幻想曲とは? わかりやすく解説

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げんそう‐きょく〔ゲンサウ‐〕【幻想曲】

読み方:げんそうきょく

形式とらわれず作者自由に楽想を展開させて作る曲。ファンタジー


シューマン:幻想曲

英語表記/番号出版情報
シューマン:幻想曲Phantasie C-Dur Op.17作曲年: 1836-1838年  出版年1839年  初版出版地/出版社: Breitkopf & Härtel 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 第1楽章 ハ長調 Durchaus phantastisch und leidenschaftlich vorzutragen 1000 No Image
2 第2楽章 変ホ長調 Massig. Durchaus energisch 7分00 No Image
3 第3楽章 ハ長調 Langsam getragen. Durchweg leise zu halten 9分00 No Image

作品解説

執筆者: PTNA編集部

シューマンピアノ曲中でも屈指の傑作で、1836年着手されている。この曲は、リスト提唱したベートーヴェン記念碑建立募金」に寄付するために、「ベートーヴェン記念碑のためのオボルスギリシャ貨幣寄付金の意):フロレスタンとオイゼビウスによる大ソナタ 作品12」と題して書き始められた。そして、1838年に曲は完成し、「幻想曲」という題名変更され作品番号17として1839年出版された。
 第1楽章どこまでも幻想的かつ熱情的演奏するハ長調
 ベートーヴェンらしいソナタ形式書かれているが、シューマン的な手法展開される
 楽章終わりの方では、ベートーヴェン歌曲遙かなる恋人に」の一部現れる
 第2楽章中庸速さで、どこまでも精力的に変ホ長調
 当初この楽章には「凱旋門」という標題付けられて、輝かしく壮大な行進曲となっている。
 第3楽章ゆるやかに演奏するどこまでも穏やかに保つ」ハ長調
 夢のように静かで、おだやかで、瞑想的な楽章ベートーヴェンピアノソナタ作品111終楽章想起させるような曲だが、シューマン風のロマンティシズム満ち溢れた曲である。


グラズノフ:幻想曲

英語表記/番号出版情報
グラズノフ:幻想曲Fantasie  Op.104作曲年: 1919-20年 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1  Moderato tranquillo - Allegro 1130秒 No Image
2  Scherzo: Allegro 5分30秒 No Image
3  Moderato - Allegro 1100 No Image

