日本の高校野球 問題提起

日本の高校野球

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/15 06:48 UTC 版)

問題提起

単なる高校部活動の対抗戦に留まらず、時には社会的関心を集めるほど人気の高い高校野球であるが、学校関係者や保護者、主催する高野連やマスコミに対し様々な角度から問題提起が行われている。

メディアの扱いに関する問題
学校の部活動の一つでしかない高校野球が、新聞やテレビなどのメディアにおいて、他のスポーツの部活動に比べて突出して扱われている(あるいは他の高校スポーツの取り上げられ方が高校野球に比べて極めて少ない)ことを問題視する意見がある。実際マスメディアは高校の部活動で全国大会を主催している野球、サッカー、ラグビー、バレーボールとそれ以外のスポーツの取扱れた方には違いがある。スポーツライターの相沢光一は、NHKが2010年夏の大会では約130時間にわたって全試合を完全中継した(NHKテレビが朝9時、NHKラジオ第1放送が朝8時から、一日最大10時間もの放送枠を設定し、通常の番組は全て休止)のに対し、同じ高校の総合大会である全国高等学校総合体育大会(インターハイ)の放送時間はNHK Eテレで10時間のダイジェストに過ぎなかったことを指摘し、NHKは他スポーツの放送をもう少し増やしてもいいのではないかとの意見を述べている[102]。またネット上では「高校野球だけが地域代表じゃない、人気は主催する朝日新聞社や長時間放送をするNHKによる創作」「メディアと高野連が選手によるドラマを創り崇めている」という指摘もある[103]。これらのネット上の批判に対し、産経新聞記者の出崎敦史は高校野球の記事が多いのは書く側から言わせてもらえば「読みたい」という読者のニーズが多いからだと反論している[104]
選手への負担の問題
トーナメント制で行われる選手権と選抜はそれぞれ夏休み春休みに開催され、休暇期間中に大会の全日程を消化することが目指される。それ故に上位に勝ち進む学校は短期間に集中して試合を行うことになり、それに伴う選手への負担増大がしばしば問題視される。特に投手については「エースと同等の力量を持つ複数の投手を育てる余裕がない」という選手層の問題もあって1人の主戦投手に頼らざるを得ない(=リリーフがいないので先に打たれ出した側が負ける)ケースが多く[注 56]、地方大会や全国大会で勝ち進んだ学校などでスポーツ障害を引き起こしたり燃え尽き症候群になることがある。燃え尽き症候群は近年に限った事ではなく、古くは王貞治も「もし5季連続出場を果たしていたら野球にけじめをつけて大学にいっていたと思う。最後に出られなかったことで気持ちが宙ぶらりんになった」と後年語っている[105]
春の選抜は秋季大会の結果によって参加校を決定するため試合数・環境ともに比較的易しくなる傾向にあるものの、夏の選手権では短期間のうちに地方大会・本大会と数多くの試合を高気温・強い日照の下で行わなくてはならないため選手は過酷な環境に置かれる。2011年には選手が熱中症で次々に倒れて試合続行が不可能となり没収試合となる例まで出た。また、2013年には埼玉大会で38を超える猛暑の中で試合が行われ、選手だけでなく観客の一般生徒も熱中症の症状で病院に搬送される事態になった[106]。実際、日本体育協会が推奨する熱中症予防のための運動指針では気温35度以上時の運動は特別の場合を除き原則禁止(対象が子供の場合は中止すべき)としていることから[107][108]、「もう夏のスポーツはやめよう」といった意見まで出ている[103]。このような批判が出る事に対しスポーツジャーナリストの玉木正之は「人気の裏返しでもあるのだろうが、長年マスコミが封印してきた高校野球への本音が、ネットでは言えるからだろう」と指摘、さらには「マスコミが大会を主催することで競技を発展させた面はあるが高校野球が商売と切り離せなくなった結果、開催時期などの問題点を指摘できず、健全なジャーナリズムが機能しなくなっている。(高野連は)選手がアマチュアであることに甘えている」とも指摘した。ダルビッシュ有は「見直すべきだと思うが、壁となるのが50年以上もの歴史」と発言した[103]
