トッカータとは? わかりやすく解説

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トッカータ【(イタリア)toccata】

読み方:とっかーた

自由な形式の、鍵盤(けんばん)楽器のための技巧的楽曲


オキサゾラム

分子式C18H17ClN2O2
その他の名称オキサゾラム、Oxazolam、10-Chloro-2,3,7,11b-tetrahydro-2-methyl-11b-phenyloxazolo[3,2-d][1,4]benzodiazepin-6(5H)-one、Serenal、セレナール、セレナル【日本】、Serenal【Japanese】、トッカータ、Toccata、ネブスン、Nebusn、ペルサール、Pelusarl
体系名:10-クロロ-2,3,7,11b-テトラヒドロ-2-メチル-11b-フェニルオキサゾロ[3,2-d][1,4]ベンゾジアゼピン-6(5H)-オン


オムス:トッカータ

英語表記/番号出版情報
オムス:トッカータToccata

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1  Prelude: Allegro 2分00 No Image
2  Fugue: Adagio 3分00 No Image
3  Finale: Vivace 1分30秒 No Image

トッカータ

英語表記/番号出版情報
カセッラカゼッラ):トッカータToccata Op.6作曲年1904年  出版年1918年  初版出版地/出版社: Ricordi 
バラキレフトッカータ 嬰ハ短調Toccata作曲年1902年  出版年1902年  初版出版地/出版社: Zimmermann 
リスト:トッカータToccata S.197a R.60a作曲年: 1879-81年  出版年1970年 
タカーチ:トッカータToccata Op.54作曲年1946年  出版年1948年 
マスネ:トッカータToccatas作曲年1892年 
バスティン:トッカータToccata出版年1975年  初版出版地/出版社Neil A. Kjos Music Company 
バックス:トッカータToccata作曲年1913年  出版年1920年  初版出版地/出版社Murdoch 
ハリス:トッカータToccata作曲年1949年  出版年1950年  初版出版地/出版社Carl Fischer 
ヨンゲン:トッカータToccata Op.91作曲年1929年  出版年1933年  初版出版地/出版社: Cebedem 
ヒナステラ:トッカータToccata作曲年1973年 
ベネットトッカータ ハ短調Toccata in C minor Op.38作曲年1854年 
グァルニェリ:トッカータToccata作曲年1935年  出版年1947年  初版出版地/出版社Associated Music Publishers 
カザドシュ:トッカータToccata Op.40作曲年1946年  出版年1950年  初版出版地/出版社: Durand 
ミハロヴィチ:トッカータToccata Op.44作曲年1938, revised 1940年 
シャミナード:トッカータToccata Op.39
ブリス:トッカータToccata作曲年: c1925年  出版年1926年  初版出版地/出版社: Curwen 
エーベルル:トッカータToccata Op.46出版年: 1809?年 
ゴドフスキー:トッカータ(永久運動Toccata (Perpetual MotionOp.13
スタンフォードトッカータ ハ長調Toccata in C major Op.3出版年1875年 
スタトコフスキ:トッカータ イ長調Toccata Op.33出版年1928年 
フリッカー:トッカータToccata Op.33作曲年: 1958-59年 
ポッリーニ:トッカータToccata Op.31出版年: 1810?年 
チェルニーツェルニー):トッカータ ハ長調Toccata, C-dur Op.92
オンスロートッカータ ハ長調Toccata, C-dur Op.6
バツェヴィチ:トッカータToccata作曲年1932年 
タイユフェール:トッカータToccata作曲年1957年  初版出版地/出版社: Unpublishes  献呈先: Arthur Gold and Robert Fizdale
大野 愛:トッカータToccata
ベルコヴィッチ(ベルコヴィチ):トッカータToccata
宍戸 睦郎:トッカータ作曲年1966年  出版年1967年  初版出版地/出版社音楽之友社 
スカルラッティ, ドメニコトッカータ イ長調Toccata
ハチャトゥリアン:トッカータToccata作曲年1932年  出版年1938年  初版出版地/出版社: Muzgiz 
スヴェーリンクトッカータ ハ長調Toccata
スヴェーリンクトッカータ ト短調Toccata
スヴェーリンクトッカータ イ短調Toccata
スヴェーリンクトッカータ イ長調Toccata
スヴェーリンクトッカータ ト長調Toccata
チェルニーツェルニー):トッカータToccata Op.92
ナンカロウ:トッカータToccata作曲年1935年 
パッヘルベルトッカータ ハ長調Toccata
パッヘルベルトッカータ ホ短調Toccata
西村 朗:トッカータ作曲年2000年 
ハイラー アントン:トッカータToccata出版年1942年 
シュミット, フランツ:トッカータToccata
シュミット, フランツ:トッカータ(左手のための)Toccata作曲年1938年 
シュミッディンガー ヘルムート:トッカータToccata出版年2000年 
クラトホヴィル ハインツ:トッカータToccata作曲年1980年  出版年2005年 
スカルラッティ, ドメニコトッカータ イ短調Toccata
シェルシ:トッカータToccata作曲年1934年 

