ヘビ ヘビの概要

ヘビ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/07 04:04 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動
ヘビ亜目
エジプトコブラ Naja haje
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
: 有鱗目 Squamata
亜目 : ヘビ亜目 Serpentes
学名
Serpentes
Linnaeus, 1758
上科

分布

分布図。濃色:陸生、淡色:水生

適応放散により地上から地中、樹上、海洋に至るまで生活圏を広げており[6]南極大陸極地を除く全大陸に分布する[3][4](右の図)。毒蛇熱帯亜熱帯に多い[7]

形態

大きさも最大10mといわれるアミメニシキヘビオオアナコンダから、10cm程のメクラヘビ類まで、様々な種類がある。なお世界最大の毒蛇は、全長5m以上になるキングコブラとされる。

の区別は、一般に総排出口から先が尾とされる。骨格を見れば胴体と尾の境界はある(胴体には肋骨があるが、尾にはない)。

俗にを外して獲物を飲み込むとされるが、実際には方形骨を介した顎の関節が2つあり、開口角度を大きく取ることができる。さらに下顎は左右2つの独立した骨で形成され、靭帯で繋がっている。上顎骨や翼状骨も頭骨に固定されておらず、必要に応じて前後に動かすことができる。も喉奥に向かって反り返り、これらにより獲物を咥えながら顎を動かすことにより獲物を少しずつ奥に呑みこむことができる[8](後述のように歯の他に牙を持つものもいる)。

また口内にはヤコブソン器官という嗅覚をつかさどる感覚器を持つ(ヘビ固有の器官ではない)。本科の構成種がを頻繁に出し入れするのはこの器官に舌に付着させた匂いの粒子を送っているためである。また一部の種では赤外線(動物の体温)を感じ取る赤外線感知器官(ピット器官)を唇にある鱗(上唇板、下唇鱗)や鼻孔の間に持つ。耳孔鼓膜退化しているため、地面振動を下顎で感知する。

鱗には厚さ数ナノメートルの剥がれない脂質が潤滑油として分泌されており、これは2015年12月9日付の「Journal of the Royal Society Interface」誌で発表された研究論文によって明らかになっている[9]

進化

ヘビの進化的起源には不明な点が多いが、有鱗目のうち、トカゲ亜目の一部から進化したと考えられている[10][11]。トカゲ亜目のなかではオオトカゲ下目英語版に近いとする説がもっとも有力だが、ヘビと同じく四肢の退化したヒレアシトカゲ科英語版ミミズトカゲ亜目を姉妹群とする説もある[10]。1億4500万年前から1億年前の白亜紀前期に派生したと推測されている[8]

ヘビの祖先がどのような生活をしていたかについては、水生だったとする説と陸生・地中生だったとする説が対立しており[10][11][8][12]、決着は着いていない。水生説では、ヘビがモササウルス科[12]やドリコサウルス科[8]のような海生オオトカゲ類に近縁であることから、それらから派生して海中で自在に動けるように進化したと考える[10][8]。特に、約9800万年前の地層から見つかったパキラキスがオオトカゲ類の特徴を残す祖先的なヘビであるとする研究は、水生説を強く支持している[11][12]。パキラキスは前肢を持たず後肢のみを持つヘビで、形態的な特徴から水生であったと考えられる。しかし、パキラキスが祖先的であることを疑う意見もある[12]。水生説に対して、ヘビが中耳鼓膜を失っていることや、進化過程で一度網膜が退化したとみられること、脳頭蓋が骨で保護されること、瞼が無く眼が透明な鱗で覆われていることなどは、ヘビの祖先が地中生活をしていたことを強く示唆する[10]。ただし、固い地面を掘り進んでいたとすれば生じたはずの頭蓋骨の強化(ミミズトカゲ類には生じている)はヘビには見られず、地中起源だとしたら軟らかい土壌に住んでいたか[10]、既にある穴や割れ目を利用する半地中生だったと考えられる[11]。化石では、後肢と椎骨を残すナジャシュ、四肢を完全に失ったヘビの中では最古であるディニリシア英語版、頭部にトカゲの特徴(上顎の骨が頭骨に固定されている)を残し地中生だったと推測されるコニオフィスが陸生であることが、陸生説を支持している[8][13]