対応策としては、2004年からは春・夏とも全国大会の準々決勝を2試合ずつ・2日に分けて開催されるようになり[注 57]、やがて夏は2013年から、春は2015年から[注 58]準々決勝を1日で4試合一括開催に戻し、準々決勝の次の日を休養日とする日程に見直した(なお、夏の大会の地方予選ではこれ以前からも準々決勝の翌日、あるいは、高校の1学期の終業式が行われる7月20日前後の平日を予め開催しない日に制定しているものも多くある)。また、2018年京都大会では猛暑の為、準々決勝を当初の4連続試合から午前中に2試合行い、日中に休憩時間を設け16時から第3試合以降を開催する措置を取った[109]。高野連は、地方大会における暑さ・熱中症対策として、地方大会を主催する各都道府県高野連に助成金として全国選手権の収益から15万円を支給[110]。観客向けのミスト噴霧機や冷風機のリース、経口補水液の購入、理学療法士や看護士の増員などに充てられる[111]
このような議論が度々なされているにも関わらず、2018年の選手権において、金足農業(秋田)のエース投手・吉田輝星が地方大会・本大会を合わせた全11試合に登板、11試合目の本大会決勝で途中降板するまで一度も交代することなく全試合を1人で投げ計1517球という球数を投じるという事態に至り[112]、これに対して批判意見や[113]、「金農旋風」と称して金足農業の健闘を讃える一連の報道姿勢や各所での盛り上がりはこれらを「美談化」するものであるという指摘もあった[114][115]。大会後、同年12月に新潟高野連が2019年4月の春季新潟大会において「1試合100球」を限度とする球数制限を導入することを決定[116]。これを受けて2019年2月に日本高野連でも理事会が召集された後、日本高野連を中心とした「投手の障害予防に関する有識者会議」が発足することとなった[117][118][注 59]
夏の日中に集中して行われる大会運営に対しては野球に批判が集中しがちではあるが[103]全国高等学校総合体育大会(インターハイ)においてもその状況に大差はなく過度な批判は前項「メディアの扱いに関する問題」とも関連した問題となる[119]
問題とされた作戦
  • 1992年8月16日に行われた明徳義塾対星稜の試合では明徳義塾の監督は星稜の4番松井秀喜に対し5打席すべてを敬遠するという作戦に出た。試合は明徳義塾が勝利したが試合終了直後から試合内容に納得のいかない観客から「帰れ」コールやブーイングが起き、これによって校歌斉唱の声が潰されただけではなく、高野連が異例の声明を発表する事態になる。監督は試合終了後に「高校生の中に一人プロが混じっていた。勝つために(敬遠を)指示した」と記者団に答えた。スポーツ紙、テレビニュース、一般紙は明徳義塾の行動に対する非難を行い、プロ野球経験者は非難、擁護と意見が二分した。
  • 2006年に行われた高校野球県秋田県予選準決勝の本荘対秋田戦で行われた、雨天ノーゲームを巡る遅延行為と故意遅延プレーの発生。9-1と本荘がリードしていた5回裏に、雨天による一時中断があった。高野連のルールでは7回が終了しない状態では雨天ノーゲームとなるため、秋田は雨天ノーゲームを狙い、打者が一球ごとに打席を外す、投球テンポを遅くする、送球されたボールを盗塁したランナーを故意にタッチせず進塁させるなどの遅延行為を行った。本荘はそれに対抗し、監督の指示でわざとアウトになるようなプレー(敬遠球への空振りや無謀な盗塁)を行った(試合は本荘がコールド勝ち)。この試合では本荘の行為のみが問題とされ始末書の提出を県高野連から求められたが、秋田へは何の処分もなかった[120]
  • 2000年鹿児島大会の鹿児島玉龍樟南戦(7月12日)飛球を巡る審判の判定に樟南の監督枦山智博が主将青野毅を通じ30分にわたり抗議。最終的に審判がマイクで観客に説明した。試合後の会見で枦山は「判定が覆らないのはわかっていたが自軍選手の鼓舞、相手高校の良い流れを断ち切るための作戦として抗議を行った」と説明[121]。当時、枦山は県高野連の理事を務めていたが、試合後抗議をした責任を取り理事辞任を申し出た[122]。県高野連は7月20日に理事会を開催して枦山の辞任を了承、同時に再発防止策として枦山に始末書の提出を求めた[123]
高校球児自身や保護者の問題
