日本の高山植物相の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/08 08:48 UTC 版)
「日本の高山植物相」の記事における「日本の高山植物相の特徴」の解説
日本の高山植物相は、プレートの沈み込み帯にあって、活発な火山活動や付加体によって様々な変化に富むようになった山岳の地形や地質、世界一と言われる冬季の強風、そして多雪、春から秋にかけての湿潤な気候という気候特性によって、独自の発達を遂げてきた。 変化に富んだ日本の山岳地帯の地形や地質は、必ずしも広いとは言えない日本の高山帯の中で、様々な種類の高山植物群落を発達させた。とりわけ石灰岩地、かんらん岩、蛇紋岩地といった特殊岩石地は、多くの貴重な固有の高山植物が生育している。また地理的隔離が大きい本州中部の高山帯は、特殊岩地とともに多くの高山植物の固有種が見られ、ともに最終氷期以前という古い時代に日本列島へやって来て、現在まで遺存し続けている種が見られる。つまり本州中部の高山帯や特殊岩石地は、高山植物のレフュジア(避難場所)として機能していたものと考えられる。また火山活動によって噴出した火山灰や溶岩流による火山荒原で見られる高山植物の群落は、火山活動が活発な日本の高山植物相の特徴の一つであるが、氷期に高山植物が分布を広げるには標高が低い地域であっても、火山荒原によって高山植物の分布は広がっていったものと考えられており、比較的狭い地域に様々な地形や地質を有し、火山活動が活発であるという特徴を持つ日本の地形や地質は、日本の高山植物相の成立と発展に大きな影響を与えている。 ハイマツ帯や雪田に分布する高山植物に代表されるように、冬季の大雪は日本の高山植物相のあり方に大きな影響を与えている。また冬季の大雪は本州中部から北海道の山岳地帯に発達している高層湿原や、北陸から東北にかけての日本海側の山地で見られる偽高山帯の成立の要因となっている。そして冬季の強風は日本の高山帯の標高を下げる働きをしている。熱帯地方の高山で見られる背が高い高山植物は、日本のような冬季の強風や大雪に見舞われる環境では生存が著しく困難であるため全く見られず、背が低くて地を這って生育し、湿潤な環境を好むハイマツが日本の高山ではハイマツ帯を形成するように、日本の高山植物はその気象環境に適応した形態を取っている。このように冬季の強風と大雪は日本の高山植物相のあり方に大きな影響をもたらしている。 日本の高山植物は北極海周辺から日本列島へ南下してきた周北極要素の植物が最も多いものと考えられているが、千島、カムチャッカ、北米の太平洋沿岸、ヒマラヤ山脈周辺、アルタイ山脈などからやってきたと考えられる種も見られ、更には低山帯から日本の高山に順応した種もあって、日本の高山植物相は現在もなお変化をし続けているものと考えられる。 しかし高山植物の盗掘や、シカなどの食害の激化、そして地球温暖化によるものと考えられる環境の変化は、現在、日本の高山植物相に深刻な危機をもたらしている。高山植物相は地形、地質、気象条件などの微妙なバランスの中で成立してきたものであるため、いったんバランスが崩れてしまうとたちまち崩壊する危機を孕んでいる。そのため現在、高山植物を守るために様々な保護策が講じられている。
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