フーガとは? わかりやすく解説

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フーガ【(イタリア)fuga】


フーガ

英語表記/番号出版情報
ドニゼッティフーガ ト短調Fuga
ヘンデルフーガ ホ長調Fuga E-Dur HWV 612作曲年: 1717-20, rev.ca.1750年 
マイアベーア:フーガFuge
ペッテション=べリエル:フーガFuga作曲年1889年 
ヘンデルフーガ ヘ長調Fuga F-Dur HWV 611作曲年before 1706?年 
メンデルスゾーンフーガ 嬰ハ短調Fuge cis-Moll U 51作曲年1826年 
メンデルスゾーンフーガ 変ホ長調Fuge Es-Dur U 57作曲年1826年  出版年1985年  初版出版地/出版社Cambridge 
ラフマニノフ:フーガFuga
ケルビーニ:フーガFugue
モーツァルトフーガ ト短調未完Fuge g-Moll K.401 K6.375e作曲年1783年  出版年1800年  初版出版地/出版社: Breitkopf & Härtel 
モーツァルトフーガ 変ホ長調断片Fuge Es-Dur K.153作曲年1783年 
モーツァルトフーガ ト短調断片Fuge g-Moll K.154作曲年: 1782?年 
バッハフーガ ホ短調Fuge e-Moll BWV 960
バッハフーガ 変ロ長調Fuge B-Dur BWV 954
バッハフーガ 変ロ長調Fuge B-Dur BWV 955
スクリャービンスクリアビン):フーガ ホ短調Fugue
シューベルト:フーガFuge  D 952 Op.152作曲年1828年  出版年1848年 
パッヘルベルフーガ ハ長調Fuga
パッヘルベルフーガ ニ長調Fuga
パッヘルベルフーガ ニ短調Fuga
シューベルトフーガ ニ短調Fuga D 13作曲年: ca.1812年 
リムスキー=コルサコフフーガ ハ長調Fugue作曲年1875年  出版年1951年  初版出版地/出版社モスクワ 

ショパン:フーガ イ短調

英語表記/番号出版情報
ショパン:フーガ イ短調Fugue a-Moll KK.IVc/2作曲年: 1841?年  出版年1898年  初版出版地/出版社Leipzig 

作品解説

2007年9月 執筆者: 齊藤 紀子

 1827年ごろまたは1841年頃の作品とされている。出版は、ショパン死後1898年なされた

 ショパンバッハ敬愛していたことはよく知られており、数多く作品対位法的な手法見られる。しかし、2分の2拍子イ短調書かれ、2声によるこのフーガは、ショパン諸作品の対位法的な箇所比べ比較簡素な構造をもつことから、弟子教育のために書かれ作品か、もしくは若いときの習作考えられている。主題は、属音から主音へと完全4度上行する旋律開始するため、作曲にあたっては、「変応」が要求されるまた、主題の各小節半音階的動き少なくとも1つ見られることは、バッハのフーガを思い返すと、興味深いことに感じられる

Fryderyk Chopin “Minor works for piano” ed. I.J. Paderewski, L. Bronarski, J. Turczynski Warszawa : Instytut Fryderyka Chopina 1961


バッハ:フーガ イ短調

英語表記/番号出版情報
バッハ:フーガ イ短調Fuge a-Moll BWV 947出版年1847年  初版出版地/出版社Peters 

作品解説

2007年10月 執筆者: 朝山 奈津子

 19世紀出版譜(ライプツィヒペータース社によるバッハ鍵盤作品全集、グリーペンケルル校訂1847年刊)より古い資料いっさい失われているため、真贋疑われる作品初版となった校訂譜は、フォルケル所蔵の手稿譜に基づいて作られた。
 資料状況からバッハ真作であることを証明するのはきわめて困難である。が、様式書法が単純である、ということは偽作決定的な証拠にはならない。「フーガ」というタイトルはずしてみれば、《カプリッチョ》BWV993などと構造上の類似点見出せるからである。また、八分音符連打で上行する主題オルガン用の《幻想曲》BWV571ときわめてよく似ており、曲の後半で平進行伴奏風の和音多用されるところも、共通している。
 この曲には対比的3種動機見出せる。主題始まり確実に知らせ八分音符同音連打回音連ねて徐々に上行・下行する十六分音符、そしてダイナミックな分散和音である。分散和音は曲の終盤にようやく現れる。すると、それまで足踏みしながら少しずつ進んできた音楽一挙に広がり持って流れ出す。やがて伴奏も、それまでトゲのような前打音吸収して滑らかな四分音符連結昇華される。(このとき特に現代ピアノでは、和音鋭く、あるいは重くならないよう注意しなければならない。)
 フーガとしてみればこのような構成あまりに単純に過ぎるのだが、闊達なリズムをよく生かした簡潔愛らしい作品である。


