ま‐がも【真×鴨】
真鴨
マガモ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/22 15:40 UTC 版)
マガモ | |||||||||||||||||||||||||||
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雌雄のマガモ
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保全状況評価[1] | |||||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) |
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Anas platyrhynchos Linnaeus, 1758[2] |
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和名 | |||||||||||||||||||||||||||
マガモ(真鴨) | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Mallard | |||||||||||||||||||||||||||
亜種 | |||||||||||||||||||||||||||
マガモ(真鴨、学名:Anas platyrhynchos)は、カモ目カモ科に分類される鳥類の一種。
形態
カモ類ではしばしば見られることであるが、本種も雄と雌、雄は夏と冬でも色が大きく異なり、特に冬の雄は色鮮やかになる。
冬に泳いでいる時の雄は大きく緑、茶、灰の3色がよく目立つ。以下、清棲(1979)による[3] 。冬羽の場合、頭部は全体的に金属光沢があり緑色だが、頭上は黒色に近く光線具合によっては藍紫色の光沢を放つ。頸部も同色で下部に白い輪状の模様が入る。胸は栗色、背と肩羽は灰褐色で腹や腋もほぼ同色だが背に比べるとやや淡い。腰および上尾筒は黒色、下尾筒は前半が黒色だが後は白い。羽を広げると風切羽に紫色の金属光沢を持つ部分がよく目立つ。これは次列風切で個々の羽根は軸を境に内弁が灰褐色、外弁が光沢のある紫色である。三列風切は内弁が灰色で外弁が暗褐色、他の羽根は全体に灰褐色から白色である。尾羽は通常20枚稀に18枚で構成され、中央のものが光沢のある黒色であるほかは基本的に灰色で斑点がある。嘴の色は全体的に黄色だが先端は黒色。夏羽は地味で全体的に雌に似るが、頭部は全体的に光沢のある黒色、喉は赤みを帯びる。虹彩は褐色、脚の色はオレンジ色、嘴峰(嘴の長さ)は40-65mm、翼長250mm-300mm、尾長75mmm-100mm、体重900g-1500g[3]。
冬の雌は雄に比べると地味で全体的に茶色の鴨である。頭部は全体的に褐色であるが、額から後頸にかけては色が濃く、頭側、耳羽、頬、頸などは色が淡い。眼先から眼の後ろまで黒い過眼線が目立つ。背および肩羽は赤みを帯びた褐色で、個々の羽根の中央部には濃く褐色の斑がある。胸、腹、脇は背よりもやや淡い褐色で、各羽根には軸班がある。腰と上下の尾筒および尾は黒褐色、尾の各羽根には馬蹄形の斑がある。尾羽は普通18枚だがまれに19-21枚。雌も紫色で光沢のある風切羽が目立つ。翼長240mm-270mm、体重700g-1300g、その他虹彩、脚色、嘴峰、尾長などは雄に準ずる[3]。雌は夏羽でも冬とは殆ど変わらない。
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雄・冬羽 頭部は光沢のある緑、胸は栗色、腹部は灰色(カナダ、4月)
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雄・冬羽 風切羽の紫光沢がよく目立つ
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雄・夏羽(手前) 雌とよく似るが頭上が黒い(ロシア・8月)
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雌 首を伸ばして飛ぶ
類似種
雌はカルガモに若干似るが、カルガモが白っぽい褐色に黒く太い過眼線を持ちはっきりした顔立ちなのに対しマガモは全体的に褐色である。また、嘴の色が異なり、カルガモは嘴の先端が黄色で基部が黒色なのに対して、マガモは基部が黄色である。
生態
非繁殖期は、湖沼、河川、海岸に生息する。群れを形成して生活する。越冬中の10月末-12月につがいを形成し、春には雄雌が連れ立って繁殖地へ渡る。繁殖期は湖沼、池、湿地の周辺の草地などに生息する。
食性は植物食が主の雑食。水草の葉や茎、植物の種子、貝などを食べる。水面を泳ぐのは上手だがもぐれず、水中に首を突っ込んだり逆立ちしたりしてえさをとる様子がよく見られる。
繁殖期は春から夏で、枯枝や草をかき集め皿型の巣を作り、産卵数は平均10個前後[4]卵は白色で平均サイズは57×41mm。他のカモ類と同様、抱卵・育雛はメスのみで行う。卵は抱卵開始から28~29日で孵化し、雛は42~60日で飛べるようになる。
分布
北半球の冷帯から温帯に広く分布し、北方で繁殖するものは冬季は南方への渡りをおこない越冬する。
日本では、亜種マガモが冬鳥として北海道から南西諸島まで全国的に渡来する。北海道と本州中部の山地では少数が繁殖する。 本州中部以南で、本種が繁殖したとの記録がたまに見受けられるが、これはアヒル・アイガモが繁殖した可能性が高い。アヒル・アイガモとマガモは生物学的には同じ種であり、識別のしがたい場合もある。
分類
以下の亜種に分類される。
- Anas platyrhynchos platyrhynchos マガモ
- Anas platyrhynchos conboschus グリーンランドマガモ - 大型で淡色。グリーンランドに分布。
- Anas platyrhynchos maculosa マダラマガモ - 北アメリカのメキシコ湾の沿岸に分布。
- Anas platyrhynchos diazi メキシコマガモ - 雌雄とも褐色。北アメリカのニューメキシコからメキシコ高地まで分布。
- Anas platyrhynchos diazi フロリダマガモ - メキシコマガモと似るが、体色に赤みがある。フロリダ半島からメキシコ国境まで分布。
