食肉 食肉に関する科学技術

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 宗教 > 仏教 > 教義 > 食肉の解説 > 食肉に関する科学技術 

食肉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/22 14:09 UTC 版)

食肉に関する科学技術

食肉を主食に近い形で扱っている国々では、食肉科学はひとつの分野を形成している。専門的な国際学術雑誌もいくつか発行されており(著名なものとしてはMeat Science誌[15])、また毎年国際食肉科学技術会議[16]が開催されている。

日本では小規模ながら日本食肉研究会[17]と呼ばれる学術団体が存在している。

食肉の生産量

主要先進国における2010年から2012年にかけての食肉消費量(左)と、2022年の予想食肉消費量(右)。青が牛肉、ピンクが豚肉、オレンジが食鳥の肉、紫が羊および山羊の肉である。ほとんどの先進国において食肉消費量は多いが、伸びは少ない[18]
新興国における食肉消費量図。グラフ表示は上図に準ずる。新興国における食肉消費が急拡大していることが読み取れる[19]

食肉の生産統計

全世界の食肉生産量は、2018年の統計では3億4100万トン[20]

2018年の肉の種類別の生産量の内訳は次のとおり[20]。鶏肉 1億2731万トン[20]、豚肉 1億2088万トン[20]、牛肉 7161万トン[20]、羊肉・ヤギ肉 1577万トン[20]、アヒル肉 446万トン[20]、ガチョウ肉 265万トン[20]、狩猟肉(ジビエ)211万トン[20]、馬肉 79万トン[20]、ラクダ肉 55万トン[20]

地域別の生産統計では、2018年の統計で、アジア 1億4371万トン、ヨーロッパ 6385万トン、北アメリカ 5173万トン、南アメリカ 4612万トン、アフリカ 2017万トン、中央アメリカ 889万トン、オセアニア 669万トン[20]

国別の生産統計では、2018年の統計で、中国 8816万トン、アメリカ合衆国 4683万トン、インド 745万トン、イギリス 409万トン[20]

日本国内の生産

日本の国内生産においては上記3種の占有率はさらに高くなり、牛肉・豚肉・鶏肉の三種類の生産量合計は全食肉生産の99.7%にのぼる。日本でもっとも生産量の多い食肉は鶏肉であり、2010年には142万トンが生産された。ついで多いものは豚肉であり、同年の生産量は129万トンだった。3番目に生産量の多いものは牛肉で、51万トンにのぼった。これ以外に日本で統計上有意な食肉生産量のあったものは多い順からウマ、ヒツジ、ヤギ、シチメンチョウの4種があったが、馬肉が6千トンの生産量があったほかはいずれも150トンから数十トンにすぎず、非常に小規模の生産にとどまっている[21]。またこのうち、ウマは九州地方の消費が飛びぬけて高く[22]、ヤギは南西諸島に消費がほぼ限定される[23]ことも特徴となっている。

世界の生産の予測

主要食肉三種の生産量は2018年には豚肉が11994万トン、鶏肉が12030万トン、牛肉が7422万トンとなると予測されており、鶏が豚を抜いて最も多く生産される食肉になると予測されている[24]。1970年から2010年にかけての40年間で、牛肉生産は62.5%、豚肉生産は205%、そして鶏肉生産は545%の増産を示した[25]。どの種類も生産量はかなり増加傾向にあるが、なかでも鶏の生産は飛びぬけて急増する傾向にある。これは、牛や豚に比べ狭い場所で集中的に飼育できるうえ、この2種に比べて個体が小さいため価格が安く頭数を増やしやすいこと、食用鶏であるブロイラーは豚や牛に比べ少ない飼料で大きくなるため効率が良いこと。さらに宗教的背景として、ヒンドゥー教において禁忌とされる牛肉食やイスラム教において禁忌とされる豚肉食とは違い、鶏肉を禁忌とする宗教がほとんど存在しない(肉食全体を禁じる宗派を除く)ため、世界中のどの場所にも需要が存在して地域的な偏りが少ないことなどが挙げられる。

食肉生産は先進国においては需要の伸び悩みから生産量も横ばいあるいは減少傾向にあるが、発展途上国においては経済の成長と、それに伴う生活水準の向上によって食肉の消費が急拡大している。そのため食肉生産も急増を続けており、上記の食肉生産の世界的な拡大は発展途上国における生産量の増大をその主因としている。

