ラーマーヤナとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 固有名詞の種類 > 製品 > 文学作品 > 叙事詩 > 叙事詩 > ラーマーヤナの意味・解説 

ラーマーヤナ【(梵)Rāmāyana】

読み方:らーまーやな

ラーマ王物語の意》インドの大叙事詩。全7編、2万4000頌(しょう)。詩人バールミキの作。成立2世紀とされる英雄ラーマ勇士ハヌマンらと協力して魔王ラーバナと戦い誘拐された妻シータ取り戻す物語


ラーマーヤナ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/15 03:59 UTC 版)

ラーマーヤナを編纂する詩人ヴァールミーキ
ラーマの即位図。妻シーターと息子達が囲う。
ラーマ王子とハヌマーン
ラーマとシーター(ミャンマーの演劇)
ダンダカの森のラーマと弟ラクシュマナとシーター(ジャワ舞踊)
ラーマがシーターを勝ち取るため弓を折るシーン

ラーマーヤナ』(サンスクリット語: रामायणम्, ラテン文字転写: Rāmāyaṇam, 英語: Ramayana)は、古代インドの大長編叙事詩ヒンドゥー教の聖典の一つであり、『マハーバーラタ』と並ぶインド2大叙事詩の一つである。サンスクリットで書かれ、全7巻、総行数は聖書にも並ぶ48,000行に及ぶ。成立は紀元3世紀頃で、詩人ヴァールミーキが、ヒンドゥー教の神話と古代英雄コーサラ国ラーマ王子の伝説を編纂したものとされる。

この叙事詩は、ラーマ王子が、誘拐された妻シーターを奪還すべく大軍を率いて、ラークシャサの王ラーヴァナに挑む姿を描いている。ラーマーヤナの意味は「ラーマ王行状記」。

現代でも、ラーマーヤナは、絵画、彫刻、建築、音楽、舞踏、演劇、映画など多くの分野で、インドのみならず、当時同じサンスクリット圏であり古くからインド文化を取り入れてきた東南アジア一円に深く浸透し影響力を持っており、特に、古代インドからもたらされた王権を強調する思想は、支配階級のみならず、民衆の間でも広く親しまれている[1][2]

なお、編纂された紀元3世紀当時のクシャトリヤ勢力の台頭を反映し、この叙事詩で活躍する人物は全てクシャトリヤである。また、ラーマーヤナの核心部分は第2巻から第6巻とされ、その成立は紀元前4-5世紀頃で[3]、第1巻と第7巻よりも古い。

内容

第1巻 バーラ・カーンダ(少年の巻)

子供のいないダシャラタ英語版王は盛大な馬祀祭を催し、王子誕生を祈願した。おりしも世界はラークシャサ(仏教では羅刹とされる)の王ラーヴァナの脅威に苦しめられていたため、ヴィシュヌはラーヴァナ討伐のためダシャラタ王の王子として生まれることとなった。こうしてカウサリヤー妃からラーマ王子、カイケーイー妃からバラタ王子、スミトラー妃からラクシュマナシャトルグナの2王子がそれぞれ生まれた。成長したラーマはリシ(聖賢)ヴィシュヴァーミトラのお供をしてミティラージャナカ王を訪問したが、ラーマはそこで王の娘シーターと出会い、結婚した。

第2巻 アヨーディヤ・カーンダ(アヨーディヤの巻)

ダシャラタ王の妃カイケーイーにはマンタラーという侍女がいた。ラーマの即位を知ったマンタラーは妃にラーマ王子への猜疑心を起こさせ、ダシャラタ王にラーマをダンダカの森に追放し、バラタ王子の即位を願うように説得した(ダシャラタ王はカイケーイー妃にどんな願いでも2つまで叶えることを約束したことがあった)。ラーマはこの願いを快く受け入れ、シーター、ラクシュマナを伴って王宮を出た。しかしダシャラタ王は悲しみのあまり絶命してしまった。

第3巻 アラニヤ・カーンダ(森林の巻)

ダンダカの森にやってきたラーマは鳥王ジャターユと親交を結んだ。またラーマは森を徘徊していたラークシャサを追い払った。ところがシュールパナカーはこれをうらみ、兄であるラークシャサ王ラーヴァナにシーターを奪うようにそそのかした。そこでラーヴァナは魔術師マーリーチャに美しい黄金色の鹿に化けさせ、シーターの周りで戯れさせた。シーターはこれを見て驚き、ラーマとラクシュマナに捕らえるようせがんだ。そしてラーヴァナは2人がシーターのそばを離れた隙にシーターをさらって逃げた。このとき鳥王ジャターユが止めに入ったが、ラーヴァナに倒された。

第4巻 キシュキンダー・カーンダ(キシュキンダーの巻)

ラーマはリシュヤムーカ山を訪れて、ヴァナラ族のスグリーヴァと親交を結んだ。ラーマは王国を追われたスグリーヴァのために猿王ヴァーリンを倒した。スグリーヴァはラーマの恩に報いるため、各地の猿を召集し、全世界にシーターの捜索隊を派遣した。その中で、南に向かったアンガダハヌマーンの1隊はサムパーティからシーターの居場所が南海中のランカー(島のこと。セイロン島とされる)であることを教わる。

第5巻 スンダラ・カーンダ(美の巻)

風神ヴァーユの子であるハヌマーンは、海岸から跳躍してランカーに渡り、シーターを発見する。ハヌマーンは自分がラーマの使者である証を見せ、やがてラーマが猿の軍勢を率いて救出にやってくるであろうと告げた。ハヌマーンはラークシャサらに発見され、インドラジットに捕らえられたが、自ら束縛を解き、ランカーの都市を炎上させて帰還した。