バッハ:フーガ イ短調

英語表記/番号出版情報
バッハ:フーガ イ短調Fuge a-Moll BWV 958作曲年: 1710?年 

作品解説

2008年6月 執筆者: 朝山 奈津子

 後代資料のみによる伝承と、やや拙い音楽内容から、疑作とされている。
 主題同音反復テンポの違う3つの動機を含む。こうした主題は、聴き手にとっては逃すことのない判りすいもの作曲家にとっては多声部との組み合わせが容易で扱いすいものとして、古いフーガの教程理想的主題教え種類のものである。しかし、この作品全体響き古風と言うよりはむしろ、ヘンデルのような明る柔軟性をも備えてバッハよりやや後の時代音楽思わせるまた、声部書法厳格に守られず、4つめの声部処々現れては消えてしまう。さらに、バッハ円熟期のフーガに必ず現れる中間の完全終止は、この曲では全体の5分の4を過ぎたところでようやく発生する。しかもG-Durという遠隔の調であるので、残り12小節主調へとうまくまとめるには、やや展開を急がねばならなくなった
 バッハ他の作品比べてみると、摸続進行や平進行単純な反復が目立つ。真の作者明らかでないが、おそらくそれはJ. S. バッハではない。とはいえ、ここにはバッハあまりに精緻なフーガ作品にないのびやかさと、氾濫する常套句ゆえの安心感とがある。演奏技術それほど要求しないので、フーガの練習用としても親しみやすい作品である。


バッハ:フーガ イ短調

英語表記/番号出版情報
バッハ:フーガ イ短調Fuge a-Moll BWV 959作曲年: 1710?年 

作品解説

2008年6月 執筆者: 朝山 奈津子

 これがバッハの作ではあり得ないことは音楽内容から明らかである。しかし、この作品音楽的に拙い」と断定するのは、必ずしも正しくない。〈フーガ〉としてみれば確かに対位法的展開はおろか声部書法ままならないようであるし、ポリフォニーとは相容れないような三和音連続や摸続進行などを多用するそもそも主題からして対位法的展開に向いているとは言い難い
 しかし、フーガ主題率いる各セクションまとまりは明確であり、結部で次の主題入り準備する。その和声進行音域変化緊張感ドラマティックですらある。この作品はフーガというよりはむしろ、フーガ風書法用いた小品、というべきであろうし、そのようにみれば、各部であっさりと使い捨てされる音型は――展開が足りないではなく――むしろ創造力富んでいるということできよう


バッハ:フーガ イ長調

英語表記/番号出版情報
バッハ:フーガ イ長調Fuge A-Dur BWV 949作曲年: about 1707-13年  出版年1843年  初版出版地/出版社Peters 