消費量

消費統計

一人あたりの年間食肉消費量(2003年)[26]
順位 一人当たりの
消費量 (kg)
1 アメリカ合衆国 123
2 スペイン 121
3 オーストラリア 118
4  オーストリア 112
5  デンマーク 111
6 ニュージーランド 109
7 キプロス 108
8 アイルランド 102
9 カナダ 98
10 フランス 98

一人当たり食肉消費の多い国には北アメリカ西ヨーロッパならびにオセアニアの先進国が名を連ねている。これは所得水準が高く肉をふんだんに食べることができる経済的条件と、肉食を好む食文化の二つの要因がある。こうした国々においては食肉消費量は多いものの、一人当たりの消費量はほぼ上限に達しているため消費量は頭打ちとなっている。一方、新興国においては一人当たり食肉消費量は先進国に比べて少ないが、経済的な成長に合わせ食肉消費量も急増する傾向にある。日本の食肉消費は2013年には一人当たり30kg[27]であり、他の先進国から比較して4分の1から3分の1程度の消費量しかなく、群を抜いて低いものとなっている(ただし砂糖、果物などの植物性高エネルギー食材の消費も日本は群を抜いて低い)。また、この食肉消費の内訳は、日本人一人当たりで鶏肉12kg、豚肉12kg、牛肉6kgとなっている[27]

宗教圏や文化圏による消費量や生産量の偏り

食肉とは食用にする動物の肉のことを指すが、世界各地においてそれぞれの地域で育まれてきた文化的伝統がある。ある地域で珍重される食肉が他の地域においては全く食べられず、食品としてすら扱われないといったことは珍しいことではない。世界で最も一般的な食肉である牛肉、豚肉、鶏肉ですら、そういった地域差が存在する。こういった差異の中で最も顕著なものは、宗教的タブーによる制限である。たとえば牛肉は世界のかなりの地域において最も好まれる肉であるが、インドにおいてはヒンドゥー教が牛を聖獣としているため全く食べない人が多いばかりでなく、牛肉の生産・流通を法的規制や暴力的手段で阻止しようとする動きすらある[28]。一方、豚肉はイスラム教では不浄の食べ物として忌み嫌われる存在であるためイスラーム圏では食肉として扱わない。

またある地域で、特定の種類の食肉が特に好まれ大量に生産されることもある。シチメンチョウは世界5位の生産量のある食肉であるが、生産及び消費は原産地でもある北アメリカ、特にアメリカ合衆国に片寄っており、2010年度の総生産量の48%がアメリカ一国で生産された[23]。羊肉はどの地域でもそれほど消費量が多い肉ではないが、例外的にオセアニア、特にニュージーランドにおいては突出して消費量が多く、牛豚鶏の三種とそれほど遜色ない消費量となっている。オーストラリアにおいてもニュージーランドほどではないものの、やはり羊肉消費は他国と比べて多い傾向にある[29]。中国人のなかの多数派(漢民族)は基本的に(イスラームやヒンドゥーでもなく)宗教的制約が無く、豚肉を好んで食べ、人口が多いので豚肉の世界消費量を押し上げている。

明治以降の日本だけに焦点をあてた場合でも、東日本では豚肉の消費量が多く、西日本では牛肉の消費量が多いとされる。ただし西日本でも、九州や沖縄では豚肉の方が消費量が多い[30]


注釈

  1. ^ USDA yield gradeとUSDA quality gradeがある[12]
  2. ^ 日本食肉格付協会 により規格化および運用されている。

