アントロポセンとは?

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人新世

読み方:じんしんせいひとしんせい
別名:アントロポセン
英語:Anthropocene

地質年代区分として提唱されている時代区分、または同区分導入採用する学説呼び名

人新世の区分は、人類地球生態系気候多大影響を及ぼすようになった時代地質学的に定義するべきという位置づけと言いうる。

国際地質学会議2016年行われ検討会では、人新世の採用賛成する意見反対意見大きく上回っている。ゆくゆくは標準的考え方として学界に受け容れられていくのではという見解優勢といえる

アントロポセン【Anthropocene】


人新世

(アントロポセン から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/12 07:31 UTC 版)

人新世(じんしんせい[1]、ひとしんせい[1]: Anthropocene[1])とは、人類地球地質生態系に与えた影響に注目して提案されている、地質時代における現代を含む区分である[2]オゾンホールの研究でノーベル化学賞を受賞したパウル・クルッツェンらが2000年にAnthropocene(ギリシャ語に由来し、「人間の新たな時代」の意)を提唱し、国際地質科学連合で2009年に人新世作業部会が設置された[2]後述)。和訳名は人新世のほかに新人世(しんじんせい)[注釈 1]人類新世[5]がある。人新世の特徴は、地球温暖化などの気候変動大量絶滅による生物多様性の喪失、人工物質の増大[6]化石燃料の燃焼や核実験による堆積物の変化などがあり、人類の活動が原因とされる[7]