幻想曲

英語表記/番号出版情報
ルビンシテイン, アントン幻想曲 ホ短調Fantaisie, e-moll Op.77作曲年1866年  初版出版地/出版社: Senff, Heugel 
ルードルフ:幻想曲Fantasie Op.14
シマノフスカ, マリア・アガタ:幻想曲 ヘ長調Fantaisie出版年1820年  初版出版地/出版社Leipzig 
リスト:幻想曲(ワーグナーの「リエンツィ最後護民官」からの主題による)Phantasiestück (Rienzi, der Letzte der Tribunen) S.439 R.272作曲年1859年 
バックス幻想曲 イ短調Fantasia in A minor作曲年1900年 
マルトゥッチ:幻想曲Fantaisie  Op.51作曲年1880年 
ベネット幻想曲 イ長調Fantaisie in A major Op.16作曲年1837年  出版年1837年  初版出版地/出版社: Breitkopf & Härtel 
モーツァルト幻想曲 ハ短調未完Fantasie c-Moll(unvollendet) K.396 K6.385f作曲年1782年 
ラフ:幻想曲Fantasie Op.119作曲年1864年  出版年1865年 
ラフ:幻想曲Fantaisie Op.142作曲年1867年  出版年1869年 
ラフ幻想曲 ト短調Fantasie Op.207作曲年1877年  出版年1878年 
フルトヴェングラー:幻想曲Fantasia作曲年: 1898?年 
フルトヴェングラー:幻想曲Phantasie作曲年1900年 
リース:幻想曲Fantasia Op.85-1
リース:幻想曲Fantasia WoO.87
トマーシェク(トマシェク):幻想曲Fantasia Op.32
ブッティング:幻想曲Fantasie Op.28作曲年1924年 
ステンハンマル幻想曲 イ短調Fantasie
モッテンセン:幻想曲Phantasy Op.27作曲年: 1965-66年 
トーニ:幻想曲Fantasia Op.25作曲年1944年 
チェルニーツェルニー):幻想曲Fantasie Op.27
チェルニーツェルニー):幻想曲Fantasie Op.226
ルビンシテイン, アントン幻想曲 ヘ短調Fantaisie , f-moll Op.73作曲年1864年  初版出版地/出版社: Senff, Hamelle 
ヒラー:幻想曲Fantasie Op.110
ドライショック(ドライショク):幻想曲Fantaisie Op.12
ドライショック(ドライショク):幻想曲Fantaisie Op.55
ヴォルフ, エドゥアール:幻想曲(ドニゼッティドン・セバスティアンPhantasie (Don Sebastian von Donizetti) Op.98
木下 牧子:幻想曲作曲年1979年 
ギロー:幻想曲Fantaisie
ゲッツ幻想曲 ニ短調Fantasie, d-moll作曲年1860年 
平井 京子:幻想曲Fantasy for violin and piano作曲年1999年 
フリードマン:幻想曲Fantasiestücke Op.45
ヴェルフル:幻想曲Fantasie et Fugue Op. 9 Op.9
ベートーヴェン:幻想曲Fantaisie Op.77作曲年1809年  出版年1810年  初版出版地/出版社Clementi 
メンデルスゾーン幻想曲 ニ短調Fantasia d-Moll T 1作曲年1824年  出版年2009年  初版出版地/出版社Rom 
シューベルト幻想曲 ト長調Fantasie  D 1作曲年1810年  出版年1888年 
シューベルト幻想曲 ト短調Fantasie  D 9作曲年1810年  出版年1888年 
シューベルト幻想曲 ハ短調Fantasie  D 48作曲年1813年  出版年1871年 
ブルックナー:幻想曲Fantasie WAB.118作曲年1868年 
ブルッフ:幻想曲Fantasie Op.11作曲年: 1861刊年 
ヴォルジーシェク幻想曲 ハ長調Fantasie Op.12出版年1822年  初版出版地/出版社Artaria, Vienne 
シマノフスキ幻想曲 ヘ短調Fantazja Op.14作曲年1905年  出版年1911年  初版出版地/出版社: Piwarski 
ハリス:幻想曲Fantasy作曲年1954年 
ヘンデル幻想曲 ハ長調Fantasie C-Dur HWV 490作曲年before 1706?年 
マルティヌー:幻想曲Fantaisie作曲年1929年 
ライヒャ幻想曲 ホ短調Fantasia in E minor Op.61作曲年1807年  出版年1807年  初版出版地/出版社: Kühnel, Leipzig 
外山 雄三:幻想曲作曲年1981年 
シューベルト幻想曲 ト長調Fantasie D 1B作曲年: 1810/11?年 
シューベルト幻想曲 ハ短調Fantasie D 2E(993)作曲年1811年 
グラズノフ:幻想曲Fantasy作曲年: 1929-30年 
カプースチン:幻想曲Fantasia Op.115作曲年2003年 

バッハ:幻想曲 ト短調

英語表記/番号出版情報
バッハ:幻想曲 ト短調Fantasie g-Moll BWV 920

作品解説

2008年5月 執筆者: 朝山 奈津子

 6部分から成る長大作品長いということそれ自体がこの曲の特徴であり、また欠陥でもあろう。ドイツ伝統的なトッカータファンタジー明確なT-F-T-F-Tの構造とらないが、第2・4・5セクション両手模倣で始まる。いっぽうセクション切れ目など随所分散和音2分音符示され即興風の処理が求められている。鍵盤の幅をいっぱいに使う両手分散和音や摸続進行による無窮動パッセージなど、常套句多用され並列されている。いささか冗長の感も否めない
 しかし、用いられる和音和声進行には――バッハ典型呼びがたいものが多いにせよ――色彩感ある大胆な響きときおり射すように顕れる真作であるかどうかはともかく、演奏効果充分に期待できる作品である。


