聖伝とは? わかりやすく解説

聖伝

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/12 09:42 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動

聖伝あるいは聖伝承(せいでん、英語: Sacred Tradition, Holy Tradition)は、キリスト教における伝承のこと。カトリック教会正教会東方諸教会では重要視される。

聖伝の位置づけについてはカトリック教会と正教会の間に違いがある。前者は「聖書と聖伝」と並び称すのに対して、後者は「聖伝の中に聖書が含まれる」と捉える。

他方、プロテスタントでは位置付けが異なり伝統と訳すが、伝統をどこまで認めるかには幅があり、純粋に聖書のみを主張する者も居れば、逆にカトリック教会に近い伝統主義の者などもいる[1]

カトリック教会の聖伝

カトリック教会は「聖書と聖伝を同じく尊敬すべき[2]として、聖書と聖伝を並列させている。トリエント公会議において聖伝は「同じ畏敬を以て認むべきもの」(ラテン語: pari pietatis affectu)と位置づけられた[3]

教会は、聖書を聖霊の霊感によって書かれた神のことば、聖伝を「主キリストと聖霊から使徒たちに託された神のことばを余すところなくその後継者に伝え、後継者たちは、真理の霊の導きのもとに、説教によってそれを忠実に保ち、説明し、普及するようにするもの」と説明する[2]

教会は神からの啓示の伝達と解釈を委ねられており、啓示についての自分の確信を得るに当たっては、聖書だけに頼らず、聖書と聖伝を同じく尊敬すべきであるとされる[2]

「わたしたちが説教や手紙で伝えた教えを固く守り続けなさい。」

日本聖書協会『聖書 新共同訳』、テサロニケの信徒への手紙二 2章15節)

「多くの証人の面前でわたしから聞いたことを、ほかの人々にも教えることのできる忠実な人たちにゆだねなさい。」

日本聖書協会『聖書 新共同訳』、テモテへの手紙二 2章2節)

聖伝とは、使徒たちがイエスから受け、聖霊によって学んだ、使徒伝承を指す。使徒伝承は「大伝承」とも呼ばれる[2]

使徒伝承と別に「諸伝承」(神学、おきて、典礼、信心上の諸伝承)がある。諸伝承は大伝承との照合を受け、(ローマ教皇をかしらとする)教会の教導権の指導のもと、伝えられる[2]

正教会の聖伝

正教会は、神の啓示を信仰の基盤としている。そして連綿と受け継がれてきた神による啓示に基づく信仰と教えを、聖伝と呼ぶ。聖伝を伝えていくにあたっては、聖神゜(聖霊)の導きがあるとされる[4]

聖伝は、文書や単なる事件の記録、記念物といったものにとどまらない。聖書聖師父の著作・全地公会議による規定・奉神礼で用いられる祈祷書といった文書となっているものも主要構成要素として挙げられるが[4]、聖伝の本質は、教会を形成していく人々の生きた体験の記憶である[5]

聖伝は過去にあったものが現在においても体験されるものであり、ゆえに聖伝と教会的意識は同じものであるとされる。従って、聖書・聖師父の著書・全地公会議の規定・奉神礼等は個々別々な現れであり、これらの構成要素を網羅すれば聖伝全体を表すことにはならない[5]

正教会では、聖書と聖伝は範疇の異なるものとは捉えられず、聖書は「聖伝」の一部[4]であるとされる。何が聖書であるかを定めた(正典化した)のは聖伝であるとされる。聖書は、聖伝の中核であり、使徒らが残した最も公的な啓示であると考えられている。聖伝が生み出した聖書は、その後の聖伝を基礎付けるものとなった[4]

次のものが聖伝の主要構成要素であるとされる[4][6]

これらの構成要素は互いに密接な有機的関係を持っており、聖神゜の導きがあるゆえに発展・成長を続けるとされる[4]

聖伝(Holy Tradition)は、個々の教会や民族の文化的・歴史的遺産である伝統(traditions)とは区別される。

プロテスタントにおける伝統理解

プロテスタントにおいても、伝統(英語ドイツ語: Tradition、聖伝・伝承と同語彙の訳語)を否定する訳ではなく、教会は不変で新鮮な真理と生命の具体的な担い手としての伝統なくして成立しないと捉えられる。ただしその伝統に対する理解の仕方は正教会・カトリック教会とは異なる[1]

プロテスタントは、聖書のみを権威ある伝統として認める。またローマ教皇の権威を認めない[1]

教会の伝統は、聖書にのみ根ざし、聖書を常に新しく解釈し、聖書の真理を表し、聖書の生命を現実化するためのものとして、信仰告白・説教サクラメント教職から形成される。伝統は単に過去の遺産ではなく、聖霊の現実的な働きとして新しい歴史的生命の現実を形成するものであるとされる[1]

ただしプロテスタントの中には、純粋に聖書のみを主張する者も居れば、逆にカトリック教会に近い伝統主義の者などもいる[1]

脚注

  1. ^ a b c d e キリスト教大事典 改訂新版』732頁、教文館、昭和52年 改訂新版第四版
  2. ^ a b c d e カトリック中央協議会(2002年)『カトリック教会のカテキズム』30頁、ISBN 4877501010
  3. ^ 『カトリック大辞典 III』(798頁「トリエント公会議」、上智大学編纂、冨山房、昭和42年第七刷)
  4. ^ a b c d e f 教え-聖伝:日本正教会 The Orthodox Church in Japan
  5. ^ a b 『正教要理』18頁 - 19頁、日本ハリストス正教会教団 昭和55年12月12日第1刷
  6. ^ 生神女マリヤ、聖人、聖師父

聖伝

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/18 01:35 UTC 版)

煉獄」の記事における「聖伝」の解説

こうした煉獄教義決定的にしたものカトリック教会における聖伝であり、聖伝は常に煉獄教え根本的要素死後の為の清め必要なことと、死後の代祷の有益なことについて確信持っていた。ユダヤ人祖先崇拝はしなかったが、敬愛の情を以って死者弔い死者為に祈る習慣キリスト信者伝え、これは信者の代祷によって死者が完全に清められるという信仰仮定したものであったパウロ自分存命中、助けてくれた一名信者為に祈り裁きの日に憐みを垂れてくれるよう主に願ったのも、そうした古い習慣による(2テモテ1・16以下)。 さらに、2世紀以後ローマカタコンベ墓碑には、死者への代祷の願い刻まれている。これは信者早く救われ天国に与れるように、との祈願表れである。3世紀後半からは、聖キプリアヌスなどの証言にもわかるように、代祷の習慣はさらに普及され、ミサ典礼文でも死者為の祈り唱えられるようになった4世紀以後は、煉獄存在は一層明示的になり、とりわけ聖アウグスティヌス寄与大きく、彼が母モニカ死にあたって、代祷を請われたことは有名である。アウグスティヌスは、全ての人は支払なくてはいけない負い目があることから、死後の清めは必要であり、それは長くて公審判までであると説いた

※この「聖伝」の解説は、「煉獄」の解説の一部です。
「聖伝」を含む「煉獄」の記事については、「煉獄」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「聖伝」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「聖伝」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳

英語⇒日本語日本語⇒英語

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「聖伝」の関連用語

聖伝のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



聖伝のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの聖伝 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの煉獄 (改訂履歴)、正教会 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2026 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2026 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2026 GRAS Group, Inc.RSS