天照大神 天照大神の概要

天照大神

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/15 08:45 UTC 版)

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天照大御神

名称

古事記』においては天照大御神(あまてらすおおみかみ)、『日本書紀』においては天照大神(あまてらすおおかみ、あまてらすおおみかみ)と表記される。別名、大日孁貴神(おおひるめのむちのかみ)[3]。神社によっては大日女尊(おおひるめのみこと)[4]大日霊(おおひるめ)[5]大日女(おおひめ)[6]とされている。

『古事記』においては「天照大御神」という神名で統一されているのに対し、『日本書紀』においては複数の神名が記載されている。伊勢神宮においては、通常は天照皇大神(あまてらすすめおおかみ)、あるいは皇大御神(すめおおみかみ)と言い、神職が神前にて名を唱えるときは天照坐皇大御神(あまてらしますすめおおみかみ)と言う[7]

なお、「大日孁貴神」の「ムチ」とは「貴い神」を表す尊称とされ、神名に「ムチ」が附く神は大日孁貴神のほかには大己貴命(オオナムチ、大国主)、道主貴(ミチヌシノムチ、宗像大神)のわずかしか見られない[8]

系譜

女神説

『日本書紀』ではスサノヲが姉と呼んでいること、アマテラスとスサノオの誓約において武装する前に髪を解き角髪に結び直す、つまり平素には男性の髪型をしていなかったことに加え、機織り部屋で仕事をすることなど明確な性別の記載はツクヨミのようにないが女性と読み取れる記述が多いこと、後述の別名に女性を表す言葉があることなどから、古来より女神とされている。また一般に大和絵や宗教、日本人が最初に神代の時代を知る小中学校の社会科などでも女神として表されるのが主流である。言語学的には名の「オホヒルメノムチ(大日孁貴)」の「オホ(大)」は尊称、「ムチ(貴)」は「高貴な者」、「ヒルメ(日孁)」は「日の女神」[10]を表す。但し「孁」は「巫」と同義であり、古来は太陽神に仕える巫女であったとも考えられる[11]

ヒコ(彦)・ヒメ(姫・媛)」、「ヲトコ(男)・ヲトメ」、「イラツコ(郎子)・イラツメ(郎女)」など、古い日本語には伝統的に男性を「(子)」・女性を「メ(女)」の音で表す例がみられ、天照大神の名「ヒルメ(日る女)」には「メ(女)」がふくまれるので、名前からも女神ととらえることが順当である[12]。後述するように中世には仏と同一視されたり、男神説等も広まった[13]

天照大神は太陽神としての一面を持ってはいるが、神御衣を織らせ、神田のを作り、大嘗祭を行う神であるから、太陽神であるとともに、祭祀を行う古代の巫女を反映した神とする説もある[14]。ただし、「メ(女)」という語を「妻」「巫女」と解釈する例はないともいわれる[15]

天照大神のモデルは淮南子山海経などに出てくる東海の海の島(日本)に住んでいる十の太陽神の母である義和が該当するとする説もある。[注 1] 淮南子の冒頭と日本書記の冒頭が重なる部分が存在する事から記紀の執筆者が淮南子を読んでいたのは間違いないとされる。[注 2]

また最高神アマテラスの造形には、女帝持統天皇(孫の軽皇子がのち文武天皇として即位)や、同じく女帝の元明天皇(孫の首皇子がのち聖武天皇として即位)の姿が反映されているとする説もある[16]。兵庫県西宮市の廣田神社は天照大神の荒御魂を祀る大社で、撞賢木厳之御魂天疎向津媛命(つきさかきいつのみたまあまさかるむかいつひめのみこと)という祭神名のまたの名が伝わる。これは天照大神を祀る正殿には伝わらない神名であるが、荒祭宮の荒御魂が女神であることの証左とされる。