作品解説

2007年10月 執筆者: 朝山 奈津子

 「メラー手稿譜」に伝えられる。「メラー手稿譜」の通称は、表紙所有者メラーの名が記されていることに由来するが、幼少バッハ引き取ったオールドルーフのオルガニスト、ヨハン・クリストフがその大部分作成した北ドイツのみならずイタリアフランス作品断片含めて54収められている。その中にヨハン・ゼバスティアン・バッハ作品12曲、バッハ自身書きつけ部分含まれバッハ筆跡を知る上で貴重な資料である。(なお、これと同時期ほとんど同様の成り立ちしたものに、「アンドレーアス・バッハ本」がある。この2冊は直系弟子から弟子へと引き継がれていった。)
 〈フーガ〉イ短調BWV949は、一部文献で今も疑作とされているが、メラー手稿譜にははっきりとヨハン・ゼバスティアン・バッハの名が冠されている。典型的な初期スタイルで、すなわち主題提示行わない自由な展開部分(エピソード)がほとんどなく、曲の終わり主題とあまり関連のない走句によって締めくくられる。しかし、対位法技法に関して意欲的で、主題素材から作られた対位主題2つ用意されている。対位主題使用は、バッハ創作史においてこの曲がほぼ初の試みである。主題はひじょうによく際立つ同音連打始まり刺繍音例えば第2小節最初16分音符の h 音や第2拍の cis 音のように、凹型ないし凸型に音を飾る非和声音)を伴う動機緩やかに5度上行する。この刺繍音動機いたるところ散りばめられ、全曲通じてつねにどこかでこの音型が聴こえている、といって過言ではない。その所為いささか単調になっているのは否定できない。が、主題導入音域テクスチュア工夫していつも周到に準備されるとりわけコーダ直前バスにおける提示(第74小節)は劇的ですらある。コーダ部分には「ペダル」記され低音があり、第80小節disに関して移高ないしソステヌート・ペダル必要だが、最終4小節両手のみで演奏可能である。全体明澄で、演奏効果の高い作品といえる


バッハ:フーガ イ長調(アルビノーニの主題による)

英語表記/番号出版情報
バッハ:フーガ イ長調(アルビノーニ主題による)Fuge über Thema von Tomaso Albinoni BWV 950作曲年: about 1725年  出版年: 1866-67年  初版出版地/出版社Peters 

作品解説

2007年10月 執筆者: 朝山 奈津子

 主題出典は、アルビノーニの『トリオ・ソナタ集』Op.1ヴェネツィア、1694)の第3番第2楽章で、元はヴァイオリン2本と通奏低音による曲である。バッハ主題以外にもいくつかの素材借用した。たとえば冒頭第3小節主題に続く16分音符は、原曲では対位主題として用いられ旋律である。が、バッハはこの作品明確な対位主題設定していない。むしろ、つぎつぎ現れる主題くっきりと聴かせつつ曲を劇的に進めるため、広い音域にわたる簡明なテクスチュア選択している。お陰でいわゆる主題入り」は、奏者特別に力を込めなくとも、声部増減瞬間的な音域変化によって明確になる全体主題の提示中心に組み立てられ主題素材念入りな展開や複雑な対位法技法などは見られない主題トリル伴って終止すると、続く部分早くも次の主題準備するために走り出すのである
 息をつかせないような奔流は、第75-79小節のストレッタでクライマックス迎え、第85-88小節分散和音経てたどり着いた属和音で、緊張感保ったまませきとめられる。休符のあとは、もはやおし留めることの叶わない勢いで鍵盤端から端まで駆け巡り低音のペダルポイントの上ではさらに激しさを増す。この目くるめく加速感は、ドイツ鍵盤音楽の伝統典型終結の手法である。ただし残念なことに、現代ピアノでこのペダルポイントと分散和音のフィギュレーションを完全に演奏することはきわめて困難で、ソステヌート・ペダル活用するか、音域変更する必要がある


バッハ:フーガ ト長調 (コラール「神よ、慈しみをもって我を遇し」に基づく)

英語表記/番号出版情報
バッハ:フーガ ト長調 (コラール神よ慈しみをもって我を遇し」に基づく)Fuge nach einem Choral "Mach's mit mir, Gott, nach deiner Güt" G-Dur BWV 957

