風評被害
必ずしも事実であるという根拠を伴わないまま世間で取り沙汰されている情報(風評)の煽りを受けて被る害。風評による被害。
風評は、それが事実か否か、根拠ある情報なのか根も葉もない情報に過ぎないのか、といった観点を度外視して、まことしやかに語られる噂である。風評被害を耳にした者は、それを鵜呑みにするとまでは行かなくても、念のため遠ざけておこうといった心理にはなりやすいと言える。結果として風評の対象は経済的な害を被るに至る。
2011年3月に東京電力福島第一原子力発電所で原発事故が発生し、福島県の太平洋沿岸地域や福島県産の作物などは、放射能に関する風評がとかく発生しがちとなっている。
ふうひょう‐ひがい〔フウヒヤウ‐〕【風評被害】
風評被害(対策)
風評被害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/08/04 00:53 UTC 版)
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風評被害(ふうひょうひがい)とは、根拠の不確かな流言や科学的根拠に基づかない都市伝説・デマ等によって被害を受けること[1][2]。辞書的な意味では主に経済的被害を指すが、一般的な意味はそれに留まらず、風評を受けた人々への差別やいじめ、名誉毀損等の人権侵害も含む[3][4][5]。なお本項では風評被害をもたらす風評加害(ふうひょうかがい)[6]についても述べる。
概要
風評被害が起こる原因は、マスメディアによる不安や怒りを煽る情報の拡散、政治家・政党とその支持者や市民団体・社会運動家などによる政治的利益を狙った発言やデモ(パフォーマンス)である[6][7][8][9][10][11][12][13]。また、科学的な安全性やメリットがいくら説明・証明されてもそれをあまり報道・拡散せず、逆に科学的な説明や根拠を軽視するマスメディアの報道姿勢[14][15][16][17]や、世論への強大な影響力を持つにもかかわらず風評被害防止の責任を放棄するマスメディアの当事者性の欠如[18][19][20][21]も、風評被害の原因となる[12][22][23]。
また、政府や省庁等の行政機関や、関係機関が報道内容を否定したり[24][25][26]、ネットメディアや週刊誌が、こうしたマスメディアの報道姿勢を批判[27][28][29][30]することで、風評被害をある程度抑えられることもあるが、これを抑えられなかった場合、場合によっては毎年数千人の死を招くなど、極めて深刻かつ重大な被害にも繋がる[31][32][33][34]。
上記のように、科学的根拠の無視・無理解によるデマや不安を拡散する行為を「風評加害」[7][35]、その行為をする者が「風評加害者[6]」と呼ばれることもある。
日本における風評被害・風評加害
日本において「風評被害」の語がマスメディア等で一般に使われるようになったのは、堺市学童集団下痢症やナホトカ号重油流出事故などが発生した1990年代後半以降である。
関谷直也は国会議事録の初出として、1956年3月に参議院で行われた曽祢益(当時日本社会党所属)議員の、第五福竜丸の被爆による「ビキニ・マグロという風評」による間接被害に関する答弁[36]を挙げている。
東日本大震災以後
東日本大震災以降は、専門家から「風評被害には加害者もいる、一般市民もその行動次第で加害者になる」という考え方が提唱された[37]。
2020年代に入ると、風評被害を広める言論人やマスメディアの加害性を重視、むしろそれらが積極的に風評を広めているとして「風評加害」あるいは「風評加害者」という言葉も使われるようになった[38]。一方で、それに対する反発も新聞記者らから語られた[39]。環境省は、ラジエーションカレッジセミナー開催の報道発表資料(2022年9月1日付)の表題を「伝わる表現力を試してみませんか ~風評加害者とならないために~」[40]とした。
風評被害への対策
2011年に発生した東日本大震災に伴い、公正取引委員会は、実害(のうち主として独占禁止法関連の事象)と共に、風評被害の一部についても下請法を根拠に対処に当たった[41]。