神話での記述

天皇系図 神代

『日本書紀』においては、

  • 第五段の本文では、伊弉諾尊・伊弉冉尊が自然の神を産んだ後に大日霎貴を産んでいる。
  • 第五段の一書の1では、伊弉諾尊が、左手で白銅鏡(ますみのかがみ)を持ったときに大日霎貴が生まれている。
  • 第五段の一書の6では、『古事記』のように禊にて伊弉諾尊が左の眼を洗った時天照大神が生まれている。

『古事記』においては、伊邪那岐命伊邪那美命の居る黄泉の国から生還し、黄泉の穢れを洗い流した際、左目を洗ったときに化生したとしている。このとき右目から生まれた月読命、鼻から生まれた建速須佐之男命と共に、三貴子と呼ばれる。このときイザナギは天照大御神に高天原を治めるように指示した(「神産み」を参照)。

海原を委任された須佐之男命は、イザナミのいる根の国に行きたいと言って泣き続けたためイザナギによって追放された。スサノヲは根の国へ行く前に姉の天照大御神に会おうと高天原に上ったが、天照大御神は弟が高天原を奪いに来たものと思い、武装して待ち受けた。

素戔嗚尊の潔白を証明するために誓約をし、天照大御神の物実から五柱の男神、素戔嗚尊の物実から三柱の女神が生まれ、スサノヲは勝利を宣言する[17](「アマテラスとスサノオの誓約」を参照)。

天照大神の物実から生まれ、天照大神の子とされたのは、以下の五柱の神である。

これで気を良くしたスサノヲは高天原で乱暴を働き、その結果天照大神は天岩戸に隠れてしまった。世の中は闇になり、様々な禍が発生した。思兼神天児屋根命など八百万の神々は天照大神を岩戸から出す事に成功し、スサノヲは高天原から追放された(「天岩戸」を参照)。

葦原中国に子のアメノオシホミミを降臨させることにし、天つ神を派遣した。葦原中国が平定され、いよいよアメノオシホミミが降臨することになったが、その間に瓊々杵尊・邇邇芸命が生まれたので、孫に当たるニニギを降臨させた(「葦原中国平定」「天孫降臨」を参照)。




