ジャガイモ 主要品種

ジャガイモ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/05 07:46 UTC 版)

主要品種

栽培特性(耐病性、収量)、加工特性、流通・保存特性、食味など様々な観点から品種改良が行われている[6]

ジャガイモは、品種によって芋の皮の色や肉色、粉質・粘質と性質にも違いがあり、花色にも白色から紫色まである[74]。粉質の品種はホクホクした食感が特徴で、粘質の品種は肉質がきめ細かく、煮崩れしにくい[14]。日本では男爵薯とメークインが2大品種で作付面積の半分以上を占め、その他の農林1号、デジマ、ワセシロなど合わせて99品種が品種登録されている[75]。現在では公的機関ばかりでなく、農家により突然変異を基にした新種育成もまれに行われている[76]。原産地では、皮や肉質に色素がある系統の様々な品種が栽培されていて、近年の日本国内においても、皮色や肉色に色素がある品種も生産されるようになっている[14]。なお、以下の説明における「生食用」は家庭や飲食店での調理素材であることを意味し、非加熱で食用とする意味ではない。

男爵薯(だんしゃくいも)
男爵薯
生食用品種。球形に近く、肉色は白色で粉質[63]。英名は「アイリッシュ・コブラー(Irish Cobbler,「アイルランドの靴直し職人」)」といい、1876年ごろにアメリカで赤い「アーリーローズ[77]」の白色変異種として発見され、発見者にちなみ命名されたと伝えられているが、近年の調査で「アーリーローズ」由来説は否定されており、何らかの雑種由来と考えられている[78]明治時代の1908年に川田龍吉男爵イギリスから持ち込んで日本に定着させた品種[74](品種の正体が「アイリッシュ・コブラー」であることは後に判明した)。デンプン含有量は約15%と多く、ホクホクした食感が得られるが、長時間煮ると煮くずれしやすいため、粉吹き芋マッシュポテトコロッケなど潰してから使う料理に適している[69][74]。芽の部分が大きく窪んでおり、でこぼこした形状なので皮をむきにくい。主に、東日本で主流の品種である。花は薄い紫色、雄性不稔のため父親とはならないが、直接の母として「キタアカリ」「農林1号」などがあり、交配によらないものとしてプロトクローンから「ホワイトバロン」が選抜された。
メークイン
メークイン
生食用品種。英名は "May Queen" で、春においしくなることから名付けられたとされる[79]。イギリスで民間に栽培されていたのが1900年に登録され、大正時代に日本に持ち込まれた品種[80]。北海道厚沢部町の道立試験場で初めて栽培されたことから、同町はメークイン国内発祥の地として自認しており、毎年、夏祭りで世界最大のコロッケを揚げてPRしている[81]
粘質で、煮くずれしにくいため、カレーやシチューや肉じゃがなど、煮込み料理に適している[69][79]。花色は白斑入りの紫色で、芋は卵形か腎臓形の楕円形状で、皮が黄色く肉質は淡黄色[74]。凸凹も少なく、皮は剥きやすい[69]。主に西日本での消費が多い。世界的に見ても、特に日本で人気がある種(イギリスでも今日では忘れ去られている)。「メイクイーン」と呼ばれることも多いが、品種名としてはメークインが正しい名前である。花は紫色で雄性不稔。長年派生種は存在しなかった[82]が、21世紀に入って俵正彦により突然変異から「タワラ小判」「タワラ長右衛門宇内」が選抜された。
キタアカリ
キタアカリ
生食用品種。北海道の品種で花色は赤紫、芋は偏球形で、皮が白黄色で肉色は黄色味を帯び、デンプン含有量17%で粉質[63][74]。男爵薯を母親として、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を付与させて農研機構(旧農林水産省北海道農業試験場)で育成したもので、1987年に品種登録された。カロテンやビタミンCの含有量が多い。男爵薯同様に煮崩れしやすく、粉吹き芋やマッシュポテト、ポテトサラダ、コロッケに向いている[74]。独特の甘味と、ほっくりした食感がある[69]
コナフブキ
でんぷん原料用品種(農林認定:ばれいしょ農林26号)。日本において男爵薯についで生産量の多い品種で、北海道のみで作付されている。ジャガイモの最大の害虫とされるジャガイモシストセンチュウに対する抵抗性を持たず、近年は生産量を減らしている[83]
とうや
とうや
生食用品種。品種名は北海道洞爺湖に由来し、皮と肉色から別名「黄爵」(こうしゃく)[注釈 6]ともよばれる[79]。ジャガイモシストセンチュウ抵抗性およびウイルス病 (PVY) 耐性および大粒で早出しを目標として[84]、農研機構(旧北海道農業試験場)で育成され、1995年に品種登録された。花色は白色、芋は皮は褐色がかった黄色で、内部の肉色が黄色く、カロテンやビタミンCの含有量がやや多い[79][84]。デンプン含有量は15%でやや粘質、煮物に適しており、揚げ物には向いていない[84]
ワセシロ
生食(加工)用品種。北海道立根釧農業試験場で育成され、1974年に品種登録。新じゃがポテトチップの材料として使用される。
トヨシロ
トヨシロ
加工用品種。品種名は、収穫量が豊富で芋の肉質が白色であることから命名された[84]。北海19号とエニワの交配種で、1976年に品種登録。デンプン含有量は16.3%でやや粉質、油加工で変色しにくく、ポテトチップの材料として生産されている品種[84]。花色は白色で、芋は扁円形、皮は淡黄白色をしている[84]。風味は男爵薯に較べると劣るといわれるが、揚げると男爵に比べ色合いが良い。