数々の問題が指摘される中、高校球児自身やその保護者の対応を批判する声もある。横浜高校監督・渡辺元智は報知新聞社から上梓した「高校野球って何だろう?」の中で「教育としての高校野球」「人を育てるのも人」を強調。その上で最近の生徒たちを「(昔の生徒に比べ)あいさつができない」「(悪い事をしても)謝らず言い訳をする」「口のきき方を知らない」「一般常識が欠けている」と批判。保護者についても「(他校の監督より)高校野球に熱が入るあまり、肝心な生徒さんの教育にはそっちのけで監督にかけあう、お届けものをする、監督や選手の人事に口を出す保護者、父母会まであると聞いている」と苦言。「生徒さんを強豪校へ入学させたりプロを目指したいならまずは野球の技術よりも生徒さんの教育(人間形成)が一番必要ではないのか」と批判した[124]
また、近年、高校球児が刑事事件を起こし逮捕され学校や高野連が謝罪や釈明に追われるケースが急増している[125][126][127]。特に2012年夏の選手権大会では甲子園出場校の高校球児が大会期間中に刑事事件を起こし逮捕されたことを受け[128][129]高野連が緊急の会見を開く事態となった。これら刑事事件を起こした高校が出場を辞退したケースはなく、問題を起こした者を外し大会に出場している。また2012年の地区大会ではサヨナラ負けを喫した高校の野球部員が判定を不服として整列を拒否したりインターネット掲示板「2ちゃんねる」で審判を批判する書き込みや、Twitterを通じて対戦校の関係者や女子生徒への脅迫、強姦予告、殺害予告などが行われたため、学校側が野球部の活動自粛を決めた例もある[130][131][132]
東映巨人で投手としてプレーし、引退後は数々のプロ球団でコーチを歴任、また母校・中央大学でも監督を務めた高橋善正も「野球部はプロ養成所ではない。規律や社会のルールを破った者には以後1年間活動を認めない、部も一定期間活動停止にする、この位の厳しさが必要だ。高校野球部の不祥事は起きるべくして起きている」と論評している[133]
部活動としての高校野球の問題
高校野球も他のスポーツと同様に「勝利至上主義」基づく体罰などの「過剰な指導」、根性論に根ざすシゴキ、「指導者・先輩への絶対服従、上意下達」、「連帯責任」的な処分[注 60]が存在する。
シゴキの一例として黒田博樹は上宮高時代、夏の府大会で、自分の起こしたミスに対し監督から朝6時から夜9時まで15時間、ポールとポールの間のフェンス際を、水さえ与えられず際限なくただ「走れ」と命じられたという内容を2012年7月、ニューヨーク・タイムズで告白、掲載された[134][注 61]。このようなシゴキがエスカレート、地方・全国大会の出場を辞退したケースや先輩の暴行による後輩部員の死亡事故まで起きている[注 62]。連帯責任は1960年代から70年代にかけては野球部とは全く無関係の在校生徒が起こした問題を受け連帯責任で甲子園出場を辞退したケースもあった(佐伯達夫の項も参照)。1980年代から対象が在校生徒から野球部関係者と範囲が狭くなり、近年は問題を起こした者を外すのみと対象範囲が縮小されている。
氏原英明は高校野球全体の傾向としてオーバートレーニングであると指摘しており、2019新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて練習量が減ったことで却って「選手の体格、打撃の飛距離、投球の球速が向上した」という声があると紹介している[135]。高校生に限らず根本的に日本のアマチュア野球はオーバートレーニング傾向で、中学生の段階から練習のし過ぎで骨端線が早期に閉鎖してしまい身長が本来より伸びなくなってしまうケースが多い。その点ドミニカのアマチュア球界の指導者はMLBに教え子を送り出すことがを最終目標となっており、少年期はのびのびと楽しく野球をやらせる方針が一般的。また、アメリカでは選手を練習で故障させると保護者に将来プロ球界で得られたはずの逸失利益の補填を巡って告訴されるリスクがあるため、成長期の選手に無理をさせないのが一般的である[136]
田中将大ニューヨークヤンキースに移籍した際に、地元の新聞ニューヨーク・タイムズが1面トップで大特集を行ったが、記事中では田中の高校時代の野球生活を紹介し、チームへの絶対的な献身や規律の厳守を要求する日本の野球チームの実態を伝えている[137]。この記事を自身のコラムで取り上げた国際ジャーナリストロバートソン黎子は、アメリカの青少年に日本の高校の野球部で行われている苦行僧的日々の強制は、まず無理だろうし、児童虐待という声も上がりかねないだろうと指摘している[138]
