国勢調査 (日本) 調査の内容

国勢調査 (日本)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/23 09:13 UTC 版)

調査の内容

調査の基準

国勢調査は実施年の10月1日午前0時現在を基準として行われる(国勢調査令第3条)。なお、この基準となる時刻を「調査時」と呼ぶ。

調査の対象

国勢調査は全数調査であり、国籍を問わず、原則として日本に普段居住している(することになっている者)人と世帯全てが対象である[12]

国勢調査は、住民基本台帳で届出が出されている住所にかかわらず、国勢調査令第2条で定められる「住居」(同一の場所に継続的に起居した期間及び継続的に起居しようとする期間を通算した期間が三月以上にわたる者についてはその場所、三月に満たない者についてはその者の現にある場所)を基準として行われる。これは、居住の実態をできるだけ正確に反映した統計を作成するためである。ホームレス県境など市区町村境が未確定で、住居・住所が定まっていない人に対しては、実際に居る場所で国勢調査員あるいは国勢調査指導員が調査を行なう。

具体的には次に掲げる者が対象者となる(国勢調査令第4条第1項)。

  1. 調査時において本邦にある者で、本邦にある期間が引き続き三月以上にわたることとなるもの
  2. 本邦に生活の本拠を有する者(前号に掲げる者及び調査時において本邦外にある者(船舶に乗り組んでいる者を除く。)で本邦外にある期間が引き続き三月以上にわたることとなるものを除く。)
  3. 本邦の港を発し、途中本邦の港以外の港に寄港しないで本邦の港に入つた船舶(調査時において本邦の港にある船舶又は調査時後五日以内に本邦の港に入つた船舶に限る。)に乗り組んでいる者(前二号に掲げる者及び本邦外に生活の本拠を有する者を除く。)

このように、自国民だけではなく外国人の居住者も調査されることは、諸外国の国勢調査でも同様である。

ただし次に掲げる者は、調査の対象から除外される(国勢調査令第4条第2項)。

  1. 日本国政府が接受する外国政府の外交使節団又は領事機関の構成員並びに条約又は国際慣行により外交使節と同様の特権及び免除を受ける者であって、日本国民でないもの(外交官等)、外交官等と同一の世帯に属する家族の構成員並びに外交官等の個人的使用人で日本国民でないもの
  2. 日本国政府の承認した外国政府又は国際機関の公務に従事する者で日本国民でないもの及びその者と同一の世帯に属する家族の構成員(前号に掲げる者を除く。)

なお、北方領土及び竹島については、日本の実効支配が及んでいない状況にあるため国勢調査の対象地域から除外されている(国勢調査施行規則第1条)。

調査区

国勢調査令第8条第1項により調査区が設定される。国勢調査の調査区の設定の基準等に関する省令(昭和59年総理府令第24号)により、以下の区分が行われる。

  • 一般調査区 - 市町村の区域
  • 特別調査区 -
  1. 相当規模の山林、原野等の区域で居住者の存しないもの又は著しく少ないもの
  2. 工場、教育文化施設、交通施設その他人の居住の用に供されない施設で相当規模のものの存する区域
  3. 生活保護法第三十八条第二項に規定する救護施設及び同条第三項に規定する更生施設病院(おおむね患者二百人以上の収容施設を有するものに限る。)、刑務所自衛隊の営舎その他これらに類する施設の存する区域
  4. おおむね五十人以上の単身者が居住している寄宿舎等の存する区域
  • 水面調査区 - 水上生活者の把握のために設けられた区分。
  1. 港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第二条第二項に規定する国際戦略港湾国際拠点港湾又は重要港湾の同条第三項に規定する港湾区域
  2. 港湾法第二条第二項に規定する地方港湾の同条第三項に規定する港湾区域又は漁港漁場整備法(昭和二十五年法律第百三十七号)第二条に規定する漁港の水域(前号の国際戦略港湾、国際拠点港湾又は重要港湾に指定されている漁港の水域にあつては港湾区域に該当する水域を除いた水域)で居住者の存するもの
  3. 河川又は運河の河口及びその周辺水域で居住者の存するもの(前二号に該当するものを除く。)

