作曲技法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/26 18:33 UTC 版)
無調音楽は一見でたらめにも見えるが、実際に作曲する場合には考慮すべき要素が多分にある。無調音楽は完全五度や三度などの調性を感じさせるような音程を避ける必要があるが、本当に何も考慮せず作曲していると、これらの音程が偶発的に生じる可能性が高まってしまうのである。また半音階であっても順次進行ではなく跳躍進行のみに限られ、旋律を極めて断続的にする音響作曲法で作られるのが理想とされる。更には音程(特にオクターヴ)・音の長さ・音色・強弱の繰り返しは調性を感じさせるので避けるべきである。 また、無調音楽は音の主従関係を排除する様式であるという点を除けば、明確な画一的な指針は存在せず、音をどのように書き続けるのかは全く作曲家の自由である。すなわち、調性音楽の作曲技法には調性や旋法の原理からくるある程度の「縛り」があるのに対し、無調音楽は作曲家にゆだねられている選択肢の幅が余りにも広い。その全ての可能性を考慮した上で最善の音を選び出すのは極めて困難な作業である。 十二音技法などの人為的な音組織による無調の作曲技法には、楽曲に統一性や様式感をもたらすための手段としての意味だけでなく、予めある種の原理・公理を人為的に定めた上でその範囲内で作曲することによって、このような作曲上の困難を避けようとする意図も少なからずある。だからといって無調の作曲が容易になるというわけではない。 アルバン・ベルクは、『ヴォツェック』の間奏曲に調性を使ったり、『ヴァイオリン協奏曲』や『抒情組曲』に調的なパッセージや調性作品の引用を取り入れたりして、あえて調的な響きが混じることを避けていない(これはおそらく、作品を分かりやすくするとともに、作品の響きを豊かにするという意図があったものと思われる)。このような手法は、より禁欲的なウェーベルンの作曲姿勢への肩入れから、一時期ブーレーズによって非難された。しかしながらベルクの手法は、おそらくエリオット・カーターらの「新しい複雑性の音楽」に影響している。 その他、雑音音楽や四分音・八分音音楽、18・25平均律などの音楽も無調音楽といえるが、偶然性の音楽は無調とも有調音楽ともいえなくその中間の形であるといえる。なお複調音楽は例えば黒鍵の五音階と白鍵のハ長調旋律を同時に使った場合、その12の音階を満遍なく使った無調音楽に見えるが、実質は有調で五音階とハ長調の二重の立体音楽であるといえる。 無調音楽の作曲技法としては、以下のようなものが知られている。 十二音技法 セリー・アンテグラル セット理論
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