体罰に関してはプロ野球経験者の間でも意見が二分している。松坂大輔はリトルリーグ時代「野球でミスをしても怒られないが、悪い事をすれば尻をバットで叩かれること位は当たり前だった」と回顧[139]松井秀喜も中学時代、度重なる敬遠四球にふてくされた態度をとったところ試合後、監督から体罰を受けたと証言するが、一方で監督の体罰が無ければ今の自分はいなかったと回顧[140]。逆に桑田真澄は、自らが殴られた経験を踏まえ「体罰は不要。子どもの自立を妨げ、成長の芽を摘みかねない」と指摘している[141]
2013年1月、社会問題化した桜宮高校バスケットボール部の体罰問題を受け、翌2月高野連は、加盟校全校に体罰根絶の徹底を求める通達を出した。また選抜大会開会式のスピーチで下村博文文部科学大臣が体罰根絶を改めて訴えるなど体罰根絶に努めた。しかし同年6月、高野連が野球部指導者にアンケートを行った結果、指導者から部員への体罰問題の項目では、全体の9.7%が「(体罰は)指導する上で必要」と回答したことを発表。アンケート結果を受け、西岡宏堂・審議委員長は「間違った考えの人がまだこれだけいることはショックだ。体罰がなくなるまで言い続けないといけない」と厳しい口調で語り体罰根絶に改めて努めていく旨を示した[142]
鍛冶舎巧(取材時点で県岐阜商高硬式野球部監督)は、「引き出しの少ない指導者は生徒を型にはめたがる。個性を尊重し奔放にやらせると自分が対応できなくなるから」競技経験の無い部活の顧問を任される教員も多い。高校球児の頭髪に限れば周囲の固定観念が根強い。九州地方のチームが甲子園に立った時、監督は選手の頭髪を自由化すると、OBやファンから「球児らしくない」と苦情が殺到した。頭を丸めることを強制することは明確な体罰(暴力)と定義されている[143]
抗議権の無い者による抗議
高校野球では選手やコーチに抗議権が認められ、監督に抗議権が無い。しかし抗議権の無い者による抗議として次の事例がある。
  1. 広陵佐賀北(2007年選手権決勝) - 微妙な判定をきっかけに佐賀北が逆転。広陵の監督が抗議を表明し、高野連から注意を受けた[注 63][注 64]
  2. 明石商対加古川北(2009年秋季兵庫大会) - サヨナラ打の判定をめぐり両校の監督が審判に抗議した結果、審判の判断が二転三転した[144]。県高野連は9月25日にベンチを出て抗議した明石商の監督と部長に注意を、試合後選手に整列を指示しなかった加古川北の監督、部長に厳重注意をそれぞれ言い渡した。また、県高野連審判部が二転三転した判定について県高野連に謝罪し、「再発防止に努める」とした[145]
  3. 横浜対関東一(2012年選抜大会準々決勝) - 5回裏一死一、三塁の場面で横浜がセーフティースクイズを敢行。同点かと思われたが、関東一より「三塁走者が本塁を踏んでいない」とのアピール。球審がアピールを認めたため、同点スクイズは幻となった。球審がマイクを握り「三塁走者が本塁を踏んでいないとアピールしたので、アウトにしました」と宣告後、横浜高校の監督・渡辺元智が身ぶり手ぶりを加え、球審に「走者はベースを踏んでいる」と猛抗議した。しかし、大会本部の総務委員から「監督に抗議権はない」事を告げられ口頭で注意を受けた。横浜の三塁走者は試合後、記者団に「踏んでなければスパイクの裏の感触でわかる。ガッツリ踏んだと思いました」と語り、テキサス・レンジャーズダルビッシュ有ツイッターで「横浜高校渡辺監督に注意って。てかいつも思うけど何で抗議がダメなの? 高校野球やってた時から色々と謎な決まりが多かった記憶が。」と横浜監督を擁護し、高野連の体制を批判した[146]
  4. 鹿児島玉龍対樟南(2000年鹿児島大会) - 飛球を巡る審判の判定に樟南の監督枦山智博が主将を通じて30分にわたり抗議、審判がマイクで観客に説明した。試合後、枦山は判定が覆らないとわかっていたが自軍選手の鼓舞、相手高校の良い流れを断ち切るための作戦として抗議を行ったと説明[121]。当時、枦山は県高野連の理事を務めていたが、責任を取り試合後に辞任を申し出[122]。県高野連は7月20日理事会で枦山の辞任を了承、同時に始末書の提出を求めた[147]
