていなかった。また発見された時に三女がいなかったが、長男とその友人に暴行を受けて死亡していた。
ネグレクト【neglect】
ネグレクト
ネグレクト
ネグレクト neglect
全体 ★☆☆☆ 60歳以上 ★☆☆☆
- 2の意味で用いられることは以前からあったが,一般には余り広まらなかった。「児童虐待防止法」(2000年施行)の制定を機に,1の意味で用いられることが急増し,一般にも広まり始めた。
- 「児童虐待防止法」(2000年施行,2004年改正)では,児童虐待の一つとして「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置」「保護者としての監護を著しく怠ること」を挙げる。これを指して「ネグレクト」ということがあるが,一般には分かりにくい。
- 上記の法律では他に,身体的な虐待,性的な虐待,心理的な虐待を,児童虐待として規定している。
- 児童に対する場合のほかに,高齢者や障害者に対する介護を放棄することを指して使われることがあり,「介護放棄」と言い換えることができる。児童,高齢者,障害者を包括して,「世話の放棄」などと言い換えることも考えられる。
ネグレクト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/28 05:09 UTC 版)
ネグレクト(英: neglect)は、セルフケアができない弱者の世話をする責任がある保護者が責務を怠たることによって加害者となる行為。 児童虐待、障害者虐待、高齢者虐待、患者虐待のひとつ。子供に対するネグレクトは育児放棄(いくじほうき)、育児怠慢(いくじたいまん)、監護放棄(かんごほうき)とも言う。また、ペットの飼育放棄(しいくほうき)に対しても指すことがある[1]。保護者が特定の宗教的理念に基づく治療拒否や非科学的なモノを信じるなどし、適切な医療を受けさせないことは医療ネグレクトと呼ばれる。日本では2012年(平成24)4月施行の民法改正で親権停止制度が導入され、子供に科学的医療を受けさせない親に対して、家庭裁判所による親権停止が可能になった[2]。
- 1 ネグレクトとは
- 2 ネグレクトの概要
「ネグレクト」の例文・使い方・用例・文例
品詞の分類
名詞およびサ変動詞(態度) | 馬鹿騒ぎ 依違 ネグレクト 委順 心中立て |
- ネグレクトのページへのリンク