バッハ:トッカータ ト短調


バッハ:トッカータ ト長調

英語表記/番号出版情報
バッハ:トッカータ ト長調Toccata G-Dur BWV 916作曲年: 1707-13年  出版年1867年  初版出版地/出版社Peters 

作品解説

2007年7月 執筆者: 朝山 奈津子

 急速な冒頭楽章並行短調によるアダージョ、そしてジーグ風のフーガという3楽章構成は、いっけんイタリア協奏曲》を思わせる実際、ある手稿資料では「協奏曲あるいはトッカータ」と題されており、そのばあい冒頭楽章では十六分音符パッセージソロ三和音群をトゥッティとみなすことになるが、どちらもあまりに短く、まるで息切れするように長続きしない。むしろこうしたフレーズは、ドイツ伝統的なトッカータやプレリュード見出されるのであるまた、緩徐楽章フーガにはトゥッティソロ交代しきものがないことから、協奏曲というのはあくまで見かけ、ないし解釈上のちょっとしたヒントとみなすべきだろう
 緩徐楽章冒頭左手三和音は、前楽章主題後半部意識した思われる真の主題は5小節目のアルトにようやく現れる模倣厳格ではないが、はじめは装飾性豊かな旋律となり、のちには息の長い掛留の対旋律主題浮かび上がる
 フーガ主題付点リズムとトッカータ風の下行走句を組み合わせたもの。最後は3オクターヴ一気駆け下りて終わる。この楽章、また冒頭のトッカータ楽章でも同様であるが、最終小節八分音符ひとつのあとを休符埋めあまつさえフェルマータ付けられているのには、きわめて重要な味がある最後の音は装飾つけたり未練がましく引き伸ばしたりしてはならない作曲家はあくまで、いささか唐突な離別ないし消滅をここで意図しているからである。


プロコフィエフ:トッカータ ニ短調

英語表記/番号出版情報
プロコフィエフ:トッカータ ニ短調Toccata Op.11作曲年1912年  出版年1913年  初版出版地/出版社: Jurgenson 

作品解説

2009年7月 執筆者: PTNA編集部

調性表記で、「ハ長調となっている資料が多いとのご指摘コメント欄いただきました事典編集部では本曲ニ短調少なくとも「ハ調」ではない)であるという見解でしたが、複数資料あたってハ長調」という表記が多い状況確認しましたので、この件についての調査行いました調査報告下記です。
http://www.piano.or.jp/enc/news/2009/07/30_9112.html

