異類婚姻譚とは? わかりやすく解説

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いるいこんいん‐たん【異類婚姻×譚】

読み方:いるいこんいんたん

伝説・民話で、人と異類2との婚姻主題とするもの。蛇婿入り鶴女房など。


異類婚姻譚

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/04 17:05 UTC 版)

異類婚姻譚(いるいこんいんたん)とは、違った種類の存在と人間とが結婚する説話の総称。世界的に分布し、日本においても多く見られる説話類型である。なお、神婚と異類(神以外)婚姻とに分離できるとする見方や、逆に異常誕生譚をも広く同類型としてとらえる考え方もある。

概要

婚姻の相手としては、妖精精霊など信仰対象となる存在の他、キツネなど動物が相手となる話も多い。

ギリシア神話ゼウスが乙女の元に白鳥や水滴と化して訪れる話や、貴族の祖先が神や動物との間の子という物語が各地にあるが、これらは古代の族外婚による信仰、生活様式の違いに起源を求める説がある。子孫が残る伝承のものには、子孫にとって都合の良いもの(統治の根拠とする始祖伝説等)が多い。例として日本の天人女房(天女)系羽衣伝説や、中国の王朝始祖、満洲民族ブクリ・ヨンション中国語版の伝説等が挙げられる。

多胎児は、人が動物のように多産となることから、先のゼウスの例のように動物に化けた神、もしくは動物が関わった影響と考える例が世界的にみられる。

日本

日本神話におけるホオリとトヨタマヒメの結婚は異類婚姻譚であり、2人の子孫が初代天皇となっている。これは始祖の正当性の根拠として豪族などの有力者のエピソードを元に作られた神話とされる。

関敬吾をはじめ、異類婚姻をテーマとした研究は多くなされており、様々な角度から分析されている[1]。分析の仕方により、分類の仕方も変わってくるが、ここでは、例として関敬吾による分類を挙げる。なお、この分類上で言う「動物」には、慣例的に、架空の山姥河童、天人等も含まれる。

大まかに六つの要素で構成されている。

  1. 援助 - 例:動物を助ける。
  2. 来訪 - 例:動物が人間に化けて訪れる。
  3. 共棲 - 例:守るべき契約や規則がある
  4. 労働 - 例:富をもたらす。
  5. 破局 - 例:正体を知ってしまう。(見るなのタブー
  6. 別離

異類婿

鳥文斎栄之・画『模文画今怪談』にある馬婿の怪談。馬の霊が人間の女を自分の嫁とすべくさらってゆく場面。

人間の女と動物の婚姻[2]。何かと引き替えに、女性が一種の人身御供として異類と結婚する羽目に陥る。女性自ら婚姻が破綻する様に画策し、破局させる話も多い。

  • 婿 - 水の世界に関わる。この場合、蛇にはと区別されない場合が多い。例:アカマタ黒姫伝説海神別荘、能恵姫(のえひめ)伝説(秋田県)。女性やその親に恩のある別の動物(サワガニなど)が蛇を撃退、あるいは破綻後の助力をする話もある。
  • 婿 - 労働力をもたらす。
  • 婿[3] - 例:『南総里見八犬伝』。犬との結婚話は太平洋諸島など海洋民族に多い。
  • 河童婿 - 旱魃に困り果てた百姓が、河童のおかげで田に水が入り、その礼に娘を嫁にやる約束を守らなくてはならないが、娘は瓢箪ひょうたんを持って行ったおかげで河童の嫁にならずにすむという話が有名。全国に様々な種類が有る。
  • 婿 - 例:オシラサマ
  • 婿 - 例:『鼠草紙』[4]
  • 一寸法師 - 田螺長者等。他の異類婿の話とは違い婿が主人公。小さいという障碍が不思議な力で無くなるめでたい結末を迎える。

異類女房

人間の男と動物の婚姻。異類婿よりは比較的悲惨でない話が多い。見るなのタブーを犯すことで離別する結末を迎える話も多い。

他界との関わり

日本には、他界(死後の世界、神の世界等)と関わると何事か幸を得るという感覚が古来あったようで、神話を始め様々な説話にその思想的痕跡が見られる。異界と関わり幸を得る方法としては

  1. 相手を屈服させる
  2. 相手と婚姻する
  3. 他界に行く
  4. 他界からものを持ち帰る

などがあり、異類婚姻譚は文字通り婚姻により幸を得る部類である。

アジア

  • オオカミと指導者や神 - テュルク系民族の祖、モンゴル人の祖、ギリシャ神話のアポローンとアルテミスの母などに登場する。

中国

日本と同様に、狐女房を始めとして『聊斎志異』などに多数伝わる[5][6]。日本での説話の元になったと思われるものが多数ある。

  • 盤瓠 - 中国の伝説。敵の将軍の首を持ってきたものに娘を娶らせる約束をした後に、犬が倒したことから婚姻関係が結ばれる。この伝説をもとに『南総里見八犬伝』が作られたともされる。
  • 幽霊との婚姻 - 日本には余り見られない例。子が生まれたり、生き返ったりするパターンもある。
  • 蛇女房 - 白蛇伝
  • 天河配 - 七夕伝説

