聖伝
聖伝
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/18 01:35 UTC 版)
こうした煉獄の教義を決定的にしたものはカトリック教会における聖伝であり、聖伝は常に煉獄の教えの根本的要素、死後の為の清めの必要なことと、死後の代祷の有益なことについて確信を持っていた。ユダヤ人は祖先崇拝はしなかったが、敬愛の情を以って死者を弔い、死者の為に祈る習慣をキリスト信者に伝え、これは信者の代祷によって死者が完全に清められるという信仰を仮定したものであった。パウロが自分を存命中、助けてくれた一名の信者の為に祈り、裁きの日に憐みを垂れてくれるよう主に願ったのも、そうした古い習慣による(2テモテ1・16以下)。 さらに、2世紀以後のローマのカタコンベの墓碑には、死者への代祷の願いが刻まれている。これは信者が早く救われて天国に与れるように、との祈願の表れである。3世紀後半からは、聖キプリアヌスなどの証言にもわかるように、代祷の習慣はさらに普及され、ミサの典礼文でも死者の為の祈りが唱えられるようになった。4世紀以後は、煉獄の存在は一層明示的になり、とりわけ聖アウグスティヌスの寄与は大きく、彼が母モニカの死にあたって、代祷を請われたことは有名である。アウグスティヌスは、全ての人は支払わなくてはいけない負い目があることから、死後の清めは必要であり、それは長くて公審判までであると説いた。
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聖伝
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/02 05:53 UTC 版)
正教会において、聖伝(ギリシア語: Ιερά Παράδοση, ロシア語: Священное Предание, ルーマニア語: Sfânta Tradiție, 英語: Holy Tradition)とは神の民(すなわち正教会、正教徒)の生活そのものである。聖イウスチン・ポポヴィッチは、聖伝について「ハリストス(キリスト)にあっての生活=至聖三者(三位一体の神)にあっての生活、ハリストスにあっての成長=至聖三者にあっての成長」とまとめている。 聖伝は継続し、教会が聖神(せいしん、聖霊)の導きを受けて生き続けるゆえに、成長し、発展する。セルゲイ・ブルガーコフによれば、「聖伝は今も以前より小さくなることなく恒に続き、私たちは聖伝の中に生き、聖伝を実行する。」。 聖伝の内容には、具体的には聖書、聖使徒・衆聖人・致命者・聖師父達によるの著述や教え及び行動、奉神礼、初代教会の伝承、全地公会議の確認事項などが挙げられるが、聖伝は全てがこれらの具体的な諸事物に還元できるものではない。聖伝は単なる伝達事項や情報を超えている。聖伝は神について私たちに教え神の知識を教えるが、実際に聖伝の生活に入るとはどのような事なのかを理解するのには、神との交わり(キノニア)の直接的体験が必要であるとされる。 聖神(せいしん・聖霊)によって与えられるものは、楽園の更新、天国への上昇、子たる身分の更新、神をあえて自分たちの父と呼ぶこと、ハリストス(キリスト)の恩寵にあずかる者となり、光の子と呼ばれ、永遠の光栄にあずかること、一口に言って、この世においても、また来るべき世においても、ことごとく「満ち溢れる祝福」(ロマ書15:29)の中にあること… — 聖大ワシリイ(バシレイオス)、「聖大バシレイオスの『聖霊論』」山村敬訳、p109(南窓社 1996年6月30日発行 ISBN 9784816501951)より、一部を正教会での用語に換えて引用 聖大ワシリイ(バシレイオス)による上記の記述は、教会の聖伝について真の「実存的な」面を示している。正教会において聖伝は、固定された教義でもなければ、画一的な奉神礼の実践でもない。確かに聖伝には教理や奉神礼の定式が含まれるが、それらを超えて教会の日常生活を通して体験される、イイスス・ハリストス(イエス・キリスト)の恩寵と、神父(かみちち・父なる神)の仁愛、聖神(せいしん・聖霊)の交親(交わり・キノニア)(コリンフ後書13:13)を通しての神の民の変容があるとされる。 教会にある全てのものが聖伝とされるわけではない。神の国とは本質的には関係がなく、一部の地域でのみ習慣的に行われているものもある。教会の中にあるものが聖伝かそうでないかは、「使徒時代に遡るものか(聖書に基礎づけられているか)」「全ての教会に受け入れられ聖師父によって教えられているか」などによって判断される。なお、全ての聖師父による著述が同等の権威を有するわけではなく、特に重要と判断されるものとそうでないものとがある。
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