2009年7月 執筆者: 岡田 安樹浩

「トッカータ」は、おもにバロック期において、ファンタジープレリュードなどと同様に好んで作曲されジャンルであり、鍵盤楽器用のトッカータは即興的な速いパッセージ特徴とする。バロック期以後、このジャンル他の楽曲ジャンル中に取り込まれ次第にその名は影を薄めていった。シューマンは『トッカータ』Op.7リストは『トッカータ』S.197aをそれぞれ残しているが、これらは19世紀代表的なピアノ作品においては数少ない例である。
プロコフィエフシューマンの『トッカータ』に触発されて、1912年にこの『トッカータ』Op.11を作曲したという。プロコフィエフの『トッカータ』は、同音連打によって特徴づけられた楽曲のように思われるが、オクターヴ重音によるパッセージ連続は、たしかにシューマンの『トッカータ』からの影響想起させる
左右の手重な音域や、跳躍して交差する音域選ばれ密集した音響によって特徴づけられた部分から、音域上下いっぱいに反行しながら拡大した開放的な音響へといたってクライマックス築き、5オクターヴグリッサンドによって楽曲締めくくられる。


バッハ:トッカータ ニ短調

英語表記/番号出版情報
バッハ:トッカータ ニ短調Toccata d-Moll BWV 913作曲年: 1707-13年  出版年1801年  初版出版地/出版社Hoffmeister & Kühnel 

作品解説

2007年7月 執筆者: 朝山 奈津子

 この曲が「トッカータ第1番」と呼ばれるのは、そのように書き込まれ手稿資料複数存在するためであり、また7曲のうちではもっとも早く1801年出版されいるからかも知れない
 導入のトッカータ部分Thema資料によってはPresto)と題されるフーガ部分、短い動機連ねた緩やかな推移部、再びフーガ部が始まり、トッカータ風のコーダ終結する複縦線に従うなら4部構成だが、最後コーダによって、伝統的な T-F-T-F-T に近い形になっている
 もっとも、最初のトッカータ・セクションでは、第15小節休符を境にテクスチュアががらりと変化する。さらに言うならばその前の導入部分も、ペダル・バス風に始まり音階一気駆け下り溜息動機でしばらく進んだのち、ふたたび音階の走句が散りばめられるといった具合で、多様なものが並置されている。
 フーガ主題はすでに、トッカータ・セクション後半準備されている。ただし、Thema とされる最初のフーガ・セクション冒頭は、一般的な主題提示5度関係での応答ではなく8度上でなし崩しに模倣されるに留まっており、全体フーガとしては自由な書法になっている。この印象的な主題は、リズム形を組み替えたり反行や逆行じみた変奏加えられたりして、いたるところ顔を出したのち、推移部分にも素材提供する
 2回目フーガ8度模倣で始まるが、明確な主題をもっている。フーガの展開は、最初Thema比べれば、より緻密な構成なされている。
 主題最後分散和音によるコーダ入っても完全に失われることはない。歯切れ良いリズムがここでは進行流れ中に溶かされて、やがて断片的に浮かび上がり主題回帰への期待感高める。そして最後の3小節でいよいよ主題が再提示され終結する
 この作品には当時オルガン音楽常套句(ペダル・バス、鍵盤の幅をいっぱいに使う音階の走句、分散和音による進行等)があふれかえっており、それらの繋ぎ目にややぎこちなさ感じるところもある。しかしこれを統一するのが、Themaにはっきり提示されるリズム形である。動機による統一見られるのは、7曲中この作品のみである。


バッハ:トッカータ ニ長調

英語表記/番号出版情報
バッハ:トッカータ ニ長調Toccata D-Dur BWV 912作曲年: 1707-13年  出版年1843年  初版出版地/出版社Peters 

