盗掘(とうくつ)
盗掘
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/28 02:18 UTC 版)
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盗掘(とうくつ)とは、一般に、正当な権利がないにもかかわらず土地(私有地・公有地を問わず)を掘削し、そこから得られた財物(埋蔵物、動植物など)を窃取する行為である。とくに墓を荒らす場合は墓荒らしという。
概要
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何が正当な「発掘」または「採掘」で、何を基準に「盗掘」とするかは、その時代、地域それぞれの倫理観、価値観、宗教観、地位や立場によって異なった見方がされることがある。たとえば、20世紀初頭のエジプトにおいてイギリスやナチス政権下のドイツが盛んに遺跡の発掘調査を行って、出土品を持ち去ったことについて、現地エジプトの国民から見れば、自国の貴重な文化財を持ち帰られたことから盗掘であると判断することもできる。また、色々な正の面があったとしても現代の学術的で合法的な発掘作業というものも実際には墓荒しと同類であるという見方もできる[1]。
遺跡を掘り探し出土品を売り捌くことで生計を立てている村においては、盗掘ではなく「仕事」であると主張されるであろうが、実際には貴重な文化財を破壊する行為であり、特に墓などの遺跡の本来の状態、被葬者や副葬品の配置からわかる当時のものの考え方など形のない考古学的に重要な情報を破壊してしまう行為である。このことが盗掘のもっとも許しがたい行為と考えられ、根本的な対策として、盗掘者の生計をたてさせている趣味的な古美術品の購入者は、盗掘品を購入するのをやめるべきであり、また、盗掘者を生み出す土壌やその国の経済状態などの改善が図られないかぎり、問題は解決しない[2]。
また、非合法的な「盗掘」と合法的な「財宝探し」の違いに関しても様々な見解がある。通常、両者を定義し区別するのは法律である。財宝探しを規制・許可する各国の法律には様々な種類がある[3]。政府の許可を得た上で合法的に失われた財宝を探し求めるトレジャーハンターは、近年に入って財宝探しチームに諸分野の専門家を入れることが増えているという[4]。
他、大規模な化石が地層内から発見された場合などにも、盗掘されるケースが各地で相次いでいる。例として、日本最古級の哺乳類や、白亜紀の恐竜・『丹波竜』などの化石が相次いで発見された「篠山層群」(兵庫県丹波篠山市)でも、2009年9月頃に、化石狙いと見られる盗掘跡が見つかった。問題点としては、明らかな盗掘行為と見られる場合であっても、各自治体の条例では、盗掘行為を禁じてはいても、盗掘者に対して原状回復を求めることしかできず、また、一般者の立ち入りを規制することができないケースがほとんどであるため、各自治体は、対応に苦慮しているのが現状である[5]。
希少植物・希少動物の卵
ウミガメの卵などの食用目的などで盗掘も確認されることから、卵の盗掘防止のパトロール等が行われている[6][7][8]。関係自治体は、これらの盗掘を見かけたら110番するよう呼びかけている[9]。
野生ランや高山植物などの希少な植物をねらう盗掘も多い。群落全てを狙うような大規模な場合もあり、一部の希少種ではかなりの個体が盗掘され激減[10]、絶滅寸前になっているものもある。この場合、「山野草の愛好家が直接盗掘する。」というケースもあるが、山取品として販売する業者の存在が大きい。
また、インターネット上で「希少植物の自生地情報交換掲示板」などと称して盗掘を助長しているサイトの存在も環境保護団体等によって問題が指摘されている。写真に添付されるGPS情報などから場所が特定され、盗掘者に情報が提供されることから奇麗だからと言って安易な写真投稿は控えることを自然公園の管理者は希望している[11]。
日本では絶滅が危惧される国内希少野生動植物種に指定されている動植物も原則禁止であるが申請して許可が下りれば採取自体は可能である[12]。
各国の墓荒らし
- 日本
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- 1060年、推古天皇陵山田高塚古墳が盗掘された。
- 1063年、成務天皇陵佐紀石塚山古墳が盗掘された。
- 1235年3月20日と21日に、天武天皇と持統天皇が納めれた野口王墓に盗掘があったことが、藤原定家の日記『明月記』に記載されている。
- 1844年と1848年に、再び佐紀石塚山古墳で盗掘が行われた。
- 1915年、日葉酢媛命陵佐紀陵山古墳が盗掘された。
- 中国
- 古代中国の皇帝の墓には侵入者をまどわせるための仕掛けがつくられていた。墓の外観は周囲の風景に溶け込むように設計され、その内部には侵入者を罠にはめるための落とし穴が掘られていた[13]。
