とり‐あわせ〔‐あはせ〕【取(り)合(わ)せ】
取り合わせ
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★1a.本来無関係の男女が、隣り合って並んでいるために、夫婦・恋人と見なされる。
『伊勢物語』第25段 男が、なかなか逢ってくれない女に「秋の野に笹分けし朝の袖よりも逢はで寝る夜ぞひちまさりける」と訴え、女は「みるめなき我が身を浦と知らねばや離れなであまの足たゆく来る」と応ずる。しかしこれは、『古今和歌集』巻13に連続して配列される在原業平の「秋の野に」の歌と小野小町の「みるめなき」の歌を取り合わせ、恋の贈答に仕立てたものである。
『サザエさん』(長谷川町子)朝日文庫版・第7巻62~63ページ 昭和20年代のある日、マスオが勤務先の落成祝いのため、モーニング姿で徒歩で出かける。同じ道を、結婚式場へ向かう花嫁が文金高島田で介添えとともに歩く。踏み切りの所でマスオと花嫁は並んでしまい、周囲の人々は2人を新郎新婦と見なす。
『醜聞(スキャンダル)』(黒澤明) 新進画家青江一郎は、人気歌手西條美也子と同じ旅館に泊まり合わせた。2人は初対面だったが、バスに乗り遅れた美也子を、青江がオートバイに乗せて旅館まで連れて行った、ということがあったので、青江は美也子の部屋を訪れて世間話をし、窓辺に並んで外を見ていた。そこをスキャンダル雑誌の記者が写真に撮り、「恋はオートバイに乗って」という見出しで、青江と美也子が密会していた、との記事をでっち上げた〔*青江は怒って訴訟を起こす。青江の側の弁護士が雑誌社に買収されたりしたが、最後には青江は勝訴した〕。
*逆に、恋人が並んで映っている写真を切り離すと、印象が変わってくる→〔写真〕8の『写真』(川端康成)。
★1b.男女二人の死体が同じ所に並んでいれば、心中と見なされやすい。
『点と線』(松本清張)13の2~3 三原警部補は、たまたま若い女性と同時に喫茶店に入ったため、店員が2人をカップルと誤認する。しかしこれがきっかけで、三原は九州・香椎の海岸での情死事件の真相を察知する。犯人が、まったく無関係な男女を別々の場所で毒殺し、死体を海岸に運んで並べて寝かせ、心中に見せかけたのだった〔*無関係な男女の死体を並べるのとは逆に、心中した男女の身体を引き離す物語も、松本清張は書いている→〔心中〕11の『二階』〕。
『南総里見八犬伝』第3輯巻之4第27~巻之5弟29回 網乾左母二郎は浜路を恋慕してさらうが、彼女が意に従わないので斬り殺す。しかし左母二郎もまた、犬山道節に殺される。そこへやって来た額蔵(=犬川荘助)は、若い男女の死体が2つ並んでいれば心中と見なされるゆえ、傍らの木に「悪党左母二郎が浜路を殺し、その結果天罰を受けた」と記し、情死ではないことを明らかにした。
*男女2人を殺して、無理心中に見せかける→〔心中〕7cの『ロシアより愛をこめて』(ヤング)。
*男女の死骸を戸板に打ちつけ、不義密通の2人に仕立てる→〔板〕6の『東海道四谷怪談』(鶴屋南北)「浪宅」~「砂村隠亡堀」。
*自殺者2人が、初夜の床に並んで横たわる→〔心中〕8bの『盗賊』(三島由紀夫)。
*男女2人が行方不明になれば、駆け落ちと見なされやすい→〔隠蔽〕6の『大いなる眠り』(チャンドラー)。
*生前関わりのなかった男女を合葬し、冥界での夫婦とする→〔冥婚〕8の『三国志』魏書・武文世王公伝第20「鄧哀王沖伝」。
★1c.A地点の住所と、それとは無関係なB地点の電話番号を、隣り合わせに並べて記す。
『虚無への供物』(中井英夫) 氷沼蒼司が作ったにせの名詞には、千代田区九段の事務所の住所と、豊島区目白の茶室の電話番号が並べて記されていた。目白の氷沼邸で殺人事件が起こった時、その知らせを茶室の電話で受けた蒼司は、目白から数キロ離れた九段の事務所にいたと見なされて、アリバイが成立した。
*ある人物の住所を書いた下に、芸者の電話番号をメモする→〔電話〕1の『プラトニック・ラヴ』(志賀直哉)。
『日本書紀』巻1・第8段一書第6 オホアナムチ(=大国主命)が出雲の五十狭狭(いささ)の小汀(おはま)にいた時、スクナビコナが舟に乗ってやって来た。オホアナムチが掌にスクナビコナを置き、もてあそぶと、スクナビコナは跳ねてオホアナムチの頬をつついた。オホアナムチとスクナビコナは、力を合わせ心を1つにして天下を造った〔*『古事記』上巻に類話〕。
『二十日鼠と人間』(スタインベック) 自分の農場を持つことを夢見る小男ジョージと、力は強いが知能の未発達な大男レニーは幼なじみで、組になって農場を渡り歩き、働く。新たに雇われた農場で、レニーは怪力ゆえに誤って若主人の妻の首の骨を折り、死なせてしまう。レニーが私刑されそうになるので、ジョージは彼に苦痛を与えぬよう、話しかけながら後頭部を銃撃し、即死させる。
『富嶽百景』(太宰治) 河口村からバスにゆられて御坂峠へ向かう途中、女車掌が「皆さん、今日は富士がよく見えますね」と言った。乗客たちはいっせいに車窓から首を出し、富士山を眺めて嘆声を発するが、「私」の隣席の老婆は富士には一瞥も与えず、「おや、月見草」と言って路傍を指さす。3778メートルの富士山と立派に相対峙してみじんもゆるがず、月見草の花1つが、すっくと立っていた。富士には月見草がよく似合う。
*大男の兄と小男の弟→〔頭〕4の『ルスランとリュドミラ』(プーシキン)第3歌。
★3.奇妙な取り合わせ。
『雁風呂』(落語) 旅の水戸黄門が、茶屋の屏風絵の「松」と「雁」を見て、「『松』に『鶴』、『月』に『雁』ならわかるが、『松』に『雁』とは、でたらめな取り合わせだ」と、立腹する。そこへ来合わせた大商人淀屋辰五郎が、「函館の一木松」と「雁」に深い関わりがあることを、水戸黄門に語り聞かせる→〔人数〕7。
★4.食べ合わせ。
『お染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)』(鶴屋南北)序幕「柳島妙見境内の場」 強飯(こわめし)を腹いっぱい食べた丁稚久太は、番頭から金1分(いちぶ)を貰い、「これで、ふぐを食おう」と、出かける。番頭が「お前は今、強飯を食ったではないか」とたしなめると、久太は「ふぐと餅は、さし合い(=食べ合わせ)だが、ふぐと強飯なら心配あるまい」と言う。しかし久太は、ふぐの毒で死んでしまった〔*2幕目「瓦町油屋の場」で、久太は息を吹き返す〕→〔ゆすり〕1。
*薬Aと薬Bは、それぞれ単独で服用するなら問題ないが、両方を一緒に飲むと猛毒に変化する→〔毒〕4bの『あやしやな』(幸田露伴)。
取り合わせ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 06:11 UTC 版)
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「取り合わせ」の例文・使い方・用例・文例
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- ステーキと赤ワインはいい取り合わせだ。
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- 取り合わせる
- 適当に取り合わせること
- 下になるにつれて濃い色にする色の取り合わせ方
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- (物と物とを)取り合わせるようにさせる
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