総大司教とは? わかりやすく解説

総大司教

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/04 03:19 UTC 版)

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総大司教(そうだいしきょう)は、カトリック教会において最高の裁治権をもつ司教職

名称について

原語であるギリシャ語"πατριαρχής"(パトリアルケース[1]、英語:Patriarch)は正教会では「総主教」と訳されるが、正教会の総主教は各国の正教会の首長であり聖職者の最高位であるため、その権限は西方の総大司教とは大きく異なる(「正教会の総主教」の段落で後述)。

ギリシャ語"πατριαρχής"(パトリアルケース)は、父を意味するπατήρ (pater)「パーテル」とリーダーなどを意味する ἄρχων (archon)「アルコン」の複合語である。ラテン語では"patriarcha"(パトリアルカ)という。この語は旧約聖書七十人訳において、族長時代の族長のことを指していた。

概要

東西教会の分裂まで西欧のキリスト教世界に存在していたπατριαρχής(パトリアルケース)はローマ教皇のみであり、他の総主教座(総大司教座)は全て東方に在った。これらの総主教座は東方教会正教会東方諸教会)に継承された。

しかし時代を経て西方教会にも多くの総大司教座が設置されていった。また十字軍によって、東方にそれまであった東方教会の総主教座を駆逐する形でカトリック教会の総大司教座が設置されていった。ラテン・エルサレム総大司教座やラテン・コンスタンティノポリス総大司教座はその代表例である。この事は東方教会側に反ローマカトリック感情を惹起することとなった。

総大司教の持つ権限は、総大司教区の教会会議を召集すること、首都大司教大司教の選出および叙階などで、枢機卿よりも下位と定めている。現在、東方典礼カトリック教会の複数の教会では総大司教がいるが、西方ラテン教会ではローマ教皇以外には名義総大司教のみで、エルサレムヴェネツィアリスボン、西インド(空位)、東インド(ゴア)が認められている。

なお、バチカン年鑑2006年版からは、ローマ教皇の保持していたタイトル「西方の総大司教」(patriarca dell'occidente)が「不正確で、歴史的にも時代遅れ」との教皇の指示で削除されたが、これに対して正教会の主教が懸念の意を表明している[2]

総大司教一覧

ラテン典礼総大司教

  • ラテン・エルサレム総大司教 (The Latin Patriarch of Jerusalem)
  • 東インド総大司教(The Patriarch of the East Indies a titular patriarchal see, united to Goa and Daman)
  • リスボン総大司教(The Patriarch of Lisbon)
  • ヴェネツィア総大司教(The Patriarch of Venice)

東方典礼総大司教

  • コプト典礼カトリック教会総大司教(The Coptic Catholic Patriarch of Alexandria and head of the Coptic Catholic Church、コプト正教会の総主教とは別)
  • シリア典礼カトリック教会総大司教(The Syrian Catholic Patriarch of Antioch and the head of the Syrian Catholic Church、シリア正教会の総主教とは別)[3]
  • メルキト・ギリシャ典礼カトリック教会総大司教(The Melkite Greek Catholic Patriarch of Antioch and the head of the Melkite Greek Catholic Church)[3]
  • マロン典礼カトリック教会総大司教(The Maronite Patriarch of Antioch, head of the Maronite Church)[3]
  • カルデア典礼カトリック教会総大司教(The Chaldean Catholic Patriarch of Babylon and the head of the Chaldean Catholic Church)
  • アルメニア典礼カトリック教会総大司教(The Armenian Catholic Patriarch of Cilicia and the head of the Armenian Catholic Church)

歴史上存在した総大司教

  • ラテン・アンティオキア総大司教(The Latin Patriarch of Antioch)
  • ラテン・アレクサンドリア総大司教(The Latin Patriarch of Alexandria)
  • アクイレイア総大司教(The Patriarch of Aquileia)
  • ラテン・カルタゴ総大司教(The Latin Patriarch of Carthage)
  • ラテン・コンスタンティノポリス総大司教(The Latin Patriarch of Constantinople)
  • グラード総大司教(The Patriarch of Grado)
  • 西インド総大司教(The Patriarch of the West Indies a titular patriarchal see, vacant since 1963)

正教会の総主教

正教会では総主教と呼ぶが、正教会における「総主教」は西方教会におけるローマ教皇に相当する(もともとローマ教皇は「ローマ総主教」であった)、各国の正教会の首長であり聖職者の最高位である。従って、その権限は西方の総大司教とは全く別のものである。こうした事情を踏まえ、西方教会でも、正教会に属するコンスタンディヌーポリアレクサンドリアアンティオケイアエルサレムモスクワトビリシベオグラードブクレシュティソフィアの総主教に対しては第2バチカン公会議以降、聖下の称号を認めるなど、カトリックの教会法の中で特別な措置がされている。

脚注

  1. ^ カトリック教会に係る記事であるため、西方教会で一般的に用いられる古典ギリシャ語再建音による転写を用いた。現代ギリシャ語では「パトリアルヒス」となる。
  2. ^ 世界キリスト教情報 2006/06/26号
  3. ^ a b c Patriarch of Antioch: Syrian Unrests Instigated by Foreigners / OrthoChristian.Com

関連項目

  • 十字軍 - 歴史上存在した総大司教職(エルサレム総大司教職は現在も存在)には、十字軍を契機に、西方教会東方教会の教区秩序を破壊する形で設置されたものも多い。

総大司教

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 07:51 UTC 版)

ヨハネ・パウロ1世 (ローマ教皇)」の記事における「総大司教」の解説

1970年ヴェネツィアの総大司教に任命され同地域の貧困層障害者救済、さらに発展途上国への支援尽力した。なお、「聖職者にならなければジャーナリストになっていた」とよく周辺話しており、実際にこの頃から新聞や雑誌への投稿数多く行うなど、積極的に言論活動行っていた。 そうした中でも清貧精神を常に失わず、総大司教に任命され時には信者達からの100万リラ寄贈金があったが、「私がこの地に来た時はポケットに5リラしかありませんでした。ですから去る時も5リラしか持ちません」と語り全額寄付した

※この「総大司教」の解説は、「ヨハネ・パウロ1世 (ローマ教皇)」の解説の一部です。
「総大司教」を含む「ヨハネ・パウロ1世 (ローマ教皇)」の記事については、「ヨハネ・パウロ1世 (ローマ教皇)」の概要を参照ください。

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