出典

  1. ^ 「食肉」『広辞苑』
  2. ^ 肉の生食に注意! 埼玉県ホームページ(2018年3月17日閲覧)
  3. ^ a b 国際がん研究機関 (2015-10-26). IARC Monographs evaluate consumption of red meat and processed meat (Report). http://www.iarc.fr/en/media-centre/pr/2015/pdfs/pr240_E.pdf.  WHO report says eating processed meat is carcinogenic: Understanding the findings”. ハーバード公衆衛生大学院英語版 (2015年11月13日). 2017年5月6日閲覧。
  4. ^ 厚生省保健医療局健康増進栄養課『健康づくりのための食生活指針-解説と指導要領』第一出版、1986年5月。ISBN 978-4-8041-0327-3
  5. ^ 国立健康・栄養研究所監修『食生活指針』 第一出版、2版、2003年9月。ISBN 978-4-8041-1076-9
  6. ^ 「食生活指針」の策定について (厚生労働省)
  7. ^ 千国幸一、「食肉の特性と利用」 日本調理科学会誌 2007年 40巻 1号 p.33-36, doi:10.11402/cookeryscience1995.40.1_33
  8. ^ 石田正昭「食肉工場の衛生改善と生産性向上」『三重大学生物資源学部紀要』第21号、1999年1月、 17-30頁、 NAID 110000506896
  9. ^ 三橋貴明『経済ニュースの裏を読め!』 TAC出版、2009年、213頁。
  10. ^ 『現代の食品科学(第2版)』三共出版、1992年、p.260〜261、ISBN 978-4-7827-0277-2
  11. ^ 松石昌典、西邑隆徳、山本克博編『肉の機能と科学』《食物と健康の科学シリーズ》p71 朝倉書店、2015年4月5日初版第1刷
  12. ^ USDA quality standards
  13. ^ ジビエ(野生鳥獣の肉)はよく加熱して食べましょう 厚生労働省
  14. ^ E型肝炎ウイルスに対する安全対策へのご協力のお願いについて 日本赤十字社 2018年3月9日告知
  15. ^ エルセビア・サイエンス社 Meat Science誌
  16. ^ International Congress of Meat Science and Technology
  17. ^ 日本食肉研究会
  18. ^ Meat Atlas 2014 – Facts and figures about the animals we eat , page 46, download as pdf
  19. ^ Meat Atlas 2014 – Facts and figures about the animals we eat , page 48, download as pdf
  20. ^ a b c d e f g h i j k l m [1]
  21. ^ 「肉の機能と科学」(食物と健康の科学シリーズ)p19 松石昌典・西邑隆徳・山本克博編 朝倉書店 2015年4月5日初版第1刷
  22. ^ 「肉の機能と科学」(食物と健康の科学シリーズ)p24 松石昌典・西邑隆徳・山本克博編 朝倉書店 2015年4月5日初版第1刷
  23. ^ a b 「肉の機能と科学」(食物と健康の科学シリーズ)p25 松石昌典・西邑隆徳・山本克博編 朝倉書店 2015年4月5日初版第1刷
  24. ^ 「世界の食肉生産はどうなるか 2018年の展望」p4 ハンス・ヴィルヘルム・ヴィントフォルスト著 杉山道雄・大島俊三編訳著 平光美津子・鷲見孝子訳著 筑波書房 2011年6月20日第1版第1刷発行
  25. ^ 「食肉・鶏卵生産のグローバル化 2021年までの展望」p1 ハンス・ヴィルヘルム・ヴィントフォルスト、アンナ・ヴィルケ著 杉山道雄・大島俊三編訳著 平光美津子・鷲見孝子・棚橋亜矢子・松野希恵・高山侑樹共訳 筑波書房 2011年6月20日第1版第1刷発行
  26. ^ FAO (2009): FAOSTAT. Rom.
  27. ^ a b https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_000814.html 「食肉の消費動向について」独立行政法人農畜産業振興機構 2015年7月6日 2016年4月29日閲覧
  28. ^ 牛肉取引禁止令差し止め インド最高裁 日本経済新聞ニュースサイト(2017年7月13日)2018年3月17日閲覧
  29. ^ 「肉の機能と科学」(食物と健康の科学シリーズ)p9-10 松石昌典・西邑隆徳・山本克博編 朝倉書店 2015年4月5日初版第1刷
  30. ^ [2]
  31. ^ 植物性たんぱくに脚光 三井物産、エンドウ豆で食肉風 日本経済新聞・電子版(2017年10月30日)
  32. ^ 「植物肉」は“ほぼ”肉の味だった日経ビジネスオンライン(2017年5月17日)2018年3月17日閲覧
  33. ^ 北村真理・屋良佳緒理(日本語版監修)「食べ物の仕組みとはたらき図鑑」創元社・2020年1月24日閲覧・233頁
  34. ^ Solan, Matthew (2022年7月1日). “Eating less meat may lower overall cancer risk” (英語). Harvard Health. 2022年6月22日閲覧。
  35. ^ Godman, Heidi (2022年6月1日). “Protein intake associated with less cognitive decline” (英語). Harvard Health. 2022年6月22日閲覧。
  36. ^ Eat more plant-based proteins to boost longevity” (英語). Harvard Health (2020年11月1日). 2022年6月22日閲覧。


「食肉」の続きの解説一覧




食肉と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

食肉のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



食肉のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの食肉 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2022 GRAS Group, Inc.RSS