報告義務

国勢調査を始めとする基幹統計調査では、調査対象となる個人又は法人その他の団体に対し報告が義務づけられており、これを拒み、又は虚偽の報告をしてはならないと定められている(統計法第13条第2項)。

また、報告を求められた者が、未成年者又は成年被後見人である場合においては、その法定代理人が本人に代わって報告する義務を負う(統計法第13条第3項)。

国勢調査を始めとする、基幹統計調査に係る調査票情報に含まれる個人情報については、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律の例外扱いとされており、調査対象者となる者すべてが回答する義務を有する(統計法第52条、統計法第13条)。統計法第13条の規定に違反して、報告を拒み、又は虚偽の報告をした者は50万円以下の罰金に処される(統計法第61条)。このほか、統計法第13条に規定する基幹統計調査の報告を求められた者の報告を妨げた者は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金に処される(統計法第60条)。

なお、この報告義務を悪用し、国勢調査その他の基幹統計調査の報告の求めであると人を誤認させるような表示又は説明をすることにより、個人又は法人その他の団体の情報を取得した者は二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処される(統計法第57条第1項)。

情報の利用制限と守秘義務

国勢調査は統計法に基づいて行われる統計調査であり、調査員を含め調査に携わる者すべてに対して、統計法により、調査対象者の秘密を保護する義務が課せられており、違反した場合の罰則も設けられている。例えば、調査員が守秘義務に違反した場合、罰則が適用されることとなる。また、国勢調査の調査票に記載された情報は、統計法に定める統計上の目的以外に使用することは禁止されている。例えば税務、警察など他の行政に用いられることは禁止されている。ただし個人情報が含まれない統計データは様々な分野に活用されている[13]

統計法では、国勢調査を始めとする基幹統計調査について、個人情報保護法と同等以上の個人情報保護に関する規定が設けられている。

調査票と共に配布される冊子に記述は無いが、得られた個別のデータは統計処理された後に消去される[13]

調査事項等

国勢調査の調査事項は次に掲げる事項である。

(1)世帯員に関する事項

  1. 氏名
  2. 男女の別
  3. 出生の年月
  4. 世帯主との続柄
  5. 配偶の関係
  6. 国籍
  7. 現在の住居における居住期間
  8. 五年前の住居の所在地
  9. 在学、卒業等教育の状況
  10. 就業状態
  11. 所属の事業所の名称及び事業の種類
  12. 仕事の種類 - 日本標準産業分類に従って記入するが、電気店を「電気業」と回答する例があり(本来は小売業)、正確性に疑問が残る[13]
  13. 従業上の地位
  14. 従業地又は通学地
  15. 従業地又は通学地までの利用交通手段

(2)世帯に関する事項

  1. 世帯の種類
  2. 世帯員の数
  3. 住居の種類 - 集合住宅の場合は居住している階数と総階数[13]
  4. 住宅の床面積 - 2015年に臨時的に除外され、2020年に廃止された。廃止理由は、2015年に追加された2項目「現在の住居における居住期間」「五年前の住居の所在地」に伴う負担減少と、元来、記入状況が最も悪い項目であるため、オンライン回答による途中棄権を減らす目的である[14]。2005年までは「」で記入することができたが、2010年には平方メートルのみの記入となり、「坪」で記入することは無くなった[15][16]
  5. 住宅の建て方 - 2015年から記入項目から除外された。調査員が調査票を配布する際に、住宅の外見から判断して、調査票の各世帯の固有記号に合わせて調査員が別途記録している[17]

注釈

  1. ^ 国勢調査令(昭和55年政令第98号)第4条第1項第1号の規定により、調査対象から、総務省令で定める島を除くとされており、国勢調査施行規則(昭和55年総理府令第21号)第1条の規定によりこれらの除外が規定されている。
  2. ^ また、調査録には、「調査員は国の名誉職である」といったくだりもある。