作品解説

2008年6月 執筆者: 朝山 奈津子

 長らく真贋議論され位置づけ定まらない作品であったが、バッハ初期コラール編曲集めた写本「ノイマイスター・コラール集」に含まれていたことから、2つの点についていちおうの結論導かれた。まず、これがバッハ真作である可能性きわめて高い、ということ、そして、この作品単なるフーガではなくコラール旋律主題持っているということである。
 旧バッハ全集にも収載されたが、旋律あまりに変形加えられているため、この曲の主題出所誰も気づかなかった。バッハの『4声のコラール集』(1784-87, C. P. E. バッハおよびキルンベルガー編)に含まれるコラール神よ慈しみをもって我を遇しMach's mit mir, Gott, nach deiner Güt》(BWV377)の最上声部比べてみると、ゆるやかに上行して下行するアーチ旋律、という以外にはあまり共通する特徴がない。しかし、「ノイマイスター・コラール集」の稿では最後に四声体のコラールがおかれており、この曲の出自明らかにしている。(旧全集参照した資料はこの四声コラールを持たなかった。)
 タイトルとしては〈フーガ〉とのみ伝承されているが、よくみると、フーガの書法としてはいささか奇妙であることに気づく最初主題提示では主調が2回連続する。各声部は本来、主題をもってその最初登場を飾るのであるが、この曲の3つめの声部となるソプラノは、間句で主題動機断片を担うのが初仕事である。また、最後にバス再現される主題下属調である。この最終提示には対旋律呼べるものがなく、右手単純な三和音打ち鳴らすこうした書法はしかしコラール編曲であるとすれば納得がいくコラール編曲では、フーガの厳格な実践よりもコラール旋律提示優先させることが許されるからである。
 この作品所収資料の「ノイマイスター・コラール集」によって身元判明したかに見えるが、じつは真作であると完全に保証されわけではない。疑作との意見根強く未だに真贋問題には決着をみない。また、コラール扱っている点からオルガン想定したものと考えられるが、演奏どのような楽器でもできるように書かれている。従って依然として曖昧な点が多い。しかし、鍵盤の幅いっぱいころころ主題上り下りし音域変化によって響き刻一刻色を変え、上行下行切り替わりによって緊張感生まれる。こうした効果は、オルガンチェンバロ、また現代ピアノ、どんな楽器でもそれぞれ異なった音色で楽しむことができるだろう。


バッハ:フーガ ニ短調

英語表記/番号出版情報
バッハ:フーガ ニ短調Fuge d-Moll BWV 948作曲年: 1709-11年  出版年1843年  初版出版地/出版社Peters 

作品解説

2007年10月 執筆者: 朝山 奈津子

 2声のカノン始まり13小節(ほぼ見開き2ページ)に渡る華麗なカデンツァに終わる作品主題前半八分音符後半坦々と進む十六分音符から成り全体主題から導かれる動機によって展開される。調的な冒険随所見られ、とくに終結部では摸続進行によって五度圏一巡する
 この曲は、現在では疑作とされている。その根拠は、対位法転調ぎこちなさ演奏不可能なペダル声部いささか唐突な終結部の走句など、様式上の判断よる。しかし、非常に多く筆写譜で伝えられており、バッハに近い場所で成立し実践の中で伝承されたことは間違いない


バッハ:フーガ ハ長調(アルビノーニの主題による)

英語表記/番号出版情報
バッハ:フーガ ハ長調(アルビノーニ主題による)Fuge C-Dur BWV 946出版年: 1866-67年  初版出版地/出版社Peters 

作品解説

2007年10月 執筆者: 朝山 奈津子

 主題は、『トリオ・ソナタ集』作品1(1694、ヴェネツィア)第12番終楽章よる。この曲集から主題借りたフーガは全部で3曲あり、ほぼ同時期、ヴァイマール赴任以前作曲とみられる。これら初期作品群のフーガの特徴としては、主題提示明確なデザインがないこと、曲の最後にトッカータ風の走句をおいて締めくくることが挙げられる主題提示デザイン不明瞭であると、主題を各声部提示する部分自由な動機展開を行う部分エピソード)の交代明確でない、さらにいうなら、エピソード部が存在しないようなフーガになる。また、しばしば摸続進行カデンツ紋切り型冗長に感じられる。「アルビノーニ・フーガ」の最後作品であるBWV951は大幅な改訂加えてBWV951aに書き直されるが、その際終結部の走句も含めて古い常套句排除された。改訂ヴァイマール時代推測され、すなわちバッハ自身が自らの「初期」フーガと意識的に決別したのがこの頃ということになる。
 BWV946は、創作史のとりわけ初期習作として書かれたようだ声部はあまり厳格に維持されず、対位法技法にも、対位主題転回などの特別な技巧見られない時に2声部減じるにも拘らず全体がどこか重厚感じられるのは、主題に対位され声部リズム旋律の上コントラスト生まないことに原因がある。そこで奏者には、ハ長調きわめて明澄アーチ主題くっきり際立たせるよう注意求められるだろう。
 また、チェンバロピアノ演奏する場合には終結部の4小節半の最低声部に、オクターヴ移高など何らかの手を加えなければならない


