焼酎 乙類の種類

焼酎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/02/25 03:16 UTC 版)

乙類の種類

焼酎乙類は一次発酵・二次発酵を経て作られたもろみを蒸留して製造されるものが主流を占めており、粕取り焼酎は1000klに満たない[31]

近年では蒸留技術やバイオテクノロジーの進歩により様々な種類の焼酎が造られている。

米焼酎

日本酒同様、米を原料とする。味はやや濃厚。

主要生産地は熊本県南部の人吉盆地(人吉・球磨地方)で、28の蔵元がひしめく。人吉盆地で生産される米焼酎は特に「球磨焼酎」とよばれ、世界貿易機関TRIPS協定に基づく産地表示の保護指定を受けている。また、2006年には地域団体商標として登録されている。香りや味わいは日本酒に近くフルーティで、減圧蒸留の普及もあって初心者にも受け入れやすい焼酎である[32]

この他、日本酒の名産地(秋田県、新潟県等)でも米焼酎が生産されている。

麦焼酎

ムギ、多くはオオムギを主原料とする。一般に米焼酎より癖が少なく、飲みやすいと言われる。

もともと長崎県壱岐で生産され始めたのが最初である。「壱岐焼酎」は世界貿易機関のTRIPS協定に基づく産地表示の保護指定を受けている。壱岐焼酎は米麹に麦を掛け合わせている[32]

麦焼酎は1960年代まで焼酎の中ではメジャーな存在ではなかったが、東京農業大学の柳田藤治によってイオン交換濾過法を麦焼酎へ応用する手法が開発され、宮崎県の柳田酒造によって実際の使用方法が確立すると多くの麦焼酎メーカーがイオン交換濾過法を導入することとなった[33]

その後、1960年代後半から大分県で生産されている麦麹に麦を掛け合わせる麦焼酎が日本各地で注目を浴び、現在では大分県も麦焼酎の一大産地となっている。なお、「大分麦焼酎」は地域団体商標として登録されている[34]

芋焼酎

様々な芋焼酎

味はかなり濃厚で、しばしば独特の臭みがあるため、好き嫌いが分かれると言われる。しかし、近年では、鮮度の良い芋を厳選し、臭みの元となる傷んだ部分やヘタなどを切り落としてから焼酎にする[35]などの努力がなされた結果、従来のような臭みは少なくなっている。

江戸時代から南九州で広く栽培されているサツマイモを原料とした焼酎。宮崎県や鹿児島県で広く飲まれている。使用される麹はほとんどが米麹。サツマイモ100%焼酎は製造されたことがなかったが、1997年に国分酒造協業組合(現・国分酒造)が日本で初めてとなるサツマイモ100%焼酎を発売したことで、芋麹も一般化、現在では多くのメーカーがサツマイモ100%焼酎を発売している[32]

主産地は宮崎県と鹿児島県。他の産地として、薩摩出身の流人である丹宗庄右衛門が製法を持ち込んだ八丈島[36]などが挙げられる。鹿児島で生産される「薩摩焼酎」は、世界貿易機関のTRIPS協定に基づく産地表示の保護指定を受けている。

現在では、焼き芋を原料とした「焼き芋焼酎」も作られるようになった。焼き芋に由来する甘い香りが特徴で、鳴門金時で知られる徳島県、宮崎県、鹿児島県などで製造されている。

黒糖焼酎

市販の各種奄美黒糖焼酎

口当たりは比較的柔らかく、癖が少ない。糖分は含まれないため、原料から想像されるほどの甘味はないが、アルコールや黒糖由来の微量成分による甘味や甘い香りが感じられる銘柄もある。

主流は、白麹菌を使った米麹を甕で一次熟成し、黒糖液を加えて二次熟成した後、常圧蒸留したものである。もともとアルコール度数30度のものが主流であったが、現在は25度のものが最もよく流通し、次いで30度のものとなっている。

鹿児島県の奄美群島では江戸時代から第二次世界大戦以前まで、泡盛や黒糖酒(黒砂糖原料の蒸留酒)が製造されていた。しかし戦中から戦後のアメリカ占領時代にかけ、米不足で泡盛の原料に事欠く一方、黒砂糖は日本本土に移出できず余剰だったことから黒糖酒が多く作られるようになった。