モーツァルト:幻想曲 ニ短調(未完)

英語表記/番号出版情報
モーツァルト:幻想曲 ニ短調(未完Fantasie d-Moll K.397 K6.385g作曲年1782年 

作品解説

執筆者: PTNA編集部

 「幻想曲 ニ短調」は、ウィーン滞在中の1781年作曲された。曲は「幻想曲」というタイトル通り自由な形式書かれ冒頭序奏のような役割を果たす分散和音部分や、哀感満ちた美し主題など、まさに天才的な霊感遺憾なく発揮され名曲である。しかしこの曲は未完で、現在演奏される形の最後10小節は、モーツァルトの死後、他人の手によって補筆されたものである。その補筆当時指揮者アウグスト・ミュラーによると言われているが、正確に判っていない。


モーツァルト:幻想曲 ハ短調

英語表記/番号出版情報
モーツァルト:幻想曲 ハ短調Fantasie c-Moll K.475作曲年1785年  出版年1785年  初版出版地/出版社Artaria 

作品解説

2008年10月 執筆者: 稲田 小絵子

 ピアノ・ソナタ第14番ハ短調と共に1785年出版された。モーツァルト自作品目によればソナタ作曲84年10月14日、幻想曲は翌85年5月20日である。幻想曲は本来、導入としての用途があったため、この作品は、ソナタ出版に際して、その前奏のために作曲されたものと考えられる。これら2曲は現在でも1セットとして扱われることが多いが、モーツァルト自身が幻想曲のみを演奏することもあったことから、独立した2つの作品考えて問題ないだろう。
 献呈はテレージア・フォン・トラットナー。当時モーツァルト借りていた家(いわゆる「フィガロ・ハウス」)の家主夫人である。彼女はまた、モーツァルトピアノ生徒でもあった。
 作品転調頻繁に繰り返し、幻想曲の名にふさわしく自由に展開してゆくが、テンポ変化によって5つ部分分けられる。すなわちアダージョアレグロアンダンティーノ、ピウ・アレグロ、アダージョである。最初アダージョはさらに、重苦しいハ短調明る響きニ長調2つ分割できる。地から這い上がるようなこの冒頭主題最後に回帰しハ短調ソナタへの橋渡しとなって作品閉じる。


バッハ:幻想曲 ハ短調(ロンドによる)