朝鮮

ヌルハチは李座首の娘とカワウソの間に生まれたという伝承がある。

ベトナム

丁朝大瞿越を建てた丁部領は、母親が水浴びをしているときにカワウソと交わって出来た子だという[7]

ヨーロッパ

ヨーロッパでの異類婚姻譚に登場する動物は、元が魔法呪いで姿を変えられた人間とされるものが多く、ギリシア神話等では神の化身であることも少なくない[8][9]。このため異類の本質が動物そのものであることは少ないという指摘もある。また逆のパターンとして妖精が魔法で動物の姿となっていたというパターンも多数存在する。

北米

トリンギットには人の姿になるカワウソの元へ嫁ぎ、その後生まれた子が母の故郷への部族との交易を行い双方に富をもたらしたという伝承がある[10]

創作

美女と野獣かえるの王さま一寸法師奥さまは魔女など神話や伝承をモチーフにしたり、異類婚姻譚を描いた物語は各地で創作されている。

漫画やアニメなどにおける異類婚姻譚的概念・混血の類型は、半妖とも呼ばれている。

脚注・出典

  1. ^ 川森博司 (1993). “異種婚説謂”. 国立歴史民俗博物館研究報告: 1-2. 
  2. ^ 結婚の原型 : 異類婚譚の起源. 北宋社. (2001年11月). pp. 7-9 
  3. ^ 物語要素事典”. 平成30-12-05閲覧。
  4. ^ 愛原豊「鼠草紙 いと楽し◇動物と人間が結婚!?篠山に伝わる御伽草子絵巻の魅力◇」『日本経済新聞』朝刊2018年12月5日(文化面)2018年12月7日閲覧。
  5. ^ 聊斎志異〈上〉. 岩波文庫. (1997年1月16日). p. 466 
  6. ^ 聊斎志異〈第1巻〉―完訳. 角川文庫. (1955年2月10日). pp. 639-640 
  7. ^ 小倉貞男『物語ヴェトナムの歴史 一億人国家のダイナミズム』〈中公新書〉、63-64頁。ISBN 4-12-101372-7 
  8. ^ ギリシア神話. 紀伊國屋書店. (新装版1998年). pp. 4-6 
  9. ^ ギリシア案内記. 岩波文庫(上・下). (1991-1992年). p. 7 
  10. ^ Swanton, John Reed (1909). Tlingit myths and texts, recorded by John R. Swanton. University of California Libraries. Washington, Govt. print. off. https://archive.org/details/tlingitmythstexts00swanrich 

関連項目

外部リンク


異類婚姻譚

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/11 22:31 UTC 版)

日本の文化における狐」の記事における「異類婚姻譚」の解説

霊獣として伝えられる歴史は非常に古く『日本霊異記』に、すでにの話が記されている。美濃大野郡の男が広野1人美女出会い結ばれて子をなすが、女は化けた姿で、正体悟られて野に帰ってしまう。しかし男はに、「なんじ我を忘れたか、子までなせし仲ではないか、来つ寝(来て寝よ)」と言った。なお、これを元本発展させた今昔物語にもこの話は収録され、きつねの語源としている。人間との婚姻譚において語られることが多く、後に『葛の葉』、『信太妻しのだづま)』を経、古浄瑠璃信田妻しのだづま)』において、異類婚姻によって生まれた子の超越的能力というモチーフが、稀代陰陽師安倍晴明出生となって完成される。 「」は、蜘蛛などと同じく大和朝廷側から見た被差別民であったという見方もある。彼らは、大和朝廷勢力伸ばす段階先住の地を追われ人々であり、人ではない者として動物の名称で呼ばれたという見方である。彼らが、害をもたらす存在として扱われる場合、それは朝廷側の、自分たちが追い出した異民族復讐してくるのではという恐怖心現れであると考えられるまた、動物不思議な能力特殊能力)を持つというのは、異民族が持つ特殊な技術を暗に意味している場合がある。この考え方沿えば、異類婚姻は、それらの人々との婚姻意味することになる。つまり女が身元偽って化けて婚姻したものの里が暴かれ、子の将来案じて消えてしまった物語解されるの子神秘的能力をもつというのは、稲荷神の使いとして親しまれてきたが、元来農耕神として信仰され豊穣や富のシンボルであったことに由来するものである。婚姻類話には、正体知られ別れたの女が、農繁期帰ってきて田仕事で夫を助けると、稲がよく実るようになったという話がある。

※この「異類婚姻譚」の解説は、「日本の文化における狐」の解説の一部です。
「異類婚姻譚」を含む「日本の文化における狐」の記事については、「日本の文化における狐」の概要を参照ください。

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異類婚姻譚

出典:『Wiktionary』 (2009/10/03 12:45 UTC 版)

名詞

いるいこんいんたん

  1. 人間人間以外の種族異類)との婚姻扱った伝説神話



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