  5. 岐阜城北対県岐阜商(2006年夏季岐阜大会) - 県岐阜商がサヨナラホームランを打った際、歓喜した控え選手と走者が交錯。岐阜城北の監督が県岐阜商の野球規則違反[注 65]を主張し抗議、選手は試合後30分ほど整列を拒否した。試合後高野連は県岐阜商に控え選手が試合終了前にベンチから飛び出したことに対して、岐阜城北に整列の遅延行為を理由とした厳重注意処分をそれぞれ下した[148]
「高校野球賭博」
高校野球が主に「対象試合の勝敗予想」「優勝校の予想」など対象に賭博対象となっている問題。かつては暴力団胴元となり一試合に数百万から数千万円が動いたケースもあったが[149][150]近年では高校野球賭博が暴力団だけでなく一般市民や身内のグループ、会社のサラリーマン内で横行し検挙された例や[151][152][153][154]2015年プロ野球選手が野球賭博に関与していた問題では高校野球の勝敗に現金を賭けていたことも明らかにされた[155]
高野連の「干渉」
主催する高野連が学校や周辺に過度な干渉をしているという問題。部の場合、ユニフォームはともかくマネージャーの服装[156]だけでなく、抽選会に出席する責任教師や監督、選手の服装に至るまで指定され[157]、過去に出場校のユニフォームに入っている刺繍が好ましくないとして説明を求めた結果、学校側が刺繍をはずした事例がある[158]。部外では当時の長野県知事田中康夫)の応援に対して干渉した例、開会式当日、広島への原子爆弾投下の時刻にあわせて他の出場校とともに開会式前に室内練習場で黙祷を捧げようと計画した選手を制止し、自校のみで黙祷させた例もある[159]
報道への干渉例として読売新聞が2007年8月1日から2007年8月3日にかけ、3回シリーズで連載した高野連の在り方や問題点を取り上げた特集記事「高野連ってなに?」[160]を掲載。高野連が読売新聞に対し、記事の訂正と謝罪を求めたが読売新聞は回答をしていない。
応援・観客のモラルの問題
高校野球においては各校の吹奏楽部などがアルプススタンドにて応援することが通例となっているが、2011年の選手権大会前に発売された雑誌『週刊朝日増刊 甲子園2011』において、作戦の一環として「習志野の攻撃中はナインの背中を押すため管楽器のベル(音が出る部分)をバッターボックスに向け、相手校が『タイム』をかけてマウンドに集まる時はマウンドに向きを変え、相手ベンチからの指示を聞こえなくしたり、マウンド上での会話をしにくくしたりする」などとする習志野高校(千葉)の吹奏楽部顧問・石津谷治法のインタビュー記事が掲載された[161]。習志野は同大会初戦の静岡戦において7回に2死満塁からホームスチールを成功させたが、これに関連して静岡県の地元紙である静岡新聞社は試合後に、プレーとの直接的な因果関係には言及していないものの、習志野の応援を「ごう音のような吹奏楽による応援」と評し、「グラウンド上では、声による意思疎通ができなかった」とする静岡高の選手の感想を報道した[162](習志野の吹奏楽部は“美爆音”の異名を取る大音響の演奏で知られる)。またTBSテレビアナウンサーの安住紳一郎も試合の直後に放送された安住紳一郎の日曜天国(TBSラジオ)で、情報源を明らかにしなかった[163]もののこの発言に言及[164]。同番組での安住の発言を受け日刊ゲンダイが学校に取材するなどした結果、習志野の教頭はフェアプレー精神に反する意図を否定したものの[165]、2回戦以降は相手のタイム中は演奏を停止するなどの措置を取った。前述のインタビューを執筆した柳川悠二は翌2012年、「高野連が顧問の発言を問題視し、大会中に学校関係者や野球部・小林徹監督を呼び出し厳重注意していた」とも述べている[166]
習志野は2019年の選抜でも2回戦の星稜戦において太鼓の音に対して近隣住民からの苦情を受け、一番大きな太鼓の使用を自粛、他の太鼓もサイズの小さいものに代える措置を取った。高野連側はこの対応は「一時的な措置」であり、次回からは従来通りでよい、としていたものの[167]、実際には次戦以降も太鼓の数を減らす事態となった[168]。なお習志野は同大会において応援団優秀賞を受賞している(同賞は初戦の応援が対象となる)。
熱心な高校野球ファンのコミュニティである「8号門クラブ」によってバックネット裏席が占拠されるということが度々問題視されており、2016年からのドリームシート設置に影響しているのではないかとの声もある[169]