第6巻 ユッダ・カーンダ(戦争の巻)

ランカーではヴィビーシャナがシーターを返還するよう主張したが聞き入られなかったため、ラーマ軍に投降した。ここにラーマとラーヴァナとの間に大戦争が起きた。猿軍はインドラジットによって大きな被害を受けながらも次第にラークシャサ軍を圧倒していき、インドラジットが倒された後、ラーヴァナもラーマによって討たれた。ラーマはヴィビーシャナをランカーの王とし、シーターとともにアヨーディヤに帰還した。

第7巻 ウッタラ・カーンダ(後の巻)

ラーマの即位後、人々の間ではラーヴァナに捕らわれていたシーターの貞潔についての疑いが噂された。それを知ったラーマは苦しんで、シーターを王宮より追放した。シーターは聖者ヴァールミーキのもとで暮すこととなり、そこでラーマの2子クシャとラヴァを生んだ。後にラーマは、シーターに対して、シーター自身の貞潔の証明を申し入れた。シーターは大地に向かって訴え、貞潔ならば大地が自分を受け入れるよう願った。すると大地が割れて女神グラニーが現れ、 シーターの貞潔を認め、シーターは大地の中に消えていった。ラーマは嘆き悲しんだが、その後、妃を迎えることなく世を去った。

参考文献

訳注ほか

  • 『ラーマーヤナ』 阿部知二[4]河出書房新社「世界文学全集」、1966年、新版1980年 - 英訳版を元にした、松山俊太郎が協力した
  • 『ラーマーヤナ』(1・2) 岩本裕訳、平凡社東洋文庫、1980-85年 - 第2巻刊行後に訳者が没し未完
  • 『ラーマーヤナ インド古典物語』(上下) 河田清史訳著、第三文明社〈レグルス文庫〉、新版2013年。概説、電子書籍で再刊
  • 『ワルミキ・ラーマヤン』(2巻組) 池田運[5]講談社ビジネスパートナーズ、2014年
  • 『ラーマーヤナ インド神話物語』(上下) デーヴァダッタ・パトナーヤク 文・画、沖田瑞穂監訳・上京恵訳、原書房、2020年。物語解説

関連文献

研究

入門書

漫画版

関連項目

脚注

  1. ^ NHK高校講座 世界史 第6回 東南アジア世界の形成、東南アジアは、海上交通の中継地点として、古代インドや中国大陸と、商品や人の往来だけでなく、宗教、思想、制度も得ていった。特に、古代インドよりもたらされた王権思想により東南アジアの国家形成は進んでいった。
  2. ^ NHK高校講座 世界史 東南アジア世界の形成タイの小学校では「ラーマーヤナ」の古典舞踊の授業が必須であり、タイの国王の名前が代々「ラーマ」である点にもその影響力を見ることができる(2015年5月時点でラーマ9世)。インドネシアでは、「ラーマーヤナ」は「影絵」として民衆に親しまれており、また、世界遺産プランバナン寺院群では回廊に「ラーマーヤナ」の石造レリーフ(壁彫刻)があり、ステージでは「ラーマーヤナ」の舞台劇が行われ、内外の観光客に対する観光資源の一つになっている。カンボジアアンコール・ワットの遺跡でも「ラーマーヤナ」のレリーフが見られる。
  3. ^ 下掲、中村(2012)第1巻26頁他。
  4. ^ 阿部訳は、グーテンベルク21(上下、電子書籍)で再刊
  5. ^ 池田訳は『マハバーラト』(マハーバーラタ)も同社(全4巻)で刊行
  6. ^ 神殿の回廊にラーマーヤナの石造レリーフ(壁彫刻)があり、オープンステージでラーマーヤナの舞踏劇上演が行われている

ギャラリー

外部リンク


ラーマーヤナ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/05 23:09 UTC 版)

ナラクーバラ」の記事における「ラーマーヤナ」の解説

『ラーマーヤナ』の「第7巻 ウッタラ・カーンダ(後の巻)」は、それまでの話とは違ってシーターラーヴァナ誘拐されていた間の貞操主題となっており、その貞操の証をたてる逸話という体裁で、ナラクーバララムバー夫婦の話が取り上げられている。 ある夜、ラークシャサの王ラーヴァナ美しアプサラスラムバーに目が留まった。ラーヴァナ言い寄ると、ラムバーは、クベーララーヴァナは(ヴィシュラヴァス(英語版の子で)兄弟だから、(ナラクーバララーヴァナの甥なので、)ナラクーバラの妻である自分ラーヴァナ義理の娘(義理の姪)にあたる、と説いて拒否した。しかし、ラーヴァナは、アプサラス結婚存在しないのでナラクーバラとの結婚無効だ主張しラムバー強姦したその後ラムバーラーヴァナのことをナラクーバラに話すと、ナラクーバラ瞑想始め全ての経緯悟った怒り狂ったナラクーバラは、今後ラーヴァナ女性意思逆らって強姦に及ぶと頭破七分になる呪いをかけた。 このことがあったので、シーターラーヴァナ誘拐されている間も貞操を守ることができた。 「ラムバー」も参照

※この「ラーマーヤナ」の解説は、「ナラクーバラ」の解説の一部です。
「ラーマーヤナ」を含む「ナラクーバラ」の記事については、「ナラクーバラ」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ラーマーヤナ」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「ラーマーヤナ」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



ラーマーヤナと同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ラーマーヤナ」の関連用語

ラーマーヤナのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ラーマーヤナのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのラーマーヤナ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのナラクーバラ (改訂履歴)、ヴィマナ (改訂履歴)、ヴィシュヴァカルマン (改訂履歴)、ヴァシシュタ (改訂履歴)、インドラジット (改訂履歴)、バラドヴァージャ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS