教皇
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/18 06:01 UTC 版)
日本語での呼称
日本カトリック教会の呼称
現在、日本のカトリック教会の公式な表記では、「教皇」が用いられている。信徒の間では、親しみを込めた敬称として「パパ様」という呼び方が使われることがある[12][13][14]。
日本のカトリック教会の中央団体であるカトリック中央協議会は、1981年の教皇ヨハネ・パウロ2世の来日時に、それまで混用されてきた「教皇」と「法王」の呼称を統一するため、世俗の君主のイメージの強い「王」という字を含む「法王」でなく「教皇」への統一を定めた。このとき、東京にある「ローマ法王庁大使館」においてもこれにあわせて「法王庁」から「教皇庁」への名称変更を行おうとしたが、日本政府から「日本における各国公館の名称変更はクーデターなどによる国名変更時など、特別な場合以外は認められない」として認められず、「ローマ法王庁大使館」の名称のまま現在へ至っている[15]。
一方で、2019年11月のフランシスコ教皇来日を期に、日本政府は同年11月20日、従来「法王」としていた呼称を今後「教皇」に変更すると発表した。それに伴い、NHKや大手新聞各社など一般メディアも追随し、「教皇」という呼称に変える動きが一気に広まった[16][17]。
明治期日本のカトリック教会では「教父」という訳語を用いた用例が見られる[18](なお、大正期以降の文献には「教皇」の語が見られる[19])。また、つい近年まで典礼の中では、現役の教皇を「わたしたちの教父○○」と呼ぶ慣習があった[20][21]が、これもフランシスコ教皇来日を期に「わたしたちの教皇○○」と言い換えられるようになった。
日本政府による呼称
官報や外務省の文書では、戦前から長らく基本的には「法王」の語が用いられていたが、教皇が使用されないわけではなかった[22][23][24]。コプト正教会の長に対しては「コプト教皇」の呼称を用いている[25][26]。
2018年には、立憲民主党所属衆議院議員の山内康一が衆議院予算委員会において「教皇」に変更するべきではないかと質問を行っている。これを受けて外務省はバチカンとローマ法王庁大使館に問い合わせを行ったが、いずれも変更を求めていないという回答を得ている。河野太郎外務大臣(当時)はグルジアからジョージアへ変更を行った事例のように、変更の要求があった場合にはしっかりと対応していくと答弁していた[27]。2019年11月23日から教皇フランシスコが日本を訪問することを受け、政府は11月20日に「教皇」への呼称変更を発表した[28][29]。
マスメディアの呼称
NHKでは、「ローマ法王」「法王」が慣用的に使われ、一般に定着しているとして原則的には「法王」の呼称を用いるとしていた[30]が、日本のカトリック関係者を中心に「教皇」と呼ばれていること、2019年11月22日の教皇フランシスコの訪日にあわせて日本政府が「教皇」に呼称変更したことを踏まえ、「ローマ教皇」の呼称に変更した[31]。また、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞、日本経済新聞といった主要紙、共同通信、時事通信も「ローマ教皇」の呼称に表記を変更した[32][17]。
注釈
- ^ ラテン語: Sancta Sedes.
- ^ ラテン語: Sedes Apostolica.