1953年、奄美群島の日本返還に伴い日本の税法を適用するにあたり、黒糖酒は酒税法上「焼酎」として扱われず税率が高いことから、「焼酎」扱いを望む島民の要望もあり、取り扱いに関して議論がなされた。当時の大蔵省は振興策の一環として、米こうじ使用を条件に、熊本国税局大島税務署の管轄区域(奄美群島)に限って黒糖原料の焼酎製造を特認した[32]

以後、黒糖焼酎は奄美群島でしか製造できない特産品となり、地域団体商標の「奄美黒糖焼酎」となって現在に至っている。現在、奄美群島では泡盛は製造されていない反面、黒糖焼酎は奄美大島喜界島徳之島沖永良部島与論島という広範囲で製造されている。

通達により、奄美群島以外で製造された物は、同様の製法、度数で作ってもスピリッツの扱いとなっている[注釈 5]小笠原諸島においては、日本領土になった明治時代初期からサトウキビ栽培によって製糖業が盛んとなり、その過程で生じた副産物を発酵・蒸留した製法で、焼酎に類似する「糖酎」「泡酒」「蜜酒」と呼ばれた酒が戦前に醸造されていた[37][38]戦時中の島民疎開により途絶えていたが、1989年(平成元年)になって村おこしの一環として小笠原村役場農協商工会によってこれを扱う企業が設立され、その製法を模したラム酒が製造されている[37][38]。税法上はラム酒(スピリッツ、もしくはリキュール類)の扱いとなっている。

そば焼酎

味わいは麦焼酎より更に軽く、癖が少ない。

ソバを主原料とする焼酎。発祥は新しく、1973年、宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町の五ヶ瀬酒造(のちの雲海酒造)が、五ヶ瀬地方山間部の特産品であるソバを原料に取り上げ新たに開発した[39]。したがって、宮崎県北部において発祥した焼酎だと言える。その後、1976年に同酒造会社が本格的に宮崎県外へも販路を広げてゆき[39]、これにより、そば焼酎はより広く知られるようになった。結果、ソバの栽培が盛んな長野県北海道でもそば焼酎の醸造が行われるようになり[39]、以後各地の焼酎メーカーで米や麦との混和タイプも含めて広く造られるようになった。そば屋においてそばをゆでたそば湯で割ったそば焼酎を提供している事例も多く見られる。ただし、そばアレルギーを持つ人はアレルギー症状が出る可能性があるので注意を要する[32]

このそば焼酎に使用されるソバの品種は、主にダッタンソバである[40]。しかし、ソバだけを主原料として製造を行うのは比較的難しいため、しばしばコメなど他の焼酎の原料と混ぜた上で仕込みが行われ、製造が開始される[40]。したがって、そば焼酎とは言っても、例えば、主原料としてソバとコメとが併用されている場合もあるのである[41]。 それに対して、米麹こそ使用しているものの、それ以外は全量をソバだけで製造しているそば焼酎も存在する[42]。なお、焼酎は全般にコメに麹菌を繁殖させた米麹が多く使用されており、これはそば焼酎においても例外ではない。しかし、ムギに麹菌を繁殖させた麦麹を使用したそば焼酎も見られる[43]

現在では、宝酒造が独自の技術により完全なソバ麹を作ることに成功し、ソバ100%の「十割(とわり)」を発売している[44]

栗焼酎

栗の香りとまろやかでほのかな甘みがあるのど越しが特徴。

クリの実を主原料とする焼酎。1976年、宮崎県延岡市の佐藤焼酎製造場が地元産である栗を原料に用い栗焼酎を発売。その後、兵庫県や京都府では丹波栗を、また愛媛県など各地の栗特産地を中心に作られるようになった。

ジャガイモ焼酎

サツマイモで作る芋焼酎と比べ癖が少なく飲みやすいものから、独特の青臭い香りの強いものまである。

ジャガイモはでんぷん原料となることからアルコール製造に利用でき、大正時代以降、北海道等で甲類焼酎の原料に利用され始めたが、乙類焼酎の製造に活用されたのは遥かに後年のことであった。1979年4月に、北海道斜里郡清里町の清里町焼酎醸造事業所が、日本で最初のジャガイモ焼酎を製造販売した。以後、北海道の多くの焼酎メーカーがジャガイモ焼酎に参入し、近年、北海道ではジャガイモ焼酎の生産が広く行われるようになっている。また、長崎県でも特産品としてジャガイモ焼酎を製造している酒蔵がある。

トウモロコシ焼酎

高千穂酒造ではトウモロコシとトウモロコシ麹を使用した焼酎を樽で熟成した本格焼酎を販売している。

泡盛

沖縄県特産の蒸留酒である泡盛は米を原料としており、その製法は一般的な焼酎と差異があるものの、税法上は焼酎乙類の範疇に入れられている[1]

法制上、泡盛自体は日本全国で製造することができるが、「琉球泡盛」という表示は世界貿易機関のTRIPS協定に基づいて沖縄県産の物のみに認められている。

粕取り焼酎とカストリ

粕取り焼酎

もろみ取り焼酎とは別の製法で、清酒かす(日本酒の酒粕)を蒸留して造られる「粕取り焼酎」と呼ばれる焼酎がある。粕取り焼酎は九州北部を中心に発達し、全国の清酒蔵で製造されている。江戸時代の本草書『本朝食鑑』に、「焼酒は新酒の粕を蒸籠で蒸留して取る」とあるように、清酒が醸造される地域で焼酎といえば粕取り焼酎のことであった。新しくできた酒粕をそのまま蒸留する方法と、籾殻(もみがら)を混ぜて通気性を確保してから蒸留する方法があり、前者は吟醸粕取焼酎、後者を正調粕取焼酎と呼んで区別している[45]。貯蔵した酒粕を蒸留し早苗饗(さなぶり)という田植え後のお祭りで飲んだことから、別名「早苗饗焼酎」とも呼ばれる。蒸留した後の粕は田の肥料として使われていた。

太平洋戦争後、カストリと混同されたこと、独特の香りが時代の嗜好に合わなかったことなどから需要が低迷し粕取り焼酎の製造から撤退する蔵が相次いだ。また、かつては福岡県内を中心に粕取り焼酎専業の蔵も多くあったが、現在では米焼酎の製造を行うなど、専業蔵は消滅している。しかし、昨今の焼酎ブームにより、日本酒製造メーカーが粕取り焼酎に再び進出するケースが増えている[45]

梅酒をつける際にベースとなるアルコールやみりんの主原料としても使われた他、日本酒の仕上げ工程において中途で発酵を止め、防腐や辛口に仕上げる目的で用いられる柱焼酎として使われる場合も多かった。また、外傷の消毒薬としても用いられた[32]

カストリ

密造酒としてのカストリ酒を飲む人々(1947年撮影)。ラベルなしの酒瓶にはアルコール度数を記した札が付くが、中身とその材料・製法は不明。

カストリ酒カストリとは、第二次大戦後の混乱期において出回った粗悪な密造焼酎に対する俗称である[46]

第二次世界大戦直後から食糧不足が深刻化し、酒造会社の多くも再建が進んでいなかったため酒類を製造する余裕などなかったが、庶民は気晴らしのため安価な酒を求めており、この需要に応える形で自然発生した。主にサツマイモを原料にしていたが、素人があり合わせの道具と不確かな知識で製造しており、焼酎とは呼べない粗悪な密造酒であった[47]

闇市では、ラベルの無い不揃いの酒瓶に詰められた出所不明のアルコール飲料が取引され、屋台ではアルコール度数が低い物ならば庶民でも手が届くような価格で提供されていた。しかしサツマイモなどが使われていれば上等、アルコール度数が表記されていれば良心的な方で、中には原料や出所がまったく不明という得体の知れない物が多く出回っていた。

甚だしい例では、酒類に転用されないようにエタノールに失明や中毒死の危険があるメタノールを加えた変性アルコールを使った酒もあった。変性アルコールは燃料・工業用であるため、公示価格が適用されず非課税で相対的に安価であり、沸点の違いを利用して販売前に加熱・蒸留してエタノールを分離しするというアイディアだった。しかしメタノール-エタノール混合溶液は共沸混合物であるため単純に加熱してメタノールを取り除くことは不可能である。これらの工業用アルコールを水で薄めた酒は『メチール酒』や『バクダン』などと呼ばれたが、庶民は安価な酒を求めていたため中毒事故が多発した[46]