作品解説

2007年7月 執筆者: 朝山 奈津子

 音階の走句による導入アレグロアダージョに続くフーガおよびトッカータ風のコーダ、そしてジーグ風のリズムによるフーガコーダから成る複縦線に従うなら4部分だが、書法の上ではより多様なものが並置されている。
 アレグロ部分ロンドのように冒頭主題回帰するその間では、右手と左手それぞれのパッセージをまるでキャッチボールのように交換する
 アダージョでは、アレグロ明るさ徐々に翳り急激な下行音階朗唱分断され様々な調を経て短調フーガ目指す。なお、ここに見られる両手トレモロは、バッハ初期においてのみ用いた音型で、後年改訂機会があればこれを削除した。従って、この作品作曲改訂もかなり早い時代行われたとみられる
 最初フーガ半音階主題で、2つの対主題をもつ。これら3つ様々な声部現れ転回対位法厳格に実施される。やがて、アダージョ鋭く介入した音階の走句が再び登場して、調の遍歴が始まるが、次第明るさ増し一六分の六拍子による軽快フーガにたどり着く。
 このセクションは、三度音程行きつ戻りつする主題ギャロップする対主題を持つが、対位法よりもむしろ和声変化によって形成されている。トニカドミナント五度関係よりも同主短調関係や三度の関係で進む和声は、きわめて斬新に響く。巧み転調絶え間なく続く一六音符隠されているが、調は嬰ト短調にまで到達する
 コーダでは三和音倍速分散和音にほどけてゆき、速度増して一気鍵盤駆け下りるが、理性的なカデンツで再び上行して終止する。
 なお、アダージョ部に見られる両手トレモロは、バッハ初期においてのみ用いた音型である。後年バッハトレモロ好まず改訂機会があれば削除していった。従って、この作品作曲改訂もかなり早い時代行われたとみられる


バッハ:トッカータ ハ短調


シューマン:トッカータ ハ長調

英語表記/番号出版情報
シューマン:トッカータ ハ長調Tocccata C-Dur Op.7作曲年: 1829-32年  出版年1834年  初版出版地/出版社Hofmeister 

作品解説

執筆者: PTNA編集部

 シューマンがまだ19歳時に作曲されたが、後に何度手を加えて1832年完成されている。シューマンには珍しい、技巧追及した1曲で、はじめはピアニスト志していたというシューマンだけにかなり弾きにくく込み入って書かれているピアニスト大い悩ませる曲だが、ピアニスト自慢技巧披露する曲にもなっている。
 僅か2小節シンコペーションリズム力強く登場して曲は開始され、このリズムモチーフに細かい機械的な運動続いていく。中間部イ短調転じてオクターヴの細かい連打によるメロディー活躍する全体にかなり活気溢れた運動性の強い曲だが、叙情的なメロディー緻密な和声対位法的書法までもが盛り込まれ変化に富んだ様々な作曲技法が光る名曲である。


バッハ:トッカータ ホ短調

英語表記/番号出版情報
バッハ:トッカータ ホ短調Toccata e-Moll BWV 914作曲年: 1707-13年  出版年1839年  初版出版地/出版社Peters 

作品解説

2007年7月 執筆者: 朝山 奈津子

 導入アレグロクロマティックな走句を披露するアダージョの3セクションによる前半楽章と、長大主題を持つフーガ楽章から成る
 前半は、トッカータに典型的な走句をもたず、比較的ゆるく控えめ始まり方をする。アレグロでは、冒頭二つ主題同時に提示され明澄テクスチュアながら二重フーガ展開する。これに半音階的装飾をもつ華やかなアダージョが続く。
 フーガは、真作であるには違いないが、ナポリ音楽院に伝わる古い手稿資料にそっくりの主題を持つフーガがあり、バッハはこれを借用した見られている。跳躍繰り返す音型は、複数の弦をまたいで演奏するヴァイオリン典型的な語法である。


バッハ:トッカータ 嬰ヘ短調

英語表記/番号出版情報
バッハ:トッカータ 嬰ヘ短調Toccata fis-Moll BWV 910作曲年: 1707-13年  出版年1837年  初版出版地/出版社: Trautwein 