出典

  1. ^ 総務省統計局. “統計用語辞典 か行|なるほど統計学園”. 2020年9月23日閲覧。
  2. ^ 3ヶ月以上滞在予定がある、または永住権がある外国籍
  3. ^ a b c d e 国勢調査が「存亡の危機」に!?” (日本語). NHK NEWS WEB. 2020年10月6日閲覧。
  4. ^ 「国勢調査、無視しよう」はダメ。避難者の数を予測しづらくなったり、企業があなたの街に出店をやめるかも? | ハフポスト”. www.huffingtonpost.jp. 2020年10月6日閲覧。
  5. ^ 平成27年国勢調査の調査項目について(調査項目の意味、記入方法) 総務省
  6. ^ 統計法(平成十九年法律第五十三号)
  7. ^ a b c d e f g 『近代統計制度の国際比較』安本稔編集 2007年12月 日本経済評論社 ISBN 9784818819665
  8. ^ 樋畑雪湖『日本郵便切手史論』、2020年1月31日閲覧。
  9. ^ 統計図書館ミニトピックスNo. 22 第1回国勢調査の記念切手をデザインしたのは? - 国勢調査に係る統計史料を訪ねて【その7】 (PDF) - 統計局、2020年1月31日閲覧。
  10. ^ #横山雅男、p.p.20「内国統計史」
  11. ^ 平成22年国勢調査の実施に向けて(検討状況報告) 』 総務省統計局 2009年4月
  12. ^ a b 統計法を参照。
  13. ^ a b c d 国勢調査、勤務先やマンション階数、なぜ言わないといけないの? 総務省に聞いてみた - 毎日新聞
  14. ^ 令和2年国勢調査の概要”. 総務省. 2020年10月1日閲覧。
  15. ^ [1]
  16. ^ [2]
  17. ^ 平成27年国勢調査(簡易調査)で追加・廃止を検討する調査事項(案)”. 総務省. 2015年10月1日閲覧。
  18. ^ [3]
  19. ^ [4]
  20. ^ 新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた令和2年国勢調査の実施について - 統計局
  21. ^ 国勢調査の回答率 4割に届かず 武田総務相が協力呼びかけ - NHK
  22. ^ 国勢調査のネット回答、20日まで延長 - 共同通信
  23. ^ 国勢調査回答率80.9% ネットと郵送、19日時点 総務省(時事通信)” (日本語). Yahoo!ニュース. 2020年10月20日閲覧。
  24. ^ a b c d 国勢調査が「存亡の危機」に!? - NHK
  25. ^ 国勢調査のイメージキャラクター紹介
  26. ^ 第一回国勢調査記念品(統計資料館)”. 総務省統計局. 2020年10月5日閲覧。
  27. ^ 第一回国勢調査記念章(統計資料館)”. 総務省統計局. 2020年10月5日閲覧。
  28. ^ 「国勢第一回の任命書」『中国新聞』2020年(令和2年)10月6日備後版22面
  29. ^ 国勢調査、「手間省ける」と自治会の集会で回収 読売新聞 2010年10月6日
  30. ^ 国勢調査:管理人が勝手に記入…マンション50世帯分 毎日新聞 2015年10月10日
  31. ^ 背伸びやめ 胸を張る 読売新聞 2007年9月1日
  32. ^ 羽幌町人口水増し事件
  33. ^ 市制施行の見送りについて(PDF)
  34. ^ 人口水増しで前副町長逮捕 市政移行目指した愛知・東浦町”. msn産経ニュース (2013年2月22日). 2013年2月22日閲覧。
  35. ^ 市昇格を狙い人口を水増しか 愛知・東浦町、国勢調査で - asahi.com,2012年2月26日
  36. ^ 愛知・東浦町長、意図的な人口水増しを否定 - 日テレnews,2012年3月2日
  37. ^ 平成22年国勢調査にかかる不適切な事務処理について - 東浦町サイト,2012年3月2日
  38. ^ 人口水増し疑い、前副町長を逮捕 愛知・東浦町 - 日本経済新聞,2013年2月22日
  39. ^ 東浦町前副町長を逮捕へ=人口水増しの疑い-愛知県警 - 時事ドットコム,2013年2月22日
  40. ^ マンション管理者のみなさまへ - 国勢調査2020総合サイト
  41. ^ 【独自】国勢調査で住基情報転用…15年 8市区集計ルール違反 読売新聞 2020年8月12日
  42. ^ 毎日新聞の読者投稿欄『みんなの広場』2010年10月9日版に、居留守を使われた調査員の嘆きが記載されている。
  43. ^ 国勢調査100年”. 日本郵便. 2020年9月28日閲覧。





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