1992年の松井秀喜5打席連続敬遠の際にはグラウンドに大量のメガホンが投げ込まれたり、明徳義塾高校の校歌斉唱の際に球場全体から「帰れ」コールや勝利直後から脅迫の電話や手紙が送られる等の嫌がらせが発生し、一時はパトカーや警備員から守られながら行動せざるを得ない事態となった。
試合の展開等から、観客の応援がいわゆる「判官贔屓」的な一方的にものになる事があり、近年は度々議論となっている。
  • 1988年第60回選抜高等学校野球大会上宮高知商業戦で元木自身が隠し球を決めたが試合後、全国から上宮高校に「卑怯なことをするな」「きちんと教育しているのか」「高校生らしくない」などの苦情電話が殺到。彼曰く以後は隠し球は使用不可になったという[170]
  • 2016年選手権の東邦高校八戸学院光星高校戦、東邦が7点差で迎えた終盤からの大逆転勝利を収めた試合で、アルプススタンド以外の観客によるタオル回しなどを用いた東邦高校への過度な応援が見られ、これについて八戸学院光星の選手は「周りみんなが敵に見えた」と発言[171]
  • 2018年選手権の日大三高校奈良大附属高校戦、関西の学校である奈良大附高に応援が集中。手拍子やうちわを使った球場全体の応援に対し日大三高の選手は「正直『オレたちこんなに嫌われてるんだ』って気持ちが萎えかけた」と発言した[172][173]
  • 1998年選手権の第80回大会準決勝や2007年の第89回選手権大会決勝、2009年の第91回選手権大会決勝でもこうした事態が発生していたものの当時は特に問題視されることはなく、これらは現在でも半ば「伝説の試合」として肯定的に語り継がれている。
また、学校や選手に対する偏見、憶測やデマが度々発生する事がある。例えば、学校が県外の生徒で固められていると「第二○○代表」と揶揄される事が多々あり、秀岳館高校は試合に勝利しても冷たい視線や罵声を浴びる事があった[174]。第99回選手権大会では1回戦の中京大中京-広陵戦の試合結果に不満を持った愛知県内の男性がインターネット掲示板に中京大中京高に対する爆破予告を書き込み、威力業務妨害罪により逮捕される事態も発生している[175]

注釈

  1. ^ 例として2001年優勝の報徳学園はエース大谷智久を1試合も登板させなかった。
  2. ^ 1979年は日程が消化できず、ベスト4に残った4校が優勝校扱い。また、2008年はわずか2日しか試合が実施されなかったため、優勝校無しとなった(準々決勝までに打ち切りの場合は優勝校無しとなる)。
  3. ^ ただし週末はプロ野球の生中継が優先されるため、遅れて放送されるカードが発生する。
  4. ^ 2004年は決勝戦が雨天により薄暮開催となったため生放送中止。2012年も雨天による薄暮開催の日程が組まれたため生放送中止になる予定だったが、試合そのものが順延となったため、生放送が復活している。
  5. ^ のちに1996年に小笠原、1998年に大東地方にそれぞれ地上波の中継局が設置される(大東諸島は当初は距離的な関係で小笠原中継局から分配して放送した)が、2011年7月の地デジ統合まではこの名残りでBS2での放送が行われていた。
  6. ^ 2004年4月より日和佐宍喰商と合併し、海部へと改組。戦績は海部に引き継がれている[11]
  7. ^ 実質的な創部は、大産大高大東校舎として開校した1983年度(公式戦には本校との合同チームで出場)。
  8. ^ 1997年秋季および1998年春季の県大会と関東大会も優勝、年間無敗で全ての公式戦(9冠)を制した。
  9. ^ ただし4度の優勝はいずれも秋季地区大会優勝校の出場が一部地区に限られていた時代のもの
  10. ^ 当時。1950年神奈川県に移転。
  11. ^ 東京代表の記録は1973年までの記録。
  12. ^ a b 1974年からの記録。
  13. ^ 1998年の第80回大会は東神奈川代表。
  14. ^ 同年夏の北信越地区の出場校は、日本文理(新潟)、佐久長聖(長野)、富山商(富山)、星稜(石川)、敦賀気比(福井)。
  15. ^ 1954年・第36回大会から1977年・第59回大会まで、記念大会以外で滋賀県勢が出場したのは僅か3回のみである。
  16. ^ a b 1942年の全国中等学校野球大会は記録に含まれていない。
  17. ^ 2008年の第90回大会、2018年の第100回大会は北大阪代表。