作品解説

2007年7月 執筆者: 朝山 奈津子

 トッカータ風導入部アリオーゾアダージョ、「急速に切り離して Presto e Staccato」と題されるフーガレチタティーヴォ風の推移部、そして半音階主題フーガ4部から成る
 最初推移部であるアダージョは、二分の三という古めかしい書き方がされているが、テンポ決しそれほど遅いわけではない半音階ふんだんに散りばめ、さまざまな調を渡り歩いてゆく。
 続いて全音階順次下行するだけのフーガ主題は、バッハのものとしては珍しいほどにシンプルだが、きわめて判りやすくエネルギー満ちている。二つ目推移部はほとんど同じリズム形を繰り返し用いており、和声進行短調なため、やや冗長に聞こえる。
 最後フーガは、シャコンヌ風のリズム半音階4度下行する主題を持つ。このテーマはまるでラメント・バスのように響きフーガ哀愁与えている。


トッカータ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/02 08:27 UTC 版)

トッカータ(伊 toccata)とは、主に鍵盤楽器による、速い走句(パッセージ)や細かな音形の変化などを伴った即興的な楽曲で、技巧的な表現が特徴。toccataは動詞toccare(触れる)に由来しており、オルガンやチェンバロの調子、調律を見るための試し弾きといった意味が由来である。最初期の鍵盤用トッカータは16世紀中ごろに北イタリアで現れた。

発生〜ルネサンス期

16世紀までの器楽音楽は、声楽アンサンブル用のポリフォニー楽曲の即興的転用あるいは編曲であった。オルガン教会典礼における声楽ポリフォニーの伴奏楽器として用いられていたが、これは合唱の音程を安定させることも目的のひとつであった。最初期のトッカータ的な特徴を持った楽曲は、教会で宗教曲を演奏するのに際して音を提示する(いわゆる「音取り」)行為を音楽的に発展させ、ある種の和声的進行に音階的走句をともなった簡単な即興曲であった。これらの楽曲は初期の段階ではプレリューディウム (Praeludium)、リチェルカーレ (Ricercare)[1]等と呼ばれていた。

リュートビウエラ等の撥弦楽器でも声楽ポリフォニーの編曲演奏は盛んであり、これらに対してもその導入部分として即興的な楽曲を演奏することが行われた。これらはRicercareと呼ばれる一方でTastar de Corde(伊)、Tiento(西)などと呼称されることもあった。これらはそれぞれ、「弦に触れる」「感触」の意味で、トッカータ Toccataと同様の意味を持っている。

オルガン用トッカータもこの系譜に属する楽曲である。トッカータの名称をもつオルガン曲を収録した出版譜は1590年代にはじめて現れており、代表的作品としては、アンニーバレ・パドヴァーノアンドレア・ガブリエリのものをあげることができる。パドヴァーノの曲集 Toccate et ricercari d’organo1604年出版であるが、パドヴァーノの没年は1575年であるので16世紀中ごろにはすでにオルガン用のトッカータが出現していた事がわかる。

このようなトッカータの発生は、初期バロックまでのトッカータで使用されている、旋法を明記するような曲名表記と関係している。たとえば、「第1旋法のトッカータ」は、そのトッカータがドリア旋法で書かれていることを意味しており、その曲がドリア旋法のポリフォニーの音取り、ないし導入に用いることができることを示唆している。

ルネサンス末期〜初期バロック

パドヴァーノやアンドレア・ガブリエリのトッカータは、単純な和声進行的部分と音階的走句部分の組み合わせで書かれていたが、和声進行的部分は次第に模倣的、対位法的な曲想に置き換えられていった。パドヴァーノやガブリエリとともにヴェネツィアのサンマルコ寺院のオルガニストであった(ヴェネツィア楽派クラウディオ・メールロは対位法的部分をともなったルネサンス的トッカータ様式の完成者と見なせる。