- アメリカ
- 1876年11月7日にエイブラハム・リンカーンの墓を暴こうとする試みがあった[17]。
- ロシア
- 1920年代後半、ロシアで著名な医者であったニコライ・ピロゴフの墓が荒らされ、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世から贈られた剣などが奪われた。
- 人工的な大飢饉ホロドモールの際に、食料とするために墓が荒らされた。
有名な盗掘者
- マアムーン - アッバース朝の第7代カリフで、ピラミッドに穴を開けて内部調査したことで知られている。その行為は盗掘に当てはまるかどうかという点で議論がある。
- 温韜 - 五代十国時代の節度使。唐王朝の歴代皇帝の陵墓である唐の十八陵で高宗および則天武后の合同墓である唐乾陵を除く全ての陵墓で盗掘を行ったことで有名[22]。
- ハインリヒ・シュリーマン - 考古学者ではあるものの、その発掘手法と文物の扱いから「盗掘者」と揶揄されて批判されることもある。
墓荒らし・盗掘者を題材とした作品
- 『アボット・パピルス』 - エジプト新王国時代に記された盗掘者の裁判記録
- 『トゥームレイダー』シリーズ
- 『中国盗墓史稿~未だ掘られざるの墓無し』著:岡島政美
- 『魔術師カエムワセトの物語』 - プトレマイオス朝時代のパピルスに、実在した古代エジプトの王子カエムワセトが墓荒らしをする物語がある。
- 『奥州波奈志』 - 日本の怪談。この作品に登場する『疱瘡婆』が死体を食べるために墓荒らしを行う。
- ウィリアム・シェイクスピアのエピタフ(墓碑銘)
- 『鬼吹灯』 - 2006年に中国で書籍化された1980年代の墓荒らしをモデルにした娯楽小説。本作品から「盗墓小説」という小説ジャンルが流行した。
関連する法律
- 日本におけるルール・法律
- 国際的なルール
脚注
- ^ 『世界の財宝 未だ発見されざるもの』p.21
- ^ “遺跡の盗掘ネットワークがエジプトで暗躍”. 日本経済新聞 (2016年5月29日). 2024年10月11日閲覧。
- ^ 『謎学・失われた財宝』p.301
- ^ 『謎学・失われた財宝』p.8
- ^ 恐竜化石狙い盗掘 兵庫・篠山層群の保護区域 読売新聞 2009年12月22日「
- ^ “転機迎えたウミガメ保護|日経サイエンス”. 日経サイエンス一般読者向けの月刊科学雑誌「日経サイエンス」のサイトです。. 2024年10月11日閲覧。
- ^ ウミガメの卵捕食対策の手引き 著:鹿児島県環境林務部自然保護課 平成30年3月
- ^ “ウミガメの産卵、増加傾向 保護活動実り盗掘減る”. 日本経済新聞 (2014年11月7日). 2024年10月11日閲覧。
- ^ “アカウミガメの卵を採ることは禁止されています”. www.city.fukuroi.shizuoka.jp. 2024年10月11日閲覧。
- ^ “高山植物、盗掘しないで アポイ岳保全対策協 登山口で啓発”. 北海道新聞 (2018年6月17日). 2018年6月18日閲覧。
- ^ “岩手・早池峰山で高山植物の盗掘絶えず 登山アプリが生育場所の拡散元になる可能性も”. 河北新報オンライン (2023年11月9日). 2023年11月9日閲覧。
- ^ “国内希少野生動植物種の捕獲等許可の申請方法について”. 環境省. 2023年11月9日閲覧。
- ^ a b 『謎学・失われた財宝』p.154
- ^
(中国語) 呂氏春秋/卷十, ウィキソースより閲覧。
- ^ “政府が総力を挙げて取り締まるほど「墓泥棒」が中国で激増中”. クーリエ・ジャポン (2021年5月19日). 2022年2月13日閲覧。
- ^ Qin, Amy (2017年7月15日). “Tomb Robbing, Perilous but Alluring, Makes Comeback in China” (英語). The New York Times. 2022年2月13日閲覧。
- ^ Martin, Alison (2021年4月15日). “This week in history: Plot to steal Abraham Lincoln’s body foiled” (英語). Chicago Sun-Times. 2022年2月13日閲覧。
- ^ a b Kraske, Marion (21 December 2007). “Bulgaria Plagued by 'Grave Robbers'”. Spiegel Online 2022年2月13日閲覧。
- ^ “Rise of the Nazi-Grave Robbers”. Bloomberg Businessweek. (23 August 2016) 2022年2月13日閲覧。.
