国引き神話とは? わかりやすく解説

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国引き神話

読み方:クニビキシンワ(kunibikishinwa)

「出雲国風土記」に見える「意宇」という地名の起源伝説。


国引き神話

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/12/26 09:31 UTC 版)

国引き神話(くにびきしんわ)は、出雲国に伝わる神話の一つである。『古事記』や『日本書紀』には記載されておらず、『出雲国風土記』の冒頭、意宇郡の最初の部分に書かれている。

概要

当初、作られた出雲国は「八束水臣津野命(やつかみずおみつぬのみこと)」によれば「狭布(さの)の稚国なるかも、初国小さく作らせり、故(かれ)、作り縫はな」という失敗作であったという[1]。「狭布」すなわち国の形は東西に細長い布のようであったという[1]。そこで、八束水臣津野命は、遠く「志羅紀」「北門佐岐」「北門農波」「高志」の余った土地を裂き、四度、「三身の綱」で「国」を引き寄せて「狭布の稚国」に縫い合わせ、できた土地が現在の島根半島であるという[1]。

余った土地を出発地とし、縫い合わせた場所を到着地として、4つの段落に分けて詳細をまとめると表の通りである[2]。

国引き神話に登場する地名
段落 出発地 到着地
1 志羅紀(しらぎ)の三埼(みさき) 去豆(こづ)の折絶(をりたえ)から 八穂爾(やほに)[3] 支豆支(きづき)の御埼(みさき)
2 北門(きたど)の佐伎(さき)の国 多久(たく)の折絶(をりたえ)[4]から 狭田(さだ)の国
3 北門(きたど)の農波(ぬなみ)[5]の国 宇波()[6]の折絶(をりたえ)から 闇見(くらみ)の国
4 高志(こし)の都都(つつ)の三埼(みさき) 三穂(みほ)の埼(さき)

志羅紀の三埼を引いた綱は薗の長浜(稲佐の浜)に、三穂の埼を引いた綱は夜見の嶋(弓浜半島)になった。そして、国引きを終えた八束水臣津野命が叫び声とともに大地に杖を突き刺すと木が繁茂し「意宇の杜(おうのもり)」になったという。

比定地

神話に登場する地名の比定地は、志羅紀を新羅国、去豆を許豆神社のある出雲市小津町、支豆支の御埼を出雲市大社町日御碕、北門を北方の出入口の意とし出雲の日本海側の港、佐伎を出雲市大社町鷺浦、多久をかつて多久神社や多久川のあったとされる松江市鹿島町北講武など、狭田を松江市鹿島町佐陀本郷など、農波を松江市島根町野波、宇波をかつての手染(たしみ)郷とされる松江市手角(たすみ)町、闇見を久良弥神社のある松江市新庄町、高志を北陸地方(越国)、都都を能登半島の北端珠洲岬、三穂を島根半島の東端の松江市美保関町とする説がある[2]。

しかしこの解釈の場合、第一段と第四段が出雲外から新羅や珠洲を出雲に引いてきた事に対して、第二段と第三段は出雲の日本海側の佐伎や農波を出雲に引いてきた事になり「島根半島内部のスケールの小さな話」となり、国引きとはいえないという意見があり、北門を越後付近もしくは石川県と解釈する説もある[7]。または北門を隠岐として前者を隠岐島前、後者を隠岐島後とする説もある[1]。

考証

島根県の考古学者野津左馬助が『島根県史』[8]において、古代日本では島根半島と本州側との間に東西に細長い海域が広がっていたとする素尊水道仮説を提唱した。国引き神話はこの素尊水道の西側が斐伊川のもたらす大量の土砂によって陸地化しつつあった時代の記憶なのではないかとする説がある。『出雲国風土記』によると斐伊川上流の仁多郡や飯石郡では良質の砂鉄を産出していた記載があり、古来より製鉄がさかんであった。当時の製鉄法は鉄穴流しと呼ばれる砂鉄を含む山砂を大量の水を使って選別する方法であり、ここで発生した泥水が大量に斐伊川に流入し素尊水道の陸地化が促進されたと推察される。また砂鉄精錬でおびただしいまでの木炭を使用するため山林の乱伐がおこり土砂災害が多くなったことで下流への土砂流出が起こり素尊水道の陸地化の原因になったものと思われる[9]。