バッハ:フーガ ハ長調

英語表記/番号出版情報
バッハ:フーガ ハ長調Fuge C-Dur BWV 952作曲年1720?年  出版年1843年  初版出版地/出版社Peters 

作品解説

2008年6月 執筆者: 朝山 奈津子

 伝承経路明らかでないために、近年は疑作として扱われることが多い。しかし、《平均律第2巻第1番BWV870/2、《ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのための音楽帳》第31番のハ長調のフーガBWV953と、構成雰囲気類似点多くJ. S. バッハ真作である可能性きわめて高いと考えられる
 全体は、3声の主題提示完結する第5小節以降2部分かれる。その中心となるのが第23小節のe-Mollの完全終止である。ここまではd-Moll、a-Mollなど短調をめぐる間句、この中間のカデンツ以降はF-DurからC-Durへと戻る長調領域である。
 前半にも明確な完全終止がたびたび現れる点では、フーガBWV953よりも《平均律第2巻第1番BWV870/2に近いが、e-Mollのカデンツ楽曲中間の終止するところは、フーガBWV953の姉妹作品あるかのように見える。いずれにせよバッハハ長調フーガのひとつの典型をみせる作品である。


バッハ:フーガ ハ長調

英語表記/番号出版情報
バッハ:フーガ ハ長調Fuge C-Dur BWV 953作曲年: 1723?年  出版年1843年  初版出版地/出版社Peters 

作品解説

2008年6月 執筆者: 朝山 奈津子

 《ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハの音楽帖》に第31曲として含まれる作品。曲集等には拾遺されず残された。全体の構成音楽雰囲気から、《平均律クラヴィーア曲集第2巻第1番BWV870/2のフーガを思わせる。この作品はあるいは《平均律》の候補作であったかも知れない
 フーガの中間の切れ目は第22-23小節にかけてのe-Moll完全終止生じる。3声の主題提示が行なわれたのちは、この完全終止中心としてほぼシンメトリック作られている。しかし、最初主題提示明確な完全終止をとらず、第7小節では通過点してやり過ごされ、第10小節では終止音をオクターヴ下げるというごく単純な手法によって終止感が得られない明確なカデンツはようやく第14-15小節のa-Mollに起こる。ここからd-Mollを通って長いe-Moll領域へと入っていく。そうして中間の完全終止訪れる。以降一転して長調向かい、G-Durを高音域で明るく響かせたのち、自然な和声進行の内にC-Durが復帰してバス主題再現して終止となる。
 登場する調はいずれ近親調範囲であり、奇をてらった転調進行現れないが、それだけ安定感明澄さを保っている。


バッハ:フーガ ホ短調

英語表記/番号出版情報
バッハ:フーガ ホ短調Fuge e-Moll BWV 945

作品解説

2008年5月 執筆者: 朝山 奈津子

アルマンドクーラント》BWV838と同じ筆写資料によって伝えられる作品。疑作とされるバッハ真作である可能性閉ざされていないが、その証明はおそらくほとんど不可能である。
 音楽様式からは一見して真の作曲者が他にいるように思われる主題倚音を含む2度進行開始しオクターヴ跳躍繰り返す。すでにフーガとしての展開可能性期待できない主題造形である。それでも後半には16分音符下行する新し動機主題組み合わされ展開する
 全体和声にもバッハ典型巧みさはみられないが、各主題提示大胆な進行によって終止導かれる素朴な主題そのもの相まって、どこか古風な響きのする作品である。