  18. ^ 1979年の国体に出場した都城は4校同時優勝という形で優勝している。
  19. ^ 試合終了後、スタンドでは相手校応援団を交えてのウェーブが起きた。
  20. ^ 春江工坂井(福井)は、坂井初年度の2014年の春から秋まで連合を組んでいたが、春江工最終年度となる2015年シーズンに向けて春江工の選手が単独チームでの出場を望んだため。両校は2015年に春季大会と選手権福井大会で2度対戦し、3年生だけの春江工がいずれも勝利している。
  21. ^ 軟式では、2011年・2012年に大津大津緑洋(西中国・山口)の連合チームが初めて全国大会に出場した。
  22. ^ 春の選抜では、2021年に富山北部水橋(富山)が21世紀枠の補欠校になっている。
  23. ^ a b 出場回数には数えられている。
  24. ^ 準優勝の長岡中の出場も検討されたが部員が帰省して人数がそろわないため見送られた。
  25. ^ 杉下茂を指す。
  26. ^ 実際は杉下茂(当時13歳)が不正行為を働いたわけではなく、事情を知らない対戦校(日大三中)から杉下が未登録選手だと指摘されたことが大きな問題となり、結局は止むを得ず辞退となったもの。杉下は帝京商へ転入直後に、それまで在籍した一ツ橋高等小学校から請われ、帝京商から許可を受けた上で東京府の高等小学校野球大会に助っ人として出場し優勝に導いたのだが、その直後の中等学校優勝野球大会で杉下がベンチ入りしていた(但し試合には出場していない)ことから、「未登録選手がいる」と問題視されてしまった。
  27. ^ 帝京商の出場辞退に伴い日大三中が代替出場校に選ばれたが、日大三中も出場辞退した結果。
  28. ^ 実際には、当時の監督である藤田省三が「借り物の優勝旗で甲子園には行けない」と語ったことがあり、それが遠因ではないかとみられている。
  29. ^ 甲子園で開会式は出場したものの、試合ができないまま不戦敗となり、やむを得ず甲子園を去った戦後初のケースとなった。なお同年春の大会には出場し試合を行っている(初戦敗退)。
  30. ^ 夏の甲子園で辞退したチームが出た場合、その地方大会で準優勝したチームが繰り上げ出場となるが、それがいつになるか不透明であるため。
  31. ^ a b 1回戦(初戦)は出場して勝利。
  32. ^ 1978年は前年秋の北信越大会決勝で福井商に0-3で敗戦している。なお1973年から1982年までの北信越地区出場枠は1.5であった。
  33. ^ 群馬の高崎商は1998年まで夏出場10回ながら春の出場がなかったが、1999年に初出場。
  34. ^ 沖縄水産は2回目の出場となった1996年、沖縄の興南は4回目の出場となった2010年、福島の聖光学院は3回目の出場となった2012年、長崎の海星は5回目の出場となった2016年に初勝利。
  35. ^ 春の北海道勢で最多出場している。
  36. ^ 2006年にも出場が決定していたが、前述の不祥事により辞退。
  37. ^ a b c d 交流試合では勝利を収めている。
  38. ^ a b c d e うち1回は新型コロナの影響で中止、救済措置として開催された交流試合では敗退している。
  39. ^ 2020年の中止を挟む
  40. ^ 春の長野県勢で最多出場している。
  41. ^ 2001年、2005年、2010年、2011年、2016年、2020年。
  42. ^ 合併した大成の2回を含む。
  43. ^ 1989年の夏初出場まで、春は同年(準優勝)を含め6回出場。
  44. ^ 栃木の国学院栃木は2回目の出場となった2022年に初勝利。
  45. ^ 監督は05年春に神村学園で出場した長沢宏行
  46. ^ 能代商能代北(女子校)が合併し2013年に誕生した能代松陽(能代商時代に夏の甲子園に3回出場し、2022年夏に通算4回目の出場)も、角館と同様の理由で能代商の開校・創部年を引き続き紹介している。その他秋田では2000年代以前に新設合併で誕生した平成大館(2016年大館工・大館桂と合併し現在は大館桂桜)など硬式野球部がある高校とない高校が合併して誕生した高校について、硬式野球部があった前身校の開校・創部年をそのまま紹介、あるいは開校より創部が古いというデータを大会パンフレットで紹介したことがある。