ホッカイコガネ
生食用品種。「トヨシロ」を母、「北海51号」を父として交配された品種で、1981年に品種登録。花色は淡赤紫色、芋はメークイン似た長楕円形で、皮は淡褐色、肉質はやや黄色みを帯びている[84]。デンプン含有量は16%でやや粘質、煮崩れしがたく[84]、煮崩れに対する強さはメークインを上回る。また油加工でも変色しにくく、フレンチフライの主力品種になっている[84]。収穫時期がメークインより遅いので、その代替品として店舗に並ぶことも多く、「黄金メーク」「コスモメーク」などの別名でも呼ばれる。
インカのめざめ
インカのめざめ
2002年に日本で育成されて種苗登録された品種。花色は紫色で、芋は小粒で卵形、皮は黄褐色で肉色が黄色みの強い[74]。アンデス産の小粒で食味が良い種(S. tuberosum ではなく、2倍体の P. phureja)と、アメリカの品種 Katahdin の半数体を交配させ、日本の長日条件下で栽培できるように開発した2倍体の品種(2倍体のジャガイモの品種は日本初)[85]。デンプン含有量は18%で粉質と粘質の中間[74]。甘みが強く、サツマイモやに似た濃厚な味となめらかな口当たりをもつなど食味はよく[69]、製菓材料にも使われる[74]。収穫量は少なく、病虫害に弱いことから他の品種と比較して栽培が難しい。また発芽しやすく[74]、長期の保存には不向きである。生食用品種として人気が高まってきているが、生産量は少なくジャガイモの中では高価である。北海道十勝地方幕別町などが主産地である。長期冷蔵貯蔵によりさらに糖度の増加した物もあり、近年ではその風味を生かした本格焼酎の原料にもなっている。
デジマ
デジマ
長崎県総合農林試験場で交配・育成された暖地向け二期作用品種で[86]、1971年(昭和46年)に品種登録された。品種名は江戸時代に外国への窓口であった長崎の出島に因んだもの[62]。長崎県を中心に四国九州地域で多く栽培される[62]。花色は白色で、芋は扁円形、皮は淡黄色、肉色は黄白色[86]。デンプン含有量は春作が約11%、秋作は約13%で、秋作の方が粉質傾向がある[86]。煮物から揚げ物まで広範囲に利用され[86]、適度に煮崩れして美味だが、明るい所では緑化しやすい。
農林1号
日本で馬鈴薯として第1号登録された品種。花色は白色で、芋は扁楕円形、皮は黄白色で肉質は白い。やや粉質で、デンプン含有量は16.6%あり、粉ふき芋などに向く[84]
ニシユタカ
ニシユタカ
長崎県をはじめとした九州の赤土で作られる主要品種の一つ[62]。芽が浅くて窪みが少ない[62]。長崎県総合農林試験場で交配・育成され、1978年(昭和53年)に品種登録された。親は母がデジマ、父が長系65号。茎は短く直立、肥大性良、多収で栽培しやすい品種。やや粘質で、煮崩れしにくく甘味もある[62]
ラセット・バーバンク
ラセットバーバンク
英名は “Russet Burbank potato”。1875年にアメリカ合衆国の種苗家ルーサー・バーバンクが開発した『バーバンク』の突然変異により1910年ごろに誕生。大きくなるためフライドポテトに向き、日本へも加工品が多く輸出されている。
日本では環境の違いから収量が得られず[87]栽培されていないため、もっぱら加工品の輸入に頼っている。
“Russet” は、「ザラザラした」という意味で、芋の表面の特徴に因む。ラセット・バーバンク以外にもラセット・レンジャー、ラセット・ノーコタ、ノーキング・ラセット、シェポディーなどの品種があり、これらを総称して「ラセット種」「ラセットポテト」などと呼ぶ。これらラセット種は、アメリカで最もポピュラーな品種である[88]
シンシア
仏名は “Cynthia”。フランスのジャガイモ育種・販売会社であるジェルミコパ社により育成され、1996年に登録された品種。日本では2003年2月に品種登録された。他の品種と比べ卵形のシンプルな形状をしており、切り口は薄い黄色をしている[69]。粘質で貯蔵性に優れ、煮物にしたときの煮崩れが少ない[69]。生でスライスしてサラダにも使われる[79]
アンデス赤(アンデスレッド、レッドアンデス)
皮が濃い赤色をした小さめの扁卵形で、切り口は黄色く、ねっとりした食感と濃厚な甘味が特徴の品種[69]。1971年から1974年にかけて[注釈 7]川上幸治郎らがアーリーローズを母、アンデス原産の2倍体栽培種「S.phureja 253」を父として交配し「M72218」の名で選抜育成していた3倍体の種間雑種系統。芽が出やすい[86]。春作よりむしろ秋作に適し、岡山県牛窓町のばれいしょ採種農家が在来種として栽培を繰り返し維持してきた[注釈 8]。紅色は抗酸化作用があるアントシアニンを含む[86]。デンプン含有量は男爵いも並みで[86]、ホクホクした粉質で、フライ、ポテトサラダ、コロッケ、ポタージュに向く[79]。派生種として、麒麟麦酒が本種のプロトプラスト培養から選抜した「ジャガキッズ」、俵正彦が突然変異から選抜した「タワラマガタマ」「タワラヨーデル」がある。
シェリー
皮が赤色で、形がメークインに似た長楕円形が特徴の品種。粘質で煮崩れしにくく、シチューや煮物料理に向く。皮が薄いため、皮ごと食べられる[79]
紅丸(べにまる)
デンプン含有量が14.8%と多く、主にデンプン採取用に栽培される品種。花色は白色、芋は卵形で皮は淡紅色、肉質は白色であるが淡赤色の斑入りもある。食味は冬を越すと甘くなる[84]