四肢を失う進化(退化)自体はそれほど珍しいものではなく、両生類の無足類もまさに同様の進化を経た分類群である。現生のトカゲ類においてもアシナシトカゲやヒレアシトカゲのように四肢が無いかほとんど無いいくつかの群がある。鳥類ではモアが前肢(翼)を失い、哺乳類ではクジライルカの後肢が退化している[14]

四肢に関しては現在もメクラヘビニシキヘビ科など一部の原始的なヘビに腰帯の痕跡を持つ種類がある。一部のニシキヘビには大腿骨も残っている。なお、肩帯のある種類は現存しない。移動するための四肢を失ったとはいえ、ヘビはその細長い体によって地上や樹上、水中での移動を可能にし、高い適応性を示している[11]

地上での移動方法にはいくつかの種類があり、代表的なのは以下のものである。

  • 蛇行
  • 直進(腹筋を動かして直進する)
  • 横這い(上半身を移動する方向へ持ち上げた後、下半身を引き寄せる。「サイドワインダー」の語源)

体形に合わせて内臓も細長くなっており、2つののうち左肺は退化している。原始的なヘビほど左肺が大きい傾向にある。

視力は人間などに比べると弱く、現存する種にも目が退化したものは多い。ただし、立体的な活動を行う樹上棲種についてはこの限りではなく、視覚が発達し大型の眼を持っている種もいる。

日本における毒蛇の代表格ニホンマムシ

ヘビといえば「長い体」の次に「」が連想され、実際、有毒な爬虫類の99%以上はヘビが占めている(ヘビ以外にはドクトカゲ科2種のみとされてきた)。全世界に3000種類ほどいるヘビのうち、毒を持つものは25%に上る。威嚇もなく咬みつく攻撃的で危険な毒蛇もおり、不用意に近づくのは危険である。

毒蛇は上顎にある2本の毒牙の根もとに毒腺があり、毒液を分泌する。クサリヘビ科の種ではの中は注射器のように管状で毒牙の先に毒液を出す穴がある。コブラ科では牙が管状ではなくその表面に毒液が毛細管現象で流れる溝がある種が多いが、毒牙がほぼ管状になっている種もある。従って、この二者を明確に分けるのは毒牙が管状か否かではなく、毒牙が折り畳み式か否かであり、前者を「管牙類」、後者を「前牙類」と呼ぶ。なかには口を開けて毒牙から毒液を噴射するクロクビコブラリンカルスのような種類もいる(両者の毒牙は牙前方中ほどに毒腺の穴があいており、2mほど先の標的に正確に毒液を命中させることができる)。クサリヘビ科でもマンシャンハブ英語版のように毒液を噴射するものがいる。日本にも分布するヤマカガシの仲間はアオダイショウなどと同じナミヘビ科だが、上あごの奥の牙と首筋の皮膚の2ヶ所から毒を分泌する。これらの仲間は無毒とされてきたが最近になって毒ヘビとして認識されるようになった。実際に日本で人が死亡した例もある。ナミヘビ科の有毒種は毒牙の位置から「後牙類」と呼ばれる。

最も強い毒をもつのはオーストラリアに生息するナイリクタイパンである。その他、非常に攻撃的なタイパンやアフリカ最強の毒蛇であるブラックマンバタイガースネークアマガサヘビ、幾つかのウミヘビなど。

三角形のヘビは毒蛇」といわれるが、必ずしも正しいとは言えない。確かに毒を持つクサリヘビ科のヘビ、ハブやマムシは、頭が三角形のような形。ほかのクサリヘビ科のヘビも三角形のような形である。だが、コブラ科のナイリクタイパン、ブラックマンバ等の頭は、三角形というよりは、いわゆる「蛇の頭」形。日本に生息する猛毒を持つナミヘビ科の、ヤマカガシも頭は三角形ではない。また、日本の、毒を持たないヘビ、アオダイショウやシマヘビは、毒の代わりに威嚇するため、頭が三角形に広がることがある。

また、無毒のヘビであっても咬まれれば唾液に含まれる細菌等の影響で感染症を起こす場合がある。さらにこれらのヘビの歯は、くわえた獲物を逃さないよう先端が内側(のど)に向かって曲がっている上に細いため、無理矢理引きはがすと皮膚に食い込んだまま折れてしまう危険がある。

クサリヘビ科に代表される「出血毒」は、消化液唾液)が変化したもので体の各部に皮下出血を起こし、組織を破壊されてに至る。これは蛋白質消化されたために起こる症状である。