英語表記/番号出版情報
バッハ:幻想曲 ハ短調(ロンドによる)Fantasie über ein Rondo c-Moll BWV 918

作品解説

2007年10月 執筆者: 朝山 奈津子

 4小節あまりの短いロンド主題簡明な2声のテクスチュアながら、130小節超える比較長い作品である。「幻想曲」というタイトルは、当時慣例では対位法的内容を指すが、ここではさらに、意表をつく組合せ生んだ想像の力をも意味するようにみえるこの中でバッハ試みたのは、ロンド形式対位法書法結合だった。この組合せ生じ原理的な困難とは、対等な力関係平方向に続いていくはずの諸声部が、回帰する主題によっていわば寸断されること、また、ロンド主題エピソード部分対位法主題競合し互いの力を殺いでしまうことにある。
 率直に言って、これらの課題作品の中で完全に解決されているとは言いがたい。各セクション確かにこの上もなく滑らかに連続しているが、それは主題回帰緊張感持った準備なされないということである。エピソード部は模倣で始まるが、やがてロンド主題素材用いて展開するため、クプレ回帰部分)とエピソード対比曖昧になる。音域テンポ感の変化にも乏しく楽曲全体山場とっさにはみいだせない。弾き手聴き手愉しむためには、細かい分析必要だろう
 ロンド主題は曲頭のほか、第29小節、第80小節、第120小節3回ほど登場する。このロンド主題には、更に8小節続きがある。最初エピソード(第13-27小節)ではロンド主題後半はほとんどまったく現れない。また、2回目エピソード(第33小節以降)もいっけん関係のなさそう動機転回対位法開始する。が、この部分大半支配する四分音符シンコペーション動機は、ロンド主題後半から得られたものである。第80小節3回目クプレは、ロンド主題最初の2小節転回声部の上下を入れ替える対位法技法)によって拡大されている。これに続くエピソードも、クプレ用いた2小節単位転回繰り返すが、その内容ロンド主題後半および2回目エピソードから導き出され動機である。厳格な転回は第99小節でいったん収束するが、これ以降も1小節ごとの短い転回やそれに類するパラフレーズ散りばめられている。そして、第116小節からはロンド主題前半の結びにのみわずかに聴かれ付点リズムが2小節渡って左手登場し楽曲終わりに近いことを暗示する左右の手音域広がり左手長いトリル置かれロンド主題最後提示準備される。これはロンド主題後半完備し冒頭提示完全に一致している。
 このようにみると、バッハクプレエピソード交代するロンド形式の陰で、主題の提示と展開を緻密に進めているのがわかる。
 また、よどみなく流れ2つパートは、当時最新スタイルであるギャラント様式意識したのである。この作品は、バッハが自らの得意とする分野新しい形式や様式意欲的に取り込んで生まれたということができる。


バッハ:幻想曲 ハ短調

英語表記/番号出版情報
バッハ:幻想曲 ハ短調Fantasie c-Moll BWV 919出版年1843年  初版出版地/出版社Peters 

作品解説

2007年9月 執筆者: 朝山 奈津子

 プレラーの手稿譜に伝えられる。(ヨハン・ゴットリープ・プレラー(1727-1786)はバッハ弟子世代に当たる音楽家で、彼と兄弟弟子ヨハン・ニコラウス・メンペルが作成したオルガンクラヴィーアのための楽譜帖は、バッハ創作再構築する上で重要な資料となっている。)プレラーは作曲者を「ベルンハルト・バッハ」としており、この名に当てはまる作曲家としてはJ.S.バッハ再従兄弟アイゼナハ活動したヨハン・ベルンハルト(1676-1749)か、あるいはJ.S.バッハ夭逝した息子ヨハン・ゴットフリート・ベルンハルト(1715-1739)が考えられるアイゼナハのヨハン・ベルンハルトとする説が一般的だが、音楽内容J.S.バッハきわめて近いことから、バッハ息子の作、あるいは誤って伝えられているだけでバッハ自身の作品である可能性棄てきれない
 全体は2声、わずか25小節簡潔な作品だが、順次進行跳躍、上行下行同音反復適度に含むバランス取れた主題を持つ。J.S.バッハはこうした可能性豊かな主題ひらめく天才だった。また、主題前半後半対位法的に組合せるやりかたは、まさに「インヴェンション」と呼ぶにふさわしい。作曲者あれこれ詮議するまでもなく、短く引き締まった理知的な作品である。


シューベルト:幻想曲 ハ長調(グラーツの幻想曲)

英語表記/番号出版情報
シューベルト:幻想曲 ハ長調(グラーツの幻想曲)Fantasie(Grazer Fantasie)  D 605A作曲年1818?年  出版年1969年  初版出版地/出版社: Bärenreiter 

作品解説

2008年6月 執筆者: 稲田 小絵子

1969年グラーツ音楽家であったルドルフ・フォン・ヴァイス=オストボルンの遺品の中から発見され、その年のうちに出版された作品(その地名因んでグラーツ》幻想曲と呼ばれる)。発見された譜はシューベルト自筆譜ではなかったが、彼の作品管理していたヨーゼフ・ヒュッテンブレンナーの筆跡で「フランツ・シューベルト作曲 ピアノフォルテのための幻想曲」と記されていた。作曲シューベルト21歳1818年推定されている。
 主題シューベルトらしい牧歌的な旋律オクターヴ歌われるその後は「ポロネーズ風に」という指示による舞曲リズムをはじめ、さまざまな調と動き幻想的展開させるが、最終的に冒頭主題回帰し穏やかに作品閉じる。