  47. ^ 出場が認められたのは沖縄県大会のみであり仮に県大会で優勝しても全国大会へは出場できなかった。
  48. ^ 常葉菊川の野球部長としては2007年春に出場あり。
  49. ^ 大会中止。なお救済措置として開催された交流試合では加藤学園に敗れる。
  50. ^ 1988年夏1回戦勝利の滝川二(兵庫・対高田戦)、1993年夏2回戦勝利の鹿児島商工(鹿児島・対堀越戦)、2021年夏1回戦勝利の大阪桐蔭(大阪・対東海大菅生戦)がある。
  51. ^ 夏の大会は1回戦の対戦が免除され、2回戦から出場する5日目第3試合-7日目第2試合までの学校が大会初戦になる。また7日目第3試合は片方が初戦、もう一方は1回戦勝ち抜け校であるので、1回戦勝ち抜け校はその試合でも校歌が演奏される[58]
  52. ^ いずれの場合もテレビや大会のガイドブックでは代用の楽曲が「校歌」として扱われている。
  53. ^ ただし、引き分けや雨天ノーゲームなどによって再試合に至った場合は、1試合のみ行うことがある。
  54. ^ 事情を知らない全国の高校野球ファンから、「なんで兵庫県だけ甲子園を使うのか」「ずるい」という内容だった。
  55. ^ 三振や四球の状態で宣告が無い場合やアウトカウントの相違など明らかな問題に対しては抗議をすることが出来る。 - 高校野球特別規則第26条
  56. ^ 逆にこれが“何百球を独りで投げ抜いた”という根性論にありがちなドラマ作りがされる原因にもなっている。
  57. ^ 夏の大会は2003年から導入するとしていたが、雨天中止による延期が頻発したため、1日4試合で開催した。この場合、春は2日、夏は3日以上雨天中止などによる順延が生じていれば、準々決勝は4試合を一括開催するとしていた。
  58. ^ 本来なら春は2014年から同様に行うとしていたが、雨天中止と、2回戦の1試合で引き分け再試合が生じて順延が2日生じたために、準々決勝の翌日に予定されていた休養日は取り消しとなり、結果的に連続開催(準々決勝は元から1日4試合開催)となった。
  59. ^ これに合わせ、新潟高野連は当該大会での球数制限導入を一旦見送ることを決定、同会議への参画を求められ受諾している。
  60. ^ PL学園では3年生に1・2年生の“付き人”がつけられていたことはよく知られる。2013年、頻発した部内暴力の原因として付き人制度が禁止され、さらに野球部専用の寮も廃止され、下級生が上級生の練習着を洗濯することも禁止となり、一般生徒寮の関係者と経営母体のパーフェクト・リバティー教団のボランティアが洗濯するなど、学校及び教団の主導による改革が行われている。【高校野球 TVではわからないホンネと裏側】―思い出してもゾッとする 甲子園常連校の「野球部の掟」1 PL学園 ロッテ・今江敏晃日刊ゲンダイ2010年8月18日)
  61. ^ 黒田によればこのシゴキは4日間続き、その間風呂にも入れなかったと告白。最後は見かねたチームメイトの保護者が介入し事態は解決する。ニューヨーク・タイムズ特集『ヤンキース黒田は日本で苦痛によって作られた』より引用
  62. ^ 青森山田高校、野球部員死亡で謝罪。殴打した側の上級生野球部員は殺人過失致死で逮捕されることもなく書類送検のみ(暴行と死亡との因果関係の特定には至っていないという理由)で、その後の野球部の処遇については(出場辞退や廃部など)学校側からも高野連からも発表されていなかった。
  63. ^ 抗議はしなかったが佐賀北と対戦した帝京、長崎日大の監督も試合後、記者団へ微妙な判定は全て自分たちに不利だったというコメントを残している
  64. ^ 翌年の選手権大会のNHKにおける中継でこのシーンのVTRが流れた際には映像をバックネット裏のカメラに切り替える措置が取られた。
  65. ^ 野球規則3.17によるもの。「両チームのプレーヤー及び控えのプレーヤーは、実際に競技にたずさわっているか、競技に出る準備をしているか、あるいは一塁または三塁のベースコーチに出ている場合を除いて、そのチームのベンチに入っていなければならない。本条項に違反したときは、審判員は、警告を発した後、その反則者を競技場から除くことができる。」とされている。

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