- Anas platyrhynchos wyvilliana ハワイマガモ - ハワイ諸島に分布。独立種Anas wyvillianaとして扱う説も有力である。
- Anas platyrhynchos laysanensis レイサンマガモ - レイサン島に分布。独立種Anas laysanensisとして扱う説も有力である。
人間との関係
食用
肉は食用。日本では古くからカモ類の中でもコガモと並んで最も食味の良い種類だと言われる人気の鴨である。
養鶏が盛んになるまでは世界的にも野鳥を採って食べる文化が残っていた。養鶏の浸透と野鳥の捕獲の禁止により消えていった野鳥の食文化も多い中で、マガモを含めカモ類は長く食べられ続けており、各地に食文化が比較的残っている方である[5]。
世界的に重要な狩猟鳥獣の一つで、日本でも「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(平成十四年法律第八十八号、通称:鳥獣保護法)[6]で狩猟鳥獣に一つと定められている(リスト一覧は同法の施行規則第三条にあり[7])。狩猟を希望する場合は同法に従って狩猟免許を取得し都道府県の名簿に登載されれば、亜種も含めて冬季に決められた区域内と手法で狩猟ができる。
家禽

古来より人の手で家禽としても飼いならされてきた。アヒルの先祖はこのマガモであり、アヒルとマガモのかけあわせがアイガモである。もともと人になつきやすく、都市部の池などではよく餌付けされる。また、建物や街路樹の木のうろに営巣する例もあるという。
近年になって、アイガモ農法などでアイガモが野飼いされるようになり、それに伴ってアイガモとも本種とも見分けのつかない個体が出現するようになった。そういった兆候を捉えて、アイガモやアヒルと野生の本種の間で遺伝子汚染がかなり進んでいるといった懸念をする研究者もいる。
雄の羽根の色
マガモのオスの頭部の緑色は東西で注目され「鴨の羽色」「ダックブルー」などの色がある。 また中国と北朝鮮の国境になっている鴨緑江は水の色がマガモのオスの色に似ていることからついたという説がある、
種の保全状況評価
国際自然保護連合(IUCN)により、軽度懸念(LC)の指定を受けている[1]。
2025年現在マガモを絶滅危惧種等に指定する都道府県はない[8]。
名称
標準和名の「マガモ」はカモ類を代表する種、「真の鴨」という意味で食味の良さと大きさを代表した命名と見られる。
地方名は系統としてはそれほど多くない。本種で特徴的なのは「アオクビ」「アヲクビ」「アオ」「アホクヒ」などの「アオクビ」系の名前で東北から九州まで全国的に知られる。これは特徴的な冬羽の雄の頸部の色に因む命名で、逆に雌を呼んだと見られるものは知られていない。形態的な命名では大きさに由来する「オホカモ」という名前も幾つか知られるが、「アオクビ」系に比べるとだいぶ少ない。「ホンガモ」「ホンチョウ」「マカ」「マトリ」などの標準和名に近い「真の、本当の」という名前も幾つか知られる。単に「カモ」、分布地からか「タガモ」「セガモ」などの名前もみられるが、これらはしばしばカルガモを指す名前としても使われる[9]。
種小名 platyhynchosは「広い嘴」という意味がある。属名の Anasはラテン語でカモ類を指す単語である[10]。
注釈
- ^ a b “Anas platyrhynchos in IUCN Red List of Threatened Species. Version 2011.2.” (英語). 国際自然保護連合(IUCN). 2012年3月2日閲覧。
- ^ “Anas platyrhynchos Linnaeus, 1758” (英語). ITIS. 2012年3月2日閲覧。
- ^ a b c 清棲幸保 (1979)『日本鳥類大図鑑 Ⅱ(増補改訂版)』. 講談社, 東京. doi:10.11501/12602100(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 黒田長久 監修, 柿澤亮三・小海途銀次郎 著(1999)『巣と卵図鑑:日本の野鳥』. 世界文化社, 東京. ISBN 4-418-99404-1 doi:10.11501/14220286(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 農文協 編(1993)『日本の食事事典 Ⅰ 素材編(日本の食生活全集49)』. 農山漁村文化協会, 東京 ISBN 978-4540920059 doi:10.11501/12170000(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号) e-gov 法令検索. 2025年8月15日閲覧
- ^ 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行規則(平成十四年環境省令第二十八号) e-gov法令検索. 2025年8月15日閲覧
- ^ ホーム > 種名検索 日本のレッドデータ検索システム. 2025年8月15日閲覧.
- ^ 農商務省 編 (1921) 『狩猟鳥類ノ方言』. 日本鳥学会, 東京. doi:10.11501/961230(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 内田清一郎, 島崎三郎 (1987) 鳥類学名辞典―世界の鳥の属名・種名の解説/和名・英名/分布―. 東京大学出版会, 東京. ISBN 4-13-061071-6 doi:10.11501/12601700(国立国会図書館デジタルコレクション)
参考文献
- 桐原政志 『日本の鳥550 水辺の鳥』、文一総合出版、2000年、117頁
- 真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、101頁
- 『世界の動物|分類と飼育 ガンカモ目』、財団法人東京動物園協会、1980年、56-57頁
関連項目
外部リンク
- Mallard videos[リンク切れ] on the Internet Bird Collection (動画)
「マガモ」の例文・使い方・用例・文例
マガモと同じ種類の言葉
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