注釈

  1. ^ 第2ドイツテレビ (ZDF) の番組 "ANTHROPOCENE - The Rise of Humans"(制作:ZDF Enterprises〈en〉)[3]NHKによる和訳タイトルは『新人世 人類の時代に未来を見つめて』[4]
  2. ^ たとえば、ロンドン地質学会は1945年をグレート・アクセラレーションとして言及している[11]
  3. ^ th の部分だけ、英語発音[θ]ではなくラテン語発音[t]の音写になっている。仮にラテン語古典式発音[antrōpokēnē]を音写するなら「アントローポケーネー」となる。
  4. ^ 英語発音[ˈænθɹəpəˌsiːn, ˌænˈθɹʌpəˌsiːn]。地質年代片仮名表記は、International Chronostratigraphic Chart にある単元名の「一般的な英語読みをそのまま片仮名にしたもの」がJISの基本方針である[16]
  5. ^ ストーマーは「私が1980年代に "Anthropocene" という語を使い始めたが、パウルが私に連絡するまで全く世に出なかった」と書いている[17]
  6. ^ クルッツェンは「誰かが完新世に関して何事かを述べている会議に自分は出席していた。突然これは間違いだと自分は思った。この世界はあまりにも変わってしまっている。そこで私は言ったんだ「違うよ、我々は人新世にいる」とね。私は咄嗟の思い付きでその言葉を作り上げました。誰もがショックを受けていてました。全員が固まってしまったようだった」と述べている[18]
  7. ^ 「大加速」[20] や「大加速化」[21]、「人類活動の巨大な加速化」[22]などの日本語訳がある。
  8. ^ 「地球の限界」[23]や「惑星限界」[24]などの日本語訳がある。
  9. ^ IGBPが刊行した『グローバル変動と地球システム - 逼迫する地球環境』という書籍から出た仮説となる[27]
  10. ^ 『ネイチャー』や『サイエンス』など複数の科学誌に掲載された[31]
  11. ^ ロックストロームは水資源のレジリエンスが専門、ステフェンは気候科学や地球科学を専門とする[31]
  12. ^ 森林によって88億トンの二酸化炭素が吸収されており、人類が排出する温室効果ガスの1/3にあたる[39]
  13. ^ 琵琶湖の湖底のスギ花粉の分析では2万年周期の変動が判明した[44]
  14. ^ 最終氷期の急激な温暖化と寒冷化はダンスガード・オシュガーサイクルと呼ばれ、グリーンランド周辺では数十年間に16度の温暖化も起きた[45]
  15. ^ 5度の大量絶滅とはオルドビス紀デボン紀ペルム紀三畳紀白亜紀を指し、ビッグファイブとも呼ぶ[48]
  16. ^ 絶滅速度の増加は、少なくとも1500年以降は通常ペースを上回っており、19世紀およびそれ以降に加速していると推測される[51]
  17. ^ 海洋酸性化は炭酸カルシウムの形成を妨げるため、貝類やプランクトンの殻、クジラの耳骨なども変形も起こす[55]
  18. ^ 2017年までの27年間にドイツの昆虫の生物量は75以上減少し、プエルトリコの熱帯雨林では節足動物全体の生物量が1/10から1/60にまで減っている[67]
  19. ^ 後述するような、人新世が1万2000年以上前に始まったという説をとる場合を除く。
  20. ^ 近年になって新しく認められた区分としては、2020年に決定したチバニアン期がある[83]
  21. ^ 海底には、海流によってマイクロプラスチックの集まるホットスポットができる。地中海海底では、1平方メートルあたり最大190万個が層をなす場所もあった[91]
  22. ^ まだ定訳は存在しない。直訳するなら「科学技術化石」「テクノ化石」で、科学文明から出たごみ(主に不燃構造物)が地中廃棄されて、地層内で化石同様に形を留めることを言う。
  23. ^ 堆積岩形成物中における素材が似たような性質ながら、堆積場所によって「その年代が異なる」こと。
  24. ^ 古気候学者ウィリアム・ラディマン英語版による。のちにラディマンの研究には、約40万年前の間氷期からのデータによって異論が唱えられた。現在の完新世間氷期が終了するには、さらに16,000年が経過しなければならないことを示唆するもので、そのため初期の人新世仮説は無効とされている[101]
  25. ^ 8,000年前、地球には数百万人が存在していたが、それでも基本的には原始的であった[103]。この主張は、人新世の初期年代が人類の本質的な足跡を説明するという主張の根拠となっている[104]
  26. ^ 国際層序委員会の公式分類とは別に、完新世を5つに区分けしたAxel BlyttとRutger Sernanderによる研究分類における、最も新しい「2600年前-現在まで」を指す期間。詳細は英語版en:Blytt-Sernander systemen:Subatlanticを参照。
  27. ^ ギルガメシュ叙事詩では、英雄ギルガメシュが森の神フンババを殺したために主神エンリルの罰を受ける物語がある。ギルガメシュの目的はレバノンスギだったが、紀元前3000年当時すでに乱伐によって減少しており、ギルガメシュが罰を受けたのは森林を保護する観点によるという解釈もある[110]
  28. ^ プラトンは人類が自然の秩序を保持することを肯定し、『国家』や『法律』で植樹治水の重要性を書いている[112]
  29. ^ ヨーロッパはアメリカ大陸とアフリカ大陸への進出によって、鉱物資源や製品の輸出先などの問題を解決した。これによって人口増加と手工業の拡大を続けて、他の地域よりも産業革命がいち早く進行した[117]
  30. ^ コロンブス交換という表現は、歴史学者アルフレッド・クロスビーが1972年に最初に使った[119]
  31. ^ クルッツェンは人新世の始まりとして産業革命を提案した[123]。ラヴロックは、人新世が1712年のニューコメン蒸気機関の実用化から始まったと提案している[124]
  32. ^ 初代アルカリ監視官のロバート・アンガス・スミス英語版は『大気と雨』(1872年)で世界初の「酸性雨」という表現を使った[131]
  33. ^ 産業がもたらす環境への悪影響を問題提起した作品として、古くはヘンリック・イプセンの戯曲『民衆の敵』(1882年)がある。ジャーナリズムによる扇動、経済開発に反対する少数派への攻撃など21世紀にも通じる問題が描かれている[133]
  34. ^ アメリカ作家ジョン・スタインベックはこの時代に苦難の生活をした農民を中心とした小説『怒りの葡萄』(1939年)を書いた[134]
  35. ^ 石炭の利用によって、化石燃料の枯渇に関する研究も始まった。経済学者ウィリアム・ジェボンズは著書『石炭問題英語版』で、石炭の減少による経済の衰退や、ジェボンズのパラドックスと呼ばれる資源利用の増加を論じた。ジェボンズのパラドックスは、現在は資源のリバウンド効果英語版とも呼ばれる[136][137]
  36. ^ スウェーデンの土壌学者スヴァンテ・オーデン英語版は、北欧の酸性雨の主な原因はイギリスやドイツからの硫黄酸化物であるという研究を1968年に発表した。カナダとアメリカ北東部の酸性化も著しく、両国は越境大気汚染に関する合意覚書を交換した。1987年には「30%クラブ」と呼ばれる二酸化硫黄の削減協約、1991年には窒素酸化物の削減協約が続いた[141]