バッハ:フーガ ホ短調

英語表記/番号出版情報
バッハ:フーガ ホ短調Fuge e-Moll BWV 956

作品解説

2008年6月 執筆者: 朝山 奈津子

 J. P. ケルナー弟子写した手稿譜を唯一の資料として伝えられるケルナーバッハ同時代の人でバッハ作品コレクションしていたのだが、その弟子筆写となるとケルナー自身の作である可能性がひじょうに高くなる
 しかし、全体にはバッハらしい特徴いくつか見られる。まず、この種の摸続進行同音連打を含む主題は、ヴァイマール時代以前によく用いたタイプである。また、3声の主題提示一通り終えたのちは、主題提示のあいだに長い自由句が挿入される。これは、バッハ初期のフーガの特徴である。(《平均律クラヴィーア曲集》など中後期様式では、主題提示まとまって行なわれ、いわば主題グループを繋ぐように自由な展開部分が現れるうになる。)さらに、楽曲のほぼ中央、第35小節に平行長調へ転じる明確な完全終止おかれる。フーガのなかに完全終止をおいて、フーガにシンメトリー与え手法は、バッハ後年確立する形式であるが、すでにここに萌芽がある。
 摸続進行3度の平進行のために単調陳腐な響きとなってしまった部分否めないが、半音階巧み和声進行垣間見え、たとえ誰の作であったにせよ味わい深いフーガとなっている。


バッハ:フーガ ロ短調(アルビノーニの主題による)

英語表記/番号出版情報
バッハ:フーガ ロ短調(アルビノーニ主題による)Fuge über Thema von Tomaso Albinoni BWV 951/951a作曲年: 1710?年  出版年: 1866-67年  初版出版地/出版社Peters 

作品解説

2007年10月 執筆者: 朝山 奈津子

 主題アルビノーニの『トリオ・ソナタ集』Op.1ヴェネツィア, 1694)第8番第2楽章より借用された。3つのいわゆる「アルビノーニ・フーガ」(BWV946, 950, 951)のなかで、もっとも大規模かつ重々しいフーガ。バッハ最初期ロ短調作品でもある。バッハ後年ミサ曲初めとする厳粛な作品ロ短調生み出したが、その萌芽をここに見ることができよう
 この曲には徹底的に書き直した後期稿 BWV951a が存在する生硬対位法禁則進行修正し、古いカデンツ定型常套句排除された。調構造見直して新しセクション加え、さらに明確な再現部設けて初期稿即興的な流れシンメトリック労作へと作り変えた全体雰囲気構成変化はないが、初期作品にしばしば見られるような古臭さ冗長さを取り除いて充分に熟した様式改められている。
 バッハは大改造のあともライプツィヒ時代に至るまでずっと手を入れ続けたようで、細部異なる稿がさまざまの筆写譜に残っている。また、BWV951と951aは後世の手稿資料にもしばしば対で現れ多く音楽家バッハ改訂軌跡を追う好例として研究したとみられる同じくロ短調による初期作品幻想曲》BWV923との取り合わせバッハによるアイデアではないと思われるが、いくつも資料伝えられており、この作品実践の中で広く受け継がれたことを物語っている。


バッハ:フーガ 変ロ長調 (ラインケンの主題による)

英語表記/番号出版情報
バッハ:フーガ 変ロ長調 (ラインケン主題による)Fuge nach Reinken B-Dur BWV 954作曲年before 1717年  出版年1880年  初版出版地/出版社Peters 

作品解説

2007年10月 執筆者: 朝山 奈津子

 ヤン・アダム・ラインケン(1623-1722)はハンブルク教会オルガニストで、バッハ時代にはオルガン芸術巨匠として名を知られていた。1720年バッハハンブルク求職した時、ラインケン試験演奏接し伝統的な技法自在に操るバッハ技量絶賛したという逸話伝えられている。
 BWV954のフーガは、それより少し前、ヴァイマール過去音楽作品研究していた時期生まれた原曲ラインケン器楽アンサンブル曲集『音楽の園 Hortus musicus』(1687)、ハンブルク第2番。元はヴァイオリン2パートヴィオラ・ダ・ガンバチェンバロの4パート想定しており、ソナタと組舞曲1セットとする30から成る舞曲アルマンドクーラントサラバンドジグ基本4曲、ソナタは緩い序奏部、フーガ、自由展開部分かれるバッハ用いたのはこのソナタのフーガ主題で、原曲ではヴァイオリン受け持っていた。バッハ主題後半同音反復部分回音変更している(第3-4小節)。これは、ヴァイオリン語法から鍵盤語法への転換である。全体はこの主題素材から紡ぎだされる
 この曲に関する記事でしばしば「編曲」とされているのは正確でないバッハ巨匠主題から新たに独自のフーガを書いた。そこには、柔軟明澄バッハ独特のスタイルがすでに芽吹いている。最低声部は主題提示バス音の保持だけでなく、細かな音型を連ねて対位法参入する即興風の単調な摸続進行や掛留は出来るだけ排除されている。終結部分は唐突な中断分散和音のフィギュレーションなどがなく、最低声部での主題提示の後をすっきりとまとめている。
 ヴァイマール期のクラヴィーア・フーガには、初期様式からの脱却明らかにみてとれる作品群があるが、この曲もそうした中のひとつである。