コブラ科の構成種に主に見られる「神経毒」は文字通り中枢神経を冒して、咬んだ動物を麻痺状態にし、ヘビはその間に獲物を捕食する。強毒種では出血毒と神経毒の両方の作用がある。毒ヘビに咬まれたときは血清による治療をうける必要がある。

生態

アメリカレーサー
Coluber constrictor
インドコブラ Naja naja
ボアコンストリクター
Boa constrictor
ボールニシキヘビ
Python regius

森林草原砂漠等の様々な環境に生息する。環境に応じて地表棲種、樹上棲種、地中棲種、水棲種等、多様性に富む。変温動物なので、極端な暑さ寒さの環境下では休眠を行なう。

食性は全てが動物食で、主食はシロアリミミズカタツムリカエルネズミ魚類鳥類など種類によって異なる。大型の種類ではシカワニヒト等を捕食することがあるが、変温動物で体温を保つ必要がないため、食事の間隔は数日から数週間ほどである。獲物を捕食するときは、咬みついてそのまま強引にくわえ込む、長い胴体で獲物に巻き付いて締め付ける、毒蛇の場合は毒牙から毒を注入して動けなくする等の方法がある。

コブラ類を初めヘビを食べるヘビも多い(自らも相手も体が細長いので食べ易い上、栄養を多く摂取できるからだと考えられている。多くのウミヘビ類がアナゴやウナギ等をよく食べるのも同じ理由であると考えられている)。

繁殖形態は卵生、卵胎生胎生の種がいる。


注釈

  1. ^ とりわけ関東地方西部から中部地方にかけての勝坂式土器様式には、写実性に富むものから抽象的なものまで様々な造型がみられる[21]。こうした蛇体文の成立過程をみていくと、土器文様の立体化ならびに加飾性の進展という2つの法則性がみられ、ことに立体化の最終段階に火焔土器が位置づけられる[20]。ただし、縄文人の意識におけるヘビの存在は、能登健(考古学)によれば、ヘビが最初にあってそれが文様にとけ込んだというよりは、むしろヘビをモチーフにしなかったにもかかわらず結果としてヘビに見えたため頭がつけられてヘビになったというプロセスを経ての装飾化であるという[20]
  2. ^ 日本の伝統的な焼畑農業に際しては、焼畑開始にあたってヘビに一時退散の唱文が述べられるが、これは地神に許しを請う行為と理解されている[22]。また、『常陸国風土記』には継体天皇の時代のこととして新たな水田を開発しようとしたが夜刀(ヤト=谷戸、すなわち荒蕪地)の神であるヘビに妨げられたとの説話が収載されており、『古事記』や『日本書紀』にはスサノオノミコト八岐大蛇退治の伝説がある[22]。いずれも地神であるヘビの排斥に関連する伝承である[22]
  3. ^ ブームスラングは、ナミヘビ科の毒蛇。日本語版のハリー・ポッター作品では「毒ツルヘビの」と訳されている。詳細はハリー・ポッターシリーズの魔法薬一覧を参照。