  37. ^ これらは作品のテーマにもなった。ネバダやユタを舞台に自然・女性・核技術のつながりについて書くテリー・テンペスト・ウィリアムス英語版水俣病について書いた石牟礼道子らがいる[143]
  38. ^ 他の5つの因子は母材、気候、生物、地形、時間となる[148]
  39. ^ 英語圏では、人新世をタイトルに含む書籍の出版点数が2016年から2017年に急増し、2019年に70点、2020年に79点となった。内容の多くが社会科学や人文科学となっている。日本で人新世をタイトルに含めた最初の出版物は、2016年発行の雑誌『5 Designing Media Ecology』6号の特集「アンソロポセンの光と影 - 人間と自然の未来」とされる[151]
  40. ^ たとえば移住や動植物の保護区によって、コミュニティの伝統的な自然利用を変えなければいけない場合がある[153]
  41. ^ 「アントロポシーン」は英語での発音からで、地質年代を表す層序の学術用語ならば語尾の発音は通常「~シーン」となる[154]
  42. ^ シンポジウム名は「アントロポシーン(人の時代)における博物館 生物圏(バイオスフィア)と技術圏英語版(テクノスフィア)の中の人間史をめざして」だった[注釈 41][15]
  43. ^ たとえば「ルネサンス」や「新石器時代」などは文化的な用語であり、開始場所は地域によって異なる。人新世が人類の活動を基準とするならば、地域によって開始時期が異なるという解釈も可能であり、時間的な基準としてよりも文化的に使う方が有用性があるという指摘がある[154]
  44. ^ IGBPには中核となる8つのプロジェクトがあり、地球大気化学研究(IGAC)、全地球海流研究(JGOFS)、地球変化と陸域生態系研究(GCTE)、水循環の生物的側面研究(BAHC)、古環境の変遷研究(PAGES)、沿岸域における陸地 - 海洋相互作用研究(LOICZ)、土地利用・被覆変化研究(LUCC)、全地球海洋生態系動態研究(GLOBEC)となる。この他に大規模な国際研究プロジェクトもある[164]
  45. ^ 作者はKelly Jazvac, Patricia Cororan, チャールズ・ムーア[169]
  46. ^ キャトル・デカピテイションの『The Anthropocene Extinction』(2015年)[171]蓮沼執太フィルの『ANTHROPOCENE』(2018年)[172]グライムスの『Miss Anthropocene』(2020年)[173]などがある。
  47. ^ ヴェルナツキーは1938年に『scientific thought as a geological force(地質学的な力としての科学的思考)』を書いた[185]
  48. ^ 研究インフラの内容として、(1) 技術の進展による研究分野の拡大、(2) 人工衛星によるリモートセンシングのデータの大量蓄積、(3) 自然科学と社会科学を架橋した生態系と社会の相関関係についての理論の進展がある[187]
  49. ^ 2008年に地質学者のヤン・ザラシーヴィッチポーランド語版は学術誌『GSA Today』で、人新世という時代が今や適切であることを示唆した。ザラシーヴィッチはのちに人新世ワーキング・グループ(AWG)の委員長も務めた[125][191]。米国地質学会は2011年の年次会合のタイトルを「太古代から人新世へ:過去は未来への鍵」と称した[192]
  50. ^ 古代ギリシアの哲学者アリストテレスは著作『政治学』で、アンソローポスを「ゾーン・ポリティコン(政治的生物)」と定義した。古代ギリシアで政治に参加できるのは成人男性の市民であり、女性や奴隷は排除されていた[206]
  51. ^ 哲学とフェミニズムをテーマとする学術誌『philoSOPHIA』とゲイ・レズビアン・スタディーズやクィア理論をテーマとする学術誌『CLQ』は、ともに2015年に人新世特集を組んだ[210]
  52. ^ このために親子関係に限らない類縁関係の普及を提案する論者もいる。性・生殖・再生産の結びつきを自明とする価値観に対する批判でもある[211]
  53. ^ 特にアクターネットワーク理論やニュー・マテリアリズムの観点からは人間中心主義への懐疑がある[213]
  54. ^ ただし、プラネタリー・バウンダリーなどの仮説は、SDGsの策定に影響を与えたとされる[215]
  55. ^ アメリカでは、ドナルド・トランプ政権が科学政策や環境規制の弱体化を行い、パリ協定からの離脱を決定するという出来事も起きた。のちのジョー・バイデン政権は2021年にパリ協定に復帰した[220]
  56. ^ バンコクの中心部は洪水の被害が少なかったが、他方で中央政府が地方政府の対応に干渉した地域では洪水の被害が悪化したという研究がある[225]
  57. ^ 宮沢賢治の童話『グスコーブドリの伝記』(1932年)は、科学者が人工降雨や火山の噴火などを起こして農民を助ける物語で、気候工学の先駆的な内容となっている[228][229]
  58. ^ この方法は成層圏エアロゾル注入英語版(SAI)と呼ばれる[230]
  59. ^ クルッツェンは、ステフェンや歴史学者ジョン・マクニール英語版らと共同執筆した論考で、人新世を3つのステージ(1800年から1945年、1945年から2005年、2015年以降)に分け、ステージ3では人類が地球システムを管理することを求めた[233]
  60. ^ 成層圏エアロゾル注入によって温暖化を相殺化すると、地表面の正味放射が減少し、水循環を弱める方向に働く[234]
  61. ^ グリーンウォッシングの一例として、世界自然保護基金(WWF)による報告がある[238]
  62. ^ 大気中の二酸化炭素分子の残留期間は、その多くが数百年にわたり、10%から15%は1万年、7%は10万年にわたると推測されている[240]
  63. ^ ピーター・ブランネンの指摘による[242]
  64. ^ この用語は2000年に生態学者ジョン・L・カーナットの「均質新世の手引き」と題されたリストで再び使用されており[244]、それはイギリス歴史学者ジョージ・ウィリアム・コックス英語版による『Alien species in North America and Hawaii: impacts on natural ecosystems』[245]の批評総括であった。ジャーナリストのチャールズ・C・マン英語版は著書『1493 : 世界を変えた大陸間の「交換」』で、同質新世のメカニズムおよび進行中の結末に関する見通しを述べた[244][244]
  65. ^ アルフ・ホーンボルは2009年のスウェーデンのセミナー、ダナ・ハラウェイは2012年の講演、ジェイソン・ムーアは2016年に資本新世を使い始めた[250]
  66. ^ 社会学者ジェイソン・ムーアや哲学者スラヴォイ・ジジェクらの批判がこれに含まれる[213]

出典

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