当時南ドイツでは多くの音楽家がヴェネツィアに留学しその音楽を輸入しようとしていた(ハインリヒ・シュッツなど)。鍵盤楽器の分野ではシュッツよりも1世代上で、同じくヴェネツィアで学んだハンス・レーオ・ハスラーがトッカータをはじめとするイタリア風の鍵盤音楽をドイツにもたらしている。

ちょうど同時期にフランドル・オランダにも優れたオルガニストの一団がいた。その代表としてあげられるのがヤン・ピーテルスゾーン・スウェーリンクである。今日知られているだけでもスウェーリンクの手になるトッカータが十数曲ある。一連のファンタジアとともにスウェーリンクの作品群の主要な一角をなすこれらのトッカータは、形式上は和声部分または模倣部分と音階的楽句部分からなりヴェネツィア楽派をはじめとするイタリア諸派のそれと同様であるが、スウェーリンクのパッセージワークはイタリア風のきらびやかな楽句とは違い、より構造的であると評される。このようなパッセージワークの特徴は、バードブルフィリップス等のイギリスヴァージナル楽派の影響が色濃い。

しかし、音楽史の中でこの時期最も重要な鍵盤音楽の作曲家とされるのがジローラモ・フレスコバルディであり、彼の2巻のトッカータ集(第1巻 1615年1637年改訂、第2巻 1627年)はこの時期のトッカータという形式における記念碑的作品とされる。トッカータ集第1巻へのフレスコバルディ自身による序文には演奏方法のための注釈が9項目にわたって書き記されており、その1番目には「(このような曲を)演奏するに当たっては、現代のマドリガーレにおけるのと同様、拍を強調すべきではない。演奏が難しいマドリガーレも、あるときはゆっくり、あるときは早く、また停止させるなど表情や言葉の意味に従って拍を変化させることによって演奏がたやすくなる」と書かれている。ここで言う「現代のマドリガーレ」とは、フレスコバルディの同時代人モンテヴェルディなどの作品などを指している。モンテヴェルディはマドリガーレ集第5巻(1605年)の序文で、対位法のルールに固執する第一作法 (prima pratica) を離れて、詩や言葉の持つ感情をより直接的に表現する第二作法 (seconda pratica) を擁護し実践している事を表明している。フレスコバルディの注釈は、鍵盤音楽の分野においてもルネサンス的形式を離れ、第二作法を推し進めていくのだという表明と考える事ができる。その意味で、フレスコバルディは鍵盤音楽において初めて真にバロック的な表現を用いた音楽家のひとりであるといえる。フレスコバルディのトッカータの特徴のひとつはある程度まとまった楽節を次々に繰り出す形式にある。これらの楽節は模倣的であったり走句的であったりするが、必ずカデンツァで終わる。このような楽節構成によるトッカータは後々まで受け継がれていく事になる。

こうして、ルネサンス末期から初期バロック期にかけてはトッカータという形式におけるひとつの最盛期が訪れたといえる。この時期には、オルガン、チェンバロといった鍵盤楽器の他に、リュートジョヴァンニ・ジローラモ・カプスペルガーアレッサンドロ・ピッチニーニなど)やハープジョヴァンニ・マリア・トラバーチなど)のためのトッカータも作られた。これらの作品はそれぞれの使用楽器のテクニックに則した独自の表現を持っているが、構成や走句の作り方などの面でフレスコバルディら鍵盤楽器のトッカータの影響を強く受けている。

中後期バロック

フレスコバルディのトッカータにおける形式や表現法はその弟子たちによって引き継がれ、発展していった。ミケランジェロ・ロッシはフレスコバルディの半音階やエキセントリックなリズム表現法をさらに推し進めた一方で、ベルナルド・パスクィーニはパッセージワークの技法において後期バロックに近い表現を展開した。

