廃藩置県 実行前夜

廃藩置県

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/20 23:24 UTC 版)

実行前夜

主に軍事面と財政面において中央集権体制を進める廃藩置県の必要性は次第に政府内で支持を増やしていた。一方で薩摩藩島津久光などの近代化と中央集権化に反対する勢力も存在感を維持し、これらに対して大久保利通木戸孝允などの新政府実力者は漸進的な姿勢をとらざるを得なかった。特に圧倒的な軍事力を抱える薩摩藩の動向は、大きな懸念材料となっており、薩摩藩出身の実力者たちは慎重な姿勢を見せていた。この現状に中間官僚たちは危機感を強めた[11]

7月4日8月19日)、兵制の統一を求めていた山口藩出身の兵部少輔山縣有朋の下に居合わせた同藩出身の鳥尾小弥太野村靖が会話のうちにこの状況に対する危機感に駆られ、山縣に対して廃藩置県の即時断行を提議した。山縣は即座に賛成し、2人とともに有力者の根回しに走った[12]

翌日2人は、大蔵省を切り回し財政問題に悩む井上馨を味方に引き入れ[3]7月6日8月21日)に、井上は木戸を[13]、山縣は西郷隆盛を説得した[14]。西郷は戊辰戦争後の薩摩藩における膨大な数の士卒の扶助に苦慮し、藩体制の限界を感じていた[15]。薩摩藩で大きな支持を集める西郷の同意を得て、中央集権化を密かに目指していた大久保や木戸も賛成した。当初廃藩置県案は薩長両藩の間で密かに進められ、7月9日8月24日)、西郷隆盛、大久保、西郷従道大山厳、木戸、井上、山縣の7名の薩長の要人が木戸邸で案を作成した。その後に、公家、土佐藩佐賀藩出身の実力者である三条実美岩倉具視板垣退助大隈重信らの賛成を得た。

予想される抵抗に対しては、薩長土三藩出身の兵からなる強大な親兵をもって鎮圧することが計画された[16]


  1. ^ 廃藩置県”. 琉球文化アーカイブ. 沖縄県立総合教育センター. 2022年5月14日閲覧。
  2. ^ 松尾正人、「廃藩置県」、中公新書、p47
  3. ^ a b 松尾正人、「廃藩置県」、中公新書、p152
  4. ^ 松尾正人、「廃藩置県」、中公新書、p65
  5. ^ 勝田政治、「廃藩置県」、講談社選書メチエ、p86
  6. ^ 松尾正人、「廃藩置県」、中公新書、p143
  7. ^ 勝田政治、「廃藩置県」、講談社選書メチエ、p133
  8. ^ 【知事対談】明治を支えた歴史を語る。-紀州人のDNA-”. 和(nagomi). 和歌山県知事室広報課. 2019年3月29日閲覧。
  9. ^ 紀の国の先人たち 政治家 津田 出”. 和歌山県ふるさとアーカイブ. 和歌山文化情報アーカイブ事業. 2019年3月29日閲覧。
  10. ^ 木村時夫、「明治初年における和歌山藩の兵制改革について」『早稻田人文自然科學研究』 1969年 4巻 p.1-60, hdl:2065/10122, 早稲田大学社会科学部学会
  11. ^ 松尾正人、「廃藩置県」、中公新書、p150
  12. ^ 松尾正人、「廃藩置県」、中公新書、p151
  13. ^ 松尾正人、「廃藩置県」、中公新書、p153
  14. ^ 松尾正人、「廃藩置県」、中公新書、p155
  15. ^ 松尾正人、「廃藩置県」、中公新書、p154
  16. ^ 勝田政治、「廃藩置県」、講談社選書メチエ、p157
  17. ^ 中村定吉 編、「廢藩置縣ノ詔」『明治詔勅輯』、p18、1893年、中村定吉。[1]
  18. ^ 勝田政治 『廃藩置県 近代国家誕生の舞台裏角川ソフィア文庫 [I-123-1] ISBN 978-4044092153、10-11p
  19. ^ 落合弘樹、「秩禄処分」、中公新書、p74
  20. ^ 勝田政治、「廃藩置県」、講談社選書メチエ、p165
  21. ^ 松尾正人、「廃藩置県」、中公新書、p82
  22. ^ 落合弘樹、「秩禄処分」、中公新書、p55
  23. ^ 藩札も最終的には発行元の藩がその支払いを保証したものであるから、その藩の債務扱いとなる。
  24. ^ 富田俊基、「国債の歴史」、東洋経済新報社、p211
  25. ^ 落合弘樹、「秩禄処分」、中公新書、p71
  26. ^ 富田俊基、「国債の歴史」、東洋経済新報社、p212
  27. ^ 「法令全書」通番 明治4年太政官布告 第559
  28. ^ 「法令全書」通番 明治4年太政官布告 第565
  29. ^ 「法令全書」通番 明治4年太政官布告 第566
  30. ^ 「法令全書」通番 明治4年太政官布告 第594
  31. ^ 「法令全書」通番 明治4年太政官布告 第595
  32. ^ 「法令全書」通番 明治4年太政官布告 第600
  33. ^ 「法令全書」通番 明治4年太政官布告 第601
  34. ^ 「法令全書」通番 明治4年太政官布告 第602
  35. ^ 「法令全書」通番 明治4年太政官布告 第608
  36. ^ 「法令全書」通番 明治4年太政官布告 第609
  37. ^ 「法令全書」通番 明治4年太政官布告 第614
  38. ^ 後の北相馬郡西葛飾郡
  39. ^ a b 後の東松浦郡西松浦郡
  40. ^ 後の中葛飾郡
  41. ^ 一部(南諸県郡)が鹿児島県に残る
  42. ^ 1879年3月27日「沖縄県」の設置”. あの日の沖縄. 沖縄県公文書館. 2022年5月14日閲覧。
  43. ^ 「法令全書」明治12年 太政官布告第14号





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「廃藩置県」の関連用語

廃藩置県のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



廃藩置県のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの廃藩置県 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2023 GRAS Group, Inc.RSS