香港語言学学会粤語拼音方案とは? わかりやすく解説

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香港語言学学会粤語拼音方案

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/03 07:26 UTC 版)

香港語言学学会粤語拼音方案(ホンコンごげんがくがっかいえつごピンインほうあん)、略称粤拼 (えつピン、Jyutping、ユッピン) は、粤語(広東語)をラテン文字によって表記する方法の一つ。香港語言学学会 (LSHK) によって1993年に制定された[1]。特にコンピュータ処理の分野で支持されており、広東語でのインプットメソッド(粤拼輸入法)として発展している。

利用

粤拼は現在、教育コンピュータにおける中国語での情報処理分野などのさまざまな分野・業界で利用されている。広東語でのインプットメソッドとしても、相当に成熟し発展してきている。香港の他に、台湾でもこの方式を使用した入力システムが販売されている。この方式は、政府、財界、および学術界にて広く認識されている[2]

  • 香港特別行政区政府の中国語インターフェース諮問委員会は、1999年よりこの方式を業務上唯一の広東語入力方式をして採用[3][4]
  • 『商務新詞典』では、2009年版より採用[2]
  • Windows Vistaでは、「粤拼」を入力法の一つとして設定[2]
  • 香港中文大学人文電算研究センターの『広東語審音配詞字庫』(粤語審音配詞字庫)などに採用[5][6][7]

声母

19の声母が立てられている。

b
/p/
p
/pʰ/
m
/m/
f
/f/
d
/t/
t
/tʰ/
n
/n/
l
/l/
g
/k/
k
/kʰ/
ng
/ŋ/
h
/h/
gw
/kʷ/
kw
/kʷʰ/
w
/w/
z
/t͡s/
c
/t͡sʰ/
s
/s/
j
/j/

韻母

56の韻母が立てられている(うち2韻は鼻音独立韻)。

ø -p -t -k -m -n -ng -i -u
i- i
[iː]
ip
[iːp̚]
it
[iːt̚]
ik
[ɪk̚]
im
[iːm]
in
[iːn]
ing
[ɪŋ]
iu
[iːu]
yu- yu
[yː]
yut
[yːt̚]
yun
[yːn]
u- u
[uː]
ut
[uːt̚]
uk
[ʊk̚]
un
[uːn]
ung
[ʊŋ]
ui
[uːi]
e- e
[ɛː]
ep
[ɛːp̚]
ek
[ɛːk̚]
em
[ɛːm]
eng
[ɛːŋ]
ei
[ei]
eu
[ɛːu]
eo- eot
[ɵt̚]
eon
[ɵn]
eoi
[ɵy]
oe- oe
[œː]
oet
[œ:t̚]
[9]
oek
[œːk̚]
oeng
[œːŋ]
o- o
[ɔː]
ot
[ɔːt̚]
ok
[ɔːk̚]
on
[ɔːn]
ong
[ɔːŋ]
oi
[ɔːi]
ou
[ou]
a- a
[ɐ]
[9]
ap
[ɐp̚]
at
[ɐt̚]
ak
[ɐk̚]
am
[ɐm]
an
[ɐn]
ang
[ɐŋ]
ai
[ɐi]
au
[ɐu]
aa- aa
[ɑː]
aap
[ɑːp̚]
aat
[ɑːt̚]
aak
[ɑːk̚]
aam
[ɑːm]
aan
[ɑːn]
aang
[ɑːŋ]
aai
[ɑːi]
aau
[ɑːu]
m
/m̩/
ng
/ŋ̩/
  • mng は単独で音節を構成する鼻音独立成韻「唔」(m)、「」「五」(ng) にのみ使われる。

声調

広東語には九声があるが、入声が3声を占めるので音の高さとしては実質6つであり、1から6までの数字で表記される。1は高く平らに(または、高く下降)、2は高く上昇、3は中間で平らに、4は低く下降、5は低く上昇、6は低く平らにそれぞれ発音する。第7声、第8声、第9声はそれぞれ高中低の高さである。

広東語の6声調。
調名 陰平[10] 陰上[11] 陰去 陽平 陽上 陽去 陰入(上陰入) 中入(下陰入) 陽入
第1声 第2声 第3声 第4声 第5声 第6声 第7声 第8声 第9声
表記 1 2 3 4 5 6 1 3 6
調値 55 / 53 35 33 21 / 11 23 / 13 22 5 3 2
例字
fu1

fu2

fu3

fu4

fu5

fu6

fuk1

fok3

fuk6

fan1

fan2

fan3

fan4

fan5

fan6

fat1

faat3

fat6

関連項目

脚注

  1. ^ 香港言語学会の≪粤語拼音方案≫について」『山梨県立女子短期大学紀要』第28巻、1995年3月31日、121–140頁、2024年8月2日閲覧 
  2. ^ a b c 粤語的粤拼和IPA”. 明報 (2010年4月22日). 2021年5月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月19日閲覧。
  3. ^ 張群顯 (2014-01). “蔚為大觀的粤拼網上資源”. 中國語文通訊 93 (1): 1-7. オリジナルの2018-12-22時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20181222200509/http://www.cuhk.edu.hk/ics/clrc/crcl_93_1/cheung.pdf. 
  4. ^ 陸勤教授(香港理工大學)、張群顯博士(香港理工大學)、香港語言學學會粤拼小組. “電腦用漢字粤語拼音表”. 2020年3月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年2月11日閲覧。
  5. ^ 粤語審音配詞字庫”. 人文電算研究中心. 2011年2月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年4月25日閲覧。
  6. ^ 粤語音韻集成”. 人文電算研究中心. 2019年2月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月18日閲覧。
  7. ^ 黄錫凌粤音韻彙電子版”. 人文電算研究中心. 2019年2月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月18日閲覧。
  8. ^ 粵拼系統的修訂” (PDF) (en,zh-hk). 香港語言学学会 (2018年). 2022年1月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月2日閲覧。
  9. ^ a b 2018年追加[8]
  10. ^ 調値 55 は、「超平」と呼ばれることがある(本来の声調 (中・低調) から高平変調したものを含む)。(千島英一. 標準広東語同音字表. 東方書店. p. 16. ISBN 978-4-497-91317-3 
  11. ^ 入声の中には、一部、陰上と同じ調値の高昇変調(35)を取る「超入」も存在する。また、入声以外の本来の声調(中・低調)から高昇変調したものは「超上」と呼ばれることがある。(千島英一. 標準広東語同音字表. 東方書店. p. 11,16. ISBN 978-4-497-91317-3 

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