バッハ:フーガ 変ロ長調 (エルゼーリウスの主題による)

英語表記/番号出版情報
バッハ:フーガ 変ロ長調 (エルゼーリウスの主題による)Fuge nach Erselius B-Dur BWV 955作曲年before 1717年  出版年1880年  初版出版地/出版社Peters 

作品解説

2007年10月 執筆者: 朝山 奈津子

 ここに名を残している「エルゼーリウス」がいったい誰なのか、ということは現在、問い直されている。ト長調の稿BWV955aを伝え筆写資料に「フライベルクオルガニストと書き込まれたことが混乱の原因となった。これを受けて全集では「J.C. エルゼーリウス」とされたのだが、この人物はバッハよりも完全に一世代あとの音楽家であるから実際に当てはまらない。もっとも、バッハ創作史や伝記再構築する上で「エルゼーリウス」についての関心尽きないのだが、この作品演奏する上で主題原曲作者はあまり問題ではないだろう
 BWV955はヴァイマール以前初期フーガの一つとして、古いスタイル残している。主題素材によらない単調な摸続進行装飾音型、声部独立性を乱す三和音など、熟し足りないところも散見される。しかし、朗々とした四分音符主題十六分音符装飾的なフィギュレーションの絡み合いが、全体簡明判りすいものにしている。また、音域テクスチュア刻々変化し低音域から重々しく始まり中音域で展開を始め低音がやんで高音域にきらきら漂ったあと、ずしりと低音戻ってくるなど、劇的な演出なされている。
 こうした経過の中で、四分音符主題は、聞き取るべきテーマというよりも曲全体支え屋台骨としてやや後景退いている。そこには、きらびやかな装飾音可能性演奏者開かれているだろう。


フーガ

作者エリック・マコーマック

収載図書隠し部屋査察して
出版社東京創元社
刊行年月2000.7
シリーズ名海外文学セレクション

収載図書隠し部屋査察して
出版社東京創元社
刊行年月2006.5
シリーズ名創元推理文庫


フーガ

作者エイミー・ベンダー

収載図書燃えスカート少女
出版社角川書店
刊行年月2003.5

収載図書燃えスカート少女
出版社角川書店
刊行年月2007.12
シリーズ名角川文庫


フーガ

作者柳井一平

収載図書の恋
出版社碧天舎
刊行年月2004.10


フーガ

名前 Fuga

フーガ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/05 08:51 UTC 版)

フーガ: fuga、遁走曲または追走曲)は、対位法を主体とした楽曲形式[注釈 1]の1つ。


注釈

  1. ^ ただし定まった楽式があるわけではなく、実際にはむしろ作曲技法もしくは演奏様式の1つと考えられる[1]
  2. ^ 第1部の序曲後半、"And He shall purify"、"His yoke is easy"、第2部 "And with His stripes"、"He trusted in God"、終曲 "Amen" などがフーガの形をとる
  3. ^ ヨハン・ヨーゼフ・フックス対位法理論書「グラドゥス・アド・パルナッスム」の影響が顕著に見られる
  4. ^ 同じ曲の歌詞違い
  5. ^ 『対位法的幻想曲』(Fantasia contrappuntistica) BV 256 のフーガを中心にした短縮版
  6. ^ ピアノ版のみ。オーケストラ版には無い
  7. ^ ヴセヴォロード・ザデラツキー (Vsevolod Zaderatsky) の『24の前奏曲とフーガ』は強制収容所で過ごした1937年から1939年にかけて書かれ、ソ連崩壊後まで公にならず初演は2015年に行われた[9]
  8. ^ 2011年4月にYouTubeに投稿された動画で発表され、レディー・ガガ本人もTwitter上で言及している[14]デヤン・ラジッチ英語版が2011年のBBCプロムスでアンコールとして演奏し[15]ハル・レナードから複数の編曲が出版されている。