出典

  1. ^ 小西友七南出康世『ジーニアス英和辞典 第4版』大修館書店、2006年、1806頁。ISBN 978-4-469-04170-5
  2. ^ プログレッシブ英和中辞典(第4版) - snake. コトバンク. 2019年3月9日閲覧。
  3. ^ a b 百科事典マイペディア - ヘビ(蛇)【ヘビ】. コトバンク. 2019年3月9日閲覧。
  4. ^ a b 世界大百科事典 第2版 - ヘビ【ヘビ(蛇) snake】. コトバンク. 2019年3月9日閲覧。
  5. ^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 - ヘビ類. コトバンク. 2019年3月9日閲覧。
  6. ^ 松井孝爾. 日本大百科全書(ニッポニカ) - ヘビ #生態. コトバンク. 2019年3月9日閲覧。
  7. ^ 松井孝爾. 日本大百科全書(ニッポニカ) - ヘビ #毒と捕食. コトバンク. 2019年3月9日閲覧。
  8. ^ a b c d e f 對比地孝亘、疋田努(協力)「ヘビの首はどこまでか? : 徹底紹介!不思議だらけの体と特殊能力」『ニュートン』第33巻第2号、ニュートンプレス、2013年2月、 94-103頁、 ISSN 0286-0651NAID 40019542933
  9. ^ ヘビのウロコに「剥がれない潤滑油」、初の発見”. ナショナルジオグラフィック日本版サイト (2015年12月14日). 2019年5月2日閲覧。
  10. ^ a b c d e f 松井正文「爬虫類にみる多様性と系統」『脊椎動物の多様性と系統』松井正文(編集)、岩槻邦男・馬渡峻輔(監修)、裳華房〈バイオディバーシティ・シリーズ7〉、2006年、129頁。ISBN 4785358300
  11. ^ a b c d e 疋田努『爬虫類の進化』東京大学出版会〈Natural History Series〉、2002年、85-87頁。ISBN 4130601792
  12. ^ a b c d Coates, Michael; Ruta, Marcello (2000). “Nice snake, shame about the legs”. Trends in Ecology & Evolution 15 (12): 503-507. doi:10.1016/S0169-5347(00)01999-6. PMID 11114437. 
  13. ^ ヘビは水中ではなく陸上で進化、米論文」『AFPBB News』フランス通信社、2012年7月30日。2013年3月29日閲覧。
  14. ^ Lars Bejder, Brian K. Hall (2002). “Limbs in whales and limblessness in other vertebrates: mechanisms of evolutionary and developmental transformation and loss”. Evolution & Development 4 (6): 445–458. doi:10.1046/j.1525-142X.2002.02033.x. 
  15. ^ Pyron, Robert Alexander and Burbrink, Frank T and Wiens, John J (2013). “A phylogeny and revised classification of Squamata, including 4161 species of lizards and snakes”. BMC evolutionary biology 13 (1): 93. 
  16. ^ Pyron RA, Burbrink FT, Colli GR, de Oca AN, Vitt LJ, Kuczynski CA, Wiens JJ. (2011). “The phylogeny of advanced snakes (Colubroidea), with discovery of a new subfamily and comparison of support methods for likelihood trees”. Mol. Phyl. Evol. 58 (2): 329-342. PMID 21074626. 
  17. ^ 『蛇―日本の蛇信仰』1979年、法政大学出版局 ISBN 4-588-20321-5 / 講談社学術文庫 ISBN 4-06-159378-1[要文献特定詳細情報]
  18. ^ 伏義とは”. 高島神社. 2019年5月2日閲覧。
  19. ^ a b 蛇と水神のはなし栃木市太平山神社
  20. ^ a b c 能登(2011)pp.53-54
  21. ^ a b 小林達雄(2008)p.123
  22. ^ a b c d e f 能登(2011)pp.54-57
  23. ^ a b c ドナ・ハート、ロバート・W・サスマン『ヒトは食べられて進化した』伊藤伸子訳 化学同人 2007 ISBN 9784759810820 pp.156-158.
  24. ^ a b Voland, Eckart and Grammer, Karl (2003) Evolutionary Aesthetics, Springer, pp. 108-116 3-540-43670-7.
  25. ^ The Endangered Species Handbook - Trade (chapter) Reptile Trade - Snakes and Lizards (section) Archived 2006-03-06 at the Wayback Machine. - accessed on 15 August 2006
  26. ^ Species in Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora (CITES) - accessed on 14 August 2006
  27. ^ Gabriel Knight - Sins of the Father. Gameboomers.com. Retrieved on 2013-01-21.
  28. ^ Snake Rattle 'n Roll. consoleclassix.com. Retrieved on 2013-01-21.
  29. ^ Allahkazam's Magical Realm. Everquest.allakhazam.com. Retrieved on 2013-01-21.
  30. ^ Monsters/Pets : Reptile. Legend of Mana. qrayg.com
  31. ^ Encyclopaedia. Brmovie.com. Retrieved on 2013-01-21.
  32. ^ Quynh-Nhu, Daphne (April 2006). Jade Green and Jade White. teenink.com. Retrieved on 2013-01-21.
  33. ^ 常光徹『しぐさの民俗学』ミネルヴァ書房 2006年、ISBN 4623046095 pp.170-171.
  34. ^ 信濃生薬研究会 1971, p. 23.
  35. ^ 信濃生薬研究会 1971, p. 90.
  36. ^ 佐久市志編纂委員会編纂『佐久市志 民俗編 下』佐久市志刊行会、1990年、1385ページ。





ヘビと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ヘビ」の関連用語

1
100% |||||

2
100% |||||

3
100% |||||




7
100% |||||


9
100% |||||

10
100% |||||

ヘビのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ヘビのページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのヘビ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2020 Weblio RSS