注釈

  1. ^ 山海経
  2. ^ 淮南子
  3. ^ 中世神話では主に男性神として、中世に編纂された『日諱貴本紀』には両性具有神として描写される。

出典

  1. ^ 「皇大神宮は、内宮(ないくう)とも呼ばれ、御祭神は皇室の御先祖神と尊ばれ、また、国民の総氏神と仰がれている天照大神(あまてらすおおみかみ)です。」(鹿児島県神社庁 2017年12月9日閲覧。)
  2. ^ a b 『八百万の神々』
  3. ^ 『日本書紀上』p.86、日本古典文学大系、岩波書店
  4. ^ Akimitsu (2013年). “神戸市東灘区 西岡本からのお知らせ”. 神戸市東灘区西岡本. 2013年6月16日閲覧。
  5. ^ 石川県神社庁 (2008年). “神社を探す ― 大日霊神社/おおひるめじんじゃ”. 石川県神社庁. 2013年6月16日閲覧。[リンク切れ]
  6. ^ 岐阜県神社庁 (2011年). “大日女神社 (おおひめじんじゃ)”. 岐阜県神社庁. 2013年6月16日閲覧。
  7. ^ a b 『日本の神々の事典』[要文献特定詳細情報]
  8. ^ 次田潤『新版祝詞新講』p.506、戎光祥出版、2008年。
  9. ^ 『古事記の本』学研、2006年、81頁。
  10. ^ 『日本国語大辞典』[要文献特定詳細情報]
  11. ^ 1927-2016., Ueda, Masaaki,; 1927-, 上田正昭, (Heisei 22 [2010]). Nihon shinwa (Shinpan, saihan ed.). Tōkyō: Kadokawa Gakugei Shuppan. ISBN 9784044094249. OCLC 650211550. https://www.worldcat.org/oclc/650211550. 
  12. ^ 溝口睦子『アマテラスの誕生』[要文献特定詳細情報][要ページ番号]
  13. ^ 斎藤英喜『読み替えられた日本神話』[要文献特定詳細情報][要ページ番号]
  14. ^ a b 『神道の本』[要文献特定詳細情報][要ページ番号]
  15. ^ 溝口睦子『アマテラスの誕生』[要文献特定詳細情報][要ページ番号]
  16. ^ 概説日本思想史 編集委員代表 佐藤弘夫(吉田一彦)[要文献特定詳細情報][要ページ番号]
  17. ^ 「我が心清く明し。故れ、我が生める子は、手弱女を得つ。」『古事記』
  18. ^ 佐藤弘夫『アマテラスの変貌』[要文献特定詳細情報][要ページ番号]
  19. ^ 上島享「中世王権の創出とその正統性」『日本中世社会の形成と王権』[要文献特定詳細情報]
  20. ^ 斎藤英喜『読み替えられた日本神話』[要文献特定詳細情報][要ページ番号]
  21. ^ 伊藤聡天照大神=大日如来習合説をめぐって(上)」、茨城大学人文学部紀要. 人文学科論集 39、 2003年03月、六六-六八頁
  22. ^ 『日蓮聖人の国神観』日蓮聖人と国神観 山川智應 1940年5月[要ページ番号]
  23. ^ 『日蓮宗辞典』日蓮宗事典刊行委員会 1999年5月
  24. ^ 『日蓮聖人の国神観』日蓮聖人と国神観 山川智應 1940年5月[要ページ番号]
  25. ^ 『曼陀羅国神不敬事件の真相―戦時下宗教弾圧受難の血涙記』小笠原日堂、礫川全次 2015年2月[要ページ番号]
  26. ^ a b c d 『古神道の本 甦る太古神と秘教霊学の全貌』学研[要ページ番号]
  27. ^ 『日本史大事典』 平凡社 1993年
  28. ^ 芥川龍之介 『澄江堂雑記』
  29. ^ 1871年12月22日、政府は伊勢神宮の神宮大麻を地方官を通して全国700万戸に1体2銭で強制配布することに決め、翌年から実施した。1878年(明治11年)以後は受不受は自由となったが、依然として地方官が関与してトラブルを生ずることがあった(安丸良夫・宮地正人『宗教と国家-日本近代思想大系第5巻』岩波書店、1998年、p443,535,562)。
  30. ^ 京都府宮津市 (2016年). “籠宮大社”. 2016年4月9日閲覧。
  31. ^ 『日本の山1000』 山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1992年8月、p.355。ISBN 4635090256
  32. ^ めずらし峠の観光施設・周辺情報‐観光三重” (日本語). 三重県観光連盟. 2011年12月24日閲覧。
  33. ^ 與喜天満神社公式サイト ご由緒” (日本語). 與喜天満神社. 2011年12月24日閲覧。
  34. ^ 寺宝(像)” (日本語). 奈良大和路の花の御寺 総本山 長谷寺. 2017年3月3日閲覧。
  35. ^ 成り立ち” (日本語). 西ノ島町観光協会. 2011年12月24日閲覧。
  36. ^ a b うさぎが導く縁結びバスツアー 因幡の旅特集ページ 鳥取いなば観光ネット 鳥取県東部の観光ポータルサイト” (日本語). 鳥取・因幡観光ネットワーク協議会. 2011年12月25日閲覧。
  37. ^ 大江幸久『もう一つの因幡の白兎神話 天照大神行幸と御製和歌の伝わる八上神秘の白兎と天照大神伝承』[要文献特定詳細情報][要ページ番号]
  38. ^ 日本海新聞平成21年6月10日
  39. ^ 若桜町の位置/若桜町” (日本語). 若桜町. 2013年5月1日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2011年12月25日閲覧。
  40. ^ 森本一瑞『肥後国誌』[要文献特定詳細情報][要ページ番号]







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