- ^ “Grave robbing ghouls who trade in Nazi relics”. Sunday Express. (8 September 2012) 2022年2月13日閲覧。
- ^ 『世界の財宝 未だ発見されざるもの』p.22
- ^ “温韬盗掘唐朝17座皇陵,连昭陵也遭殃,却为何不敢挖武则天的坟?_李茂贞”. www.sohu.com. 2024年11月18日閲覧。
- ^ a b “法令違反の「宝探し」か「歴史的発見」か YouTuberと小学生の明暗を分けたポイント - 弁護士ドットコムニュース”. 弁護士ドットコム (2023年5月28日). 2023年5月28日閲覧。
- ^ “愛媛県庁/山野草の盗掘防止について”. www.pref.ehime.jp. 2023年5月28日閲覧。
参考文献
- ロベール・シャルー(著)川崎竹一(訳)『世界の財宝 未だ発見されざるもの』1964年
- マイケル・グラウシュコ(著)大出健(訳)『謎学・失われた財宝』1994年
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- 「前方後円墳―その起源を解明する」藤田友治(編著) ISBN 4623031705 - 天皇陵の盗掘の歴史について触れている
- 「古代エジプト探検史」ベルクテール・ジャン(著)福田素子(訳)吉村作治(監訳) ISBN 4422210521 - エジプト盗掘の歴史
関連項目
- 死体売買
- 埋蔵文化財
- ミイラ取りがミイラになる
- トレジャーハンター
- プラントハンター
- 水中文化遺産保護条約
- 礼拝所及び墳墓に関する罪(墳墓発掘死体損壊等罪)
- 美術窃盗 - 有名なものは買い手も知識があるため売れず、大抵は捕まる。
- ワッケーロ - アンデス地方全域で盗掘を行う人々の総称。
- 王家の谷の村 - 新王国時代エジプト王家の墓の上にある盗掘者の村。
- イギリスの死体盗掘人
外部リンク
- 巨大墳墓の盗掘譚 - 中国・日本・エジプト 古代世界のあの世とこの世(「日中陵墓比較盗掘史」改題) - サイト:明治大学、著:加藤徹
盗掘
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/23 16:03 UTC 版)
1740年、ナーディル・シャーは自身が中央アジアの支配者として心酔していたティムールの石棺を持ち出そうとした。彼はティムールの武勇伝を模倣しようとし、それは特に治世の残酷さとなって現れ、結果、彼は暗殺され、帝国は分裂した。石棺の持ち出しを悪い兆しであると考えた彼の補佐官は石棺を正しい場所に置いたままにしておくよう忠告した。 1941年6月19日、ティムールの石棺は2回目の盗掘に被害に遭うこととなった。ソビエト連邦の考古学者が地下室を発見、ミハイル・ゲラシモフはティムールの頭蓋骨からティムールの顔の特徴を再現することができた。これにより、ティムールの身長は当時としては長身の部類に入る約172cmであり、はっきりと足を引き摺って歩いていたことが確認された。さらに、ウルグ・ベクの暗殺に関する歴史情報、他の墓の真偽も確認された。ティムールとウルグ・ベクの頭蓋骨はスターリングラードの戦いが始まった1942年11月に完全なイスラム教の形式に則って再埋葬された。
※この「盗掘」の解説は、「グーリ・アミール廟」の解説の一部です。
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