ハイドン:幻想曲(カプリッチョ) ハ長調

英語表記/番号出版情報
ハイドン:幻想曲(カプリッチョハ長調Fantasia(Capriccio) C-Dur Hob.XVII:4 op.58作曲年1789年  出版年1789年  初版出版地/出版社Artaria 

作品解説

2007年12月 執筆者: 齊藤 紀子

 1789年作曲された。冒頭モティーフ十分に用いて音楽展開される左右の手ユニゾン重音分散和音オクターヴ連続使用左右の手の間の模倣等、鍵盤楽器奏することのできる多様な音形や演奏方法散りばめられている。また、曲の全体見てみると、効果的な転調が、この作品推進力推移寄与していることがわかる。

Joseph Haydn “Klavierstucke/ Klaviervariationen” ed. Sonja Gerlach, G. Henle 1997


ドライショック(ドライショク):幻想曲 ヘ短調

英語表記/番号出版情報
ドライショック(ドライショク):幻想曲 ヘ短調Fantaisie, F-dur Op.31初版出版地/出版社: Schott 

作品解説

執筆者: PTNA編集部

第1楽章Andante 2/4拍子
展開部のないソナタ形式それぞれの部分展開部を必要としないぐらいドラマティック

序奏ヘ短調):悲愴だが劇的な開始告げる。
第1主題ヘ短調):行進曲風の荘重なメロディー印象的
第2主題ハ短調):ショパンの『革命』の左手パッセージが何と右手登場し圧倒されるテクニカルワークを展開する
第1主題再現(へ短調):行進曲風のメロディが、三連符伴奏支えられながら歌われる
第2主題再現ヘ短調):さらにヒートアップした『革命』のパッセージ縦横無尽活躍する
コーダヘ短調):第2主題トリルとともに頂点上り詰める最後二重オクターブの嵐と『革命』が打ち鳴らされ締めくくる


第2楽章:Veloce 6/8拍子
主部(変二長調):第1楽章とは打って変わって平和で穏やかな楽章。 さわやかなそよ風のようなテーマ軽やかに登場
中間部変ホ短調):哀愁帯びたメロディー印象的
主部再現(変二長調):主部同様のメロディーが再び歌われる
トリオ変ロ短調):優雅なオクターブ戯れる
主部再現(変二長調
■第2トリオ変ロ短調):トリオ同様オクターブ中心で踊られる。
主部中間部主部繰り返され終わる。


第3楽章:Allegro spiritoso
展開部のないソナタ形式それぞれの部分展開部を必要としないぐらいドラマティック
悲しみ激情疾走
第1主題ヘ短調):疾走する左手の上に、悲しみ歌われる。しかし感傷に浸るまもなく、次々と襲い掛かる心の葛藤オクターブ七変化ともいうべき、さまざまな展開が施される

第2主題変イ長調):唯一希望の光差し込んでくる。主題確保は、オクターブ朗々と奏でられる。 後半では新しい精神溢れた第3主題華やかに打ち上げられる

第1主題再現変ロ短調):再び疾走する悲しみ激情。さらにオクターブテクニカルな展開になっている

第2主題再現変イ長調):雪崩れ込んできた第1主題牽引され第2主題は、さきほどとは打って変わってパワーアップを図る。そこでは希望の光勝者ファンファーレ昇格し高らかに歌い上げられる。

コーダヘ短調):すべてオクターブ彩られる。二重オクターブ分散オクターブ、リスト・オクターブ。最後激情の嵐と大伽藍の鐘が打ち鳴らされ見事に終結する

リストライヴァルドライショックにふさわしい技巧的であるが精神的に極めて高い内容持った曲。ロマン派の大ピアニストヴォルフヘンゼルトリストローゼンハイムデーラーショパンタールベルクらと戦うための武器倉庫となった曲でもある。