フレスコバルディの弟子の中で今日特に有名なのがヨハン・ヤーコプ・フローベルガーである。ウイーンの宮廷礼拝堂付オルガニストであったころ、ローマに滞在しフレスコバルディに学んでいる。フローベルガーのトッカータの楽節的構造はフレスコバルディの影響と見られる一方、個々の楽節は概してフレスコバルディのそれよりも長く、また半音階や奇抜なリズム法はあまり見られない。結果として曲全体としての調和が図られている。フローベルガーはフランスの音楽にも造詣が深く、実際各地を旅し、同時代のフランスの音楽家にも影響を与えたと言われている[2]

フローベルガーに続いて、南ドイツではヨハン・カスパール・ケルルゲオルク・ムッファトヨハン・パッヘルベルといった作曲家が活発に優れた鍵盤音楽を作曲し、その中にも多くのトッカータが含まれている。

北方ヨーロッパではスウェーリンク以来のオルガンの伝統があったが、トッカータはそれほど重要視されていなかったようだ。しかし、北方ヨーロッパの伝統を受け継いだ中期バロックの作曲家として、今日ではディートリヒ・ブクステフーデがとくによく知られている。彼のオルガン用トッカータは構成や技法の観点からプレリューディア praeludia とか、プレアンビュルム praeambulum と題名付けられた作品と同種のものである。これらの作品では、即興的楽節と対位法的楽節が交互に組み合わされているが、それぞれの楽節は長く複雑である。対位法的楽節では厳格な模倣を展開する場合が多く、今日フーガと呼ばれるようなものになっている[3]。これらの作品は概して大規模であり、しばしば技巧的なペダル操作を伴っている。これらの特徴はヨハン・ゼバスティアン・バッハの同種の作品群にも受け継がれている。

後期バロックにおいてはイタリアでアレッサンドロ・スカルラッティがチェンバロ用のトッカータを残している。これらは技法の面から見ると息子のドメニコ・スカルラッティソナタや古典派の鍵盤音楽に見られる常動的パッセージを多く含んでおり上で見てきたトッカータの歴史からは多少乖離した作品である。ナポリ音楽院写本 ms.9478 にあるトッカータの一つは、全曲にわたって指番号が指定されており、これらのトッカータは教育のためにも用いられていた事がわかる。これは、当時の運指法を知る上でも重要な資料の一つである。

後期バロックにおいてトッカータの傑作を残した最後の作曲家がヨハン・ゼバスティアン・バッハである。バッハは彼に直接影響を及ぼしたと思われるブクステフーデなどの作品をよく知っていたばかりではなく、より古い時代の音楽家の作品も詳しく研究していた事が知られており、フレスコバルディの「音楽の花束」(Fiori Musicali)やフローベルガーの作品を写譜していた事がわかっている。オルガン用のトッカータにおいてはブクステフーデの様式を継承するとともに、規模や様式的一貫性、複雑性をより発展させた一方、チェンバロ用のトッカータにはより古い時代のトッカータの影響も見られる。

古典期以降

古典期にはトッカータと名の付く作品はほとんど作られなかったが、後期バロックのトッカータの持っていた常動曲 (moto perpetuo) 的な曲想はピアノ音楽に受け継がれた。数少ない「トッカータ」と名の付く曲でも、即興的楽節と対位法的楽節の組み合わせといった本来のトッカータの性質は失われ、専ら動きの速い反復音形や同音連打といった常動的側面が強調されている。

古典派においてはムツィオ・クレメンティソナタ作品11に含まれるトッカータが数少ないよく知られた例である。ロマン派におけるトッカータの代表例はロベルト・シューマントッカータ作品7である。

近代になるとより注目すべきトッカータの例が現れる。クロード・ドビュッシーの「ピアノのために」(Pour le piano) の第3曲や、モーリス・ラヴェルの「クープランの墓」(Le Tombeau de Couperin) 第6曲はその例である。これらは曲の命名からして懐古的発想が窺えるが、楽想そのものとしてはやはり常動曲としての側面が強い。ラヴェルの「トッカータ」は20世紀のピアノ曲の中でも屈指の難曲といわれる。同音連打が終始一貫して繰り広げられるのが特徴であるが、高速な同音連打は古い時代のピアノでは鍵盤の戻りの悪さから非常に困難であったらしく、近代以降の高性能なアクション(打弦機構)が開発されてから可能になったとされる。プロコフィエフトッカータ作品11もこの系譜の上に置かれる作品である。