また国引き神話にも登場する伯耆大山と三瓶山は完新世後期紀元前3000年頃~紀元前2000年頃に噴火があったことが分かっているほか[10][11][12]、その後の時代において火砕流堆積物や脆い火山灰層が土石流で流されたことも陸地化進行の要因と思われる[13][14]。

脚注

  1. ^ a b c d 関和彦「古代出雲の国のかたちをたどる」(『怪vol.0035』角川書店(原著2012-3-28)。ISBN 9784041300183。 )
  2. ^ a b 『日本古典文学大系「風土記」』岩波書店、1958年4月5日。 
  3. ^ 諸伝文には「八穂米」とあるが内山真竜「出雲風土記解」にしたがい、ここでは「米」は「爾」の略字の「尓」の誤りと考え、「八穂爾」とする。
  4. ^ 湾入した海岸の最奥部の意とする。
  5. ^ 諸伝文には「良波」とあるが千家俊信「訂正出雲風土記」にしたがい、ここでは「農波」とする。
  6. ^ 「宇波縫」とする伝本もある。「手染」の誤りとする横山永福「出雲風土記考」や後藤説のほか、「手浸」の誤りとする考えもあり、岩波の日本古典文学大系では「宇波」を「たしみ」と訓ずる。
  7. ^ 大山元『初期天皇后妃の謎』きこ書房、2003年2月20日。 ISBN 4-87771-609-2。 
  8. ^ 島根縣内務部島根縣史編纂掛『島根縣史』島根縣、1921年。 NCID BN08908873。https://ci.nii.ac.jp/ncid/BN08908873。 
  9. ^ 森浩一『日本神話の考古学』KADOKAWA〈角川新書〉、2025年1月10日。 ISBN 978-4-04-082536-6。https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I033857983。 
  10. ^ 奥野充、井上剛 (2012年5月21日). “大山火山の完新世噴火”. 日本地球惑星科学連合 2012年度連合大会予稿集 (日本地球惑星科学連合). https://www2.jpgu.org/meeting/2012/session/PDF_all/S-VC53/SVC53_all.pdf. 
  11. ^ 産業技術総合研究所. “三瓶山火山の活動”. 産業技術総合研究所報告 (産業技術総合研究所). https://www.gsj.jp/data/openfile/no0613/48Sanbesan.pdf. 
  12. ^ “三瓶山の活動史”. 気象庁. 気象庁. 2016年3月9日閲覧。
  13. ^ 鳥取県. “母なる大山の物語 -地形が生んだ歴史と文化-”. 鳥取県とりネット (鳥取県). https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/1200714/07%20shiryo%20story.pdf. 
  14. ^ 小玉, 芳敬; 小西, 立碁; 菊池, 顕宏; 景山, 龍也; 三村, 清; 谷口, 聡; 頼正, 浩 (2003). “弓ヶ浜の海岸侵食と伯耆大山から多量に供給される土砂礫の行方”. 日本地理学会発表要旨集 2003f: 60–60. doi:10.14866/ajg.2003f.0.60.0. https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajg/2003f/0/2003f_0_60/_article/-char/ja/. 

参考文献

関連項目


国引き神話

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/15 15:50 UTC 版)

「出雲国風土記」の記事における「国引き神話」の解説

意宇郡の条の冒頭に記載され、郡名の由来に結び付けられている。詳細は国引き神話を参照のこと。

※この「国引き神話」の解説は、「出雲国風土記」の解説の一部です。
「国引き神話」を含む「出雲国風土記」の記事については、「出雲国風土記」の概要を参照ください。

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