また2013年には、経済産業省の医療機器分野の研究会において、風評被害が製造物責任法と共に、製造者にかかるリスク・コストの一つとして検討された事例[42]がある。
風評被害の事例
1983年以前
- 1945年の広島と長崎への原子爆弾投下の後、被爆者は「放射能がうつる」「奇形の子が生まれる」などと言われ差別された[43]。
- 1954年に起きた第五福竜丸事件後に、マスコミ各社が被爆したマグロが市場に出たという誤報と憶測が入り混じった記事を掲載し、その後の経緯を「水爆マグロ」などの呼称で連日センセーショナルに報道したことにより、遠洋マグロを中心に魚介類全体の買い控えが発生した[36]。後に日本鰹鮪連合会が発表した損害総額は、水産物相場全体の低下による影響を含めて約20億円に達したとしている。
- 水俣病による水俣市民、同市出身者および同市で栽培された農産物の風評被害。
- 女子高生の雑談をきっかけとした自然発生的な風評被害(豊川信用金庫事件)。
- カネミ油症事件による、消費者のコメ油に対する偏見と買い控え。
- 戸塚ヨットスクール事件による、神奈川県横浜市戸塚区の風評被害。
- 1970年代以後、近隣にソープランドが林立した雄琴温泉への風評被害。
1984年
1985年
1986年
1989年
1993年
1995年
1996年
1997年
- ナホトカ号重油流出事故によって、日本海沿岸の海洋が広範囲に亘り汚染された。これにより、カニシーズンを迎えていた加賀、若狭、北近畿、山陰の各観光地で予約客のキャンセルが相次いだ。カニは海底に棲息するので重油被害を受けることはほとんどなく、また事故以前に水揚げされたものや、冷凍品のストック、その他の産地より直送されたものもあったため、事故とは無関係であると漁協や旅館組合が盛んに安全性をPRしたが、風評被害は免れず、一帯の観光客入り数は例年の半分以下に激減した。
- テレビアニメ、ポケットモンスターの放送事故であるポリゴンショックが発生した。これによって、実際はピカチュウの放った光が原因であるにもかかわらず、ポリゴンが風評被害を受けて以降ポケモンの作品にほとんど登場しなくなった[46]。
1999年
- 2月1日『ニュースステーション』が、ダイオキシン高濃度検出事件を「葉物野菜から多く検出」と報道、間違ったデータや誤解を招きかねないイメージ映像を流したことで、所沢市産のホウレンソウなど野菜の価格が暴落した。
→詳細は「ニュースステーション § 所沢ダイオキシン問題」を参照
- 東海村のJCO臨界事故により、実際には放射線による汚染は全くなかったにもかかわらず、茨城県内の農作物や納豆の売り上げが激減した。
2001年
- アメリカ同時多発テロ事件の影響により、沖縄旅行を取り止めた人は、平成13年度末までで、修学旅行17万人、一般旅行5万人、合計22万人と言われている[47]。特に修学旅行の中止が多いのは、文部科学省が9月28日付けで各都道府県教育委員会に送付した「海外修学旅行先では米軍施設に近寄らないように」という内容の通達がきっかけである。これを受けた一部の教育委員会が、地域の公立校へ情報を転送する際「米軍基地がある韓国や沖縄への修学旅行は特に注意するように」という情報を追加したため、キャンセルが相次いだ[48]。10月10日、この事態を受けた観光業界団体が文部科学省初等中等教育局へ抗議を行なった結果、あらためて、沖縄への修学旅行を予定通り実施することと、海外への修学旅行の中止に伴う代理地として沖縄を検討することを薦める通達が出された[49]。
2003年
2004年
2005年
- 3月22日、カリフォルニア州の女が、ファーストフード店「ウェンディーズ」の料理の中に『人間の指が入っていた』と訴え、メディアの報道が過熱した。調査の結果、この女は過去にも他店に対して同様の訴訟を起こしており、この事件も産業事故で失った知人の指を女自らが混入させたものと判明。女は逮捕されたが、「ウェンディーズ」は風評被害により約250万ドルの経済損失が出た。
- 韓国産キムチの寄生虫問題により、無関係な日本国内産キムチの売り上げが減少した(「キムチ#キムチを巡る事件」を参照のこと)。
2006年
2008年