  1. ^ Ricercare(伊)は探す、模索するの意。16世紀後半のかなり早い段階で即興的楽曲の意味では使われなくなり、提示主題とその模倣からなる対位法的楽曲を指すようになる。
  2. ^ ちなみにフランスではトッカータという曲の形式そのものは定着せず、ほとんど作曲されなかった。
  3. ^ ただし、ブクステフーデの作品で、「前奏曲とフーガ」、「トッカータとフーガ」といった題名のついた曲はない。

参考文献

  • Caldwell, J., Toccata, Grove Music Online, ed. L. Macy (Accessed 2006.09.14), <http://www.grovemusic.com>
  • Hammond, F., Silbiger, A., Frescobaldi, Girolamo Alessandro, Grove Music Online, ed. L. Macy (Accessed 2006.09.14), <http://www.grovemusic.com>
  • Schott, H., Froberger, Johann Jacob, Grove Music Online, ed. L. Macy (Accessed 2006.09.14), <http://www.grovemusic.com>
  • Snyder, K.J., Buxtehude, Dieterich, Grove Music Online, ed. L. Macy (Accessed 2006.09.14), <http://www.grovemusic.com>
  • Pierre Pidoux (ed), Girolamo Frescobaldi: Orgel- und Klavierwerke III, Der erste Buch der Toccaten, Partiten usw. 1637, Bärenreiter (1949)
  • H.M.ブラウン著/藤江効子,村井範子訳 「ルネサンスの音楽」 東海大学出版会 (1994)
  • カーティス・プライス 編/美山良夫 監訳 「オペラの誕生と教会音楽−初期バロック」 音楽之友社 (1996)

関連項目

楽曲記事


トッカータ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/12 15:02 UTC 版)

トッカータとフーガヘ長調」の記事における「トッカータ」の解説

トッカータは、ヘ長調主音保続音上の大きな線形カノン上記最初の6小節)から始まる。その後カノン旋律基づいたペダルソロが続く。カノンは、ハ長調ドミナントいくつかの変奏伴って繰り返される今度手を入れ替え左手が右に進み、再び長いペダルソロが続く。2つ大きなカノンの展開はこの曲のの108小節占めている。ペダルソロは60小節コンチェルト7つ部分から構造されている。カノンとペダルソロは、主調であるヘ長調から属調のハ長調への転調もたらし残り部分は、コンチェルトの3パート模倣印象的な「プロトワルツ」とともに主調への回帰構成している。このような形式パターンは、バッハ作品内でもユニークなのである。 ヘルマン・ケラー(英語版)は、その歓喜次のように表現している。「冒頭の2声カノンによる直線的な構成、ペダルソロの誇らしげ落ち着き突き刺すような和音一撃3つの短調主題内面性、有名な七の和音第三転回形での終わり素晴らしさ、これに魅了されない人がいだろうか?」 前奏曲としてのトッカータは、前奏曲とフーガという形式バッハすべての作品中でも割合として最大のものである。それはしばしフーガ省略した小品としても扱われる。トッカータのリズムパスピエミュゼット思わせるが、その堂々とした音階はこれらの特徴裏付けていない。 和声的冒険性もない。2度目のペダルソロの45小節後に、ナポリの六度第三転回形一見セカンダリードミナント解決する属和音がある。特に、主音半音階で半進行し外側長九度移動し低音半音下降し予想される五度からかけ離れた動きをしている。バッハはこの強力な終止作品3度使用しているが、これが慣用的になるのはショパンチャイコフスキーの頃になってからである。

※この「トッカータ」の解説は、「トッカータとフーガヘ長調」の解説の一部です。
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