シューベルト:幻想曲 ヘ短調


ショパン:幻想曲 ヘ短調

英語表記/番号出版情報
ショパン:幻想曲 ヘ短調Fantasie f-Moll Op.49 CT42作曲年1841年  出版年1841年  初版出版地/出版社Schlesinger  献呈先: Princese Catherine de Souzzo

作品解説

2009年8月 執筆者: 安川 智子

1839年よりジョルジュ・サンド過ごしたノアンの地で、ショパン数多く傑作生み出した1841年10月20日ショパンノアンからパリにいる友人フォンターナ宛てて、「今日ファンタジア》が終わった」と記している。41年前後ショパンは、健康的にも、またサンドとの関係においても非常に充実した時期にあり、この《幻想曲》作品49のほか、《タランテラ作品43、《ポロネーズ 嬰ヘ短調作品44、《プレリュード作品45、《演奏会用アレグロ作品46、《バラード第3番作品47、ふたつの《ノクターン作品48といった作品生み出している。そのため各曲互いに影響しあい、性格的小品分類される器楽ジャンル薄めとともにそれぞれ深み自由度増している。
器楽作品用いられるファンタジーファンタジア)という名称は古くからの歴史をもつ。19世紀においてピアノ独奏曲としてのファンタジア」は珍しくないが、ショパンがこの言葉明確なジャンルとしての意識抱いていたかは疑問である。直前作曲された《ポロネーズ作品44について、ショパン当初ポロネーズ形式の《幻想曲》」あるいは「ポロネーズ一種というより、幻想曲です」ということ書いている。また晩年の傑作幻想ポロネーズポロネーズ=幻想曲)》の存在からも、ショパンポロネーズと幻想曲を非常に近い存在ととらえ、「幻想曲」という形態に、即興的色彩もちろんのこと祖国ポーランドへの想い幻想自由に表現するという役割付していたようである。
結局ショパン唯一の《幻想曲》となった作品49は、へ短調始まり変イ長調で終わる。全体ソナタ形式風にとらえれば、序奏Tempo di marcia)、提示部agitato68小節~)、展開部143小節~、途中Lento sostenutoエピソードを挟む)、再現部236小節~)、コーダ309小節~)となろう。しかし幻想曲のタイトルふさわしく、調と楽想自由な交錯として解釈した方が自然である。「行進曲テンポTempo di marcia」と指示されたへ短調導入部は、葬送行進曲のような暗い影覆われ一拍ごとに和音付けられ重々しく進む。一方Assai allegro指示され変イ長調コーダ部(322小節~)は三連符アルペジオ華々しく上り詰め勝利宣言あるかのように終わる。このふたつの調、ふたつの楽想ショパンポーランド対するふたつの幻想的心情としてこの作品支配しているように思える三連符の走句は即興的変化伴って楽曲構成するとなる主題支え68小節~、155小節235小節)、あるいは移行部として機能する43小節~、143小節~、223小節~)。また和音による楽想は、行進曲風の移行部を形成するかと思えば127小節~)、「Lento sostenuto」のテンポ表示とともに抒情的な旋律切々と歌い上げる199小節~)。形式性と即興性兼ね備え不均等対称性保ちながらポーランドへの思い自由に謳いあげた《幻想曲》は、ショパン独特の世界作り上げるとともに、《幻想ポロネーズ》へと連なる傑作群の中心存在位置づけられよう。

アーサー・ヘドレイ編『ショパンの手紙』小松雄一郎訳、白水社2003年
Jim Samson ed. Chopin Studies. Cambridge University Press, 1988.


