マカオ
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文化
食文化
中国系住民は広東料理系(順徳料理に近い)の中華料理を、ポルトガル系住民はポルトガル料理を基本とした食生活をしているが、これらの料理だけでなく、かつてポルトガルの植民地があったインドやマレーシア、アフリカ、ブラジルの料理の要素や、交易のあった日本料理の影響をも取り入れて融合した、マカオ料理が生まれている。
マカオ料理は一見ポルトガル料理風であるが、中華料理のように皆で取り分けて食べることも当たり前で、中国大陸近辺でとれる食材もうまく生かしている。食事の際にはポルトワインもよく飲まれる。ただし、マカオ現地では「ポルトガル料理」(「葡国菜」)と区別されずに、呼称されることも多い。
香港同様に茶餐廳や麺類、粥、パン、菓子などの専門店も発達している。マカオ料理は香港をはじめとする中華圏で高い人気を誇っており、ポルトガルのパステル・デ・ナタを基にしたマカオ式のエッグタルトは、日本にもアンドリューのエッグタルトというチェーン店を出している例がある。
芸能
基本的に香港の芸能の影響が強く、香港や台湾などの中華圏の芸能人、そしてヨーロッパの芸能人に人気が集まっている。ポルトガル音楽のファドを歌うグループや粤劇の劇団がいくつかある。
教育
住民には、3年間の幼児教育、6年間の初等教育、6年間の中等教育、合計15年間の無償教育の機会が提供されている。
識字率は、93.5%で、非識字者の大多数は65歳以上の高齢者であり、若年層(15-29歳)では、99%以上となっている[48]。現在、授業にポルトガル語を用いている学校は1校のみである。
マカオは、統一的学制を有しておらず、中等教育までは英国式、中国式、ポルトガル式のものが並立している。10の高等教育機関があり、内、4機関は公立である[49]。国際学習到達度調査によると、2003年実施のもので実施41カ国(地域含む)中、数学的リテラシー9位、科学的リテラシー7位、問題解決能力6位、2006年実施のもので実施56カ国(地域含む)中、数学的リテラシー8位、2015年実施のもので実施72カ国(地域含む)中、科学的リテラシー全体6位、読解力12位、数学的リテラシー3位、と上位を記録している。
マカオの進学率は、かつては、他の高収入諸地域に比べ高いとはいえず、2006年の統計によると、14歳以上の住民のうち、中等教育を受けたものは51.8%であり、高等教育は 12.6%となっていたが[48]、近年急速な伸びを見せ、2016〜17年度(マカオの学年は9月開始)の中等教育学校卒業生の高等教育進学率は91.9%に達し、2016年における全人口に占める高等教育学歴取得率は28.9%で、近い将来には4割に達することが見込まれている[50]。
マカオ特別行政区基本法第6章第121条において、以下の条項が定められている。
- マカオ政府は、教育組織、管理・運用、教育に用いる言語、資金配分、入試制度、到達度の認識及び学位制度を含んだ政策について、教育的発展を促進するよう、教育政策の方針を定めなければならない。
- 政府は法律に従って、順次、義務教育制度を整備するしなければならない。
- 地域社会と個人は、法律に基づき、各種の教育的事業を営むことができる。
スポーツ
マカオには中国の中国オリンピック委員会とは独立した国内オリンピック委員会として、中国マカオ体育及びオリンピック委員会が存在する。ただし、マカオオリンピック委員会はOCAからは承認済みであるが、IOCからの承認は得ていない。このためアジア競技大会や東アジア競技大会、東アジアユースゲームズには選手団を送り込めるが、オリンピックには出場できない。
マカオでは2005年東アジア競技大会が行われたほか、2007年にはアジア室内競技大会が開催された。広州で行われた2010年アジア競技大会では、武術太極拳競技で賈瑞がマカオ史上初となる金メダルを獲得した。さらに2018年にインドネシア・パレンバンで行われたアジア大会では、トライアスロン競技で許朗が銅メダルを獲得した。
サッカー
マカオではサッカーが人気のスポーツとなっており、1973年にサッカーリーグのリーガ・デ・エリートが創設された。藍白がリーグ最多となる9度の優勝を果たしている。かつてマカオリーグには、日本人選手の伊藤壇と斉藤誠司が所属していた事もある。
1939年にマカオサッカー協会(AFM)が設立されており、1976年にアジアサッカー連盟(AFC)に加盟し、1978年には国際サッカー連盟(FIFA)にも加盟を果たした。サッカーマカオ代表は、FIFAワールドカップおよびAFCアジアカップへの出場歴はない。さらに東アジアサッカー選手権にも未出場となっている。
モータースポーツ
1954年から行われているモータースポーツの祭典である『マカオグランプリ』が世界的に有名で、1983年に国際格式のフォーミュラ3のマシンによって行われるようになって以降、アイルトン・セナやミハエル・シューマッハ、佐藤琢磨など多くのレーシングドライバーがここで勝利を挙げた後に、フォーミュラ1へとステップアップしている。
また、2000年のマカオグランプリで同国出身の選手として初優勝したアンドレ・クートは、SUPER GTや国際F3000選手権などの世界各国のレースでも活躍している。
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