2010年
- 3月26日に宮崎県で発生した口蹄疫の流行(2010年日本における口蹄疫の流行を参照)において、徹底した消毒を行っているにもかかわらず宮崎ナンバーであるという理由で宮崎県内の運送業が県外での積荷の受け取りを拒否される。
2011年
- 3月11日に発生した東日本大震災を発端とした福島第一原子力発電所事故が原因で、避難民が放射能検査を要請される[51]、タクシーへの乗車を拒否される[52]、いじめに遭う[53]などのケースが発生。同様に工業製品への風評被害も存在する[54][55]ほか、被曝を恐れてトラックドライバーが(原発事故とは無縁の)被災地に入ろうとせず結果として救援物資が被災者に行き渡らないというケースがおきた。[56]また風評被害を受けたとする住民やケアセンターの従業員の苦悩ぶりが報道番組などより明らかとなり放送されたケースもある[57]。更には農作物への風評被害があったとの主張もある[58]。
2018年
- 振袖業者「はれのひ」が1月8日(成人の日)に突然店舗を閉鎖した事件で、和風結婚式企画会社「晴レの日」新郎新婦から確認の電話を約100件、無言のいたずら電話などを約200件受けるほか、業種が同じ、または類似する同名または類似名の企業が風評被害を受けた[63]。
- 5月6日に日本大学アメリカンフットボール部の選手が関西学院大学の選手に悪質な反則を行い選手を負傷させた問題で、日本大学と名前のよく似た日本体育大学や、日本ラグビーフットボール協会などのラグビーの団体が苦情の電話を受ける風評被害を受けた。このうち日体大は、公式サイトに声明文を発表する事態となった[64]。
2019年
2020年
- 前年に中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスが猛威を振るう中で、「コロナ」という語を用いる企業等への風評被害が不運にも発生した。
- コロナビール:コロナ禍によって同製品に対する反応の変化がみられ、その中にはインターネット検索数が増えるといったポジティブな影響[67]もあったが、一方で同年1月から2月だけで約2億2100万ポンド(約310億円)の売上が失われた[68]。ビールを飲むアメリカ人のうち「現在はいかなる状況下でもコロナビールを買わない」と回答した人が38%に上った[69]。
- コロナ (住宅関連機器メーカー):名称かぶり[注 5]から不安を感じる社員や家族がいるとの報告[注 6]を受け、社長名で「コロナではたらくかぞくをもつ、キミへ」と題して、主に社員の子どもに対して「両親に誇りを持ってほしい」との思いを込めたエールの新聞広告を地元紙である『新潟日報』に出稿し、2020年6月13日付の朝刊に掲載した[70][71]。
- この他、コロナワールドや大阪市のホテル等、「コロナ」の単語だけで無関係のコロナウイルスと紐付けられる風評被害が相次いだ。
2022年
2024年
- 1月1日に発生した能登半島地震に伴い、支援物資到着の遅れや救助・救援活動の支障となるため、個人による能登地域(内灘町以北)への不要不急の来訪は控えるように石川県が呼び掛けた[77]。しかし、震源(奥能登)から離れており、被害も比較的軽微だった加賀地域(金沢市以南)の宿泊施設でも観光客による宿泊のキャンセルが相次ぐ風評被害が発生[78]したことから、石川県出身者などが加賀地域への観光を呼び掛ける事態になった。
- 3月、小林製薬が製造・販売している紅麹を配合したサプリメントを摂取した人に健康被害が発生していることが発覚[82]。更に同社の紅麹を他社にも原料として供給していることが報じられた[83]。このため、小林製薬とは無関係の企業で製造された紅麹を使用している企業にも問い合わせが殺到するなどの風評被害が発生した[84][85]。
2025年
- 9月、日本経済新聞は同年に相次いでいる証券口座乗っ取り事件について、犯人が不正アクセスを行う際に家庭用のテレビ用受信機を介している可能性があると報道[86]。そのテレビ受信機について、STB(セットトップボックス)と報じたことから、ケーブルテレビ(CATV)加入者の受信用にSTBを提供しているCATV各社がCATV用の受信機は不正アクセスとは無関係であるとの声明を相次いで出す風評被害が発生した[87][88]。