スクリャービン(スクリアビン):幻想曲 ロ短調

英語表記/番号出版情報
スクリャービンスクリアビン):幻想曲 ロ短調Fantaisie  Op.28作曲年1900年  出版年1901年  初版出版地/出版社: Belaïev 

作品解説

2007年5月 執筆者: PTNA編集部

スクリャービン作品群一般的に、主にショパン風のピアノ小品数多く作った初期(~1989)、リスト・ワーグナーの影響を受け調性とどまりながらも神秘和音使い始め独自の作風試みた中期(~1908)、そして自分芸術神秘主義的思想を結びつけ、さらに音と色彩の合一めざした後期(~1915)の三つ分類されるが、190001にかけて作られたこの作品初期集大成ともいえる壮大な曲想持っている。まだショパン後期ロマン派的な濃厚な感情表現随所見られるが、冒頭提示させた短二度モチーフをたった数小節の間に異常な緊張感ともなった長七度にまで発展させるところに中期・後期作品みられる深い神秘性垣間見ることができるだろう。彼自身20代前半右手こわしたせいか、特に左手連続するオクターヴ跳躍や広いアルペジオパッセージ現れ技術的に非常に困難な曲だが、それ以上美しく流れ官能的なメロディースクリャービン独特の躍動感あふれる付点を含む三連符リズムなど様々な魅力的な要素ちりばめられ、さらにリストワーグナー交響楽的重厚さ自在に動くいくつも入り組んだ旋律線なども合わせ持った、非常に聴き応えのある作品である。


メンデルスゾーン:幻想曲 嬰ヘ短調 (スコットランド・ソナタ)

英語表記/番号出版情報
メンデルスゾーン:幻想曲 嬰ヘ短調 (スコットランド・ソナタ)Fantasie (Sonate écossaise) fis-Moll Op.28 U 92作曲年1833年  出版年1834年  初版出版地/出版社Simrock  献呈先: Ignaz Mosheless

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 第1楽章 Mov.1 Con moto agitato: Andante5分30秒 No Image
2 第2楽章 Mov.2 Allegro con moto 2分30秒 No Image
3 第3楽章 Mov.3 Presto 6分30秒 No Image

作品解説

2007年9月 執筆者: 和田 真由子

1830年ワイマール滞在中、メンデルスゾーンゲーテのもとを訪れ、そこで演奏したうちの一曲が、この《幻想曲 嬰ヘ短調「スコットランド・ソナタ」》であったとされている。メンデルスゾーン1828年に《スコットランド・ソナタ》という曲の作曲をはじめ、その後5年間、これを書きなおし続けた。そして、1834年出版したものが、この《幻想曲 嬰ヘ短調「スコットランド・ソナタ」》である。
全3楽章からなり全曲通して演奏される

第1楽章:嬰へ短調 4分の2拍子 コン・モート・アジタート―アンダンテ
冒頭小節にわたるアルぺッジョの序奏(コン・モート・アジタート)からはじまる。アンダンテ主部につづき、登場するアルぺッジョの挿句は、徐々に勢いと音量増しクライマックス形成する大きな変化加えられ再現部奏されたのち、序奏アルペジオが再び現れ幻想的に曲をとじる。

第2楽章イ長調 2分の2拍子 アレグロ・コン・モート
およそA-B-Aの形によっており、スケルツォ的な性格をもつ。対位法的な技法用いられた短い楽章

第3楽章:嬰へ短調 8分の6拍子 プレスト
即興的な性格が強いが、およそソナタ形式によっている。第一主題は、6連音符下降音形からなりめまぐるしく動く。第2主題は、オクターブでゆったりとうたわれる。6連音符は、一曲全体貫いており、その音形の変化によってさまざまな表情がうみだされている。情熱的な終曲


幻想曲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/11 04:46 UTC 版)

幻想曲(げんそうきょく)は、ファンタジア: fantasia, : Fantasie, Phantasie, : fantaisie, fantasye, phantaisie, : fancie, fancy, fansye, fantasy, fantazia, fantazie, fantazy, phansie, phantasy, phantazia)の訳語。一般に作曲者の自由な想像力に基づいて創作される器楽作品の名称として用いられる。しかしその実例は、即興的なものから厳格な対位法によるもの、小品から多楽章形式の大規模な作品まで、多岐にわたっている。




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「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
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