- ^ 共和政ローマの時代には独立した官職であったが、帝政ローマ時代にはローマ皇帝が兼務する称号の一つであった。このことを以て、教皇という称号の根拠や、東ローマ皇帝に従属せず、神聖ローマ帝国皇帝をはじめとする西欧諸国の君主に優越する権威の印とする。
- ^ ローマ教皇の公式Twitterアカウント名は、@Pontifexとなっている。
- ^ 例外として、教皇が日本を公式訪問した場合のみは、通常の外交儀礼どおりに日本の元首である天皇の御所を教皇が訪問し、挨拶する[9]。
- ^ "πάπας"は、古代ギリシア語で「父」を意味する幼児語"πάππας"に由来する[11]。
出典
- ^ papa - Wiktionary(en)
- ^ pontifex - Wiktionary(en)
- ^ πάπας - Wiktionary(en)、πάπας - Βικιλεξικό
- ^ pontiff - Wiktionary(en)
- ^ 新村出編『広辞苑 第六版』(岩波書店、2011年)728頁および松村明編『大辞林 第三版』(三省堂、2006年)649頁参照。
- ^ J. P. ラベル「使徒座」『新カトリック大事典』研究社OnlineDictionary。
- ^ “ローマ法王、退位を表明か 地元通信社が報道”. 朝日新聞. (2013年2月11日) 2013年2月11日閲覧。
- ^ “Breaking: Pope Benedict XVI announces he will resign because of 'ill health'” (英語). インデペンデント. (2013年2月11日) 2013年2月11日閲覧。
- ^ a b 「正論大賞対談 笹川陽平氏×屋山太郎氏」『産経新聞』(東京本社)2020年1月3日付朝刊、12版、8-9面、特集。
- ^ a b c オリヴィエ・クレマン著、冷牟田修二・白石治朗訳、『東方正教会』106頁 - 109頁(クセジュ文庫)白水社、1977年。ISBN 978-4-560-05607-3 (4-560-05607-2)
- ^ “American Heritage Dictionary of the English Language”. Education.yahoo.com. 2011年6月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年8月11日閲覧。
- ^ カトリックの組織 - ウェイバックマシン(2012年11月20日アーカイブ分)
- ^ “日本語で話しつづけた教皇ヨハネ・パウロ二世 : パパ様の知られざるエピソードが今ここに”. 国立国会図書館サーチ. カトリック南山教会広報委員会. 2019年11月26日閲覧。
- ^ “教皇来日 教区主催イベントお知らせ”. カトリック中央協議会 (2019年10月9日). 2019年11月27日閲覧。
- ^ カトリック中央協議会 - 「ローマ法王」「ローマ教皇」という二つの呼称について
- ^ “教皇フランシスコ、今夕来日 呼称を「法王」から「教皇」へと政府が変更し、一般メディアも追随”. クリスチャンプレス. (2019年11月23日) 2021年5月28日閲覧。
- ^ a b “「ローマ法王」が「ローマ教皇」に変更 政府発表で割れるメディアの対応”. J-CAST. (2019年11月22日) 2019年11月23日閲覧。
- ^ 『公教会祈祷文』 明治42年
- ^ 『公教会聖歌集祈祷文』 大正9年
- ^ オリエンス宗教研究所 編『ともにささげるミサ――ミサ式次第 会衆用―改訂版』オリエンス宗教研究所、2000年。ISBN 978-4-87232-019-0。
- ^ ローマ典文第一奉献文 - ウェイバックマシン(2018年11月8日アーカイブ分)
- ^ 「羅馬教皇使節館記氏名羅馬教皇使節ポール・マレラ」「22.羅馬教皇使節之部」 アジア歴史資料センター Ref.B15100606600
- ^ 「教皇庁は新政府不承認」 アジア歴史資料センター Ref.A03024608400
- ^ 「池田総理大臣は、十一月二十日にヴァチカン市国を訪問し、教皇ヨハネス二十三世から謁見をたまわった。池田総理大臣から、歴代教皇が、日本の直面する諸問題に対し(後略)」わが外交の近況(第7号) - 外交青書昭和38年8月
- ^ 河野外務大臣とタワドロス2世・コプト教皇との会談
- ^ エジプト投資フォーラム 堀井学外務大臣政務官の挨拶 - 外務省
- ^ 第196回国会 予算委員会 第9号
- ^ 「大鷹外務報道官会見記録」『会見・発表・広報』2019年11月20日 。2019年11月21日閲覧。
- ^ “外務省、「ローマ教皇」に呼称変更 安倍首相と25日に会談”. 毎日新聞. (2019年11月20日) 2019年11月21日閲覧。
- ^ “「法王」と「教皇」 | ことば(放送用語) - 放送現場の疑問・視聴者の疑問 | NHK放送文化研究所”. 2013年2月27日閲覧。
- ^ “【お知らせ】今後は「ローマ教皇」とお伝えします”. NHK (2019年11月22日). 2019年11月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年11月22日閲覧。
- ^ “ローマ教皇、26日まで滞在し長崎や広島訪問…核廃絶へメッセージ”. 読売新聞. (2019年11月22日) 2019年11月22日閲覧。
- ^ “Liddell and Scott”. Oxford University Press. 2013年2月18日閲覧。
- ^ AFP通信、2016年2月13日
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