乳海攪拌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/11 15:23 UTC 版)
乳海攪拌(にゅうかいかくはん)は、ヒンドゥー教における天地創造神話。
注釈
- ^ 『ラーマーヤナ』では、聖仙ヴィシュヴァーミトラがラーマに乳海攪拌の経緯を説明している。クリタ=ユガの時代、ダイティヤ達とアーディティヤ達が不老不死を望み、乳海から「甘露の霊液(ラサ)」を作り出すことを思いついた。彼らはマンダラ山とヴァースキで乳海を一千年間かき混ぜたが、ヴァースキが猛毒ハーラーハラ(ハラーハラ)を吐き出し、これがアスラ達や神々だけでなく人間を含めて世界中を傷め始めた。神々がシヴァに助けを求めると、ヴィシュヌが現れ、彼らが最初に手に入れた毒を最初の供物として受け取るように、とシヴァを諭した。シヴァは「甘露を飲むかのように」毒を飲んでカイラーサ山へと戻り、ヴィシュヌもその場を去った。攪拌が再開されると、今度はマンダラ山が海底にめり込み始めたため、神々とガンダルヴァ達がヴィシュヌに助けを求めると、ヴィシュヌの化身の亀がその背に山を載せて支え、自身も山頂を手で支えつつ攪拌にあたった。攪拌が一千年間続くと、棒と水瓶を手にしたダンヴァンタリ(ダヌヴァンタリ)が出現した。続いて「水中(アプス)をかきまぜて生じた甘露の霊液(ラサ)」から6億ものアプサラスが生まれ出た。ヴァルナの娘ヴァールニー(ヴァルニー)、馬ウッチャイヒ=シュラバス、宝石カウストゥパも現れた。そうしてついに「不死の甘露の霊液」が出来たが、これを巡って、アスラ達と羅刹達が連合して神々と激しく戦った。しかしヴィシュヌが美女マーヤーに変身して甘露を奪取し、ヴィシュヌに抗った者達もことごとく戦死した。アーディティヤ達はダイティヤ達を殺し、その後インドラが王座に就いたという[2]。
- ^ 古い伝承では、亀の王アクーパーラがこの役目に当たっている[8]。
- ^ 酒の女神スラーとされることもある[8][11]。「スラー酒」も参照。
- ^ 『マハーバーラタ』ではここで生まれてきたのは女神シュリーとされている。古い時期にはシュリーはラクシュミーと共に共に太陽神アーディティヤの妻であったが、後にシュリーとラクシュミーは同一視された。『マハーバーラタ』では女神シュリーの美しさに惹かれたヴィシュヌが即座に自分の妻に定めている[12][13]。
出典
- ^ a b 松村 2013, p. 108.(ヴィシュヌ)
- ^ a b c ヴァールミーキ編著「第一篇 45 乳海攪拌の礼讃」『ラーマーヤナ』1、岩本裕訳、平凡社〈東洋文庫 376〉、1980年4月、pp.134-137。ISBN 978-4-582-80376-1。
- ^ 菅沼編 1985, p. 224.(ドゥルヴァーサス)
- ^ 沖田 2008, pp. 103-104.
- ^ a b 菅沼編 1985, p. 61.(ヴァースキ)
- ^ a b c d e f 沖田 2008, p. 104.
- ^ a b c 菅沼編 1985, p. 82.(ヴィシュヌ)
- ^ a b c 松村 2013, p. 107.(ヴィシュヌ)
- ^ 沖田 2008, pp. 100-101.
- ^ 沖田 2008, p. 106.
- ^ a b c d e 沖田 2008, p. 101.
- ^ 菅沼編 1985, p. 184.(シュリー)
- ^ 沖田 2013, pp. 266(シュリー), 563(ラクシュミー).
- ^ 沖田 2013, pp. 560-561.(ラーフ)
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