注釈

  1. ^ あるいは「ジャガイモ」を転じた「ジャイモ」「ジャガライモ」「ジャガタイモ」「ジャガタロ」「ジャガタ」「ジャカタ」「ジャガトライモ」[11]
  2. ^ あるいは「馬鈴薯」を転じた「バレンショ」「バレーチョ」「バレージョ」[11]
  3. ^ トウモロコシは温暖な気候に適した作物であり、3,500 mを超える高地での栽培跡が確認できていない一方、ジャガイモは4,000 m級の場所でも栽培跡が確認されている。
  4. ^ インカ人の人骨に含まれるたんぱく質から生前の食生活を解析した結果、主要な食料源はイモ類、豆類であったことが判明した。
  5. ^ 観葉植物として楽しまれていたが、16世紀の後半にエリザベス1世がジャガイモの若芽を食べてしまい、それに含まれている有害物質のソラニン中毒になったことなどもあり、普及が遅れた。
  6. ^ JAたんの(現:JAきたみらい端野支所)による、独自ブランド名。
  7. ^ 系統名から1972に交配が行われた可能性が高い。
  8. ^ 育成者などは「ネオデリシャス」と呼んでいたが、原採種栽培での名称は「アンデス赤」となっており、一般には「アンデス赤」「レッドアンデス」、「アンデスレッド」「アンデス」などの名称で販売されている。

出典

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  99. ^ “国内未確認のジャガイモ害虫、北海道でみつかる”. 朝日新聞デジタル. (2015年8月19日). https://www.asahi.com/articles/ASH8M5GKCH8MUTIL03C.html 2015年8月19日閲覧。 
  100. ^ 米国が生ジャガ解禁要請 検疫協議へ 国内産地は反発」『日本農業新聞』2020年8月22日(2020年10月21日閲覧)






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