出典

  1. ^ 久保田慶一編『バッハ・キーワード事典』(春秋社、2012)p. 163, ISBN 9784393930281.
  2. ^ a b 柴田南雄, 遠山一行 総監修 (1996), “フーガ”. ニューグローヴ世界音楽大事典. 15. 音楽之友社. pp. 7-9
  3. ^ The Harvard Dictionary of Music, 4th ed. Harvard University Press, 2003. p. 336.
  4. ^ Sansuini, Roberto, Calderoni, Caterina: Il Basso Imitato E Fugato. Elementi Per Lo Studio E La Composizione, Edizione Ricordi E.R. 2933, p.46
  5. ^ a b c “フーガ”. ニューグローヴ世界音楽大事典. pp. 10-12
  6. ^ a b Walker, Paul. (2001), “Fugue”, in Sadie, Stanley, ed. The New Grove Dictionary of Music and Musicians, 9 (Second ed.), Oxford University Press, pp. 328-329
  7. ^ Peter O'Hagan (2016), Pierre Boulez and the Piano: A Study in Style and Technique, Routledge. pp. 101-103.
  8. ^ Amy Bauer (2016), Ligeti's Laments: Nostalgia, Exoticism, and the Absolute, Routledge. p. 68.
  9. ^ 塩野直之『ザデラツキーと『24 の前奏曲とフーガ』』 33/34巻、Slavistika : 東京大学大学院人文社会系研究科スラヴ語スラヴ文学研究室年報、2018年、51-60頁。hdl:2261/00077061NAID 120006630014https://doi.org/10.15083/00077061 
  10. ^ 24 Preludes & Fugues”. www.youtube.com. www.youtube.com. 2021年7月19日閲覧。
  11. ^ 24 Preludes & Fugues”. www.prestomusic.com. www.prestomusic.com. 2021年7月19日閲覧。
  12. ^ 24 Preludes & Fugues”. www.nb.no. www.nb.no. 2021年7月19日閲覧。
  13. ^ 24 Preludes & Fugues”. www.depauw.edu. www.depauw.edu. 2021年7月19日閲覧。
  14. ^ The epic Baroque Fugue on a Theme by Lady Gaga - classicfm.com. 2022年4月17日閲覧。
  15. ^ Lady Gaga - Bad Romance (Lady Gaga Fugue arr. Dettori) - bbc.co.uk. 2022年4月17日閲覧。
  16. ^ Walker, Paul. (2001), “Fugue d'école”, in Sadie, Stanley, ed. The New Grove Dictionary of Music and Musicians, 9 (Second ed.), Oxford University Press, p. 332
  17. ^ D・オズモンド=スミス;ベリオ『現代音楽の航海者』(青土社)p.14, ISBN 4-7917-5645-2より
  18. ^ Corso di Contrappunto e Fuga”. www.picclickimg.com. www.picclickimg.com. 2021年4月14日閲覧。
  19. ^ Corso di Contrappunto e Fuga”. www.picclickimg.com. www.picclickimg.com. 2021年4月14日閲覧。



フーガ(ホ短調、2分の2拍子)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/13 17:40 UTC 版)

前奏曲とフーガ ホ短調 BWV 548」の記事における「フーガ(ホ短調、2分の2拍子)」の解説

3部からなり第1部分と第3部分は4声のフーガである。主題となる第1部分はテノール-アルト-ソプラノ-バスの順に、固定対位句を伴って提示される第2部分はトッカータ風、第3部分は第1部分がそのままの形として再現される。なお、フーガ主題ペダル演奏される際には一部音が省略されている。

※この「フーガ(ホ短調、2分の2拍子)」の解説は、「前奏曲とフーガ ホ短調 BWV 548」の解説の一部です。
「フーガ(ホ短調、2分の2拍子)」を含む「前奏曲とフーガ ホ短調 BWV 548」の記事については、「前奏曲とフーガ ホ短調 BWV 548」の概要を参照ください。

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