2026年
- 7月に発生したイオンモール熊本爆発事故について、被害者が勤務していたテナントとは無関係の企業にも批判や抗議が寄せられる風評被害が発生した[89]。
関連項目
脚注
注釈
- ↑ 現在のウクライナのキーウ州。
- ↑ しかし歴代社長が国政に進出するなど、同社も政界との太いパイプが存在する。
- ↑ 旧校名の「名古屋電気工業高校」から。
- ↑ 大崎市議会の「平成20年 岩手・宮城内陸地震災害対策調査特別委員会」(2008年7月14日開催)によれば、695549000円と試算されている。また、7月9日には同市の市長である伊藤康志が気象庁を訪れ、地震の名称変更を申し入れている。岩手・宮城地震:地震名変更を…大崎市長が風評被害指摘(市長の写真のみ、記事はリンク切れ)
- ↑ 「コロナ」の商標はコロナ放電と天体現象から。
- ↑ しかも、株式会社コロナの公式ウェブサイトのドメイン名「corona.co.jp」が、内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策推進室の「corona.go.jp」と1字しか違わない。
出典
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- ↑ “「エビデンス?ねーよそんなもん」”. 日刊ゲンダイ (2017年11月26日). 2023年8月27日閲覧。
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- ↑ “証券口座乗っ取り、家庭のテレビ受信機「STB」経由か 警察が回収”. 日本経済新聞 (2025年9月27日). 2025年11月17日閲覧。
- ↑ 芹澤隆徳 (2025年10月2日). “証券口座乗っ取りの“STBが踏み台”報道がケーブルテレビ業界に波紋 問題は「ネット通販等で売られている管理されていない端末」”. ITmedia NEWS. 2025年11月17日閲覧。
- ↑ 田畑広実 (2025年10月24日). “STBに関する一部報道について”. 電波タイムズ. 2025年11月17日閲覧。
- ↑ 野口博之 (2026年8月3日). “爆発犠牲者出たイオンテナントめぐりデマ相次ぐ 名指しの企業が次々に否定の声明【熊本地震】”. J-CASTニュース. 2026年8月4日閲覧。
参考文献
- 佐藤卓己『流言のメディア史』岩波書店(岩波新書)、2019年。ISBN 978-4-00-431764-7
- 林智裕『「正しさ」の商人 情報災害を広める風評加害者は誰か』徳間書店、2022年。ISBN 978-4-19865441-2
風評被害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 10:10 UTC 版)
2013年(平成25年)5月8日、ユーザー投稿型の飲食店情報サイト「食べログ」に書き込まれたクチコミで「客が激減した」として、札幌市内の男性が運営会社を相手取り、札幌地方裁判所に提訴した。 この男性は2012年(平成24年)2月、自ら食べログに経営する飲食店の情報を掲載した。ところがそこに「料理が出てくるのが遅い」「おいしくない」と いった批判的なクチコミを書き込まれてしまった。直後に店を訪れる客は激減、男性は食べログが原因と考え、店情報そのものを含めて投稿を削除するようカカクコムに求めたが、「食べログ」が拒否したため、店舗情報が掲載されたページに経済的価値がある為店舗名称を使用しているとして店舗情報の削除、および損害賠償220万円の支払いを求める訴訟に至った。 2014年(平成26年)9月4日、札幌地裁は「本件店舗や本件サイトの運営主体の特定や識別を困難にするものではないから,冒用には当たらない。」「口コミは営業権の侵害に当たらず、原告の要求を認めれば表現行為や情報が恣意的に制限されることになる」として、男性の請求を棄却した。
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