これらの粗悪なアルコール飲料は、次第に『カストリ』と総称されるようになった[46]ため、一般にも「カストリ=粗悪な蒸留酒」というイメージが定着した[46]。その影響で、決して粗悪でない本来の粕取り焼酎まで、誤解によってイメージダウンした時期がある[46]

1953年の論考によれば、1947年9月末時点の日本国内における密造酒生産量は50万2,000klと推定され、同時期の正規製造場移出数量34万3,000klを大幅に上回っていた。密造酒の中で主流を占めていたのは焼酎であり、都市近郊で大規模な密造集落が形成されるにまで至った。密造検挙件数は1945年の8,510件から、1946年は11,686件、1947年には16,968件と年々増え続けており、当時の密造酒の氾濫ぶりがうかがわれる[48]

宮崎県の焼酎産業は、太平洋戦争終戦後、密造集落1カ所の存在で大きな影響を受けた特異な例である。宮崎市内の大島地区は戦時中に工業生産従事のため移住した沖縄・奄美諸島出身者が戦後も残留、生活の糧を得るため大規模な密造集落を形成し、一時は住民900戸中650戸が密造とその資材供給に従事していた。

大島製の密造焼酎(いわゆるカストリ一般よりも良質であったという)に押され、宮崎税務署管内で酒造業者の半分が休廃業に追い込まれたほどで、これに対し大規模な取締が1947-52年の間に15回も実施されている[48]。宮崎県においては、21世紀初頭に至るまで一般的な25度焼酎よりも度数が低い20度焼酎が広く普及しているが、これも国税庁が戦後の密造焼酎横行対策として、正規業者に税率を抑えた20度焼酎の製造を認めた結果であった[49]

派生した戦後混乱期を象徴する表現として、同時期、粗悪紙を用い扇情的な記事を満載して安直に売られた雑誌を指す「カストリ雑誌」という言葉も生まれた。

黒澤明監督の映画「醉いどれ天使」など戦後の闇市を舞台とした文芸・映画作品等では、当時の世相を象徴するアイコンとしてカストリ酒が登場する。


注釈

  1. ^ ウイスキーやスピリッツなどの蒸留酒の酒税が焼酎より高く設定されていた当時の税体系は非関税障壁であるとする洋酒生産国によるGATTへの提訴において日本が敗訴(1987年)したため、日本は消費税導入(1989年4月)と同時に酒税改訂を行った。しかし措置が不十分であるとする洋酒生産国によるWTOへ同様の提訴により再度日本が敗訴(1996年)したため、日本は段階的(1997年-2000年)に焼酎の酒税を引き上げた(参考文献:WANDS. “日本政府の対応に怒りあらわ 欧米の蒸留蒲生産着代表団が来日、酒税法改訂を強く迫る” (日本語). 月刊 WANDS 1996年12月号. ウォンズ パブリシング リミテッド. http://www.wine.or.jp/wands/1996/12/mnews1.html 2008年7月8日閲覧。. Shibatani Tomohiro. “本格焼酎の定義” (日本語). 本格焼酎の楽しみ. 2008年7月8日閲覧。)。
  2. ^ 例として、宝焼酎「純」(ブレンド、熟成、蒸留方法・回数、等)サッポロ「トライアングル」(原料、ブレンド、等)アサヒ「SAZAN(サザン)」(蒸溜機、等)合同酒精「グランブルー」(加水種類、等) などがある。
  3. ^ 宮崎県の都城酒造『がぶがぶ君』など。
  4. ^ 宮崎県の都城酒造『ホワイトリカー(2)』(商品名と税法上の表記が同じ)、淵田酒造所『ホワイトリカーフチダ』など。
  5. ^ 愛知県の清洲桜醸造黒糖太郎』などがあった。
  6. ^ 一例として、濵田酒造「なゝこ(ななこ)」 などがある。
  7. ^ 出典の帝国データバンクの統計では、2008年からオエノンホールディングスの焼酎売り上げ比率が50%を下回ったため、ランキングから外した上で統計を遡って同社の焼酎部門の売上高を減じ、代わりに51位の社の売上高を算入して計算している。仮にオエノンホールディングスの焼酎部門の売上を含めれば、2008年の上位50社のピーク時の売上高合計額は3,471億円となる。

出典

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